シリーズ第1作にあたる『プリンス・オブ・ペルシャ』は、高難度なアクションとペルシャの神話的な物語というロマンあふれるモチーフが魅力だ。
……というくらいの知識しかない、「マジの初心者」である筆者はこの記事を書くにあたってかなりの不安を感じていた。なぜならこのたび、シリーズ最新作にあたる『プリンス・オブ・ペルシャ 失われた王冠』を発売前に試遊する機会に恵まれたからである。アクションが下手な部類に入る筆者は、限られた時間の試遊では、規定の部分まで達することができないかもしれない。置き去りにされてしまうかもしれない。歴史あるタイトルに初心者が入り込んでいいのだろうか。そんな不安を抱いていた。
しかし、今回の試遊で感じたことは、「救済の手をいくつも差し伸べてくれるタイトルである」ということ。被ダメージやジャストガードの難易度調整、マップの目的地表示などなど、至れり尽くせりの機能の数々。それらは本作に惹かれたユーザーの「でも難しいやつでしょ?」をあの手この手で解決してくれる。
そこで本稿では、ペルシャを舞台にした神秘的な物語に興味があるという筆者と同じような初心者の方はもちろんのこと、ハードで高難度を求めるマニアの方まで、全員の「プレイしたい」に応える本作の仕様を中心に、シリーズでお馴染みのステージギミック、ダイナミックなムービーシーンなど本作の要素ひとつひとつに触れていきたいと思う。
文/anymo
王子を救うため、謎多き古都を舞台に突き進む
まずは、現時点で多くは語られていない本作のストーリーについて最序盤となる一部を紹介しよう。
主人公は最強の戦士である「不死隊」のメンバー・サルゴン。チュートリアルを兼ねたプロローグでは、敵である「ウビシュカ将軍」を討ち、もっとも勇敢な英雄として宮殿に帰還する。
栄誉を称えられ「王家の懸章帯」を授与されたサルゴン。どこか浮かれた様子の彼に、聡明なアナヒータが「戦士の旅路とは、絶え間ない鍛錬の道」と諭す。彼女のおかげで自分を見つめ直した彼は、ともに戦った不死隊と雑談を楽しみながら夜を過ごす。
そんな中、王子であるガッサンがさらわれたと報せが入り、一同は動揺する。王子と最後に会話したサルゴンが現場に駆けつけると、先ほどまで言葉を交わしていたはずのアナヒータが誘拐の手引きをしていたのだ。
彼女に意図を問うも「殺すつもりはない」と返され、足止めを食らう。サルゴンは王子を救うため、そしてアナヒータの思惑を知るために、彼が連れていかれた謎多きカーフ山の古都へと足を踏み入れる。
しかし、サルゴンたちが古都に到着すると、数日前に出発した兵の遺体がすでに腐っていた。時の流れが歪んでいるような奇妙なことが起こるこの地で、サルゴンは不死隊のメンバーと別れ、単身で探索と戦闘を進めていくこととなる。
──というのが、本作の導入として語られる物語だ。難易度とマッチした重厚なストーリーが序盤から展開されており、これから出発する冒険とその裏にあるものの壮大さを感じさせる。一度訪れた束の間の平穏が目の前で再び危機に変わることで、プレイヤーはサルゴンと同じ志を持ちながら歩みを進めていけるのだ。
カスタム性の高い難易度調整で自分だけの「高難度」で遊べる
冒頭でも述べたように初心者である筆者の目線から見て、もっとも印象的だったのは初心者に優しいシステムの数々である。
難易度は「見習い」、「戦士」、「英雄」、「不死隊」、「カスタム」から選択ができる。難易度選択画面ではそれぞれの敵のダメージやHPにくわえ、自分が受けるダメージ、受け流し(ジャストガード)の難易度が表示されており、これらの項目はそれぞれ調整することができるようになっていた。
本作は2Dアクションゲームだけではなく、広大なマップを自分で探索しながら習得するアクションが増えることで徐々に行ける場所が増えていく「メトロイドヴァニア」の要素も持ち合わせている。上記の難易度に加えて、ゲーム開始前にはこの探索をフルに楽しめる「探索モード」と、次の目的地や塞がれている通路などが表示される「ガイドモード」のふたつが選択可能だ。
ステージ上のギミックに対応したアクションアシスト機能や、新しいアクションを習得することで通れそうな場所を記録する「記憶のかけら」までも搭載されている。これらの項目はプレイ中にも調整が可能なので、難しすぎる/易しすぎると感じても安心だ。
また、これらの要素は初心者の救済だけでなく、より高い難易度を求めるマニアにも嬉しいものだろう。最高難度の「不死隊」で探索モードを選択すればシビアな冒険を楽しめるし、難度はそのままガイドモードとアクションアシストをONにしてよりアクションにフォーカスしたプレイ感に調整することもできるのだ。
なにより伝えたいのは、たとえこの優しい機能の数々を使ったとしてもそう簡単に、いわゆる「ヌルゲー」化はしないということ。筆者は下から2番目の難易度かつガイドモードでプレイしたものの、ボス戦は5回以上挑戦したし、目的地までのルートは表示されないため、自分で探索する必要があった。つまりこれらはあくまでアシスト要素としての仕様であり、やり応えのあるプレイ感というのはユーザーごとに共通していそうだ。
ロマンあふれる世界を彩るグラフィック、ダイナミックなムービーシーンは必見
アクション部分とメリハリの効いたムービーシーンは、大胆なカメラワークと構図でユーザーを楽しませてくれる。中でも顔の寄りのショットでは、横スクロールとテキストよりも豊かにサルゴンの表情を表現しているし、「キメ」のシーンは思わずスクショを撮りたくなるような、アニメやマンガを思わせるダイナミックな画作りがされている。
また、エフェクトについても触れておきたい。振るたびにズバズバと現れる剣の軌跡は爽快感あるプレイの一端を担っているし、敵が倒れた際にのみ飛び散る赤黒いパーティクルは細かい仕様ながらも、次の行動を決めるスピーディーな判断を助けている。高難度だからこそ、視覚で瞬時に自身の状況を掴めることでより快適にプレイを進めることができる。
さらに、本作のクールな世界観も大きな魅力のひとつだろう。倒壊した大きな柱や流れ続ける水、壁画、巨大な石像など冒険にぴったりのロマンあふれる背景と光のエフェクトの組み合わせは非現実的ながらも、「神話的な世界」として説得力あるものに仕上がっている。
背景やストーリーに感じるロマンはプレイを推し進める推進力となるし、背景のグラフィックはメトロイドヴァニアの探索要素と相まって「この先はどうなっているんだろう」と好奇心をくすぐられるのだ。
雑魚敵といえども、しっかり攻撃を避けていないといつの間にかHPがごっそり削れているような緊張感のある旅路のため、セーブポイント兼回復ポイントとして設置されている「ワクワクの木」も重要だ。時が止まったかのような古都で一際目立つ、煌びやかなゴールドで生命力を放つそれはプレイヤーに一時の安息をもたらしてくれる。
また、ワクワクの木で調整することができる「アミュレット」もユニークなシステムだ。各効果がサルゴンの装備アイテムとして独立しているのではなく、HPの上限値の上昇などの効果がチャームとして登場し、それらを好きに組み合わせることで自分だけのアミュレットとして装備することができる。
頭を捻るギミックの数々、手に汗握るボス戦
また、途中で手に入る武器や新たなアクションを駆使してギミックをくぐり抜けていくのも本作ならではの魅力だろう。
『プリンス・オブ・ペルシャ』と聞いて真っ先にイメージするステージギミックの数々はもちろん健在。トゲの敷き詰められた地面や、攻撃することで発動する足場などを目の当たりにし、脳内で組み立てたアクションをそのまま実行して先に進めたときの小さな達成感の積み重ねによって、高難度ながらもプレイしていて辛さよりも楽しさを常に感じられる。
試遊範囲のボス戦では、自分よりも何倍も大きなモンスターに立ち向かう場面が見られた。特に毒を発生させるサソリのような尻尾を持つ「ジャハンダル」との戦いには苦戦したが、闘技場のようなロケーションを舞台に、神話を思わせるような強大なボスを相手にする戦いはやっぱりアツいものだ。
ゲームオーバーを重ねるうちに攻撃前のモーションを見切って効率よく攻撃を叩き込んでいく。しっかり考えて戦うことで立ち向かえる、理不尽でないボスの動きによって「次はクリアできるかも」とリトライボタンを連打する。探索パートでは謎解きや迷路を解くような達成感、ボス戦ではよりダイナミックな達成感を感じられ、このふたつを交互に楽しめることで飽きることなくプレイを進められるように感じた。
「でも難しいんでしょ?」は杞憂。初心者もマニアも包み込む懐の深いタイトル
結果から言えば、先述した「マジの初心者」ゆえに楽しめないのではないかという心配は杞憂に終わった。それどころか至れり尽くせりのゲームシステムの優しさに感激するほどだ。
アクション下手ながらも、高難度ゲームの持つ自分自身のプレイスキルが上達していく達成感や、重厚な物語とリンクした厳しい旅路を楽しむことができた。本作は単に難易度が簡単になるのではなく、その人ごとの「高難度」でプレイすることができるということが、本作のなによりの魅力なのではないだろうか。
『プリンス・オブ・ペルシャ 失われた王冠』は1月18日にPC(Steam、Epic Game Store)、Nintendo Switch、PlayStation 4、PlayStation 5、Xbox One、Xbox Series X|S向けに発売予定。神秘的でスリリングなペルシャの冒険まで、あと少し。12月に開催されたThe Game Awardsでは1月11日に体験版の配信も発表されているので、そちらも合わせてチェックしてほしい。