2023年3月9日、レミオロメンの名曲を思い出すこの日に発売が予定されているゲーム『メロンジャーニー:ビタースイート・メモリー』。本作は、個性豊かでかわいらしい擬人化された動物たちが住む町を探索し、謎の失踪を遂げた友人を探し出すという内容の探索とストーリーに重きをおいたアドベンチャーRPGゲームです。こういったジャンルのゲームでは、『ナイト・イン・ザ・ウッズ』などの名作が思い出されますね。
さて、今回は、現在予約受付中である本作のプロローグから第一章までをプレイさせて頂く機会を得られましたので、作品の魅力について大いに語っていきたいと思います。
文/DuckHead
※この記事は『メロンジャーニー:ビタースイート・メモリー』の魅力をもっと知ってもらいたいBeepさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
可愛らしいキャラクターたちの世界の中で、犯罪が暗い影を落とすストーリー
さて、本作のタイトルは『メロンジャーニー』。ここだけ聞くと可愛らしい印象を受けますが、実際に注目しなければならないのはそのサブタイトル。『ビタースイート・メモリー』。簡単に訳すならば、“ほろ苦い思い出” 。
つまり、本作のストーリーはほろ苦く、かわいらしさからは少し遠ざかった場所にあるということになります。それでは、『メロンジャーニー:ビタースイート・メモリー』、そのストーリーがどんなものなのか、実際に見ていきましょう。
物語の始まりは、主人公ハニーデュー(名前は自由に設定可能)の独白。彼女は、「信じられないかもしれないけど、この世の何よりも幸福と破壊をもたらすものが、たった一つのメロンだ。」。そんな風に語ります。
このシーンのムービーは動きが滑らかで、中々に美麗。プレイヤーを物語の世界へ引き込んでくれます。
さて、主人公のハニーデューはウサギの耳をした可愛らしい女性。彼女は「まさかこんな大きな事件に巻き込まれるなんて」と続け、場面は、事件の始まった場所である、ハニーデューが勤務するメロン加工工場へ移ります。
ある日の早朝、彼女が目を覚まし部屋を出ると、友人であるカンタロープ(名前は自由に設定可能)の手紙が置かれていて、そこには、「仕事を抜け出して、ホッグタウンに来てほしい。君とネコ姫とマッスルドッグに伝えなきゃいけない大事な話があるんだ。このことは誰にも言っちゃだめだよ。」と書かれていました。
そしてハニーデューは、カンタロープのメッセージ通りにメロン加工工場を抜け出して、メロンとメロンに由来する製品が全て違法である街 “ホッグタウン” へ向かいます。カンタロープが落としていったというブリーフケースも一緒に携えて。
彼女がホッグタウンへ着くと、早々にひったくりにあい、カンタロープのブリーフケースを盗まれてしまいました。慌てて後を追いかけると、犯人は既に警官に職務質問されており、警官がカンタロープのブリーフケースの中身を調べると、なんとそこには違法なメロンの種が大量に入っていました。ひったくり犯はそのままメロンの種所持の現行犯で逮捕され、警察署へと連れていかれてしまいました。
あっけにとられつつもネコ姫とマッスルドッグと合流したハニーデュー。新婚夫婦である彼女たちからカンタロープがまだ来ていないことを知らされた彼女は、カンタロープの消息を掴むため、唯一の手がかりである “R.H” という人物を追いかけることに。
ネコ姫の父親であり、近日中に行われるホッグタウンの市長選に立候補しているネコ王が100年ぶりにこの街でメロンを合法化しようとしていること。
ホッグタウンでは裏でメロンが非合法に売買されていること……。
ハニーデューはホッグタウンという街の空気を全身に浴びながら、カンタロープの捜索を続けていきます。果たして、彼女はカンタロープを無事に見つけることができるのでしょうか?そして、カンタロープの失踪の真相とは如何なるものなのでしょうか……?
以上が、本作のおおまかなあらすじになります。その後、カンタロープを探す中で様々な事実が少しずつ明らかになっていきますが、多くの謎が残されたまま第一章は終了。これから物語が更に展開していくだろうというところで章が終わりを迎えたので、今、かなりモヤモヤとしています。
このように、本作のメインとなるのは友人の失踪事件。その事件を追う旅路では犯罪が常につきまといます。
出てくるキャラクターはほぼ全員かわいいにも関わらず、そのストーリーには常に犯罪の影がチラつき、キャラクターたちの発言は何かと物騒……。このギャップこそが、本作の魅力であると言えるでしょう。
ところで、擬人化された動物たちが登場する世界観で犯罪などのシリアスなテーマを扱う場合、その擬人化された動物たちに対して何かしらの意味を含ませるということがよくあり、それこそが擬人化の醍醐味であると言えます。本作におけるメロンが何を示唆しているのか……それについては改めて語るまでもないでしょう。
となると、気になってくるのが主人公のハニーデューです。
この画像をパッと見ると、彼女はウサギのキャラクターであるように見えるでしょう。しかし、このウサミミは偽物。これは、彼女が働くメロン加工工場の社内規定で決められたユニフォームの一部なのです。簡単に言ってしまうと、ディズニーリゾート内で付けている人をよく見かける、ミッキーマウスの耳と同じ様な代物です。
さらに、本作の公式サイトでタイトルイラストを見てみますと、ハニーデュー以外のネコ姫やマッスルドッグなどのキャラクターは、擬人化された動物であることがハッキリと分かるのに対し、彼女はウサギの耳であること以外は人間と変わらぬ姿に見えます。つまり、ハニーデューは他のキャラクターと比較して、かなり人間に近いのです。
こういった見た目の違いにも、何か秘密があるのでしょうか。いよいよもってそのストーリーの続きが気になるところです。
メロンとほろ苦い笑いに彩られた世界
さて、ここまで読んでいただいた方ならお気づきかとは思いますが、本作をプレイしている中で印象に残るのが、ゲーム画面が緑色を基調としているということ。ゲームボーイの画面を思い出させるその色合いは、どこかメロンも連想させます。
そんな色味の少ない雰囲気が作品全体を包み込んでいるため、本作では常にそこはかとない懐かしさや不気味さが漂っているのです。
そして、ハニーデューが探索するホッグタウンには、明るく綺麗で活気あふれるエリアがあったかと思えば、
路上で違法メロンを頬張る住民がいる治安の悪いエリアもあります。
さらにはカルト教団の集会所も登場し、この街に存在する光と闇の両方を映し出しています。
特にこの作品では、闇を描くということに心血が注がれており、目に見える犯罪・政治腐敗だけでなく、ブラック企業や社会の不条理さに対する風刺も、ほろ苦い笑い、すなわちブラックジョークとして取り込まれており、様々な場所でこれらの要素を感じ取ることができます。キャラクターがかわいらしいだけに、そのブラックジョークのほろ苦さは、通常のものよりも強い気がします。
また、この仄暗い雰囲気の演出にはBGMも一役買っていて、例えば、様々な場面でブラック企業であることが垣間見える、ハニーデューの勤務する工場で流れるBGMは、常に不協和音。この場所が異様な空間であるということを、音楽からも教えてくれています。
探索でより鮮明になる世界観やキャラクター
さて、友人の失踪の謎を追うというストーリーの『メロンジャーニー』では、事件解決のために町中の探索が重要です。
そんな本作では、町や室内に存在するほぼ全てのオブジェクトを調べることが可能。中にはストーリーを進める上では全く必要のないオブジェクトもあるのですが、そういったものも丁寧に見ていくことで町の空気感やキャラクターの性格により一層深みが出て、その解像度が高くなっていくのも魅力です。
絶対に関係無いだろうなという場所も調べてみたくなる楽しさがあるのは嬉しいですね。
そんなオブジェクトの中で私が地味ーに好きだったのがこちら、「カール・メロン著:『犬の資本論』」。実際の『資本論』の著者はカール・マルクスで、一応メロンにかかった名前になってはいるのですが、本当にそれだけ。ストーリーには全く関わりがありませんし、「気が付いたとて」という話。こういった小ネタが町中の随所に散りばめられています。
個性豊かでかわいいキャラクターたち
さて、何かとほろ苦さが目立つ本作ですが、それだけを突き詰めているというわけではなく、しっかりとかわいらしさも作中に残しているというところに、制作陣のこだわりを感じます。
そんなかわいらしさを担ってくれているのが、本編に登場するキャラクターたちです。
彼らの個性は非常に豊かで、金魚のキャラクターも登場。明るい性格のキャラクターを見ていると、暗めのストーリーでどんよりとした気持ちも晴れ晴れとしてきます。
そういったキャラの中で私が特に好きだったのが、ハム・ゴーストJr。今回プレイした中では数回しか登場しておらず、しかもストーリーに深く関わる感じではなかったのですが、彼は物凄くかわいいキャラクターでした。短い登場時間の中でもプレイヤーに対してしっかりと印象を残せるというのは、良いキャラクターの証と言えるでしょう。
そして、本作に登場するキャラクターには、明らかに元ネタがあるだろうと思わされるものも数多く登場します。
例えば、上の画像のハムルンボ警部補。完全な推測にはなりますが、恐らく刑事コロンボをパロディした名前のキャラではないかと思います。画像では小さくて分かりにくいかもしれないですが、見た目もコロンボっぽいような気がしますしね。
刑事コロンボ好きとしては、ハムルンボ刑事の存在でかなりテンションが上がったのですが、それと同じ位にテンションが上がったのが、こちらの泥棒ヘビ。こちらは名前が指し示しているようにヘビのキャラクターで、なんとその目には眼帯が。
眼帯をした蛇、眼帯をしたスネーク、ビッグボス……これはもしや『METAL GEAR SOLID』のパロディなのでは!?とシリーズのファンとして大歓喜してしまったのですが、考えすぎでしょうか。
ちなみに、泥棒ヘビは、ビッグボスとは眼帯の位置が左右逆になっています。
そしてそんなことを考えていたときに思い出したのが、ゲーム起動時に表示される注意書き。「このゲームはフィクションであり、類似点は偶然」。そう、世の中のどれだけの人が元ネタを指摘しようと、全ては純然たる偶然なのです。いや、ヘビや架空の人物のことは書かれていないから、偶然ではないのか……?
まぁ、こんな話はさておき、本作に登場する一部のキャラクターには “クエスト” という形で、そのキャラクターを主人公とするストーリーが用意されています。これはメインストーリーとは直接の関係はないため、クリアするかどうかは任意となっているお楽しみ要素の1つですが、プレイすることで更にキャラクターを深掘りすることができたりします。
サイドストーリー的な立ち位置であるクエストですが、そこにもブラックな笑いは健在。私が今回プレイした中には、メインストーリー以上にとんでもない台詞や展開が目白押しのクエストもあり、その不条理さは『不思議の国のアリス』を彷彿とさせました。
そんな強烈な不条理さを浴びせかけてきたかと思えば、クエストではキャラクター同士の恋愛模様を見せつけられることも。この時は危険なふたりって感じで、こちらをガン無視して話が進展していったのですが、すぐ近くにハニーデューがいるって分かってるはずですよね……?
これらのクエストや町中のオブジェクトといった形で、本作には細かい設定や小ネタがたくさん隠されているとのこと。この調子ですと、恐らく今回のプレイでは発見できていない部分もまだまだありそうです。
終わりに
さて、最後になりますが、ここまでお話してきましたように『メロンジャーニー:ビタースイート・メモリー』は、可愛らしさとほろ苦さが融合した、探索を積み重ねることでストーリーや世界観に深く入り込んでいけるゲームでした。
そんな本作は、PS4、PS5、Nintendo Switchでの販売が3月9日に予定されており、通常版ではステッカーセットやサウンドトラックCDなどの特典が付属します。
更に、Nintendo Switchのみで発売予定の限定版では、この令和の時代に、なんとゲームボーイの実機とゲームボーイに対応したエミュレータで実際に遊ぶことができる『メロンジャーニー1』のソフトが付いてきます。ソフトがもう一つ付属するということで、さすがに通常版とは大きく値段が変わってしまいますが、こちらは数量限定とのことですので、コレクションとして『メロンジャーニー1』が欲しいという方には絶対にオススメです。
そのストーリーや世界観に興味を持った方は、是非本作を予約して、ハニーデューの友人の失踪とメロンを巡る、ほろ苦い旅の思い出を追体験してみてはいかがでしょうか。