ドラマなのに最新シーズンの最終話が2時間半のクトゥルフ系バケモンホラー『ストレンジャー・シングス』と、2時間半精神的苦痛を味わうスピリチュアル・ホラー『ミッドサマー』が合体したらヤバくないですか???
あったわ……。いやあるのかよ!!!
それが今回ご紹介する『The Chant(ザ・チャント)』です。あるのか……。
プレイヤーは主人公であるジェス・ブライアーズとして、人里離れたグローリー島に居を構えるカルト教団「プリズムの科学」のスピリチュアル・リトリート(修養会)に参加することに……。というお話なのですが、白い服を着ていたり、裸足だったり、キノコ茶を飲んだり。
だいぶ『ミッドサマー』っぽい空気感だなー、と最初は思っていたのですが、実際のところはそうでもなく。教団が実施している儀式がオカルト的内容を多分に含んでいたり、異形の怪物たちが跋扈しています。
このゲーム、何がやばいかって、闇がキーの『ストレンジャー・シングス』と光がキーの『ミッドサマー』、一見水と油のような2作品がうまく融合した結果として新たな世界観が生み出されているところ。
この異様な不気味さがたまらないんです……! どっかで見たことあるような、でもないような。ちょっと個性的なゲームシステムも相まって、そのゲーム体験は唯一無二のものになっていると断言していいでしょう。
ところで、このゲーム「4時間でクリアする」とどんなトロフィーがもらえると思います?
隠す気ないだろこr……おっと急な来客が。
志村、後ろ!うしろ~~~~っ!ギャ~~~
文/Squ
宗教団体「プリズムの科学」と島に眠るカルトの秘密
書き出しの部分で、ものすご~~く大雑把に説明をしてしまったことをお許しください。ただひとつ、前もって言えることは、本作は『ストレンジャー・シングス』や『ミッドサマー』とは似て非なるものだということです。
このゲームは、主人公のジェス・ブライアーズが、過去を乗り越えるために「プリズムの科学」と呼ばれる宗教団体が主催するスピリチュアル・リトリートに参加することから始まります。
なぜ参加することになったかは、最初のうちはわかりません。ただこの水死体が関係することは間違いなさそうです。
ちなみに、「スピリチュアル・リトリート」という言葉。よくわからなかったのですが調べたところによると「修養会」という意味合いを持つらしいです。中学時代にキリスト教の修養会には参加した記憶があるのですが牧師さんが来て聖書の話をしていた記憶……。あやふやです。なんなら筆者は神道家系というカオス。
このゲームにおいては、自給自足をして共同生活をして宗教と結びつく……という認識でいいのかもしれません。リトリートの舞台は景色豊かな孤島「グローリー島」、島の名前に「Glory(栄光)」とつけるあたり、しょっぱなから極まってます。
こちらは、主人公・ジェスの親友のキム。セミナーをきっかけに「プリズムの科学」に興味を持ち参加しているとのことですが、「ジェスと一緒なら過去の傷から前に進むことができる」という理由で主人公を誘っています。(マジかよ)
リトリート到着した初めての夜、この島で行われているチャント(詠唱)の儀式に参加することに。「キノコ茶を飲んで、負のエネルギーを体から取り除きましょう」という儀式。
チャントの詠唱を通じて、それぞれのキャラクターたちが身に着けている水晶「プリズム」にエネルギーを送り込むのだとか。よくわからないけど、オカルトじみていることだけはわかる。
儀式中に開かれたのは、負のエネルギーを餌にするサイケデリックな恐怖の次元「闇」。穏やかだった島は一変して恐怖に包まれます。
キノコ茶とのことなので、順当に考えればタダの幻覚な気もしますが……、キムがこちらを向いたかと思うと「私を責めないでよ!」、「あたしのせいじゃない!」と主人公に対し怒りを顕わにし、儀式を途中離脱して行方不明になってしまいます。
儀式が予期せぬ中断を迎えたため、「闇」が島を覆いつくします。幻覚じゃなかった……!このあたりから大分クトゥルフ神話や『ストレンジャー・シングス』のような超自然・超科学な世界観になっていきます。
主人公のジェスは、島に眠る奇妙なカルトの歴史を調査し、儀式を巻き戻して次元を閉じるための方法を見つけなければならないのです。
プレイヤーは、ジェスの視点から物語を進めながら、謎を解き明かし、恐怖に立ち向かっていくことになります。島の探索、アイテム収集、パズル解き、そして「闇」に潜む怪物たちとの戦闘など、様々な要素がゲームプレイに組み込まれています。
マップが広く感じる工夫がすごい!
ゲーム中のマップが広大なスケールを持っているわけではないにも関わらず、プレイヤーは広々とした世界に没頭しているように感じるかもしれません。これは、個人的にこのゲームですごくビックリしたポイントの一つです。
このゲームでは、マップに多数の分かれ道が用意されており、プレイヤーは自由自在にキャラクターを動かしているように感じることができます。しかしながら、分岐の多くは最初に訪れた際には道が閉ざされており、鍵などを見つけて解放する必要があります。
ただそうなると、この手のゲームに付きまとうのは、いわゆる「おつかいクエスト」の存在です。
やれこれをやってこいとか、これをとってこいとか、目的地に行ったら同じ道を通って帰ってくる「おつかい」系は苦手な人がいるかもしれません。ただこのゲーム、冒頭に存在するチュートリアル以外でおつかい的なものがマジで全然ないんです。
例えば、最初に訪れた際にはドアに鍵がかかっており、鍵を見つけた後に戻る必要があるというシチュエーションだったとしましょう。
鍵を見つけないといけないので一旦飛ばして先に進まなければならないことが多いのですが、いざ鍵やキーアイテムを見つけると、新たなルートからドアに戻ることができるんです。
大体どこかに乗り越えられる窓枠とかドアがあったりして、開発側からしてみれば「想定通りのルート」だと思うのですが、これによって、プレイヤーはマップ全体を探索することができ、新たな発見に出会うことができちゃうんです。
SAN値直葬の恐怖から逃れろ!3つのゲージシステム
さて、冒頭から散々『クトゥルフ神話』みたい〜、という話をしていたわけですが、そろそろその理由の一端を担う要素をご紹介しましょう。
このゲームには「精神」、「身体」、「魂」というシステムがあるのですが、わかりやすく説明するとそれぞれ「SAN値」、「HP」、「MP」に対応しています。
このゲームで特に重要なのは「精神」ゲージです。精神ゲージは、ジェスの精神状態を示していますが、戦闘中などのタイミングで減少していきます。この「精神」が0になると、パニック状態となり攻撃行動をとることが出来なくなります。
特に極端に減少するのが「闇」に侵入したタイミングです。電気のついていない暗闇に侵入すると、SAN値が減少するため進行が不可能になってしまいます。
減少したSAN値は、「魂」ゲージを消費し瞑想をしたり、特定の回復アイテムの使用で復活させられますが、なによりも「SAN値が減るから怖くて進めない」という仕様が素晴らしいと感じました。
ゲームプレイにおけるプレイヤーの緊張感と主人公の恐怖感を連動させると同時に、特定の謎を解くことで進めるようになるというゲームシステム的部分を演出で理由付けし、克服できているというのはとてもいいポイントだと思います。
オブジェクトをたくさん置かれて「進めませ〜ん」ってされると、没入感がそがれることがあるので、この仕様は素直にうれしいですね。
「身体」ゲージは、素直にHPだとわかるかと思うのですが、ちょっと特殊なのが「魂」ゲージです。「魂」ゲージは記事冒頭でも出てきた「プリズム」に秘められた力を発動するための「MP(マジックポイント)」としての役割のほか、「精神」ゲージを回復するための「MP(メディテーションポイント)」としても機能します。なのでちょっと管理が大事……かも?
ちなみに、ゲージの上限や、回復アイテム利用時の回復量などはアップグレードをすることで増やすことができるので、適宜アップグレードをしてみるといいでしょう。
宇宙的恐怖に物理で対抗せよ!リズム感のある楽しい戦闘が魅力的!
サバイバルホラーと言えば、やっぱり戦闘!
戦闘!!
戦闘……してる動画を見たいですよね。ご用意しました。
案外バサバサと敵を殴れるうえに、けっこう回避の動きが強いゲームではあると思います。ただ、実体のある敵と、「闇」の中でしか姿の見えない敵が存在しており、それらに応じた武器の使い分けの概念が存在します。
フィールドの様々な場所で入手できる「草」を組み合わせることで、いろいろな特性を持った武器を作ることができます。敵の種別ごとに相性のいい武器が決まっているので、使い分けが重要となっています。
……が、時にはクラフト素材がなくて戦えない!ということもあるかもしれません。一応救済策として「体当たり」が存在しています。
体当たりは、素材がなくても敵を倒すことができる方法のひとつです。覚えておくと有事の際に役立つでしょう。
ところでこのゲーム、「体当たり」が強ぇ!
さて、先ほどの項で「体当たり(肘鉄)」についてお話ししましたが、実はこのゲーム、どんな武器よりも主人公の肘鉄攻撃が最強なのです。
まさか~、って思いますよね?もちろん、相性を見極めた武器の使い分けには劣るのですが、このゲームにおける回避の強さと相まって「体当たり」攻撃がトップティアに君臨しているのです。
なので、戦闘で苦戦したらとにかく体当たりで行きましょう。クラフト素材の供給が少なめだったり、体力の減りが早いことを考えると、この「体当たり」と回避の組み合わせはプレイ中の大きな助けになると思います。
さて、ここまで『The Chant』(ザ・チャント)の魅力についてお話してきましたが、いかがだったでしょうか?
このゲームの特徴はズバリ、カルト的な恐怖に侵されたグローリー島を探索すること!闇から這い出る不気味なクリーチャーやカルト信者たちと戦いながら、不可解な歴史の謎を解明するためには、超自然的な武器やアビリティを駆使して、生き残るために戦うか、逃げるかの選択を迫られることもあるでしょう。
また、素材を収集し、クラフトすることで準備を整え、接近戦に挑むこともでき、そのほかにも精神、身体、魂を鍛えることで超自然的な能力を手に入れ、自分自身を強化することができます。
1970年代のサイケデリックホラーに着想を得ており、グローリー島の景色やエレクトロニック・ロック風のBGMなど、近代的でサイケデリックな雰囲気を楽しむことができる『The Chant』(ザ・チャント)は3月30日に発売予定。日本語字幕・音声に対応し、さらに手に取りやすくなっての登場となっています。
対応プラットフォームは、PC(Steam)、PS5、Xbox Series X|S/Xbox Oneとなっており、PS5版のみパッケージ版の発売も予定されています。