センス輝くキャラクターデザイン
さて、ここまでゲームシステムの話が続いていましたので、続いては休憩がてら、本作のキャラクターデザインの素晴らしさについて書いていきたいと思います。
主人公の死神が非常にかわいいことは、最初の方でやや暴走気味にお伝えしましたが、彼以外の職場の仲間たちのかわいさもかなりのもの。
そのことが分かりやすいのが、こちらのパンプ・クインです。
死神に憧れてDeath.Incへの入社を目指し、Death.Incのインターン生となったパンプ・クインは、見ての通りカボチャをモチーフとしたキャラクター。ジャック・オ・ランタンにも似たその顔は、非常にシンプルな見た目ながらも確かな可愛らしさを内包しており、見る者の心を癒してくれる存在です。
まぁ、パンプ・クインが死神のために特に何かをしてくれるというわけではないのですが、かわいいは正義。パンプ・クインが書類を握りしめている様を見ているだけで、私は幸せです。本当にありがとう。
あとは、『ドラゴンクエスト』のシャドー系統のモンスターを想起させるデザインのジョゼリンや、
死神に呪いを授けてくれるMR.オーシャなんかも、かわいいデザインで好きですね。
……お前のかわいいの感覚バグってんのかよと思われる方もいらっしゃるかもしれません。すみません、この後もうちょっとだけ、かわいいの奥地へ足を踏み入れていきます。
ということで、デザインセンスがその輝きを放ちまくっている、かわいいの極北にいるキャラクターを2人紹介していきたいと思います。
まず最初はオーヴィル。彼は釜のキャラクターで、釜に無造作に貼られているように見える紙が、彼の感情を表しています。
正直最初は紙が表情を表しているという設定がよく分かっておらず、彼がどういったキャラなのか掴みかねていたのですが、その設定に気がついた瞬間、「これはマジでかわいい」という気持ちと共に、ある種の感動が私の身を包みこみました。
伝わるかどうかは完全に度外視で、あえて言わせて頂きますと、『ポピーザぱフォーマー』のケダモノと似たようなコンセプトを持つキャラクターですね。素晴らしいとしか言い様がありません。
2人目は、会計アシスタントのクロード。
落下してきたミラーボールに頭蓋骨を押しつぶされるという壮絶すぎる死に方をした彼は、死後もそのまま頭がミラーボールになっているんですが……素晴らしい。彼については、見た瞬間に第一印象で「めっちゃかわいい!」と思いました。そのバックストーリーこそ真っ黒に塗りつぶされたユーモアに溢れていますが、これもまたキャラクターに深みを与える味というものです。
それにしても、オーヴィルとクロードのような、ほぼ無機物がモチーフとなっているキャラクターがかわいく見えるというのは、シンプルに凄いセンスだなと思います。
ちなみにですが、本作に登場する各キャラクターの詳細な設定については、ポーズ画面でを開くことで、いつでも確認することができます。
……ただ、文章が直訳気味で、内容が少し分かりにくくなりがちなのが玉にキズ。本作の翻訳文の分かりにくさは、ゲームのそこかしこで顔を覗かせるのですが、この点が結構ノイズになるという方もいらっしゃるんじゃないかなーと思います。そう感じた場合は、なんとな~くの雰囲気で理解していくか、完全にシャットアウトしてしまうのがいいかもしれません。
……翻訳の直訳感を理由にゲームを止めてしまうのは、あまりにももったいないと感じるくらい中身が面白かったので、私はそうしました。
……さて、少々愚痴っぽくなってしまいましたが、社員たちのプロフィールを何気なく眺めていて気になったのが、こちらのバート。
彼もまた、私の琴線に触れまくるデザインセンスのキャラクターなんですが、これまで紹介してきたキャラクター達とは違い、ゲーム中のどこかで出会った記憶がありませんでした。
しかし、ゲーム中に会ったことのないキャラクターは、そもそもここに記載されないはず……。となると、消去法的に、バートとはゲームのどこかで絶対に会っているということになるのですが、いくら記憶を掘り起こそうとして見ても、邂逅のその瞬間を思い出すことができません。
首を傾げつつも死神を社内に走り回らせていると……
おわかりいただけただろうか。
彼の仕事はなんと、死神がエレベーターから下りた時に、右か左かどっちに進めばいいのか分からなくなってしまわないように、進路を指し示すこと。まさかの右手を添えるだけの簡単なお仕事。しかも、限られたフロアにしか登場しないので、完全に見落としていました。
こういった小ネタが仕込まれているのも面白いですね。
憎たらしいけど憎めない、分からせるべき部下たち
そして、今回是非とも触れておきたいのが、敵キャラクターたちのデザイン。
これが、本作で死神が分からせていくべき部下たち。彼らは死神の定めた社内規定を無視して好き勝手に業務の限りを尽くし、社内に混沌をもたらしています。従業員の笑顔の絶えない、明るい職場です。
さて、死神が監査する各部門の最後のフロアには、その部門を統括している “悲嘆のソローズ” と呼ばれる部下たちが待ち受けています。
この悲嘆のソローズこそが、Death.Incに混乱を招いた張本人たちであり、死神が分からせるべき対象。彼らとの戦いを避けることはできません。
他のゲームで言うところの、ステージボスにあたる敵ですね。
ただ、特定の部門については、複数ある中からひとつを選んで進んでいく形になるので、戦わずに済むソローズも出てきます。
それぞれの部門には、道中が難しいけどソローズは簡単、道中は簡単だけどソローズが難しいといった特色があるので、その時々のプレイヤーの気持ちに応じて選ぶことができます。このルート分岐も、ゲームプレイをし続けても飽きがこない理由の1つです。
さて、せっかくの機会ですので、悲嘆のソローズの中で、私が好きなキャラクターを2人紹介しておきたいと思います。
まずはこちらのブラッド。警備長である彼は、まともなスクリーニングもせずに魂を全て受け入れ、会社のキャパオーバーを招いた張本人であり、勤務態度が最悪なガーゴイル。
シンプルに可愛いデザインのキャラクターで、そこも好きな理由の1つなんですが、なんといっても彼は最初の部門のボスですから、対面する回数が違います。毎回ほぼ必ずと言っていいほど戦うことになりますからね。
何度分からせてもすぐにラフな格好でサボり始める彼。10000回ダメでも10001回目は何か変わるかもしれないので、死神としては分からせ続けてやらねばなりません。
こんな感じでブラッドを武力でねじ伏せていると、彼のいる部屋が、通常時とは明らかに違う、仄暗い雰囲気に包まれることがあります。
その時に死神を待ち受けるブラッドは、スーツ姿。これはブラッドのパワーアップした形態であり、全ての攻撃パターンが強化されていて、新攻撃も追加されています。あと、かわいさもパワーアップしてますね。スーツ最高。
最初のエリアボスという性質上、何度も戦うことになるキャラクターですから、攻撃パターンが上方修正されるというのも、ゲームを飽きさせない工夫のひとつと言えるでしょう。
かと言って気を抜いていると、普通にご冥職ったりもするので、油断は禁物です。何度もやっているボスほど、あれ?これどう避けるんだっけ?と一瞬なりがち。この一瞬が、命取りを生業とする死神にとっての命取りになるのです。
続いての悲嘆のソローズは、マッッックス。誤字ではありません。マッッックス。もうこの名前のセンスからして、こちらのテンションがマッッックスになってしまいますね!
あまり他では見ないようなぶっ飛んだ名前からも分かるように、彼はかなりキマりきったキャラクター。頭バグってます。
すこし画像では伝わりにくいかもしれませんが、彼の頭部から出ている黒いもやがまたカッコイイんですよね。かわいいとはちょっと話変わってきちゃってますけれども。
ただ、デザインは趣味にぶっ刺さりまくっている大好物なキャラではあるんですが、彼をボスとして考えると、ぶっ飛んだトリッキーな攻撃が多く、マッッックス面倒くせぇ!ので、個人的には戦いたくない相手。そういう意味では可能な限りお会いしたくありません。二度とそのツラ見せるな。
さて、各部門を探索していると、部門の最後のフロアに辿り着く前の段階で、キャラクターの名前が書かれたフロアに遭遇することも。これは、この先にボスキャラクターが待ち構えているという証です。
こんな感じで各部門の途中のフロアに登場する彼らは、“死部長” と呼ばれる、社内で大暴れしている部下の1人であり、他のゲームで言うところの中ボス的な立ち位置のキャラクター。
フロア選択の際に、死部長がいるフロアが出てくるかどうかは完全にランダムなので、彼らに全く出会わないということもありえます。
死部長を倒せば、体力増強や呪いの獲得による死神の強化が見込めるため、彼らの分からせにチャレンジするメリットは十分にあるのですが、戦いたくない相手や局面の場合は、別のフロアを選択して彼らをスルーすることもできます。
私のように、中ボスと見るや少し舐めてかかってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、彼らも普通に強いです。気を抜いているとご冥職ります。
君は死部長と戦ってもいいし、戦わなくてもいい。そんな感じです。ご冥職っては元も子もありませんからね。
それでは、せっかくの機会ですので、私が好きな死部長も、2人紹介しておきたいと思います。
まずはこちらのスライマ。誰も知らない僻地の地下深くに収められていた核廃棄物を入れる缶がクリーチャーになったもので、“ミュータント放射性ペットバレル” という、色々盛り込みすぎてる肩書きを持っています。
ひとつ目にすることにより、得体の知れないモンスター的なかわいらしさが限界まで引き出されていて、とてもいいですね。元々は、“5LYM4” というシリアル番号が記載された缶が、作業員が上書きしたことで “SLYMA” になったという設定も好きです。
続いてはコチラの死部長。
過酷な仕事環境の職場に、吊られた男(ハングドマン)……。
かなり衝撃的な現場ですが、彼こそが死部長のウィル・ハングです。
実はこのハング、本体は吊られた男ではなく、ロープの方。ロープにぶら下がっている吊られた男は、いわばアクセサリーのようなものなのです。
ハングと死神の会話は特にありませんし、ハングを倒した後は、吊られた男が急に立ち上がって歩きだし、ハングを引きずりながら死神の前から姿を消すため、ハングは先ほどのキャラクター図鑑を見なければ、制作陣の真意が分からないキャラクターとなっています。
彼は、本体がロープであるという設定を知る前と知った後で笑いの種類が変わってくるステキな死部長ですね。
まぁ、設定を知ってから改めて闘い直してみると、明らかにロープ主導で死神に攻撃を仕掛けているので、ロープが本体という設定を見抜けなかったのは私の目が節穴だっただけなのかもしれません。
さて、デザインの良いボス敵が多い本作ですが、同時に一筋縄では行かないボスも多く、中には「初見殺し!理不尽!バーカバーカ!」と叫びたくなってしまう攻撃を仕掛けてくる輩もいます。
それでも心は折れずにリトライしたくなるのは、キャラデザの良さも確実に理由の1つとしてあると思います。これでキャラデザが良くなかったら、敵キャラに対してただただ憎しみばかりが増していくだけなんじゃないかなと。正直、やってられないです。
まぁ、かわいい敵ばかりではなく、時にはちょっと信じられない位グロい敵が出てきたりもするんですが、これもまたご愛敬ということで。
リトライを促す成長要素
さて、本作はローグライクゲームであり、体力が0になると最初からやり直しになってしまうことは、先ほどからお話している通りです。
ざんねん!! わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!
こんなことは、Death.Incの業務中では日常茶飯事。頑張って死神を育てたとしても、後半に待ち構える悲嘆のソローズの苛烈な攻撃により、一瞬でぶっ冥職される光景は正直見飽きています。
能力増強を積んでも積んでも0に戻って最初からやり直しになる……賽の河原を彷彿とさせる仕様ですが、死にながら研鑽を積み重ねて敵を知っていくことで、少しずつ前に進んでいくというのもまた、ローグライクの醍醐味です。
ですが、長所と短所は表裏一体。裏を返せば、この賽の河原仕様こそが、ローグライクというジャンルの欠点であるとも言えます。そのため、周回を重ねることで操作キャラクターそのものも強さを増していく、成長要素のあるローグライクゲームも最近では増えてきているように感じます。
それは、この『Have a Nice Death』でも例外ではななく、本作の成長要素のひとつが、新たなマントや呪文、消費アイテムの購入。実は先ほど紹介したマントと呪文は、ゲーム開始時からその全てが使用可能というわけではありません。
一部の装備はロックされた状態で、アイテムを一括で管理している従業員のジョーに対して、金塊という本作のもう一つの通貨を支払って購入しなければ、使用することができないのです。
そして、当然それぞれのアイテムには販売価格が設定されているのですが、それぞれのアイテムに設けられた「○○を△回倒す」とか「××で敵を□体倒す」といった条件をクリアすることで、この値段に割引が適用されていきます。
見事条件を達成すれば、アイテムは95%オフか100%オフになるのですが、各条件の達成度によっても少しずつ割引が適用されていきます。例えば、条件の達成度が50%を超えたから、アイテムの販売価格は50%オフといった感じ。
もちろん、全く割引が適用されていないアイテムも買うことができるので、どのタイミングで購入に踏み切るのかは完全に任意です。条件達成まで待ってから買うもよし、強そうなものはさっさと買ってしまうもよし。やりこみの証として、95%オフになるまでは絶対に買わないという縛りを設けるなんてのもアリです。
ただ、これらのアイテムを解放したとしても、実際にゲームプレイ中に使えるのかどうかというのはまた別問題。購入したアイテムは、あくまで社内に落ちているアイテムの候補に参入してくるようになるというだけなので、分からせ道中で必ず入手できるというわけではないのです。
当然、本作がローグライクである以上、社内に落ちているアイテムはプレイするごとに変わるため、ここの装備ガチャがどうプレイに響くか、装備ガチャをどうプレイに活かしていくか。プレイヤーのアドリブの力が問われます。
さて、アイテム購入は、常に恩恵を受けられるとは限らない成長要素でしたが、続いては、必ず恩恵を受けることのできる恒久的な成長要素について見ていきましょう。
『Have a Nice Death』では、死神のご冥職直後、今回の死神の仕事っぷりが如何ほどのものであったかが、ポイントによって評価されます。この業務評価によって獲得したポイントの多さによって、もらえる金塊の数が変化するのですが、このポイントは、ゲームプレイ全体で累積されていき、一定値に達することで死神のレベルがアップ。ゲームの手助けになる新たな機能が解放されていきます。
このレベルアップで獲得できる新たな機能とは、各部門を統括する悲嘆のソローズへの直通エレベーターが開通したり、高級な回復アイテムである金色のアニマをひとつ所有した状態でゲームを開始することができるなどといったもの。
回復アイテムが最初から手元にあるというのが非常に心強いのは言わずもがな、直通で悲嘆のソローズまで行けるようになると、かなりの時間短縮になります。
ただ、死神の基礎ステータスは初期値な上、呪いも持っていない状態で挑まなければならなくなるため、かなり厳しい戦いを強いられることとなりますから、敵の攻撃パターンを掴む練習などに使うと考えた方がいいかもしれません。後半の悲嘆のソローズは一発一発が重いため、時間をかけてようやく辿り着いたのに、何もできずにあっという間にやられてしまうというのはよくある話なので、こういった地道な努力の積み重ねも大切です。
それでも、どう頑張ってもクリアできない!という方には、低難易度も用意されています。その難易度の名前が “自己満足” という、かなりプレイヤーへの煽りを込めたものになっているのが気になるところですが、紛れもなくクリアはクリアです。
……とまぁ、ここまで長々と色々な御託を並べてきましたが、結局のところ、『Have a Nice Death』はとにかく楽しいんです。言いたいのはこれだけ。
スピーディーな戦闘は疲れこそくるものの、何度やり直しても飽きることはないですし、ゲーム中の様々な要素が絡み合い、やればやるほど深みにはまります。是非本作をプレイして、良い1日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
末筆になりますが、本作をプレイされる皆様のこれからのご冥職を心よりお祈り申し上げます。
Have a Nice Death!