中田譲治と子安武人のドロドロ復讐劇、家系ラーメンです
テメノスに続いてストーリーに触れたいのが、やっぱり「オズバルド」。
なんとこのキャラ、CV中田譲治なのです。大人の色気がすごい。端的に言うと、「妻子殺しの冤罪をかけられて投獄されている。もちろん妻と娘を殺した相手は別にいるので、そいつに復讐する」という激重ストーリーが展開されます。絶対アグネアと同じ世界観じゃない。
なんなら冒頭は投獄されているところから始まるので、1章から2章を丸々使ったプリズンブレイクストーリーが展開されます。犯罪者に囲まれ過酷な労働。口には猿ぐつわをつけられて会話もできない。そんな中、復讐のため絶海の孤島からの脱獄を誓う。重い。重すぎる。ハードコアだぜ。
オズバルド編……というか、『オクトラⅡ』全体を通して冴え渡っているのが、やっぱり「声優のキャスティング」である。なんなら、「この声優がこんな端役のNPCやってるわけなくない?」と思ったら大体それが的中しているというアニメコナンの犯人メタ読みみたいなことが成立してしまうくらいです。
とにかく、「まぁこのキャラにはこの声優を当ててほしいよね」というキャスティングを全く外してこないのです。特にオズバルド編に登場する「ハーヴェイ」というキャラクター。端的に言ってしまえばコイツが妻子殺しのすべての元凶であり、「フハハハハハハハ!悔しいかね、オズバルドよ?」とか言いながら迫ってくる。
そしてハーヴェイの声優、子安武人!!!!!
いやぁ……これはやりすぎてるね。もう「子安武人の悪役高笑い」が嫌というほど聞けます。もう最後らへんとか「子安」が極まりすぎて大変なことになり始めます。流石にこれは「テラ子安」の使いどころなんじゃないかと思うくらい大変なことになります。
そしてもう……声優ふたりの濃厚さだけでなく、とにかく展開がハード。
ここからちょっとネタバレなので、気になる方は薄目で読んでくださいね!
まずオズバルドが「殺された」と思い込んでいた妻は、実は最初は殺されていなかった。が、ハーヴェイが妻の血を使って魔物を生み出した。その魔物は、4章のボスとしてそのまま襲いかかってくる。そして必死の思いで妻の血から生み出された魔物を倒すと……死んでいたはずの娘「エレナ」が現れる!!
エレナは、実は生きていたのだ。親子、感動の再会!!
……と思ったのもつかの間。実はエレナはハーヴェイによって記憶がいじくり回されており、実の父親であるオズバルドに向かって「誰……あの人……?」と言い放つ始末。それどころか母親を殺した相手でもあるハーヴェイのことを、「パパ」と呼んでいた。もうやめて──ッ!!!
そして連れ去られる娘、エレナ。「うおおおおおおおおっ!!!」というオズバルドの慟哭と共に、クライマックスに至る直前の4章は締めくくられる。そしてそのすべての決着が、最後の「5章」で見ることができます。絶対アグネアと同じ世界観じゃないってこれ。
もう、オズバルド編に関しては「CV子安武人に妻と娘を奪われたCV中田譲治が復讐を誓い、旅の中で散々な目にあって激昂したり慟哭したりします」という文言だけでこの家系ラーメンみたいな濃厚さをご理解いただけるのではないでしょうか。2023年に中田譲治のガチ慟哭演技が聞ける作品、中々ない。
土台のお話がドロドロなのに、さらに演者も濃厚。濃い。濃すぎる。重い話が連射されるので大体ヘビーマシンガン。テメノス編に次いで、「シナリオ」が印象的なキャラでした。
登場、「9人目」の仲間
突然だが、私は「ゲームを破壊すること」が大好きだ。
ゲームとは、そもそも「ルールを課す」遊びである。プレイヤーを「ルール」でがんじがらめにして、その決められた範囲の中での駆け引きを楽しんでもらう。それが「ゲーム」。だけど、時に「ゲームのバランスを思いっきり破壊してしまう」ような抜け道を発見することがある。
たとえば『FF8』では、とある手段を踏むと登場する「オーディン」から大量の魔法(トリプル)をドローしまくって力にジャンクションすると、さっきまで武器による攻撃は200ダメージが関の山だったところが突然剣を振っただけで2000ダメージを叩き出すようになったりする。こういう「いま、俺はゲームのバランスを崩壊させてしまった」と確信する瞬間の……あの快楽!!
たとえば『FFT』で算術ホーリーを使い始めた時。
たとえば『FF2』で序盤からミシディアに行った時。
たとえば『サガ フロンティア』でジャンク漁りを始めた時。
もう……もうたまらない!!
そして『オクトパストラベラー』は、1作目の頃からこの「ゲーム破壊」が割とアッサリできちゃうのが面白いところでした。その自由度は、2作目でも健在です。さっきの「開錠ピック」の話でも、その片鱗がちょこっと見えていましたね。
ここで紹介したいのが、「オーシュット」。
獣人にして、狩人。この子……個人的には『オクトラⅡ』最強キャラなんじゃないかと思っています。具体的にどの辺が最強なのかというと……なんかもう、とにかく「やれること」が多彩すぎるのです。
まず、オーシュットのジョブは「狩人」。弓と斧による強力な攻撃を繰り出せる「アタッカー」寄りのジョブです。ただ、全体クリティカルバフや敵のバフ解除といったサポーターじみた動きもできます。
さらに、「てなづける」というフィールドコマンドでNPCにお肉を渡したりすると、そのままNPCを戦闘に参加させられるようになります。戦闘中にNPCを呼び出して、勝手に戦ってもらえたりします。
さらにさらに、オーシュット最大の目玉は「捕獲」。戦っている魔物をある程度弱らせて「捕獲」を実行することで、そのまま魔物を仲間にすることができます。こうして捕獲した魔物は、「けしかける」を使用することで戦闘中に呼び出せます。
やることが、やることが多い!!
なので、オーシュットは実質「アタッカー兼サポーターとしての狩人」「“てなづける”によるNPC呼び出し」「捕獲した魔物で戦うモンスターテイマー」としての3つの役割を持っています。ヤバすぎる。そしてオーシュットが加入したあたりから、さらにこのゲームで「悪さ」を行えるようになります。
端的に言えば、「明らかに序盤では太刀打ちできないはずの魔物を捕獲し、無双する」というゲーム崩壊技が使えます。ここで狙い目になるのは、「古代遺物・光兵」という魔物。この魔物……通常のプレイでは、終盤でなければ絶対に攻略不可能なダンジョンに生息しています。
ただ……それなりの手順を踏めば序盤でも捕獲できてしまうのです。
まず用意するのは、「全能の精霊石」というアイテム。
これは、味方の強さに関係なく超強力な固定ダメージを叩き出すアイテム。まずはこの「全能の精霊石」を……魔物から盗む! オラッ! 出番やぞソローネ!!その奪取成功確率、およそ5%! もう、ひたすら無心でアイスエレメントにアタックし続けます。盗んでばっかだなこのゲーム!
そして全能の精霊石をふたつゲットできたら、さっそくお目当ての「古代遺物・光兵」の生息ダンジョンへと向かいます。古代遺物・光兵とエンカウントした瞬間、まずは剣やら何やらでブレイクする!
古代遺物・光兵が無防備なブレイク状態になったら、5%の壁を越えて盗んできた「全能の精霊石」を一気にぶつける! 4000固定ダメージ×2が炸裂し、計8000ダメージが入ります。
ここでオーシュットにターンが回れば、もう捕獲可能です。文面だけでは苦行っぽく見えるかもしれませんが、しっかり手順を踏めば意外とすぐに捕獲できてしまいます。
そして捕獲に成功した古代遺物・光兵の繰り出す技は、「ソーラレイ・クロック」。簡単に言うと、「敵全体に9999ダメージを与える」という技です。これが平均Lv16くらいの序盤でゲットできます。序盤のボスに関しては、とりあえず古代遺物・光兵を投げておけばすぐ終わります。あぁ、ゲームが壊れた!!
もちろん「発動は戦闘中に一度きり」「チャージをしなければ使えない」といった制約はあるのですが……それにしたって序盤から敵全体に9999ダメージをぶん投げられてしまうのはやっぱりゲームバランスがめちゃくちゃになります。「そんなゲーム崩壊は嫌だ!」と思う方は……普通に使わない方がいいと思います。
なんなら序盤だけじゃなくて、中盤ですら「このボスちょっと強いな……なんとかなれーッ!!」と古代遺物・光兵をぶん投げてみるとあっさり敵が消し飛んだりします。だからもう、自分の中では古代遺物・光兵が「9人目の仲間」です。
お前がMVPや。古代遺物・光兵もパーティーチャットに参加してきてほしかった。古代遺物・光兵もトト・ハハの壁画に描かれてなかったっけ?
何もしてないのに壊れた
ただ、本当の意味で古代遺物・光兵のおそろしいところは、「こいつを足掛かりにしてさらにインフレを加速させることができる」という点かもしれません。まぁ、これも少し考えればわかることなのですが……「序盤の段階で全体9999ダメージを手に入れる」と、そのままレベリングに悪用できるんです。
古代遺物・光兵を捕獲できるダンジョンの敵は、平均Lv45。序盤であれば、絶対に太刀打ちできません。基本即死です。しかも古代遺物・光兵は「BP(ターンを重ねるごとにひとつ獲得できるポイント)を3つ消費しなければ発動できない」という制約があるので、いきなり無双できるわけじゃない。
ここで悪さをするのが、商人の主人公である「パルテティオ」。
彼は「BPパサー」という味方にBPを譲渡できる技を持っているので……あぁ、もう大変なことに! パルテティオがBPをオーシュットに回せてしまえば、最速1ターンで古代遺物・光兵によるソーラレイ・クロックが炸裂! Lv45の強敵たち、跡形もなく消滅!!
そしてこのレベリングを軽く1時間くらいやると、Lv19くらいだったパーティーメンバーが一気にLv35くらいまで育ちます。1時間でこの効率ですからね。もっとゴリゴリにやると大変なことになります。
しかもさきほど紹介した数々の「フィールドコマンド」の成功率は、基本的にはキャラのレベル依存です。だから、序盤で一気に古代遺物・光兵を駆使してLv45くらいまで上げてしまい、そのまま終盤訪れるはずの街まで進行して、Lv45相当のスリ盗みテクで「本来終盤ゲットするはずの武器」を大量に手に入れることもできたりします。なんちゅうゲームや。
こういうゲームって……大抵は「仲間が集まるまで」が面白いもんだと思うのですが、『オクトラⅡ』に関しては「仲間が揃ってから」がやっと本当のゲームスタートだと思います。
というか、そこまで過剰にレベリングしたり過度にゲームを壊そうとしなくても、終盤に進むにつれてなんか勝手に火力がぶっ壊れていくのも『オクトラⅡ』の醍醐味だと思います。いや、たしかに私も古代遺物・光兵に手を染めたけど、このゲームってそれとは関係なく勝手に火力がインフレし始めるんですよ。
信じてください! 何もしてないのに勝手に壊れた!!
たとえば「サブジョブ」の存在も、その「何もしてないのに勝手に壊れた」の要因のひとつだと思われます。今作のキャラは基本的に「メインジョブ」がひとつ決まっているのですが、各地でライセンスを獲得するとそれとは別に「サブジョブ」を装備できるようになります。
このサブジョブは……もう本当に言葉通り「他のジョブのアビリティを大体引き継いでしまえる」という機能です。だからもう、メインは「剣士」のヒカリにオーシュットの「狩人」を装備させると、そのまま強力無比な狩人のアビリティと武器を使えるようになります。あーもうめちゃくちゃだよ!!
さっき紹介した「商人」の専売特許であったはずの「BPパサー」もサブジョブで覚えられるので、別にパルテティオをパーティーに入れずとも「BPパサー発動→1ターン目に古代遺物・光兵」のコンボが使えたりします。もう、終わりやね……。
なんかこの辺のバランス調整思い切り良すぎるんだよな。作ってる側がどこまでバランスを考えてるのかわからない感じ、結構好きよ。しかも、「サポートアビリティ(最大4つ装備できるパッシブ)」に至っては、一度習得してしまえばどのジョブをつけていようが自由につけ外しできてしまう。
極端なことを言えば、剣士と踊子と商人と魔導士のサポートアビリティをいっぺんに装備させることも可能なワケです。ここまで選択肢が広いと逆に何をどうすればいいのかわからない。
そして世界各地をぶらぶらしていると、いつの間にやら「上級ジョブ」なるものが手に入ったり、「神器」と呼ばれるすごい武器が手に入ったり、基本ジョブを極めると「雷剣将ブランドの剛剣」みたいな奥義が獲得できたりして……いつの間にか4万ダメージくらいがポンと出たりします。
なんで俺は9999ダメージ程度でイキってたんだろう?
なにが「9人目の仲間」だ。あんなヤツいらん! 光兵くん、今日でクビね!
終盤になると、本当に「多分このボスはなにかしら厄介なギミックを持っていたのだろうけど、こっちが先に大ダメージを出して撃破してしまったので結局何をする敵だったのかわからなかった」という信じられない完全試合が発生したりする。「殺される前に殺せ」が極まるとこうなる。
でも、ここまで来ると気持ちがいい。4万ダメージだぞ4万ダメージ! 「数字がデカい」って、やっぱり原始的な喜びがある!! この「RPGを破壊してる感」がたまらん。でも、気を抜くとうっかり死んだりします。インフレ環境にはインフレ環境なりのバトルが用意されているので、そこはご心配なく。
実は、8人クリアしてからが本番です
紹介してきた8人の主人公たちは、「クロスストーリー」と呼ばれるエピソードで絡みを見ることができます。もうこれは完全にオタクの妄想が具現化したやつですね。特に印象的なのは、やっぱり「ソローネとテメノス」。アウトサイダーな盗賊ソローネと、一応神に仕える異端審問官のテメノスが絡み始めると……なんかやたらと仲がいい。
だから実質「探偵&犯罪者」のタッグという……アレ? こういうドラマあったよね? しかも、どっちも美男美女。やたらと顔のいい探偵と犯罪者がタッグを組んで謎に挑むという……これ何……? オタクの妄想か……? 二次創作か……?
もうクリック君に「おい!油断してると相棒取られるぞ!!」と言いたくなるくらい、ソローネともやたらと仲がいい。普段この8人は「パーティーチャット」というわずかなテキストだけでしか絡みを確認できないのですが……このクロスストーリーでは「え、そことそこが仲良いの?」という意外な関係性を見られたりします。
そして、8人分のストーリーを終えると……「エクストラストーリー」という最終章が解禁されるのです。この最終章では、ついにあの8人が集結したストーリーを見ることができる! これまでは「個人のお話」に留まっていたのですが、最終章ではついに8人全員の絡みが見られるのです!!
剣士・薬師・踊子・盗賊・学者・狩人・神官・商人。身分も出自もバラバラの8人が、ひとつのパーティーに集う。そしてプレイヤーは、これまで8人のストーリーを見届けた上で最終章に突入する。
しかも、お話の内容的にも……この最終章こそが「本番」と言える内容です。ある意味、『オクトラⅡ』は8人クリアしてからが本番のゲームと言えるかもしれません。
正直、8人のストーリーを見るだけでは意味がわからないところもあったりします。
謎の廃都が出てきたり、突然みんな「暗黒」というワードを口にし始めたり……「どういうこと?」と思う部分がいくつもあります。ですが、最終章でおおよその謎が解けます。だけどまぁ……最終章の内容まで書いちゃうのは興ざめもいいとこですから! ここは「お楽しみ」ということで。
ただ、核心的なネタバレを避けつつも個人的に驚いたのが……「昼と夜」が、しっかりストーリーに組み込まれているところです。正直、プレイ中も『オクトラⅡ』がやたらと推してくる「昼と夜」という要素にあまりピンと来ていませんでした。
なぜなら、ぶっちゃけシステム上「昼と夜を切り替えること」による大きな変更が少ないから。フィールドコマンドや街のNPCの配置は変わるものの、「昼と夜」というギミックがストーリーに大きく絡んでくることはない。あくまで「ギミックのひとつ」。だから正直、「うーん、これってメインの要素にするほどかな?」と思っていました。
ところが、最終章ではこの「昼と夜」がしっかりと回収されます。メインシステムが決まってからストーリーを作ったのか、それともストーリーから逆算してシステムを作ったのかはわかりませんが……この「システムとストーリーが噛み合う瞬間」って、ゲームで一番面白い瞬間だと思います。
しかも、その「昼と夜」というテーマの解釈がまた……良いんですよね。言葉遊びではあるし、よくあるテーマなのだけど……プレイヤー目線で「あぁ、このシステムってこの話と噛み合わせるために用意されてたのね」と気づいた瞬間の、あの気持ち良さ。『オクトラⅡ』では、しっかり味わえます。
これは、明日を掴むための物語。
「明日への旅路」を乗り越えた先に、旅人は何を見る。
みんなもテメノスとクリックを見てくれ。頼むから。いろいろ書いたけど大体「みんなもテメノスとクリックを見てくれ」だけ覚えて帰ってもらえれば大丈夫です。ていうか、記事が長い。でもこんなに長ったらしく書きたくなるくらい、面白いってことです!
旅立とう、君だけの物語へ━━━!