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ニュースのコメンテーターとして世論を操作するゲーム『コメンテーター』は楽しくダークに「メディアの権力性」を描く作品になりそう

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少人数で開発されたゲームの魅力として、大きなデベロッパーが扱い辛いマイノリティの視点や、同時代性のある問題やテーマを扱いやすい点が挙げられる。

国内ではそういった作品は未だ多くないように思われるが、テバサキゲームズが手掛ける新作ゲーム『コメンテーター』は、まさに「メディアが持つ権力性」というテーマを“日本を舞台”に描く作品になっていた。

このたび、3月2日に吉祥寺で開催されたイベント・東京インディーゲームサミットで本作の一部をプレイさせて頂いたため、キャッチ―なゲームプレイでシリアスな問題を扱う本作の試遊レポートをお届けしよう。

取材・文/りつこ


“世論操作系報道ノベルゲーム”として繰り出される『コメンテーター』

『コメンテーター』は大人気ニュース番組のコメンテーターとなり、さまざまなニュースを支持および批判し、それにより変化する世界を描いていくアドベンチャーゲームだ。ジャンルは“世論操作系報道ノベルゲーム”とされており、キャッチーなピクセルアートのビジュアルに反して、報道に関するシリアスな側面を描く作品となっている。

ゲームプレイは日ごとに複数用意されるニュースのお題を「強く支持」「支持」「不支持」「強く不支持」と4つのスロットにセットし、選択したスタンスに応じてコメントを行い進行していく。何を批判するか、肯定するかによって世界が変化し、物語が分岐していく仕様になっているという。

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ここで注目したいのは、ニュースのトピックからは”昨今の日本らしさ”が垣間見えることだ。

筆者がプレイした時点では記憶に新しい「オリンピックの問題」やひとつの論点である「少子化」「賄賂」といった政治的なトピックに、「芸能人が薬物所持で逮捕される」といったゴシップ、はたまた「中学生が新種のテントウムシを発見した」というほのぼのしたニュースなどが用意されていた。

いずれも「日本の朝のニュースで見たことがあるかも」と思わされる内容であり、「メディアによって世論が操作され得る」というテーマを、国内のプレイヤーが親近感を持って味わいやすい点は本作の魅力のひとつとなっている。

さらに、本作ではゲームを進めればコロナ禍に社会が突入する。日本国内の状況を反映した描写などにより、作中の出来事を現実に通ずる事物として体験できそうだ。

スポンサーと視聴者の好感度も大事。想像力が歯ごたえを生むゲームプレイ

また、本作では「スポンサーの好感度」「視聴者の好感度」のステータスが存在する。

それぞれの値は各ニュースを支持するか、批判するかによって変動し、値の変化は一日の最後に確認することができる。くわえて、「スポンサーの好感度」と「視聴者の好感度」は一定の日にちごとにノルマが設けられており、条件を達成できなければクビになってしまう。

そのため、トピックごとにスポンサーおよび視聴者の反応を想像してコメントのスタンスを決定する必要もある。

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いっぽう、本作では4つのスロットにニュースをセットする仕様により、全てのニュースを「支持」すること、はたまた「不支持」をすることが出来ない。これにより全てのニュースで「思い通りのスタンス」を取ることは出来ないかも知れないが、結果として本作のシミュレーションゲームとしてのゲーム性を高めていると感じた。

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実際にプレイさせて頂いた際には、案外「スポンサーの好感度」の獲得方法が分からず、序盤でゲームオーバーになってしまった。作中ではニュースとスポンサーの関係を事前に知らせてくれるケースもあるようなので、しっかりとゲーム内テキストに目をとおしたり、挑戦を繰り返し傾向や設定を理解することが、望みどおりに世界を動かす条件となるだろう。

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さらに、ノルマのほか、「スポンサーに忖度」し過ぎた結果視聴者からの信頼を失い、大衆からの痛い視線が家族にも向けられてしまう、といった展開も作中では用意されている。

つまり、正式版をプレイした際には、大衆の信頼とスポンサーから得られる金銭、はたまた家族と仕事などを天秤にかけてニュースごとのスタンスを決定する必要もある。ストーリーとゲームプレイの双方で、板挟みになるような思いを体験できそうだ。

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▲カッコ付きの「お願い」である。

筆者は上述した要素でシンプルでありながら雄弁な作品に成り得ると感じたが、開発者にお話を伺ったところ、スピーディーな対応が求められる「緊急速報」といったシステムが実装される予定であるという。

また、物語の分岐に関してはかなり多く用意し、『Detroit: Become Human』のように分岐の樹形図をプレイヤーがゲーム内で確認できる仕様を実装する予定だそうだ。

高校生プログラマーと建築家、医療関係者からなるユニークな開発チーム。彼らがシリアスゲームを作る理由

本作を手掛けるテバサキゲームズは、現役の高校生プログラマーのテバサキ氏、建築家で本作においてはプランナーを務めるヒヅメ氏、医療関係者で本作のデザインを務めるエリナ氏の3名からなる開発チームだ。

お話を伺ったところ、チームが出会ったのは佐賀県で実施された『マインクラフト』を活用したワークショップで、開発したいゲームのアイデアがあるヒヅメ氏がテバサキ氏に声をかけ開発がスタートしている。

また、本作の印象的なテーマに関しては『Papers, Please』で知られるLucas Pope氏により2012年に発表されたゲーム『The Republia Times』をプレイしたことが思いついたきっかけであるという。

『The Republia Times』は独裁的な国家で暮らす編集者として新聞の内容を決定し世論を操作する無料のゲームだ。ヒヅメ氏は同作に感銘を受けつつ、作中の「軍事国家」である設定や「革命」といった出来事に日本のプレイヤーはリアリティを感じ辛いように感じたとのこと。

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(画像はThe Republia Timesより)

そこで、本作はプレイヤーに社会問題および課題を考えさせる「シリアスゲーム」でありつつ、同時に国内のプレイヤーも親近感を得やすい作品として開発されている。

なお、取材に際して硬派なテーマに関するバックグラウンドを語って頂いたが、実際にプレイして頂く際にはまずゲームを楽しんでいただき、「プレイした後に5%ほどテーマを感じてもらう」体験を目指しているという。

開発過程がnoteやzennで公開されているため、興味がある読者はテバサキゲームズのX(旧Twitter)アカウントとあわせてチェックしよう。

本作の発売時期は2024年内を予定している。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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