高校3年間、あなたは何をして過ごしていただろうか。勉強、部活、アルバイト、友情など人によってその答えはさまざまで、高校生活を過ごしていない人だっているだろう。充実していた人もそうでない人も、時間は平等に流れる。あの日々が戻ってくることはない。
でも、もし今からきらめく3年間を過ごす誰かを定点観測できるとしたら?
シリーズ最新作『Link!Like!ラブライブ!』(以下、『リンクラ』)は、高校生活という短い期間だからこそのきらめきをリアルタイムで描いている、限りなくリアルに近いバーチャル作品だ。本作は、我々の過ごすリアルな時間軸とリンクして進行する。つまり、メンバーが高校生活を送る上で起こりうるイベントが待ち受けており、この先進級や卒業も描かれることが想定されるのだ。
本作はある意味勝利が確定している。この「勝利」が意味するのは、かつてない感動とエモーショナルだ。ドラマが最高潮に達したとき、高揚や興奮、ときには涙になって心に波及する。彼女たちと共に3年間を歩んだ先で我々が抱く感動は一体どんなものなのか。それはまだ未知数だが、サービス開始から半年間で展開されたコンテンツを楽しむ中で「今までにない感動」への可能性に満ち溢れていると感じさせてくれた。
例えるなら、絶対に儲かる儲け話だ。今から「履修」という投資を数年間することで、節目ごとにとてつもないカタルシスをリターンとして感じることができる。ここまでの信頼を置けるほどのクオリティで展開されている本作について、「頼むから、同じ船に乗ってくれ」という気持ちを抱きながら、記事というか懇願プレゼンとして本稿を執筆した。
文/anymo
※この記事は『Link!Like!ラブライブ!』の魅力をもっと知ってもらいたいオッドナンバーさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
リアルタイムで一度きりの経験
『リンクラ』は、人気シリーズ『ラブライブ!』の最新作にあたる作品だ。アプリを中心にメディアミックスがされており、その一番の特徴は「リアルタイム」なことである。
本作の時間軸は我々の暮らすリアルな世界とリンクしており、作品内の10月はリアルの10月となる。ユーザーはスクールアイドルクラブのメンバーと同じ時間を共有することにくわえて、同じように年を重ねていく。つまり、先述したように進級・卒業・入学といったイベントが発生すると思われる。
もちろん、現時点で所属している6名のスクールアイドルクラブのメンバーも例外ではない。時間をも仕組みに巻き込んだ斬新なシステムで、人生でたった一度の3年だけ(現2年生に至っては2年)という短い期間のきらめきを、リアルタイムという特等席で目撃することができるのだ。
本作ではリアルな時間軸とリンクしたストーリーとは別の大きな柱として、「生配信」がある。『リンクラ』ではアプリ内で多くの生配信を放送しており、その内容は雑談やユニットでのセリフ朗読、ゲームなど多岐に渡る。
ストーリーが同じ世界に生きているという実在性を感じさせてくれるものだとしたら、生配信はもっとミクロな「マジでいるんだ」というような自分自身に迫ってくる実在性を感じさせてくれる。
これらのメンバーの実在感に大きな寄与をしているシステムの先には、なにがあるのだろうか。これだけの実在性を描き出すコンテンツに年単位の時間を費やしたら、どうなるのだろうか。『リンクラ』は、そんな前人未到の領域に踏み込んでいる作品だ。
眩しくてヒリヒリする青春ストーリー
本作の舞台は、全寮制の芸術分野に特化した高校・蓮ノ空女学院。主人公である日野下花帆(ひのした かほ)はここに、キラキラの「高校生活」を夢見て入学する。しかし、序盤で映し出されるのは彼女の冴えない表情ばかり。挙句の果てには他の学校のパンフレットを手に、深刻な顔で転校までも検討する。
ただでさえも希望がいっぱいの高校一年生で何が花帆をそんなに暗くさせるのか。それは思い描いていた高校生活と蓮ノ空女学院での生活があまりにかけ離れていたからである。「花咲きたい!」という気持ちを胸に必死の受験を乗り越えた彼女を迎えたのは、山奥の校舎と厳しいルール付きの寮生活。1話とは思えない苦悩の表情の数々からは、息苦しさや都会への羨望がダイレクトに伝わってきた。
理想と現実のギャップに嘆く花帆はとうとう脱走を企てるが、あえなく失敗。森の中で遭難しかけたところをスクールアイドルクラブの2年生・乙宗 梢(おとむね こずえ)に救われ、脱走したことを内緒にする代わりに蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの手伝いをして活動に関わっていく。
ステージの準備や楽曲の試聴など、スクールアイドルたちの手伝いをするうちに徐々に気持ちが変化していく花帆。日の光も差し込まない日陰だと思い込んでいた蓮ノ空で「花咲く」ための道を見つけた彼女は、スクールアイドルになることを選んだ。
4人体制となったスクールアイドルクラブの次なるイベントは、金沢市内のイベント。第3話では花帆と梢のユニット「スリーズブーケ」にスポットを当て、梢の鬼コーチとしての新たな一面や、花帆が初めてスクールアイドルクラブのメンバーとして努力する姿が描かれており、彼女たちは日常が輝き始める第一歩を踏み出す。また、花帆が自由な学校生活に焦がれていた詳細な理由が語られる。
続く第4〜6話では、村野さやかと夕霧綴理(ゆうぎり つづり)、そして彼女たちのユニットである「ドルケストラ」のステージまでを描く。3話までが青春の「陽」だとするなら、このフェーズでは青春の「陰」の部分、自身の課題と向き合う辛さなどにフォーカスしているように感じた。
姉が果たすことの出来なかった「フィギュアスケート」を背負うさやか、天才肌がゆえに苦悩していた綴理が徐々に互いを理解し、「スリーズブーケ」とはまったく異なる形のふたりとして完成していく過程は非常にドラマチックだ。
さやかがリンク上で思いの丈を吐露するシーンは、現時点で公開されているストーリーの中で個人的にもっとも胸を打たれた。「僕はただ君のきらめきを見ていたかった。僕にとって、君がいちばんのきらめきだから。どんな翳りも差してほしくなかった、それだけなんだ」という綴理の言葉はロマンチックなのにストレートな本心で、あまりに美しい。
先輩コンビにフォーカスした第7話、8話は、これまでも匂わされていたふたりのわだかまりと対話をメインにしたエピソードだ。互いのユニット相手を褒めて張り合う1年生コンビの先輩愛も存分に映し出される。そのような微笑ましい場面とは裏腹に、2年生コンビの絆は各ユニットとは異なって爽やかなだけじゃない複雑さを感じさせる。
大人びたようにすら思わせるやりとりからは、たった1学年違うだけで先輩を大人に感じていたことを思い出す。2年生コンビのいい先輩っぷりにも注目のエピソードだ。
ここまで第1〜8話に渡って6月までのスクールアイドルクラブが描かれてきたが、振り返るとたった3ヶ月とは思えない濃厚さだ。1話で主人公が見せる顔とは思えない伏目がちな表情から、「置かれた場所で咲く」と気づいたあとの爽やかな表情までの移り変わりも同じ4月内の出来事で、まさに青春を駆け抜けているハイスピードさがとにかく眩しい。
突如現れたカリフォルニアからの編入生・大沢瑠璃乃(おおさわ るりの)と彼女が尊敬してやまない藤島 慈(ふじしま めぐみ)のふたりが登場する第9・10話。このエピソードでは、幼馴染であるふたりのヒリヒリするようなぶつかり合いが描かれている。
自分を取り巻くみんなの「楽しさ」を大事にするあまり“充電切れ”を起こしてしまう瑠璃乃と、怪我のショックと瑠璃乃への期待の狭間で揺れる慈。ふたりは問題を抱えこんでしまうが、自身を思う仲間から何度も何度もアプローチされることでそれを克服していく。
少女たちだからこその遠慮のない言葉は、とにかく純度が高い。ステージにのぼることをやめた慈と、そんな彼女とどうしてもスクールアイドルをやりたい瑠璃乃のやりとりはとにかくストレートだ。そんな風に思いをぶつけ合うふたりは大人になった今の自分からすれば、羨ましいほどにピュアだった。
特に第9話以降はメンバー同士が打ち解けてきたこともあり、これまで以上にユニークなやりとりが見られる。慈というツッコミ担当が登場したことで梢の花帆への甘やかしっぷりや綴理の自由人っぷりなどメンバーの個性も爆発し始め、面白さが加速していく。
そうして6人体制となったスクールアイドルクラブが、旅館での「お手伝い」でドタバタ劇を繰り広げる第10話までが、執筆時点で公開されているエピソードとなっている。
ストーリーはどれも1話1話の情報量が高く、読み進めるほどに彼女たちの解像度が上がっていくのを体感できることと思う。全編を通して見られる、目の前の課題に向き合って試行錯誤しながら成長していく姿はどんなユーザーにも勇気を与えてくれる。そして、これから先、『リンクラ』が歴史を重ねても色褪せない芯の強さがある。
本作のスクールアイドルたちも「ラブライブ!」での優勝を目指している。卒業や入学と並ぶ一大イベントで、これからこの大会にどう向き合っていくのか、どう描かれていくのかにも期待が高まる。
フルボイスだけにとどまらない、細部にまで行き届いたリッチなクオリティ
本作のストーリーは、3Dモデルによるアニメーション付きで描かれる。テキストで読むシナリオよりもアニメ寄りの、会話の間やジェスチャーが表現された細部にクローズアップしたやりとりが楽しめる。また、アニメのように画面をタップせずフルオートで流して視聴することもできるようになっている。
10〜15分程度のエピソードを5〜7つほどで1話としており、すでに公開されているストーリーだけでもフル尺で観るのはちょっとの気合いが必要だが、躊躇いや決意などを表現した「間」や声色は彼女たちの心情をより深く理解するためにとても大切だ。サクサクとテキストだけで読んでいくこともできるので、テキストで読んで気になったシーンがあればぜひボイス付きで楽しんでほしい。
また、先述の花帆の苦悩の表情のように、物語を彩る豊かな表情にも注目してほしい。第10話で慈がスクールアイドルに復帰しないことを受け入れられない瑠璃乃の複雑で痛切な表情は、いつもの笑顔とのギャップとあいまって胸を強く締め付ける。綴理の困ったような、切なさの滲む微笑みはミステリアスな魅力の中に人間らしさが同居している。メンバーそれぞれが自分自身の課題と向き合うからこそ抱く、端的に表現できない複雑な感情。「寄り」の場面では、よりダイレクトにそれらが伝わってくる。
メンバー同士が触れ合っているシーンも特徴だ。空回りした花帆を慰めるさやかや、2年生コンビのお泊まり会では向き合って話し合う姿など、随所に差し込まれるシーンは立ち絵ではなく3Dモデルだからこそ再現可能だ。パーソナルスペースに入りこんだ距離感は信頼や互いを思いやる様子を描いており、エピソードごとに深く印象に残るシーンのひとつだ。
さらに、本作のストーリーは花帆の妹や母、クラスメイト、寮母、さらに街の人に至るまでボイスがあてられたフルボイスとなっている。先述のアニメのような視聴体験は崩れることなく、スクールアイドルクラブに関わるさまざまな人々もまた、彼女たちを応援している。作品世界でスクールアイドルがどのように愛されているのか、メンバー以外の人物を通して見えてくるのだ。
レッスン着や水着、旅館の仲居さんまでメンバーのさまざまなスタイルが見れるのも妥協を感じさせない。メガネをつけたり、服装に合わせたヘアアレンジをしたりとちょっとしたイメチェンのような姿を見せてくれるときもある。物語への没入感に寄与しているのはもちろんだが、毎回新鮮なスタイルを見せてくれるのは各メンバーのファンにも嬉しい点だろう。推しのビジュアルは、なんぼあってもいいものだ。
これらの細部にまで張り巡らされた高いクオリティは、ひとつひとつは細かくとも確かな実在性として我々を没入させる。
どんな作品も、24時間365日すべてを描くわけではない。本作のストーリーは彼女たちの日々のスクールアイドル生活の中のハイライトを描いているが、それをできる限り解像度を高く表現しているように感じる。解像度とテンポのバランス感覚が非常によく、だからこそ物語にのめり込んでメンバーへの愛着も増していくのだ。