キャラクターの入手が容易になったことで、自由な攻略法を編み出す楽しさが向上
また、稼ぎがしやすくなった分、力に頼った攻略が楽しめやすくなっているのは、アクションゲームに苦手意識のある人には嬉しい部分と言えるだろう。もともとのオンライン版もそうしたRPGの攻略法が通用するゲームデザインになっていたが、オフライン版は上方修正の恩恵もあって、強敵たちを力で圧倒させる快感が得られやすくなっている。
キャラクターこと「ハンタープログラム」の入手が容易になり、ステージのコースに応じてキャラクターを切り替え、その特徴を活かしながら一気に攻略する遊びが楽しみやすくなっているのもオフライン版の見所だろう。
素早く、激しい攻撃を展開してくるボスが登場するコースでは、ダメージを一定時間無効化させるシールドを展開する「マックスアーマー」で挑んだり、逆に体力の消耗が見込まれそうな場合は敵を倒すたびに回復が行われるスキルを持つ「シューティングスター・ロックマン」などで進めるなど、自分なりの攻略法を考える楽しさがある。そして、その目論見通り、安定した攻略を達成できた時には”答え”が発見できたとの手応えも得られる。
オンライン版も含め、『ロックマンX DiVE』にはアクションの『ロックマン』シリーズお馴染みの「特殊武器」はない。それを特定のボスに使うことで大きなダメージを与えられたり、有利に立ち回れるような弱点こと”答え”も基本的には設定されていない。
逆に装備可能な武器から操作対象の「ハンタープログラム」の特性次第では、攻略を優位にできる答えがある。ただ、それを充実させるには、オンライン版ならガチャを回すしかない。
それゆえ、あまりガチャをしなければ選択肢が狭まってしまう所があった。それがオフライン版で撤廃されたことで、色々な方法を試す遊びが気軽に楽しめるようになった点は嬉しい変更と言えるだろう。
もっとも、戦闘力次第ではワンパンでボスの撃破も容易になるRPG寄りのゲームバランス。相応に強力な性能を持ったキャラクターの使用に偏ってしまう極端さもあるのだが。ただ、手数を増やして自分なりの答えを探す遊びが楽しめるという所はまさに『ロックマンX』であり、『ロックマン』の名を冠した作品と言えるだろう。
『ロックマン』という作品視点で見れば、『ロックマンX』シリーズに限らず『ロックマン』ならなんでもありの「ハンタープログラム」ことキャラクターたちも大きなセールスポイントだろう。
気づけば初代『ロックマン』に『ロックマンDASH』、『ロックマンエグゼ』、『流星のロックマン』、『ロックマンゼクス』までほぼすべてのシリーズ作を網羅してしまった。「『ロックマンX』って……なに?」と言いたくなるカオスぶりである。
しかも、本作で初めて3D化を果たしたキャラクターも多数。
その3Dモデルを鑑賞できるのも各キャラクターのファンにはたまらない部分である。パソコン版なら、高解像度で見られるだけに尚更だ。
ただ、キャラクターのなかには本作オリジナルも含め、ネタやお色気に走っているものもあるため、そこはファンにとっては賛否の分かれる部分である。
特に後者はあまりにもやりすぎた反動か、パソコン版にて設定されたCEROレーティングは15歳以上対象となっている。「そりゃ、そうなる」としか言い様がないのだが、逆に言えば、史上初の15歳以上向け『ロックマン』という点で稀少価値もある……のか?!
賛否が分かれる部分と言えば、本作オリジナルのキャラクターを軸に展開されていくストーリーもそのひとつだ。本家『ロックマンX』とは異なり、明るく軽い作風であることやメタフィクションネタが満載なところがそれに該当する。『ロックマンX』シリーズからの出演キャラクターも、あくまでも電脳世界内のプログラムデータということで原作とは異なるキャラクター付けがされていたりと、よく知るファンほど違和感を抱いてしまうのは避けられない。オンライン版もそうだが、割と好みが分かれやすい内容だというのは、オフライン版で初めて『ロックマンX DiVE』に触れる人ほど認識しておくのがいいだろう。
ちなみに前述の「BGM&シナリオボイス鑑賞」で触れたが、本作のキャラクターは既存の『ロックマン』シリーズのキャラクターのほか、オリジナルのキャラクターたちにもそれぞれ声優が当てられている(※一部、ボイス無しの既存キャラクターもいる)。
ただ、ストーリーの会話イベントはフルボイスではない。これはオンライン版でもそうだったが、オフライン版もそれを引き継いでいる。「オフライン版はフルボイスなのか?」と期待するプレーヤもいるかもしれないが、そういった変更はないので、ご注意いただきたい。
思いのほかUIがスマートフォン版準拠のパソコン版。マウス+ゲームパッドの併用プレイを推奨
オフライン版になったことによる変化とそれに対する印象などを綴ってきたが、特に関心が大きいかもしれないパソコン版の手触りに関しては、率直な感想を書くなら、思いのほか変化が感じられなかった。
やはり、UIがオンライン版ことスマートフォンのものを基礎にしているのが大きい。プレイ前、筆者は本家『ロックマンX』みたいなカーソル操作が可能になったのかと思っていた。パソコン版はパソコン版で、独自の最適化が図られているのだろうかと。それでいざゲームを始めて、コントロールスティックを動かしてみたらマウスカーソルが画面内に現れ、思わず「えぇ……」と戸惑った次第である。
肝心のアクション部分に関しては、元のオンライン版もそうだったが、ゲームパッドに完全対応しているほか、キーコンフィングも細かく設定可能なので、ストレスはほとんどない。
それだけにUI周りがスマートフォンと大差ないのには、直前の期待もあってか肩透かしと感じた次第だ。
ただ、マウスを併用可能なので、ゲーム本編はゲームパッド、メニューはマウスといった具合に使い分ければストレスは大幅に軽減される。むしろ、かなり快適なので、このスタイルによるプレイを強くおススメする次第である。
解像度、フレームレートの設定などもきちんと用意されている。オリジナル版にもあったゲーム本編の画面内表示の調整(アイコンの半透明化など)もバッチリだ。ただ、解像度などの設定はメインメニューから、ゲームプレイの設定はステージ攻略中からと、それぞれ行き方が独立してしまっているのはやや不便。後者の設定を行うのが画面左上に表示された一時停止ボタンをクリックするのも分かりにくく、勘違いしやすい。この辺りはメインメニュー側で設定可能にするなりして、不便さを取り除いて欲しかったところである。
他にもUIに関しては、期間限定のイベントステージも専用メニューから解禁させる仕組みであること、その解禁のたびに稼ぎ専用のイベントステージが下へと移動し、選ぶ際の手間が増えるなどの気になる箇所がある。
これはスマートフォンのオフライン版なら、スワイプで素早く切り替えられるかもしれないが、パソコン版は手間がかかるので、もう少し工夫が欲しかったように思える。一応、解禁したイベントはあとから非表示へと戻すことも可能なので、そちらで代用できなくはないのだが。
チカラで押し切るアクションRPG版『ロックマンX』。パソコン版なら本家に移るのも容易!
そんな具合にパソコン版の遊び心地は率直に言うと、思っていたのと違う感はあった。ただ、オフライン版としての作りは報酬の上方修正で稼ぎ欲が刺激されやすい作りになったこと、膨大なコンテンツ量がひと際印象的。総じて『ロックマンX』はおろか、『ロックマン』シリーズとしても随一のボリューム感とリプレイ性を持つ仕上がりになっている。
ある程度、稼ぎが必須とされるのは純粋なアクションゲームを求めるほど好みが分かれやすい。また、ステージも移動と戦闘に終始するワンパターンな構成のものが大半を占めるため、本家『ロックマンX』のような起伏を期待すると肩透かしかもしれない。ただ、ストーリー後半やイベント専用ステージには、そうした欲求に応えるものが用意されている。
逆にいわゆるハック&スラッシュ系のアクションRPGを好む人には刺さりやすい側面を持っていることも意味する。アクションが苦手でも、レベル上げと装備強化によって上昇する戦闘力で押し切る攻略が容認されているのも大きい。壁蹴りにダッシュと言った『ロックマンX』特有のアクションも健在なので、『ロックマンX』がどんなアクションゲームなのかを知るひとつの入り口としてはお薦めできる一本だ。
ただ、ストーリーには『ロックマンX』シリーズのプレイ経験を前提にしたネタが膨大なため、より楽しみたければあらかじめプレイしておくことをおすすめしたい。
幸いにしてパソコン版なら、そのままSteamで販売中のナンバリングシリーズを集めた『ロックマンX アニバーサリーコレクション1+2』へと移るのが容易だ。本家ではどのように描かれているのだろうと気になったら、ぜひ突撃いただきたい。
『ロックマンX』に限らず、昨今は初代『ロックマン』に『ロックマンゼロ』、『ロックマンゼクス』、そして『ロックマンエグゼ』もSteamでコレクションタイトルが販売中。それらを試してみるのもなおのことよしだ。(それだけに、残る『流星のロックマン』、『ロックマンDASH』の復刻も待たれる……!)
シリーズファン視点でも、『ロックマンX』シリーズに限らない多彩な『ロックマン』シリーズのキャラクターが操作できること、初めて3D化を果たしたキャラクターのモデルを眺められることなど、本作だけの魅力が沢山ある。外伝作の『ロックマンX コマンドミッション』のキャラクターたちから、それをアクションゲームへと置き換えたイベントステージも用意されているという通好みなネタも特筆に値する。
また、オンライン版の時はガチャを回しても手に入れられなかったキャラクターたちも仕様変更で手に入りやすくなっている。それらを使い分ける『ロックマン』ならではの遊びも楽しめるので、興味があればぜひお試しいただきたいところである。
そして、ひたすらに力を求めて求め続けるのだ。
合言葉は「チカラこそ すべて・・・」。
それがオフライン版における、ディープログのゆいいつのオキテ。
けど、求めすぎて狂気に染まらないようご用心。