倫理観の欠如したシミュレーションゲームとして一部界隈でカルト的人気を誇る『Lobotomy Corporation』の世界を受け継いだ後継作『Library Of Ruina』。
このゲーム、司書となって図書館に訪れるゲストの方々を接待するシミュレーションゲームなのですが……
「接待=ゲストを殺す」
という、これまた倫理観の欠片もない“おもてなし(接待バトル)”に精を出すことになります。
しかも、始末……じゃなくて接待に成功したゲストは本になり、その本を使うと新たなゲストを招待できる仕組み。……つまり、ゲストを餌にゲストをおびき寄せ始末していくわけです。人の心がなさすぎる。
そうして本を集めていき、「たった1つの完璧な本」を手に入れるのが本作の目的になっています。そう、崇高なる目的のためにゲストたちの犠牲は仕方がないのです。命は軽い。
そんな本作ですが、開幕からアクセル全開。オシャレでカッコよすぎるオープニングムービーを見ていたら血しぶきが飛びまくっているし、ゲーム本編が始まったら主人公が壮絶な尋問を受けているし……。
読み進めると人間を精肉にして食べる団体も出てきて、オシャレで美しい世界観の中で垣間見える残虐なシーンに情緒がおかしくなりそうです。
でも、それがいいんです。
オシャレだけど残虐……そのコントラストに引き込まれる独自の世界観。それこそ『Library Of Ruina』の魅力となっています。
拷問から始まったり、接待が暴力だったり、倫理観のない図書館でのお仕事に不安な気持ちもあるかもしれませんが、殺人に対する抵抗感がなければ良いところなので、ぜひ働いていってみませんか。
文/DuckHead
※この記事は『Library Of Ruina』の魅力をもっと知ってもらいたいアークシステムワークスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
あまりに良すぎるオープニングムービー
まず伝えさせてください! このゲーム、オープニングムービーで流れる曲が、あまりに良すぎるんです。
オープニングムービーが始まった瞬間、飛び込んできたイントロなしの歌いだし一発で完全ノックアウト。この刹那、私の語彙力は完全に奪い去られてしまいました。
その曲調はピアノを主体としたジャズな雰囲気。ピアノ系の音ゲーの楽曲にあるような心地よさが全体を支配しており、この時点で好みにドストライクなのですが、その音楽をバックに耳に飛び込んでくるボーカルがまたとてつもなく良いんです。
その歌声は可愛らしさとともに儚さも感じるような、他ではあまり耳にしないような独特なもの。『Library Of Ruina』ってオシャレね。
『Library Of Ruina』という作品の魅力をこれでもかと言うほど詰め込まれたおよそ2分間のオープニングムービーを見終わったとき、PS4コントローラーを握りしめていた手はキーボードとマウスにスライドしていて……音楽配信サイトへ向かい、この曲を検索していました。
ほどなくして判明したのは、曲名が『String Theocracy』ということと、アーティストがMiliであるということ……え、Miliってあの!?
ご存じの方も多いかとは思いますが、Miliといえば、ゲームやアニメにも多くの楽曲を提供している日本の音楽グループ。『Babel』(『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』提供曲)や『sustain++』(『Ghost In The Shell: SAC_2045』エンディングテーマ)で耳にした方も少なくないのではないでしょうか。
個人的な話になってしまいますが、昔から『Deemo』のサントラでMiliの楽曲を繰り返し聴いていて好きだなぁと長年思っていたところに、最近ひょんなことから知った『RTRT』という曲にもドップリとハマり込み、Miliのすごさを感じていた次第。
当然、『String Theocracy』も購入ボタンを即クリック。端末へ曲を移し、スピーカーでガンガン流しながら鬼リピート。祭りの始まりです。
それにしても、オープニングにこの曲が流れるとは……素晴らしい。もうこの時点で『Library Of Ruina』の優勝です。皆さんもMiliを聴きましょう。
本作はゲーム内にアートブックとサウンドトラックが収録されており、気になった曲はすぐに聞き返すことができるのもうれしいですね。
拷問から始まる図書館の司書としてのお仕事
本作の物語の幕開けは、名前も身分も分からぬ謎の男性が、これまた名前も身分も分からぬ謎の女性から、四肢が二度と使えなくなるような壮絶な尋問を受けているシーンから。こわっ。
オシャレでセンスをビンビンに感じるオープニングムービーとは裏腹に、ゲーム本編は開始早々バイオレンス……。よくよく思い返してみると、オープニングムービー中に血しぶきが飛びまくっていたような気もします。
さて、男を拷問していた女性の名はアンジェラ。
彼女は図書館の館長であり、図書館に侵入した彼から目的と経路を聞き出そうとしていたのです。なんでも「この図書館には招待状を送られていない人物が侵入することは絶対にできないはず」なんだとか。
しかし、拷問の甲斐なく…… 四肢を痛めつけられ息も絶え絶えな侵入者は何が起きたのかわからない様子で、体の痛みに耐えかねて意識を失ってしまいます。
凄絶な拷問の果てに気絶したローランが目を覚ますと、彼の目の前にはアンジェラの姿が。「新たな身体を与えたのでこの図書館で司書として働きなさい」と命じてきます。自称 “我慢強く慈悲深い”彼女のアンジェラさん、怖すぎです。
どうやら、アンジェラが招待状を送って図書館に招き入れた都市の住民、通称「ゲスト」の方々を「接待」して「本」にすることがこの図書館の司書としてのお仕事らしいです。
物語のプロローグから、知らない情報が怒涛の勢いで襲い掛かってくるのですが、それらに対する詳細な説明はほぼありません。『Library Of Ruina』のストーリーは謎だらけ……でもその疑問点はゲームプレイを進めていくことで、次第に明らかにされていくので、ぜひ読み進めてください。
図書館に訪れたゲストを「接待する(殺す)」業務
図書館にやってきたゲストを「接待」していくことになるわけですが、端的に言ってしまえば「接待=ゲストを殺す」ことに他なりません。
招待状を送ってやってきたゲストを殺して本に変えてしまう。煌びやかな図書館の中で行われる残虐な接待……このオシャレとバイオレンスのコントラストが『Library Of Ruina』の大きな魅力なのです。
さて、主人公をはじめとする図書館の司書たちは、行動の種類と回数が記載された9枚のページで構成された、カードゲームにおけるデッキのような “バトルページ” を使って、ゲストの接待を試みます。
そして、ゲストの体力を削り切れば本にすることができ、こちらの体力が削り切られてしまえば接待はやり直し。攻撃属性や防御の方法にもいくつか種類があったり、ゲストの行動が開示されていたりするため、『Library Of Ruina』は戦略性の高いゲームという印象。
実際、最初のうちはなんとなーくの適当な感じでバトルページを選んで接待に勤しんでいたのですが、ある程度ストーリーが進んでくると、そんな甘ったれた態度ではゲストの接待を完遂することなどできず、先を見据えてじっくりと考えながらページを選ぶ必要に迫られることとなりました。
ただ、しっかりとした戦略性を持つ『Library Of Ruina』ではありますが、接待バトルはダイスロールの結果によってその全てが決定されるため、運要素も強め。
戦略自体は悪くなかったはずなのに、ダイス運が悪かったが故に、相手の体力が1だけ残った状態で負けてしまう……それが、『Library Of Ruina』の恐ろしさであり面白さなのです。
ちなみに、完全な余談にはなりますが、一般的なコマンド式のゲームでは戦闘の時間経過を「1ターン、2ターン、3ターン……」と数えていくことが多いですが、本作では「第1幕、第2幕、第3幕……」と数えていきます。細部にまで世界観の演出が徹底されているからこのゲームは最高なんですよね。超好き。
プレイすればプレイするほど世界観に引きずり込まれる
ゲームを遊ぶ際、その根幹をなすシステムはもちろんのこと、それらを包み込む作品の世界観も大事にしたい……そんな人に朗報です。
『Library Of Ruina』は、そのゲームシステムのほぼ全てが作品の舞台である図書館と密接に関わっています。
例えば、 “図書館の成長” は舞台が図書館であることを活かしたシステムのひとつ。
図書館には階層がいくつかあり、図書館の成長は、接待バトルで条件を満たすと各階に出現する “幻想体” を倒すことにより進んでいきます。
これによって得られる恩恵は、接待バトル時のパーティメンバーとなる司書の人数が増えたり、新たな階層が開放されたりと様々。図書館を成長させないとストーリーが進行しないこともあるため、ゲーム攻略において避けては通れない道となっています。
ストーリーの進行とともに接待バトルを進めて本を獲得し、その本を燃やしてバトルページをゲット。そのバトルページを使ってデッキ作って更に接待バトルを進め、条件を満たしたら幻想体と戦って階層をレベルアップ。
それによって解放された司書たちに対して十分な戦力となるコアページとバトルページを与えるため、新たに解放されたストーリーで接待バトルに勤しむ……。
『Library Of Ruina』はそのタイトルが示す通り、 “図書館” という一本の大きな軸がゲームの中に通っていて、図書館と本を中心にしてゲームが進行し続けていくため、数多く用意されているシステムも図書館からの派生として理解しやすく、遊べば遊ぶほど作品の世界観に引きずり込まれていきました。
『Library Of Ruina』の世界を彩る個性的なキャラクターたち
最後に忘れてはいけない要素としてキャラクターについてもお話させてください。キャラクターはゲームの世界観を形作る上でとんでもなく大事なポイントですからね。
まず、なんと言っても、主人公のローランと館長のアンジェラが魅力的。これは絶対。
ローランの気だるげな感じ、アンジェラのクールで冷静な雰囲気、ふたりのやりとりが本当に良い。ストーリーパートはフルボイスなんですが、立ち絵を見て感じるイメージともピッタリです。
また、物語を進めて図書館に新たな階層が増えると、新キャラクターたち(指定司書)が続々登場。彼ら彼女らと交流を深めていく様子もたまりません。
司書たちの口から図書館やアンジェラについて語られることで、この図書館の存在意義や過去に起こった出来事といったストーリーに関わる謎が明らかになり、アンジェラというキャラクターの解像度が高まっていきます。
悲しいかな、指定司書たちとの会話で真っ先に分かってくるのは、アンジェラが信じられないほど嫌われているということ。
彼女たちもローラン同様、アンジェラに協力をしなければ図書館の外に出ることはできず、図書館に招かれたゲストを殺し続けなければ先のない運命にあるのですが、それと同時に殺人に対する抵抗感は強い模様。
「こんなやり方は間違ってる」「あなたを絶対に許さない」と、アンジェラに感情をストレートにぶつける人もいれば、ある種の境地に達し、諦めにも似た感情で淡々と接待を続ける人までさまざまです。
アンジェラに対しては負の感情を剥き出しにしていても、ローランに対しては優しかったりするなど、キャラクターの二面性も魅力として映ります。
さらに、図書館へと招かれていくゲストたちも好きになってしまうようなキャラクターたちばかり。
ただ、「このキャラ好きだな~」と思いながらストーリーを見ていたら、数分後には「接待」されて本になって退場……みたいな展開は少なくなく、驚きます。「あっけなさすぎる……」と思うのも束の間、また違う魅力をまとったキャラクターが現れ、そのキャラもすぐに図書館へ招かれていく……。
そのベルトコンベアーのごときキャラクター消費のスピード感は尋常ではありません。使い捨てっていう扱いにしては、ちょーっとキャラクターが良すぎやしませんか……?
最後に少し余談となりますが、本作を手がけるのは韓国の人気インディーゲームスタジオ“Project Moon”。
1作目の『Lobotomy Corporation』、今回紹介した2作目の『Library Of Ruina』、3作目の『Limbus Company』と、これまで3作を世に送り出しており、そのダークな雰囲気で熱烈なファンを獲得しています。
これら3作品は世界観を共有しているとのことなので、今作が気に入ったら他作品にも手を出してみてはいかがでしょう?
ちなみに、『Lobotomy Corporation』については、ファンである友人から「時間が溶けてやばいから気軽に手を出すな」という、とても分かりやすいオススメのお言葉をいただきました。
Steamなどで先立って配信され、名作として人気を集めていた『Library Of Ruina』。家庭用ゲーム機での発売により、プレイをするハードルがより下がったことかと思います。この機会に是非プレイをして、その世界観にどっぷりと浸ってみてはいかがでしょうか。
『Library Of Ruina』のNintendo Switch版、PS4版は2024年4月25日より発売中です。価格は4950円(税込)。Steam版では日本語字幕のみ対応でしたが、今回のコンソール版では字幕・ボイスともに日本語に対応しています。パッケージ版には特典もついているので、チェックしてみてください。