4月2日は『ファイナルファンタジーVI』が発売された日だ。
『ファイナルファンタジーVI』(以下、『FF6』)は1994年4月2日、当時のスクウェア(現 スクウェア・エニックス)からスーパーファミコン向けに発売された。
プロデューサーは坂口博信氏、ディレクターを北瀬佳範氏と伊藤裕之氏が担当し、過去のシリーズ作品と同様に音楽は植松伸夫氏、美術を天野喜孝氏が担当している。
「魔大戦」と呼ばれる1000年前の戦争によって「魔法」の力が失われ、蒸気機関などの「機械」の力で復興した世界で、さらなる力を求めてあやまちを繰り返そうとする者の野望を阻止するのが『FF6』のストーリーだ。
本作は過去の『FF』シリーズ作品と比較するとプレイヤーキャラクターの数が非常に多く、最大で14人が加入する。そして本作では、その14人全員が主人公であると見なされている。
ストーリーは魔法を使うことができる記憶喪失の少女・ティナから始まるが、反帝国組織に属するトレジャーハンターのロック、影で反帝国組織を支援しているフィガロ国王のエドガー、人工的に魔法の力を植え付けられた帝国将軍のセリスなど、それぞれに異なる背景を持ち、年齢も性別も所属もバラエティに富むキャラクターたちが、主人公かつ仲間として加入する。
メインストーリーはそれぞれが信念を抱いて世界を救う内容となっているが、各キャラクターのエピソードや、死線を越えて互いにかけがえのない存在となっていく群像劇が、本作のストーリーの大きな魅力だ。
本作は前半が一本道のストーリーを進めるオーソドックスなRPGとなっており、場面ごとに操作するキャラクターが変わることで、世界設定を立体的に描き出している。
その一方で、ストーリー後半は自由度が非常に高くなっており、どのエピソードから攻略するかはプレイヤー次第だ。最低人数のパーティメンバーでラストダンジョンに挑むことも可能だが、逆に14人全員を気が済むまで鍛え抜いてから挑むことも可能である。
他にも本作の非常に大きな魅力として、音楽とピクセルアートは「スーパーファミコンの性能の限界に挑戦している」と表現されるほどクオリティが高い点が挙げられる。
その本作で屈指の人気イベントが、音楽とピクセルアートと演出の全てを堪能できる「オペラ劇場」のイベントだ。
2021年以降、『FF』シリーズの『1』から『6』を現代の技術で2Dリマスター化した「ピクセルリマスター」と称されるシリーズが展開されている。
オリジナル版から『FF』シリーズに携わっている渋谷員子氏がドットキャラをフルリマスタリングしており、鮮やかな2Dグラフィックでより遊びやすく再構築されたリマスター作品群だ。
その中でも『FF6』のピクセルリマスターは、オペラシーンのイベントが大幅なパワーアップを遂げている。スーパーファミコンでは擬似的な音声で演じられていた歌が、実際の音声で新たに収録されているのだ。
しかも対応言語が非常に多く、日本語や英語のみならず、設定を切り替えればイタリア語など合計7言語による歌唱を楽しむことができる。
『FF6』はオリジナル版がスーパーファミコンで発売されて以降、複数の機種で移植が展開されており、それぞれに追加要素や変更点がある。
1999年に発売されたプレイステーション版では、起動時にムービーが流れ、モンスター図鑑や設定資料などが鑑賞できる「おまけモード」、クリア時の歩数や各キャラクターの成長度などのやりこみ要素を記録してくれる「やりこみじいさん」が追加された。
2006年に発売されたゲームボーイアドバンス版は、日本国内で発売された最後のゲームボーイアドバンス用ソフトでもある。追加要素として新たな魔石やダンジョンが登場し、鍛え抜いたパーティメンバーで非常に難易度の高いダンジョンに挑むことが可能になった。
2022年にスマートフォン、Steam、2023年にNintendo Switch、PS4向けに発売されたピクセルリマスター版では、先述の通りオペラに音声が付いたほか、モンスター図鑑や音楽などの鑑賞が可能となっており、オートセーブやオートバトルといったシステムの追加によって遊びやすさが向上している。
本作のメインキャラクターは、他の『FF』シリーズ作品と同様に『ディシディア ファイナルファンタジー』や『シアトリズム ファイナルファンタジー』などの派生作品にも登場している。
2023年に発売された『シアトリズム ファイナルバーライン』では、プレイヤーキャラクターとしてティナやロックなどの一部のキャラクターが選択可能なほか、「飛空艇ブラックジャック」、「死闘」、「仲間を求めて」、「妖星乱舞」などがプレイ可能な楽曲として収録されている。
本作はピクセルアートの美しさが話題に挙がりやすいが、その元になった天野喜孝氏によるアートワークも高い人気を得ている。中でも、帝国兵器「魔導アーマー」に乗るティナのイラストは、スーパーファミコン版のパッケージイラストとして採用されていたこともあり、『FF6』を象徴するイラストとして人気がある。
スクウェア・エニックス e-STOREでは、2022年に『スクウェア・エニックス マスターライン ファイナルファンタジーVI 1/6スケール』として、数量限定で1/6スケールの魔導アーマーとティナのスタチューフィギュアの予約販売を受け付けていた(※現在は終了)。
価格は148万5000円という驚きの設定なのだが、細部に至るまで精巧に作り上げられ、原画の精密さが丁寧に再現されており、息を呑む仕上がりとなっている。
『FF6』は過去の『FF』シリーズと比較すると、敵の強さに対して味方の火力が上がるペースが早く、相対的に難易度がやや低めだという評価がされてきた。そのため、低レベルクリアや低歩数クリアなど、さまざまな縛りを設けたプレイが盛んに行われている。
特に本作は通常のやり込みプレイや縛りプレイだけでなく、有志がバグを研究して応用したチャートによるRTAも行われている。発売から20年以上経過しているにもかかわらず、2018年に新たなバグの発見報告があったこと(参考:日経クロステック)などは、本作の奥深さとプレイヤーの作品愛の驚きの化学反応の結果だと言えよう。
記事執筆時点で、本作のSteamストアの評価は「非常に好評」となっている。本作のピクセルリマスター版で鮮やかに表現された14人の主人公の物語を、この機に体験してみてはいかがだろうか。