いや、これはリアルすぎる……。『グランツーリスモ7』を「PlayStation VR 2」でプレイしたとき、そこにはないはずの「車の匂い」が筆者の鼻孔を突いた。
VRのヘッドマウントディスプレイを使用できるレースゲームは世の中にすでに多数あり、『グランツーリスモ』シリーズでも前作『SPORT』にて初代PS VRに対応している。それでもPSVR2のより真に迫った体験、精細なグラフィックスは、一世代前とは一線を画すバーチャル体験を生み出していた。
PS VR2を使用して『グランツーリスモ7』をプレイすれば、本作に収録されたすべてのレースをすべての車を用いてVRでプレイすることができるという。
※この映像はPSVR2発表前に公開された『グランツーリスモ7』製品版のトレーラーです。
『グランツーリスモ7』自体がそもそも、450種以上の「これ以上作りこんでも意味がない」「PS5でも表現しきれない」レベルに達したカーモデルを操作し、日産のエンジニアを招いた検証により証明された「実際のカーレースと同様の現象」をシミュレートできる“とにかくリアルすぎる”作品だ。
しかし、そんな同作には1人称視点モードが用意されているものの、ゲーム内の表情豊かな世界とプレイヤーを、「液晶ディスプレイ」という如何ともし難い壁が切断していた。ディスプレイは「実際に車を運転する感覚」への圧倒的な障壁となり、ゲームが表現するリアリティにはコントローラーと一定の客観性を与えてしまう「ディスプレイ」を介してのみ触れられるものとなっていた。
その『グランツーリスモ7』の真のポテンシャルを、PS5用の新型VRヘッドセット「PlayStation VR2」(以下、PS VR2)が引き出した。従来の液晶型ディスプレイという高い障壁を打ち破り、“リアルなレースゲーム”を更なるステージに到達させているように感じた。
通常版では味わえなかった再現性により「実際にクルマに乗っているような錯覚」を覚えたり、クルマのサイズ感や速度、空間の昇降を強く感じたりと、VRの強みである「肉体に直接訴えかける作用」を充分かつ少ないストレスで味わえる。
アップグレードはPS VR2の発売日である2月22日(水)には配信予定。一足先に味わうことができたその体験を説明していこう。なお記事の末尾には本作のシリーズディレクターである山内 一典氏による合同インタビューも収録。本作の狙いや開発秘話も収録されているため、ぜひこちらもチェックして頂きたい。
『グランツーリスモ7』PS VR2版では“車の振動”も再現
『グランツーリスモ7』はポリフォニー・デジタルが手掛け、1997年にプレイステーション向けに発売された第1作『グランツ―リスモ』を原点とする同名シリーズの最新作だ。高精細な再現性を持つ美麗なグラフィックに、天気や時間、タイヤの摩耗なども物理的にシミュレートし緻密に再現された車の走行、そして濃密な「車文化」を体験できるレーシングゲームとなっている。
冒頭にも触れたが、日産がフランスのル・マン近郊で行われる四輪耐久レース「ル・マン24時間レース」にチャレンジした際に、内部的にポリフォニー・デジタルが用意したデータを日産のエンジニアとチェックしたところ、おおむね実際の24時間レースと同じ結果を再現出来ているという。つまり、シミュレーションの精度という意味では、実際そのものをシミュレーションする数値に到達しており、これ以上ない程リアルな「ドライブシミュレーター」と言えよう。
PS VR2を使用して『グランツーリスモ7』をプレイする際には、視線トラッキングやGPUパフォーマンスを向上させる技術「フォビエートレンダリング」により、フォトリアルな景色をVRで自由に眺めることができる。3Dオーディオの音響を楽しめるほか、ウォールへの衝突と車両を下から突き上げる衝撃がヘッドセットのフィードバック機能で表現される。
なお、下から突き上げる衝撃は体験時は調整中で実装されていない。調整内容は現時点で振動が強烈で酔いが苦手なユーザーにとっては強烈すぎるため、安全な振動にすることだという。発売時には安全なチューニングが施されているため安心して頂きたい。
「VRショールーム」ですでに“脳がバグる”。内装のリアリティがすごい
本作のガレージには新モードとして「VRショールーム」が追加されている。自動車メーカーが『グランツーリスモ』シリーズのためにデザインしたコンセプトカーシリーズ「ビジョン グランツーリスモ」の一部の過去作登場モデル以外となるが、車内からVRで自由に内装や景色を堪能できる。いきなりカーレースの話をしたい気持ちはやまやまだが、順をおって本作の魅力を正確に伝えるべく、「VRショールーム」機能から紹介しよう。
450種類の車をVRで鑑賞できるVRショールーム機能の機能説明を読んで、“あくまでも見るだけの機能”だと思う方もいるかもしれない。通常版では殆ど観覧できないカーモデルの内装が緻密に再現されていることを理解していながらも、正直に言えば筆者も「やっぱカーレ―スが本質っしょ」と奢っていた節は否めない。
しかし、VRショールーム機能で座席視点モードを実際に使用した際に「今この車の座席に座っている」「自分は天井や壁面に囲まれている」と強烈に錯覚し、その不思議さに初めてVRを体験した小学生のように舞い上がってしまった。
正面には計器やハンドルが存在し、後ろを振り向けば後部座席が存在する。高級車の座席の本皮の光沢や軽自動車の天井のモケモケとした質感は、現実と同じように自身の記憶より正確なのだ。車内で周囲を見渡せば「在るべきものが在るべき姿、在るべき場所」に存在する。
文字にすれば「空が青いことに感動する狂人」のようだが、本来存在しない場所に大きさや質感、形状のすべてが正確な車両が存在し、そこに自然と座っている。正確なVRは人間の認識をバグらせてしまうのだ。結果、筆者は車内を見回している最中に眼前のハンドルコントローラーの存在を忘れ、見事に頭をぶつけてしまった。
また、映像でありながらスケール感を表現できる点や、仮想の空間に存在する感覚を与えることは当然ながらVRヘッドセットの基本的な魅力と言える。しかしながら、少なくとも筆者が経験したこれまでのVRコンテンツでは、スケール感や質感、モデルやパネル解像度など、どこかに大きな違和感を残していた。
いっぽう、VRショールーム機能で見た車内の光景はマジで違和感がない。ハイポリゴンの曲線モデルにより間近でモデルを鑑賞してもボロが出ることがなく、隙はない。違和感を感じるとすれば、億レベルの高級車に乗れる金を持っていないことだけだ。
通常版の時点で細密な再現性を携えた本作のカーモデルはPS VR2を使用することで、ひたすらに精度の高いVR空間を起ち上げる。結果として、プレイヤーが車に興味があろうとなかろうと、VRショールーム機能を使用すればVR技術の根源的な魅力である「仮想空間での臨場感」を暴力的なまでに味わえるはずだ。
高速で走る“車のエネルギー”を体感。肉体に直接訴えかけるバーチャルレース体験
前章ではPS VR2でプレイする『グランツーリスモ7』の「車に乗っていると錯覚する」圧倒的な臨場感を紹介したが、VRならではの臨場感はカーレースにおいて更なる高みを見せる。
実際にVRで本作して感じた通常版との大きな違いは、自身が走っているサーキットの形状、速度を直観的な身体の感覚で味わえることだ。
例えば通常版で「鈴鹿サーキット」を走行している際にコースの起伏を意識する機会はかなり限られているが、VR版では僅かな傾斜においても「体がふわっと浮いていく」ような感覚を錯覚した。また、「ニュルブルクリンク」をハイスピードで走行した際にはぐにょぐにょと曲がる急な昇降が肉体に激しく作用し、サーキットの形状を強烈に叩き込まれた。これは間違いなくVR版ならではの体験と言えよう。
また、フォーミュラカーなどで走行した際には、細密に再現された景色が目まぐるしく流れていき、圧倒的なスピードのスリルも感覚的に味わえる。スピードを感じることができる分、コーナーをグイっと曲がる緊迫感も強調された印象だ。
画角の広い通常版では「内部的にリアルな処理が行われている」ことを頭で理解していながらも感覚的に理解できず、盛り上がり切れないと感じる機会があった。速度が上がることにより視覚的な差異があるいっぽう、操作難度の差異以外で超スピードを体感しずらいと感じたこともあるのではないだろうか。
このレース時にふと立ち上がる「ゲーム内の現象との距離感」は、VR版では一切感じない。PS VR2でプレイする『グランツーリスモ7』は、むしろ走行する「クルマ」がもつ莫大なエネルギーを直接的に身体感覚で味わうことができるのだ。
ディスプレイの広い画角により隠蔽されていたカーレースの「ヒリつき」はPS VR2でそのベールを脱ぎ捨て、リスクと代償に速度を追及する妖しい快楽にプレイヤーを掴んで離さないことだろう。
ちなみに、体験会ではハイスピードで存分にブっ飛ばした後、プリウスで首都高をイメージしたサーキット「東京エクスプレスウェイ」を走行すると現実的な速度感を思い出させてくれた。戦いの傷を癒す狂戦士が如くプリウスでコースを流していると、景色を眺める余裕も出てくる。
『グランツーリスモ7』といえば超リアルなカーモデルが印象的だが、サーキットの景観も負けじと魅力的だ。各サーキットはカーレースを行う際の優劣のみならず、コースの知名度や歴史、そして景観の美しさも追及されている。
VR版では通常版以上に周囲の景色を眺めることができるほか、マップのサイドに配置された観客の実在感も向上する。現実でのよそ見運転はひたすらに危険だが、本作ではゆっくりとドライブをしながら景色を楽しむのも一興だ。
レース用の車両や普段は手が出せない高級車、コンセプトカーが目の前に
「VRショールーム」に話を戻そう。本作の魅力のひとつとして、フォーミュラーカーといったレース用の車両や、普段は手が出せない高級車、コンセプトカーなど到底乗ることの無い車に疑似的に搭乗する体験が挙げられる。
今回の体験会では第一に、フェラーリが初めてバーチャルモータースポーツの世界専用に向けて制作したコンセプトカー「フェラーリ ビジョン グランツーリスモ」に搭乗してみた。この車は「自動車文化」への興味の有無に関わらず誰もがブチ上がってしまう未来的なデザインだ。
しかしながら、「バーチャルモータースポーツの世界専用に向けて制作したコンセプトカー」に乗り込み、内装を堪能する機会は普通に生きてれば一切存在しない。本機能ではそんな不可能も可能にしてしまうのだ。
実際に座席のビューに切り替えると、内部も当然ながら未来的なデザインであり、未来のロボットのコックピットのような造形を間近で舐めまわすように堪能。同時にかなりの狭さも体感した。絶対に乗る機会がない車に対して「狭すぎて日常生活には向いていない」と“思う”こともできる。間違いなく貴重だ。
本機能では当然ながらカーレース専用のフォーミュラカーも座席の内部を見回せる。体験会ではマクラーレンMP4/4やSF19といった車両に乗る機会を得たが、速度を追及したスッカラカンの内装や、コックピットの内側の側面に配置されたケーブルなどがインダストリアルな魅力を醸し出している。
狭く機能のみを追及した座席や視界前方に見えるホイールやサスペンションは、当然ながら一般車両とは全く異なり、レースの求道的なスリルとリスクを彷彿とさせた。
先ほど本作の魅力として視界が表現する正確なスケール感を挙げたが、体験会では高さ約2メートル、全長約6メートル、幅約2メートルの巨大な四輪駆動車「フォード F-150 SVT Raptor ’11」を「VRショールーム」で鑑賞した。
当然ながら笑える程デカく、車内は核家族であれば暮らせるほど広い。本作の正確な大きさによって車両の巨大なサイズ感が身をもって味わえたが、同時に車両ごとのサイズ感の違いが少しシュールに感じた。その後、トヨタのアクアを観覧すると、「フォード F-150 SVT Raptor ’11」の4分の一ほどのサイズであり、また、改めてフォーミュラカーを呼び出せばあり得ないほど全高が低い。おなじ「クルマ」であるが、機能や目的の違いを体で覚えさせられた気分だ。
PS VR2を利用して正確なカーモデルのディテールを観察すれば、車両の目的や特徴、機能も見えてくる。車両自体への興味も改めてそそられるため、好きな車両や気になった車両は「VRショールーム」機能でさらに魅力を引き出せそうだ。
「VRショールーム」ではこのほかにライティングの変更やライトやウィンカーのオン・オフも行えるため、興味がある車両を思う存分観察しよう。
レースゲームが次のステージに到達したと確信。「グランツーリスモ」シリーズ クリエイター山内 一典氏の合同インタビュー
──今回『グランツーリスモ7』をPlayStation VR2(以下PS VR2)に対応させる上で苦労した点はありますか?
山内一典氏(以下、山内氏):
PS VR2への対応は、『グランツーリスモ7』の開発を始めた時からターゲットに入っており、そういう意味では『グランツーリスモ7』自体がVRを前提に作っています。
僕の想像ですが、多くのVRゲームが後からVRの対応を行うものの、それはものすごく大変な作業になります。僕らも過去に『グランツーリスモSPORT』の時代には同じように後から最初のPS VRに対応する作業を行いました。
『グランツーリスモ7』は最初からVRネイティブを想定しており、これはネイティブ4K60fpsに対応させることと、ほぼイコールの関係になります。事前にVR化を想定したことで制作はスムーズでした。
ただ、ネイティブに4K60fpsを動かすことや、VRを動かすことは、データそのものを相当軽く作っておく必要があります。なので、『グランツーリスモ7』の開発を通じて、負荷を上げずに絵のクオリティをキープすることが一番大変でした。
──今回、PS VR2に対応した『グランツーリスモ7』ですが、PS VR2に同梱されている専用のPS VR2 Senseコントローラーに対応しなかった理由はなんでしょうか?
山内氏:
車の運転の仕方を想像して下されば、おおむね僕らがPS VR2 Senseコントローラーにあえて対応しなかった理由が分かると思います。車は基本的にシートに座ってアクセル・ブレーキとステアリングだけで操作するものですから、DualSenseの機能で充分に表現できました。
いっぽう、「グランツーリスモ」シリーズのユーザーはハンドルコントローラーを使用して本気でプレイする方も多いです。PS VR2とハンドルコントローラーを使用すれば実際に車を運転することと全く同じ体験が味わえます。
ですので、DualSense のみ、もしくはDualSenseとハンドルコントローラー対応のみとしました。、あえてPS VR2 Senseコントローラーに対応する必要がありませんでした。
──『グランツーリスモSPORT』でも初代のPS VRへの対応が行われていましたが、『グランツーリスモSPORT』で出来ず、今回の『グランツーリスモ7』で実現できたことはありますか。
山内氏:
初代PS VRは解像度が低かったため、どこまで精密にレンダリングしても解像度に起因する「酔い」というか「不自然さ」がありました。今回はパネルの解像度が上がったことと、PS5のパワーにより60pでの描画、パン/チルトに関してはリプロジェクションで120pでの描画が可能になりました。
結果として画質も上がり、酔いにくくなりました。以前は連続して30分、1時間といった長時間運転することは考えられませんでしたが、そういったことも『グランツーリスモ7』とPS VR2の組み合わせであれば可能になりました。
──今回PS VR2版をはじめてプレイする方に向けて、どういったポイントや要素に注目してプレイして頂きたいとかんがえていますか?
山内氏:
まず、レースゲームはVRへの親和性が高いと思っています。自分が座った状態で自分の操作によって車が動く、そして車というのは基本的に前後方向の動きが中心になる。また、ステアリングを切った時に自分の意思に基づいてゆっくり曲がっていく。(自分の意思で操作した動きと見える画面が同じ動きになる)こういった要素が嚙み合わさることで、レースゲームは比較的酔いづらいジャンルです。
VRとなると酔いやすいイメージもありますが、今回のPS VR2と『グランツーリスモ7』の組み合わせは、かつてのVRが持っていた悪い点はかなり少なくなっているいるため、体験してみる価値があると思います。
また、これまで僕らは「グランツーリスモ」の歴史を通じて世界中の美しい景観やサーキットを紹介してきたものの、やはり「テレビのスクリーン」で表示している限り、どんなに正確に作りこんでもすごく限界がありました。
しかし、今回PS VR2を通じて伝えることで、ドイツのサーキットである「ニュルブルクリンク」や「筑波サーキット」など、正確に再現した各スポットそのものをリアルに体感できるようになりました。この点はいくら強調しても強調しすぎることはないかなと思います。
PS VR2と『グランツーリスモ7』の体験は、現状で得られる最高のVR体験のひとつで在ろうと思っています。
──『グランツーリスモ7』PS VR版の核となる狙いや、コンセプトを教えて頂きたいです。
山内氏:
レースゲームはもともとVRとの親和性が高いというお話をしましたが、その状態でコースを走ったりレースでテール・トゥー・ノーズ(自動車の後部と先端が触れそうなほど接近すること)のバトルをしたりした時に、横を見ればとなりの車が見えるんですね。VRを使う事で「本来の完全なレースゲーム」になったと感じています。実際に車に乗っている行為がすべてできてしまう。
なかなか言葉にするのは難しいですが(笑)正にその車に乗り、内装がある。言ってみれば本来のレースゲームが当たり前にすべきことがようやく出来たということですよね。
──今回実際に体験して『GT7』PS VR2版の「VRショーケース」で車を間近で見たときに、こんなに間近での鑑賞に耐えうる車のモデルがあることに驚きました。モデルを制作する際に、どれほどまでにVRを想定していたのでしょうか。
山内氏:
「グランツーリスモ」シリーズでは、ある一定のレンダリングリソースがあった時に、その多くを車の表現につぎ込んできたタイトルです。以前シリーズ25周年のインタビューでもお話しした事がありますが、一台一台の車は現行のPS5世代に対しても遥かにオーバースペックな車のモデリングを行っています。
ですので、VRになったときにモデルのディテールは通常のゲームでは見られないディテールまでを『グランツーリスモ7』開発段階ですでに作りこんでいました。結果として「VRショールーム」のようなフィーチャーが活きるっていうことですよね。
──「VRショールーム」において、ウィンカーやライトのオン・オフができるのは芸が細かく気に入った機能のひとつです。今後「VRショールーム」ではエンジンをかけたり、コックピットを操作するなど「VRショールーム」のアップデート計画はありますか。
山内氏:
確かなことはお話しできないのですが、実は僕たちも当初エンジンをかけたいと思っていました(笑)「VRショールーム」に入った時にエンジンをかける音が一瞬したと思いますが、中に入って内装視点になってもエンジンをかけられるようになってはいません。
なぜならエンジンをかけるとなると計器等のエンジン始動アニメーションを作らねばならず、そこまで作り切れなかったというところがあります。課題としては認識しているものの、450台以上の車すべてに対して今後行うかはどうかはわからないところです。
──PS VR2の仕様が山内さんに届いたときに、どのように思われましたか。
山内氏:
PS VR2に関しては、その仕様を決める段階からハードウェア部門とコミュニケーションを取っていたのですが、おおむね2022年に求められるスペックはすべて満たしているんじゃないかと思います。
HDRの表現をできることや、片目それぞれ2Kの解像度(2,000×2,040)があることなど、そういった条件を実際にクリアする形で実現されたと思います。
──今回色んなコースを走らせていただいて、色んな背景に思わず目が行き、ウォールにぶつかってしまいまうほどでした。山内さんご自身がオススメの背景や、「こういったところを見てほしい」というポイントはありますか。
山内氏:
いくつかあるのですが、ひとつは「東京エクスプレスウェイ」です。首都高のように上下、横などさまざまな立体物が配置されたコースです。
たとえばオープンカーで周りの景色を眺めながら走行するのがオススメです。その際はあまり速すぎない車が良いですね。ゆったりとドライブする感覚で「東京エクスプレスウェイ」を上や周囲を眺めながらながすのはVRならではの体験です。
もうひとつは「ニュルブルクリンク」のようなアップダウンのすごく激しいコースです。テレビでプレイするレースゲームは画角の問題で、とてつもない壁の様な上り坂や、崖から落ちていくような下り坂は表現できませんでした。
VR版では、そのようなコースの上り下りを本当に自然な距離感で認知できます。また、VRでは普段感じている認知と同じように「ここでブレーキを踏もう」「ここでステアリングを切ろう」という事がVRのほうがよりリアルに近い感覚で確かにわかります。これは、僕らも作ってみて初めて分かりました。
──以前、カーモデルが内装に至るまで作りこんであるものの、通常の『グランツーリスモ7』では見せる機会がない、とおっしゃられていました。この作りこみは『グランツーリスモ7』のコンテンツとして予め用意されたものなのでしょうか
山内氏:
そのとおりです。もうひとつの理由は、今後ハードウェアが進化し、限りなくさまざまな表現が可能になった時にモデルを作り直すのはイヤだったんですね。ですからPS5世代に最適化するのではなくて、もっと未来のハードウェアに最適な作り方を、こと車に関しては行ってきました。
──開発者として「ここは見てほしい」「ここは気付いてほしい」というポイントはありますか
山内氏:
もちろん「VRショールーム」でしか体験できない車の作りこみのディテールのすごさは「グランツーリスモ」だけの価値であるため、ぜひ見て頂きたいと思います。
あとはやはり、レース・走行体験が根本的に変化し、本当に車に乗っている感覚そのものになっていると思います。2022年にしてようやくレースゲームが次のステージに行ったことを是非みなさんに体験して頂きたいですね。
──最後に、これから体験されるユーザーの皆様に贈る言葉があれば、メッセージ頂ければと思います。
山内氏:
そうですね、何度かこのインタビューでもお話ししましたが、本当にレースゲームにとっての新しい時代が始まったということです。走行体験と運転体験が本物と同じようにできるようになったことは本当にすごく大きな進歩だと思います。
くわえて、VRというと“酔う”というイメージがありますが、きちんと作ると酔わないということもお伝えしたいです。ですので「今VRってこういうことができるんだ」というように、是非体験していただきたいです。
「リアルなレースゲーム」が到達すべき「現実の運転と同等の感覚」を提供するPS VR2版の『グランツーリスモ7』。身体感覚でカーレースのダイナミズムを感じたい方、とにかく質の高いVRを遊びたい方は、ぜひ実際にプレイしてみてはいかがだろうか。
『グランツーリスモ7』のPS VR2への対応は無償アップグレードという形で行われ、アップグレードはPSVR2の発売日である2月22日(水)には配信される予定だ。