AI技術とロボット工学の発達により、アンドロイド産業で栄えた架空の近未来、アメリカ・デトロイトを舞台に、“心を持ったアンドロイド”を巡って物語が進むアドベンチャーゲーム『Detroit: Become Human』。
プレイヤーの些細な選択の違いによってストーリーが無数に分岐し、多くのドラマチックなエンディングが用意されていることで話題になりました。
本記事では、各分野の専門家と共にゲームをプレイし専門家独自の視点からゲームの世界を散歩する動画企画「ゲームさんぽ」の解説者である精神科医の名越康文さんが、番組司会の飯田さんと共に『Detroit: Become Human』に登場する主人公の相棒刑事・ハンクが抱える内面の葛藤を、「コナーが酒場に行ってハンクを探す場面」を通して、名越さんがカウンセリングの際に使用している手法で読み解いていく様子を紹介します。
『【頼れる男】ハンク・アンダーソン警部補と行く殺人現場/ゲームさんぽ×デトロイト#04』
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飯田:
コナーくんは、ある事件が起きたので捜査に来ています。
「アンダーソン警部補を特定する」という指令が出ていますね。
(ダイナーの客をスキャンしていくと、アンダーソン警部補を見つける)
名越:
ちょっと、もうジャンキーっぽくなってるんだ……。
飯田:
え、そうですか?
名越:
ぼく、いつも人の髪の毛を見ちゃうって言うでしょ?
髪の毛がパサパサで……シャンプーはしてるんだろうけど、ぜんぜん力がなくて脱色していて。
飯田:
白髪ですね。
名越:
しかも、上腕三頭筋が削げてるでしょう? (力こぶの)裏側。
飯田:
警部補にしては、意外と腕は細めだなって気はしますね。
コナー:
アンダーソン警部補、私はコナ―。
サイバーライフから派遣されました。
先程、署にご挨拶に伺ったのですが、近所のバーにいるはずだと言われたので。5軒程探し回りました。ハンク:
何の用だ。コナー:
あなたはある事件の担当になりました。アンドロイド絡みの殺人事件の捜査です。
名越:
この人、もともと大した経歴のある人でしょうね。
ちょっとギリシャ彫刻的ないい感じの顔つきですね。
非常に内省的な顔。
非常に内省的な人が、「ここまで自堕落になった原因はなんなのだろうか」とかって、僕の無意識は言っています。
飯田:
確かにハンクは自堕落な生活を送っています。
この後わかってくることですが、このコンビがすごく良くて“バディもの”みたいな感じになるところが人気でした。
名越:
やっぱりそうなんや! 「ハンクは人格の軸のところは信用できるな」って僕の無意識は言っています(笑)。
コナー:
所定の手続きに従い捜査補佐専門モデルの私が配属されました。ハンク:
助っ人なんか必要ないね。プラスチック野郎の助けなんてもっての他だ。
わかったら大人しくお家に帰るんだな。
名越:
本当に怒ってるようなハンクの目の表現がすごいね。恨んでる感じがしますね。
ハンクは僕の体癖診断【※】によると10種っぽく見えるんですけどね。もともと優しくて人間関係も広いタイプじゃないかな。
※体癖診断
整体指導者である野口晴哉氏が提唱した人間の感受性の癖を表す概念。
野口氏が診療のなかで、身体の重心の偏り・腰椎のゆがみと個人の生理的・心理的感受性が相互に作用していることを見出し、その傾向を12種類に分類したもの。
名越氏は自身の診療に体癖診断を取り入れている。
飯田:
10種はみんなの面倒を見てくれる人ですよね。
名越:
ただね……こんなこと言うと10種の人、ごめんなさい。
10種って仏様のような人なんだけど、ところがたまに100人に1人ぐらい本当に骨の髄まで悪いと感じてしまうような人もいます。
良いところも突き抜けてるから、悪いところも突き抜けちゃうんですかね……。
僕は10年ほど前に『グータン〜自分探しバラエティ〜』という番組で解説をしていたときは、仏様みたいな体癖が10種だとばかり思っていたんですけど、その後に何千人とカウンセリングで見てきたら、「これが10種か……」と背中がぞっとするような人もいました。
飯田:
10種に、そんな悪い人が……。
名越:
例えるなら、アリ地獄の中に引きずり込むような悪の網の目を張ってるボスが10種だったりすることが、たまにあるんです。
要するに人間関係をどんどん繋いでいくとそこには、蜘蛛の巣のようなネットワークが生まれるわけです。
その蜘蛛の巣が、良い人間関係だったら仏様みたいなものですよね。
「君の問題はあそこに行ったら解決するよ、僕の友達を紹介するよ」みたいなことですね。
ところがそれが暗黒街のものだったらどうですか?
飯田:
抜け出せないってことですね。
名越:
こいつの蜘蛛の巣は底なしや……となりますよね。
逃げよう! と思って角を曲がったら、またこいつのコピーがいた! みたいなね。
そういう10種がなかにはいる、ということを僕はその後に学びましたね。
飯田:
体癖というものを、名越さんは今も研究中なんですね。
名越:
10種の裏の顔は“ネットワーク”なんですよ。
そのネットワークがシンジケート みたいなものから、温かなものまであるんですね。
ハンクは一匹オオカミ風の10種だから、多分根っこはいいヤツだろうけど。
飯田:
でもコナーは「プラスチック野郎は帰れ」って言われてるんですけど(笑)。
名越:
今のゲームは「プラスチック野郎」って言うんやね。
『鉄腕アトム』みたいな時代は、ロボットを馬鹿にするときは「クズ鉄野郎」なんて言ったよね。
飯田:
素材が変わりましたね(笑)。
飯田:
さて、どう返そうかなっていうところですけど。
名越:
「協力を促す」「脅す」「説得する」「粘る」という選択肢ですね。
普通だったら、コナーは本当に馬鹿正直だから「協力を促す」でしょうね。
コナー:
お酒はそのくらいにして一緒に来てください。その方がお互いのためです。
(コナーが協力を促しても、ハンクは返事をしない)
飯田:
「脅す」という選択肢もありますが……。
名越:
ちょっと脅してみる(笑)?
コナー:
警部補、あなたの職務態度を上層部に報告することもできるんですよ!
飯田:
選択肢の選び方でハンクとの関係値が変わってくるんです。
名越:
ちょっと緊張があるストーリーの方を選んでしまったな(笑)。
(コナーに中指を立てるハンクに対して)
飯田・名越:
(笑)
(選択肢に「酒を取り上げる」「一杯おごる」「外で待つ」が現れる)
名越:
ここはドラマとして「一杯おごる」はどうかな?
ハンクを懐柔していく方向に行きたいなバディものだし
コナー:
すみません、同じのをもう一杯。ハンク:
科学の進歩ってやつは……ダブルで。
名越:
ロボットがこういう手練手管をするんか⁉ ってことやな。
(お酒を飲んだハンクの表情を見て)ちょっと気分良くなってるね(笑)。
本編動画では、この後主人公のアンドロイド・コナーがハンクと共に殺害現場へ向かうパートの実況プレイが続きます。
気になる方はぜひ本編動画をチェックしてみてください。
文/トロピカル田畑
▼動画はこちらから視聴できます▼
『【頼れる男】ハンク・アンダーソン警部補と行く殺人現場/ゲームさんぽ×デトロイト#04』
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