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この探偵、性癖に刺さりすぎる。“超探偵級”なヤツらと事件に挑む『超探偵事件簿 レインコード』が想像以上にすごかった

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 『超探偵事件簿 レインコード』、楽しみにしてるかい?

 ということで、今回は『ダンガンロンパ』のチームが贈る“超探偵級”の最新作『超探偵事件簿 レインコード』の体験会にお邪魔してきたのです。

 正直なところを言ってしまうと、私はそこまでゴリゴリに注目しているタイトルではありませんでした。本当に私は嘘がつけない人間なので、実のところ今回の体験会は「オッ、せっかくお呼びいただけたなら行ってみよう」くらいの温度感でした。

 が、しかし、ところが、想像以上に面白い。

 今作のシナリオを担当した&『ダンガンロンパ』などでお馴染みの小高氏曰く「(発売が)FF16の一週間後なので完全に埋もれてしまうこと確定」らしいのですが、このゲームが『FF16』に埋もれてしまうのはもったいないです! いや、それはそれとしてワイも『FF16』は買うんやけど……。

 と、とにかく『レインコード』はかなり面白い出来なのです! もう前置きはすっ飛ばしてすぐに今作の紹介に移りましょう。

 そして記事の後半には小高氏と今作のプロデューサーを担当した榊原氏へのインタビューも掲載されています。6年に渡る開発期間の果てに完成した『レインコード』の舞台裏を、かなりガッツリと語っていただいています。

 『ダンガンロンパ』ファンの方も、今作に注目してる方も、ぜひ最後まで読んでってください。

聞き手・文/ジスマロック
編集/実存


探偵はもう、降られている。

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 今作の主人公、「ユーマ=ココヘッド」
 かわいい顔! どうやら彼は記憶喪失らしい!

 そして彼を導く謎のマスコット「死に神ちゃん」! 上の画像でふわふわ浮いてるオバケみたいなやつです。よくわからん!

 この「ユーマ」と「死に神ちゃん」の不可思議コンビが凄まじい特殊能力を持つ「超探偵」たちと共に難事件に挑む、それが『超探偵事件簿 レインコード』! あぁ、なんと素晴らしい文才なのでしょう。たった3行で大まかな紹介を華麗に終えてしまいました。私も超探偵級の文才を持っています。

 そしてゲームを起動してみた第一印象、それは「雰囲気の良さ」

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 雨が降りしきる街並み。いかにもダークで西洋な“探偵風”の世界観にぶち込まれる、ギラギラと卑しいネオンの輝き。その煌めきが、この街を行き交う人々を面妖に照らし出す。つまり、『レインコード』はこの「探偵(ロンドン)風×サイバーパンク」なフィールドの完成度が想像以上に高いのです。言われてみれば、ロンドン×サイバーパンクってそんなになかった気がする。

 そして私はプレイ中に気がついたのですが……このゲームのキャラ、みんなレインコートをよく着ている。なぜなら、この世界はずっと雨が降っているから。そうか、雨が降っているからみんなレインコートを着ているのか! 『レインコード』だから「レインコート」なのか!!

 えっ、これ気づいてなかったの俺だけ……?

 とにかく、「フィールドの雰囲気」がメチャクチャ良い。クソッ、このフィールドの良さは果たして画面写真だけで伝わっているのだろうか!? 「探偵の謎解きアドベンチャー」と聞いてゲームを触ったら思ったよりフィールドに気合が入っていた時の「予想外の角度から殴られた」感は伝わっているのだろうか!?

 ミステリーにビジュアルは必要か? いや、間違いなく必要である。

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 そして今回プレイした第1章で挑む事件は、「密室殺人事件」。この街には、「呪った相手を殺してくれる“クギ男”」という都市伝説が存在していた。そして事件は起きる。密室の中で殺される被害者。その都市伝説に見立てるかの如く、犯行現場には釘に打たれた人形が大量に残されている。

 果たしてこれは、都市伝説通りの「クギ男」なのか? それとも、模倣犯か? もしくは、「嫌いな相手を殺してくれる」という、民衆にとっての英雄の代行者か?

 ユーマと死に神ちゃんが最初に遭遇する事件は、「時計塔」での密室殺人。敵対する保安部によってある程度犯人の目星がつけられているものの、その容疑者の息子が「父さんはクギ男じゃない!」と断固否定。少年の思いに応えるべく、ユーマと死に神ちゃんは真犯人の捜索を開始する━━━━。

 どや、結構面白そうやろ。

 ところがどっこい、ユーマはまだまだ探偵としては半人前。何の手助けもなく、密室殺人事件なんて解けるわけがない。というか、私が困る。私は謎解きが苦手だ。下手したらユーマくんより勘が悪い。「じゃあなんでこのゲームの体験に来たんだよ」とかそういうコト言うな。

 だ、誰か! 誰か助けてくれ──ッ!!

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 颯爽登場! ハララ=ナイトメア!!

 ……というわけで、1章では超探偵のひとり「ハララ=ナイトメア」がユーマくんとプレイヤーを手助けしてくれます。たぶん、その章ごとに強力な力を持った超探偵が助けてくれるというフォーマットです。

 そして、ここでひとつみなさんに聞いてみたい。この「ハララ=ナイトメア」……男に見える? 女に見える? ちなみにCVは石川由依。出た! 石川由依!! 最近よく石川由依の声を聞いている気がする。

 正解は……「わからない」んですよね。ゲーム中では男なのか、女なのか明かされません。いや、もしかしたらこの先の章で明かされるのかもしれません。すごいキャラですよね。上記の画像だけではわからないかもしれませんが、ハララはユーマくんより結構身長高めです。すごいキャラですよね。もう超性癖事件簿レインコードって感じですかね。すごいキャラですよね。

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これくらいの身長差です。すごいキャラですよね。
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 そしてハララと共に過去に「クギ男」が犯行を犯した現場を調査することに。ここでついに登場するのが「探偵特殊能力」! その名の通り、それぞれの超探偵が持っている特殊能力! ハララの探偵特殊能力は「過去視」なので、過去に遡って「第一発見者が見た時の殺人現場の状況」を見ることができるのです!

 もうハララだけでいいんじゃないかな。しかしこの事件を請け負ったのはユーマくんなので、ユーマくんが解決するしかない。ですが、もちろんユーマくんにも特殊能力が用意されていますよ? 「ハララが見た過去の状況を又聞きする」なんてゲームとしてかったるいですから。

 ユーマくんの探偵特殊能力(?)は「他人の探偵特殊能力を共有することができる」というもの。うわ、コピー系能力者だ……。そしてハララさんと過去視を共有するための発動条件は「手を繋ぐ」コト! ちょ、ちょっと! ユーマくんってばえっちィーッ!! 私というものがありながら、このガキは……!

 事件の解決のためとはいえ、性別不詳でCV石川由依で美人のハララ=ナイトメアと手を繋いだユーマくんは年相応にドキドキしてしまう。おい、犯行現場やぞ。犯行現場で年相応にドキドキするな。殺人現場で青春するな。ここはラブコメ空間じゃない、殺人空間なんだ!

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やたらとキャラの濃い人たちへの聞き込み。このシスター、かわいいっすよね。
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事件の捜査の中で手に入る「解鍵」という事件の解決につながりそうな情報を鍵化したアイテム(?)。これかなり重要アイテムなので覚えといてください。

ハララ=ナイトメアの備忘録

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 ハララと調査を続ける中で、事件はどんどん真相へと近付いていく。

 この「過去視」ギミック、中々に楽しい。入ってきた段階では既に整理されていた事件現場が、一旦過去に戻って俯瞰することで、「何があったのか」がより直感的にわかりやすくなります。私のような勘の悪い人間でも、なんとなく「あ、犯人はこうやって密室から抜け出したのかな?」とわかるくらいには、視覚的に楽しいギミックだったりする。

 どこかいつかの偉い人が、コラムだかポエムだかに「ミステリー小説を読むときは、自分自身が状況や証拠を推理しながら“犯人当て”をするかのように読むと楽しい」と書いていたような気がする。なるほど、アレはこういうコトだったのか。

 私は頭が悪いからミステリー小説を読んでも頭が痛くなるだけだったけど、このくらいしっかり導線を引いてくれると、その「自分自身が探偵として参加する“犯人当て”」の楽しさの一端に触れられる気がします。

 ちなみに今の内容は「吉田の日々赤裸々。」ってコラムに載ってるらしいです。
 あ、『FF16』と繋がったね!?

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 そして証拠は出揃った! 出揃った!!

 出揃ったはいいけど……ここからどうすんの!?
 なんだ!? 逆転探偵か!? 学級裁判か!?

 ユーマくんではどうしようもない! 私もどうしようもない!

 いや違う! アレは━━━

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 死に神ちゃんだ!

 でっか………………。いや、身長がね。

 薄々お察しの通り、死に神ちゃんは女の子だった。しかも大きい。身長がね。しかも豊かだ。身長がね。しかも健康的。身長がね。そして、ここからは人間体になった死に神ちゃんと共に事件を解決する「謎迷宮」パートへ突入!

謎解きはダンジョンのあとで

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 とはいえ、「“謎迷宮”ってなんだよ」と思う人が大半でしょう。すごく端的に言えば、「ダンジョン内で犯人に真相を突き付けることで事件が(だいたい)解決する」というダンジョンです。

 謎迷宮内のユーマくんは、「解刀(かいとう)」という解答を突きつけるためのダブルミーニングブレード片手に、勇者の如く事件の真相<ラスボス>へと立ち向かう! まさに「ダンガン」に対するソード!!

 ちなみにこの「解刀」は死に神ちゃんの口の中から出てきます。そこからさらに「解鍵」を口から取り出します。大体口から出てきます。この鍵を口から取り出した後、死に神ちゃんはひと通り嘔吐します。「口から物を取り出す」ってやっぱ大変なんでしょうね。ウテナで胸から剣出してたのはそういう意味で合理的だったのかもしれない。高田馬場の駅前とかでよく見る光景です。

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 もちろんハララも謎迷宮に付いてきてくれます。しかしこの「ユーマくんが死に神ちゃんとハララに挟まれている」絵……すごくないか? やっぱり超性癖事件簿なんじゃないか? ユーマくん、キミが年相応にドキドキすることは……許す! ユーマ、存分にドキドキするといい!! フハハハハ!!!

 で、この謎迷宮内で具体的に何をするのかというと……情感たっぷりでロマンチックに言うなら「謎怪人とRPGのごとく戦いながら、快刀乱麻に事件を解決する」という感じで、ドライでシステマチックに言うなら「いろいろなミニゲームを回りながら、事件の始まりから終わりまでを改めて整理する」という感じです。

 ……うん、これ言っても伝わらねえわ!

 頑張って紹介するので、いい感じに想像力を働かせてください。
 よろしくお願いします。

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 そもそも今回の事件は「密室の殺人事件」。そこで事件を整理するべく、謎迷宮では「実際に密室の現場を用意し、一から順を追って“完成した密室を再現する”」という、改めてプレイヤー側が犯人の動きを再現するパートが用意されています。

 ここで一旦プレイヤーの脳内でも「この密室でのトリックはどう成立したのか」がよくわかるようになっています。『レインコード』のすごい点として真っ先に挙げられるのは、やはり「しっかり3Dのゲームとして絵が作られている」ところ。つまり、先ほども触れた「視覚的にミステリーをわかりやすく楽しめる」ということに繋がってきます。

 改めて密室を3Dでしっかり解き明かすことで、どんなに適当に遊んでいても「事件を理解している感じ」を味わえるのが楽しい。ただまぁ……密室殺人なのでノーヒントでは犯人の手口すら掴めない!

 そこで登場、「死に神ちゃん危機一髪」

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 タルに入った死に神ちゃんに危機一髪的な感じで剣を投げることで、解答を導き出すミニゲーム! これをクリアすると、水着姿の死に神ちゃんが飛び出してきてくれますよ! 嬉しいですね! えっ、「クリア後の水着の画像はないのか」……? 見たけりゃ製品版買え♥

 こんな感じで、「推理」と「アトラクション(ミニゲーム)」の2軸で進行する楽しいダンジョンが謎迷宮の実体ってワケです。この謎迷宮、とにかく演出モリモリ密度濃いめなので、想像以上に楽しいです。私が記事の最初に触れた「想像以上に面白かった」はこの謎迷宮のことを指しています。

 なんていうんでしょうね、こういう謎解きアドベンチャーにどうしても付きまとう「敷居の高さ」「抗いようのないかったるさ」みたいなものを派手な演出でぶっ飛ばしてるのが『レインコード』って言ったらいいんですかね。

 あぁそうか、ここがある意味『ダンガンロンパ』に近い精神なのかもしれないですね。視覚的に、直感的に、快感的に楽しい謎解きアドベンチャー。これって冷静に考えたらすごい。

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こんな感じの推理の演出がいっぱいあったりします。
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 そして目玉は謎怪人と戦う「推理デスマッチ」

 すまん、これだけはなんて説明したらいいのかわからん。
 しかし完全に説明を放棄するワケにもいかん!

 とりあえず、順を追って説明しましょう。推理デスマッチではついに「解刀」と、現実の事件捜査で集めた「解鍵」がその真価を発揮します。まず最初に、事件の証拠となる「解鍵」を刀にセット。

 ゲームが始まると、謎怪人はユーマに向かって「言葉」を飛ばしてきます。たとえば、「時計屋は犯行現場に行っていたのでしょう?」と重箱の隅をつつくような敵の言葉が飛んできます。この「相手の言葉」に対する「反論」として、証拠になる「解鍵」を突きつけるのです!

 思いっきり他所のゲームを引き合いに出してしまい申し訳ないのですが、要は『逆転裁判』における「相手の言葉に対する“待った!”」を、アクション風に刀で一刀両断にするのがこの「推理デスマッチ」ってワケです! そして上手く反論スラッシュが決まると……

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 その言葉を斬るッ!!

 ……が、成立します。アタシ、この演出知ってる。いや、無理に逆裁でたとえる必要なかったですね。大体ノンストップ議論って感じですね。

 要は、この手の謎解きアドベンチャーやミステリーで一番気持ちのいい「証拠を突き付けるその瞬間」を剣でぶった切るアクションにしちゃったのが「推理デスマッチ」なのです。

 ちなみに、この推理デスマッチは何度か失敗しても大丈夫です。

 ゲーム内容自体が「相手のひとつのワードに対し、ピッタリ合う解鍵で反論する」というちょっとシビアな感じなので、失敗しても死に神ちゃんがヒントを教えてくれますよ。ゲームがエキセントリックなだけに、各種サポートは相当しっかりしています。ご安心ください、この手の推理が死ぬほど苦手なヘドロ色の脳の私が無事にクリアできたんですから。

 そんなこんなで真犯人を追い詰めると……クライマックスのミニゲームとして「大進撃 死に神ちゃん」がスタート!

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 巨大化した死に神ちゃんの王冠に乗り込み、砦で待ち構える真犯人に向かって進撃開始!

 でっか……………………。いや、身長がね。

 悪あがきを繰り返す真犯人にキック! タックル! ジャンプ!!

 もはや謎解きもクソもない! 最後はやっぱり暴力だ!
 砦を壊せ! 進め! 死に神ちゃん!!

 いや、なにこのゲーム。

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 そして最後は事件の始まりから終わりまでを、一冊の本にして整理する「超推理フィナーレ」を行い、事件は終幕へと向かいます。この「超推理フィナーレ」にもすごい演出があったりするんですが……まぁ、そこは内緒って感じッスかね。

 こんな風に「現実での調査で証拠(解鍵)集め→集めた証拠を手に、謎迷宮で真犯人に解刀を突きつける」という流れで進行するのが、『超探偵事件簿 レインコード』というゲームです! いかがでしたか?

 個人的には、やっぱり謎迷宮の「アトラクション形式で事件をわかりやすく整理する」楽しさが一番良かったです。「事件を整理する」というロジック的な快感と、「とにかく演出が派手」というプリミティブな快感を、違和感なくマッチさせたあの独特な“濃さ”はぜひみなさんにも早く体験いただきたいです。

 そしてここでダラダラ感想を書いているとみんな記事が終わったと思い込んで帰ってしまいそうなので、素早くインタビューに移行します! 次、インタビュー始まります!

6年の開発を経て完成した『レインコード』。小高氏とプロデューサーが語る舞台裏

 ここからは体験会当日に行われた『レインコード』のシナリオを務めた小高和剛氏と、プロデューサーを務めた榊原氏へのインタビューをお届けします。最終的な開発期間が約6年に及んだ『レインコード』ですが、その6年に渡る開発期間の舞台裏を語っていただいています。

 実際のところ、開発の視点から見た『ダンガンロンパ』と『レインコード』の違いとは? 6年の開発期間の中で「3年」を費やした箇所はどこなのか? かなり密度の高いアドベンチャーとして完成した今作は、なぜこれほどの完成度を実現できたのか?

 約30分ほどのインタビューですが、みなさんの予想よりもかなり“濃い”開発の舞台裏が語られています。たぶん、見終わった時アナタは「えっ、レインコードの開発ってこんなことになってたの……」と思うはず。なぜなら、私自身が当日そう思っていたから。ぜひ、お楽しみください。


小高氏:
 本日はプレイしていただきありがとうございます。
 みなさん本当はゼルダ【※1】をやりたい中、よく集まっていただいて……(笑)。

※1「ゼルダの発売後だった体験会」
今回の『レインコード』の体験会はちょうど『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』の発売後だった。

一同:
 (笑)。

小高氏:
 ちゃんと『レインコード』の内容は頭に入ってきましたか?(笑)

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──まず最初にお聞きしたいのが、『レインコード』の世界観についてです。そもそもゲーム内の世界はずっと雨が降っていて、キャラクターたちの服装には雨をしのぐための「レインコート」の衣装が取り入れられていますよね。この「ずっと雨が降っていて、みんなレインコートを着てる」というビジュアルは奇抜な印象を受けるのですが、こういったコンセプトは具体的にどこから思いついたのでしょう?

小高氏:
 まず、今作は「探偵たちをメインにしたお話を作りたい」と考えたところからスタートしています。そこから「どういう街並みであれば“探偵らしさ”が出るだろうか」と考えた際、やはり真っ先に浮かんだのは「ロンドン」でした。曇天だったり、霧がかかっていたり……最初はそういうイメージでした。

 ただ、そのままロンドンにしてもやっぱりゲームのビジュアルとしては面白くないんですよね。なので、そこに「サイバーパンク」的な要素を取り入れました。「サイバーパンク的なネオンが、雨で滲んだりしたらカッコいいなぁ……」と考えていました(笑)。

 それに加え、ティム・バートン的なダークファンタジーも目指していたので、「カラッと明るい街」というよりかは「陰鬱とした、寂しげな街」を意識して今作のビジュアルを作り上げていきました。

──街のビジュアルがすごく良いですよね!
 実際プレイしながら「うわぁ、良い街や……」と感じていました。

小高氏:
 あぁ、ありがとうございます(笑)。

 「風景やビジュアルにどこまでリソースを投入するか」は探り探りで作り上げていった部分ではあるんですが、やはり開発的に力を入れたのは「街の風景」だと思います。

 もちろん謎迷宮のビジュアルも作り込んでいますし、そういった風景やビジュアルなどは妥協なく作り込んだ部分です。

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──今作の1章をプレイさせていただいた率直な感想として、「すごくボリュームがある」と感じました。1章以降も、あれくらいのボリュームが待っているのでしょうか?

小高氏:
 そうなんです!

 1つのシナリオや事件におけるボリュームは、すごいことになっています。今回はゲームシステムを中心に体験していただきましたが、全体の事件の流れやキャラクターの会話を総合すると、かなりのボリュームになっていますね。

 そこのボリューム感は『ダンガンロンパ』に近いです。全部通しで遊ぶと、50時間くらいのプレイ時間になるのではないでしょうか。

 今回体験いただいた範囲内では特定のステージしか解禁されていませんでしたが、シナリオを進めていくと事件ごとに新たな街やステージが解禁されるので、最終的にはいろいろな場所を行ったり来たりしながら事件を解決するような流れになります。

 そして1章は「サイコホラーな連続密室殺人事件」をテーマにしていましたが、別の章ではもう少し科学的な要素が入った事件が登場したり、学園ものっぽい雰囲気の事件が起きたりします。

 事件が起こる場所も現場も、その章によって全く違うテイストのものに仕上がっています。とにかく、リソースやボリュームはかなり盛りだくさんですね。

榊原氏:
 そこまで大幅にボリュームが変わるわけではないんですが、もしかしたら1章が一番短いくらいじゃないですかね?

小高氏:
 1章は事件の解決がメイン要素となっているので、ストーリー的には一番短いですね。ユーマが最初に解決する事件なので、どちらかというとシナリオよりかは「事件の解決」に重きを置いています。

 ただ、1章には「密室殺人事件」が大量に出てくるので、事件の内容を一緒に考えていた北山猛邦さん【※2】とは「いや、これ1章だけで普通に単行本1冊書けちゃうよね……もったいないよね……」といったことは話していました(笑)。

※2「北山猛邦」
小説家・推理作家の北山猛邦氏。代表作として「『クロック城』殺人事件」などが挙げられる。『ダンガンロンパ』1作目の前日譚である『ダンガンロンパ霧切』の執筆も担当。

──やはり1章の見どころは「密室のトリック」ということでしょうか?

小高氏:
 「ここが見どころ」と断言するのは少し難しいというか……やはり開発者としては、全部が見どころのつもりで作っています。密室のトリック、アトラクション的な謎迷宮、実際の謎解きの部分……今作はそれぞれの要素をかなり欲張った上で作っていますし、「全部の要素を見どころにしたい」という思いで作り上げました。

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──1章では事件の舞台として4つの密室が登場しましたが、特に作り上げるのが難しかったトリックなどはありますでしょうか?

小高氏:
 2番目の密室として登場した「鍵が死体の下にある」という密室は、それぞれの位置関係が重要なだけに、「画面を3Dで描写した際にどう見えてしまうのだろうか」ということが結構不安でした。

 『ダンガンロンパ』や小説などではある程度ごまかしが効いていましたが、『レインコード』は完全に3Dのグラフィックで密室をガッツリと見せた上で、プレイヤー自身に事件を調査してもらいます。

 実際のディティールや距離感などもハッキリと見えてしまうので、その「3Dで表現した時にトリックとして本当に成立するのか」はかなり不安要素のひとつでしたね。

 特に密室事件の多い1章は、全体的にそこがネックになっていました。結果的になんとか違和感のない仕上がりになりましたが、やはりプレイヤーに「このトリックは成立しないだろ」と思わせないような絵作りは難しかったです。

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──1章で特に印象的だったのが、ユーマの助手として手助けしてくれた「ハララ=・ナイトメア」です。他にも超探偵は何人かいるようですが、それぞれの章につき、ひとりずつ超探偵が一緒に行動してくれるような形なのでしょうか?

小高氏:
 そうですね。ユーマと共に行動する探偵は、その章によって変わります。とはいえ、その章を担当している超探偵以外とも会話をすることはできます。

 ちょっとメタ的な発言になってしまうのですが……1章の密室殺人事件はハララの「過去視」が使えることを前提にトリックを考えています。1章のトリックは変装能力などで解くことはできないですし、探偵特殊能力あってこそのトリックを作っています。なので、毎回違う探偵特殊能力を持った超探偵と組むことになります。

 もちろん、そのシナリオ内でのユーマや死に神ちゃんとのやり取りは超探偵によって千差万別です。ハララは死に神ちゃんをあまり相手にしていませんでしたが、探偵によっては死に神ちゃんを敵視していたり、死に神ちゃんにゾッコンになってしまう探偵もいたりします。謎迷宮やそれぞれの章のキャラ同士のワチャワチャしたやり取りは、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

──死に神ちゃんはなんというか……いろいろな意味で大きくて良かったです。小高さんと榊原さんから「死に神ちゃんのここがかわいい」という推しポイントなどがあれば、ぜひ教えていただきたいです。

榊原氏:
 僕はオープニングムービーに出てくる死に神ちゃんが好きですね。OPムービー内には「死に神ちゃんから人魂から人型に変わるシーン」があるのですが、そこの死に神ちゃんがものすごく可愛いので、ぜひ見てもらいたいです。かなり愛嬌があります。

 死に神ちゃんは特に「表情」にこだわって作り上げたキャラなので、その表情の違いなどはぜひ楽しんでいただきたいですね。

小高氏:
 死に神ちゃんに関するそれぞれの演出にはすごく力を入れていますね。謎迷宮に入って人型になる変身シーンや、口から「解刀」を取り出すシーンなど、とにかく気合が入っています。

 あとはあの……謎迷宮の最後に撃つあの……

──あの長めのビームですね。

小高氏:
 そう、長めのビーム(笑)。
 あれは個人的にもすごく気に入っています。

 ただ、死に神ちゃんは「わかりやすく可愛いキャラ」ではないんです。制作側も一通りプレイしたあとに、みんなで感想を話し合ったりするのですが、その時にも「死に神ちゃんが好きかどうか」はかなり意見が割れました。

 ちょっと遊んでもらえばわかると思うんですが、死に神ちゃんはかわいいばかりではありません。ユーマ目線で見ると、「なんなんだお前は!」と思ったりするはずです。やはりシナリオを書いている時にも、開発チームの間では「ユーマのこといじめすぎじゃない?」といった意見が上がったりしていました。

 一方、ビジュアルのかわいらしさや「人魂のマスコットであると同時に、人型の女性でもある」ところが好きな人もいました。物語全体を通して、死に神ちゃんは「ヒロインなのか、ヒロインじゃないのか」「ユーマを助けているのか、困らせているのか」がハッキリとは掴めないようなキャラクターになっています。

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小高氏:
 自分がこれまで書いてきたキャラクターは、どちらかというと「記号っぽい、わかりやすいキャラクター」が多かったんですが、死に神ちゃんはあまりそうではないかもしれません。今作をクリアしたユーザーさんの間では、「死に神ちゃんをどう思うか」が結構割れるんじゃないかと思います。

 その「意見が割れそう」なところが、これまで自分が作ってきたキャラクターにはない魅力だと考えています。「死に神ちゃん最高!」と思う人もいれば、「ちょっとムカつく」と思う人もいるかもしれません。死に神ちゃんは「このゲームをクリアした後に、みんなどう思ったか」を聞いてみたいキャラクターですね。

──なるほど……。死に神ちゃんは顔の表情パターンもすごくたくさん用意されていると感じたのですが、あの数々の表情差分は最初からたくさん用意する想定だったのでしょうか?

小高氏:
 今回はキャラクターの3Dモデルが用意されていることもあり、『ダンガンロンパ』の時に比べると、多少は1枚のイラストにかかるコストが低くなっています。最初にキャラの立ち絵を作る際も、まず3Dモデルで大まかな構図を作り、そのモデルを小松崎【※3】がどんどんレタッチしていくような流れで作り上げていきました。

 そのコストが低くなった分、表情差分などはたくさん書けるようになりました。もちろんスパチュン側から追加の要望があることもあれば、小松崎の方で勝手に差分を追加するパターンもありました。

 そして、おそらく死に神ちゃんの表情差分に関しては、小松崎の「これを入れたい」が割合として結構デカいんじゃないかと思います(笑)。

※3「小松崎類」
Tookyo Games所属のイラストレーター。『ダンガンロンパ』のキャラクターデザインに加え、今回の『レインコード』でもキャラクターデザインを務める。『Fate/Grand Order』などのタイトルでもキャラデザインを担当している。

──具体的にはどれくらいの表情パターンが用意されているのでしょう?

小高氏:
 死に神ちゃんは人魂だけでも80くらいで、人型も入れると100パターンを超えるくらいはあると思います。ユーマも同じぐらいの数になります。

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──続いては「謎迷宮」についてお聞かせください。迷宮内のギミックや謎解きのシチュエーションもどんどん変わるのがすごく面白かったのですが、実際「謎迷宮」はどのような流れで作り上げられていったのでしょう?

小高氏:
 謎迷宮の開発はすごく苦労しまして……6年の開発期間の中で、3年くらいは謎迷宮に費やした気がします。

──3年ですか!?

小高氏:
 多分みなさんも同じ状況であれば同じことを思うかもしれないんですが、一言「謎迷宮」とだけ言われても、その実態をイメージできないんですよね。

 それはスパチュンのスタッフも全く同じで、こちらが「謎迷宮では歩きながら推理をする。そして謎が具現化するんだ」と説明したところで、まず「謎が具現化ってなんだよ」という問題にぶち当たりました……(苦笑)。

一同:
 (笑)。

小高氏:
 自分の脳内では『ダンガンロンパ』の「学級裁判」にやっていることが近かったので、ある程度イメージはできていたんですが……やはり周囲のスタッフには「謎迷宮」の具体的なイメージが伝わりませんでした。

 そして、リアルタイムデモで挟みたい演出に対してどうしてもロードが必要になってしまったり、そもそもリアルタイムデモで見せられるような演出ができなかったり……。そういった「実際にゲームとしてどこまで演出できるのか」が苦労した部分です。

 そんな模索の中で、やはり最終的には「シナリオ側の要望をできるだけ再現しよう」という形にまとまりました。そこからは「ここで穴に落ちる」「ここで船に乗る」といった細かい演出をシナリオに書いていき、その演出の中で難しい箇所を開発と相談するような形で進めていきました。

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小高氏:
 ただ、普通のゲーム開発は事前に絶対的なリソースを割り出してから、開発スケジュールを決めていくんです。たとえば、「これだけの謎迷宮が出てきて、これだけのリソースが必要です。そしてこれだけのスケジュールが必要です」ということをあらかじめ決めます。

 しかし、『レインコード』の場合、謎迷宮の仕様やギミックがその章によってかなり変わっているため、ひとつの謎迷宮に必要なリソースも全く違ってきます。つまり、1章が完成した時点では、「じゃあ後の開発はこのくらいのリソースだね」という計画を割り出せませんでした。もう謎迷宮は本当にひとつずつ作り上げていくしかなかったので、最終的にこれだけ開発期間が延びちゃいましたね。

榊原氏:
 いやぁ、たいへんでした……(苦笑)。

一同:
 (笑)。

小高氏:
 最初から実現不可能であれば、もう少し謎迷宮を簡略化する案もあったのですが……実際作れないわけではなかったんですよね。その辺の塩梅が難しいところでした。

──ある程度形になった謎迷宮を見た時、やはり喜びもひとしおだったのではないでしょうか。

小高氏:
 いや……初めて謎迷宮で最初から最後まで歩けるようになってからも苦労は続きました(笑)。

 とはいえ、そこからテンポ感をブラッシュアップしていくことで、現在の謎迷宮の完成度を実現することができました。何かしらの下地があった上で続編を作るのであれば、ある程度の要領やコツなどは掴めるのですが、新しい試みの多い「1作目」はどうしても手探りになってしまいます。そんな状況だったにも関わらず、謎迷宮はかなり完成度の高いアトラクションとして作り上げることができました。

 開発中はかなり苦労した謎迷宮ですが、今はかなり満足していますね。

“超探偵級”なヤツらと事件に挑む『超探偵事件簿 レインコード』が想像以上にすごかった_035

──謎迷宮で行われる「死に神ちゃん危機一髪」もかなりインパクトが大きかったのですが、あのギミックはどんな流れで作られていったのでしょう? やはりああいったギミックも苦労したのでしょうか。

小高氏:
 それもシナリオ上に「大まかなゲーム内容」が書かれていたところから作り上げていったものですね。謎迷宮の最後に行われる「大進撃 死に神ちゃん」も、大体同じ流れで作り上げられています。

 こちらから「ダンガンロンパで言うところのマシンガントークバトル」「ダンガンロンパで言うところの閃きアナグラム」といった大まかなイメージを提案しつつ、具体的なゲーム内容はスパチュン側で作り上げていきました。

 要は、「死に神ちゃん危機一髪」では閃きアナグラムの「1文字ずつ言葉を繋げていくことでヒントになる」というゲームを、死に神ちゃんとユーマが協力する形でやろうと考えていました。

 その上、実は企画書の段階で「謎を解くと、死に神ちゃんが脱衣する」といったアイデアを書いていたんです。その企画段階でやりかったことも、この「死に神ちゃん危機一髪」では満たせると考えました。

 ですが、死に神ちゃんは元の衣装の時点で露出が結構あるので、水着になると元より布面積が大きくなってるんですよね。水着になった方が、逆にガードが固かったんです(笑)。

 そして「大進撃 死に神ちゃん」もこちらとスパチュンで協力した上で作ることができましたね。シナリオ上では「敵が悪あがきしてくるところを、マシンガントークバトルっぽく打破する」という骨組みだけ書かれていたところに、スパチュンと協力しながら「死に神ちゃんが巨大化して砦を破壊するゲームにしよう」と肉付けしていったような流れです。

“超探偵級”なヤツらと事件に挑む『超探偵事件簿 レインコード』が想像以上にすごかった_036

銃のダンガンロンパに対する、剣のレインコード。今作のコンセプトと開発形態に迫る

──『ダンガンロンパ』に「弾丸のように言葉をぶつけて論破する」という言葉遊びがあったように、今作にも「解答」をぶつけるための「解刀(かいとう)」という剣が登場していました。こういった言葉遊びの部分は、どのような流れで作られていったのでしょうか?

小高氏:
 まず、「『ダンガンロンパ』が銃だったので、『レインコード』は剣で戦う」というイメージだけは最初に決まっていました。その時点で「解刀」という剣の名前も決まりました。

 そして、主に「解刀」を使う「推理デスマッチ」のパートも、開発初期の段階で「剣で戦うRPGっぽさ」というイメージだけは決まっていました。

──ちょうど今お話に出た「推理デスマッチ」も、かなり印象的でした。推理デスマッチの難易度などは、先の章に進むにつれて上がっていくものなのでしょうか?

小高氏:
 多少は上がります。ですが、「推理デスマッチ」はあまり難易度の上げようがないシステムなんですよね。

 その代わりと言ってはなんですが、デスマッチ中の演出は徐々に派手になっていきます。相手が出してくる言葉の演出が派手になったり、「解鍵」を使った推理の難易度が上がったりもします。加えて、推理デスマッチで使用できる「スキル」をサブクエストなどで習得することもできます。

 そして、実際に触っていただいて気付いたかもしれないんですが……今作は『ダンガンロンパ』に比べるとかなりゲームオーバーになりづらくなっています。確かに推理デスマッチは慣れるまでが難しいかもしれないんですが、総合的には『ダンガンロンパ』と比べるとかなり難易度が低いとは思います。

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──少し話が逸れてしまうのですが、サブクエストで街の人と交流ができるのは結構新鮮だと感じました。ああいったサブシナリオやちょっとした会話劇なども、小高さんが書かれているのでしょうか? それとも監修などの形で制作されたのでしょうか。

小高氏:
 まず、「探偵たちの語らい」という夜行探偵事務所のメンバーの人たちと会話できるモードは、こちら側で書かせていただきました。一方、サブクエストはまず最初にスパチュン側にシナリオを書いてもらい、そこから僕が手直しをするような流れで作り上げていきました。

 チュートリアルだろうと、サブクエストだろうと、基本的には、全てのテキストに目を通させていただいています。

──榊原さんは、実際にプロデューサーとして小高さんとやり取りしてみていかがだったでしょうか?

榊原氏:
 やはり開発チームにもこれまで『ダンガンロンパ』シリーズに携わってきたスタッフが多いので、この「絶対神としての“小高神”」がいるような開発形態には慣れていて……(笑)。

一同:
 (笑)。

小高氏:
 まぁ、そこはみんな怯えているというか……(笑)。

榊原氏:
 スタッフ全体で「小高さんの意図を汲み取った上で作る」という気持ちはしっかり共有されていたと思います。そこのコミュニケーションはかなりよく回っていた印象があります。

小高氏:
 そうですね。そこは「良い意味で遠慮しない現場」を作れたと思います。

“超探偵級”なヤツらと事件に挑む『超探偵事件簿 レインコード』が想像以上にすごかった_039

小高氏:
 逆にお聞きしてみたいんですが、実際に『レインコード』を遊んでみてどうでしたか?
 特に「謎迷宮」の感想をお聞きしたいです。 

──いや、すごく楽しかったです。とにかく密度が濃かったですね。

小高氏:
 あぁ、良かったです。
 ちゃんと1章以降も、しっかり内容を変えつつあのくらいの密度でお送りしています。

 今回は想像以上にリアルタイムで会話するシーンを作ることができました。そのリアルタイムの会話シーンがすごい数になっているので、開発にもこれくらいの時間がかかり、マスターアップの直前までブラッシュアップをしました。

 これほどリアルタイムの表現にこだわった『レインコード』はどちらかというと、アニメ的な感覚で楽しめるゲームに仕上がっていると思います。

──確かに、あの演出モリモリな感じはアニメの感覚に近いかもしれないですね。

小高氏:
 もちろん「自分のペースで小説のように読み進めていく」というゲームならではの良さもしっかりあるとは思いますが……もしかしたら『レインコード』はこれまでにはあまりなかったジャンルの謎解きゲームかもしれません。

 個人的に、僕はいつか『デトロイト ビカム ヒューマン』『ライフ イズ ストレンジ』のようなアドベンチャーゲームを作りたいと考えていました。そして『レインコード』の完成間近のほぼマスター版をプレイしている最中に、「あ、これが僕のやりたかったことかもしれない」と気がつきました。

──言われてみれば、ああいった形式のアドベンチャーに近い密度と完成度の高さを『レインコード』からも感じました。発売が楽しみです!(了)

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 さて、いかがだったでしょうか。この記事で少しでも『超探偵事件簿 レインコード』が楽しみになっていればこれ以上の喜びは……というテンプレを書きたいところですが、おそらくみなさんの脳内は大体「レインコードの開発ってそんなことになってたの……!?」の驚きで埋め尽くされているかもしれません。

 体験会当日はゲームプレイからインタビュー……という流れだったのですが、あの「えっ、想像以上に完成度が高い!」という驚きが、そのままインタビューで「(それくらい作ってたらそうなるわ……!)」と理由が判明していくあの感覚が中々忘れられません。これだけ演出モリモリにしてたら6年かかるって! なんかもうリアル謎解きみたいになってませんか?

 もう今回の体験会で感じた『レインコード』の面白さは書き切ったつもりなので、最後に言うことがあるとすれば……「死に神ちゃん、デカいぜ!」ってコトっすかね! デカいぜ!!

 そんな『超探偵事件簿 レインコード』は6月30日にNintendo Switchで発売! 大っぴらに「FF16の一週間後」って言っていいのかわからないけど、実際覚えやすいんだから仕方ない! 間違いなく『ダンガンロンパ』を上回る気合と覚悟で作り出された今作、ぜひご予約を!

 超探偵たちと、その謎を叩き斬れ!!

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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