限りなくリアル体験に近いバーチャルライブ
『リンクラ』では、毎月末に定期公演の「Fes×LIVE」を配信している。今回はその9月度を視聴したが、もう「すごい」の一言だった。もちろん、この一言で終わらせるわけにはいかないため、なにがすごかったのかなるべく多くを説明させていただくが、気持ちとしてはもうはやく観てほしい。
まず、本公演は録画ではなく生配信であることを最初に明記しておきたい。スクールアイドルクラブのメンバーは時折オーディエンスである我々に向かってパフォーマンスや衣装の仕上がりを尋ねてくるし、コメントで返答するとそれをリアルタイムで読み上げてさらにリアクションを返すといったコミュニケーションができるのだ。
実際のライブの醍醐味である「空気感」が再現されているのも、生配信ならではだろう。暗転して次のユニットが登場し、ポジションについて曲の始まりのポーズをとり、そして明転するまでの張り詰めた静寂。ライブを観たことがある人ならば、次の曲までのあのワクワクした時間をわかってくれるだろう。あれが完全に再現されていた。
生配信でのパフォーマンスだからこそのプレミア感や、音源とは違うライブ感のある歌声、楽曲を彩る照明の演出、やけにリアルな尺の衣装チェンジまでのつなぎなどが、画面越しのはずなのにその場にいるような高揚を感じさせてくれる。
幅広い楽曲を披露する彼女たちの年齢相応な一面が垣間見える、MCでのわちゃわちゃ感のある動きもとても印象的だった。リアルタイムで開催されているこのライブでは、誰かが喋っているときの相槌やリアクションなどももちろん放送される。アイコンタクトやフォーカスが当たっていないときの面白い動きなど、リアルタイムだからこその細かな魅力が詰まっているのだ。
ストーリーではスクールアイドルクラブの仲間に向ける表情や努力の数々が見えるのに対して、ライブではそれらを踏まえて外側に向けた立ち振る舞いや表情が見えるのも興味深い。例えば、ストーリーでは梢は徐々にユニークな面も見えてきているものの、ライブでは部長らしさが全開のしっかりした女の子としてステージに立っているように感じた。
「スクールアイドル」を全うする姿からは、ただクオリティに感動するのとは別のカタルシスも感じることができる。それは、その過程を知っているからこそである。ストーリーを読み進める中で自分自身の中で確立されていった、メンバーへの解像度が答え合わせされていく感覚は新鮮で、ステージの上で輝く彼女たちに尊敬の念すら抱いた。
もう一度言うが、ライブは全編無料だ。ライブの全編アーカイブはアプリのみでの配信となっているがアプリのインストールも無料な上、本作を履修するならアプリのはマストなので手間もほぼないと言って差し支えない。交通費もかからないし、スタンディングライブでの足の痛さもない、見やすい。そして、スマホで観れるためハードルも低い。お手軽さと比例しない、高いクオリティをぜひ体感してほしい。
生活に根差す『リンクラ』
ストーリーや配信などを楽しむことができる本作のアプリ『Link!Like!ラブライブ!』は、音楽ゲームではなく「スクールアイドル応援活動アプリ」となっている。
アプリを開いてすぐに表示されるのは、アプリゲームでよく見る今日のクエスト一覧やメンバーの挨拶などではなく「ホーム画面」。スマートフォンをそのまま使っているようなデザインで、かなりシンプルだ。アプリゲームらしさのないこのデザインは、我々のリアルな世界と『リンクラ』の世界をシームレスに繋いでくれる。
毎週月木土20時30分を基本とした定期生配信「With×MEETS」や、それにくわえての定期公演など、高スパンでの供給も本作の大きな魅力だ。楽曲もサブスクで配信されているうえ、公式YouTubeではキャスト陣が登場する「せーので!はすのそら!」、「かんかん&こなちのみらくら補習室ラジオ」などの完全にリアル寄りの動画も配信されている。
すべてを履修するのが大変そうなほど豊富なコンテンツで、供給待ちの時間があまり発生しない。配信が日常を、ライブが非日常を彩ってくれる。コンテンツに触れていない時間が長ければ長いほどフィクションと現実の溝は深まっていくが、本作では高頻度の供給によっていつだってその存在を再確認できるのだ。
正直、本作のストーリーとライブ、まだ見きれていない多くの配信を楽しむうちに実在とは何か?と考えてしまうほどのクオリティと物量だ。『ラブライブ!』ブランドが積み重ねてきたクオリティで「非実在」に向き合っている。過ごしてきた年数が積み重なるうち、リアルなアイドルと肩を並べる存在にもなり得ると感じた。
青春というのは、一瞬で過ぎ去ってしまう儚いものだからこそ美しいのだと思う。彼女たちと同じ時間を過ごし、彼女たちと同じように新年度の始まりに胸を躍らせ、高校生活の終わりにきっと大泣きする。コンテンツにおける体験の範囲が時間にまで拡張されることで、共に同じ時間を歩み、苦楽を見守るからこその思い入れを託すことができる。
人生でいちばん若いのは今日だ。まだまだ始まったばかりの本作を履修するなら、この記事を読んだ今がベストタイミング。フィクションがノンフィクションに歴史を刻む瞬間を、いっしょに観測してほしい。
12月28日20時からは「103期12月度Fes×LIVE」がオンラインにて開催される予定となっている。北陸地方予選大会となっているため、リアルタイムで彼女たちを応援しよう。