昨今、プレイヤー数の増加だけでなく、競技シーンの大きな盛り上がりも見せているシューター系ゲーム。基本プレイ無料タイトルが数多く存在している中でも、キャラクターたちがさまざまな技を駆使して戦う「ヒーローシューター」が台頭してきているように思います。
勝利を収めたときの達成感や、連携がキマったときの爽快感にハマる人にはハマる一方で、ちょっと距離を置いている……という方もいるのではないでしょうか。筆者自身、かつてはそんなハイカロリーなプレイを楽しんでいた身ですが、今はちょっと休憩中。
そんな中、2024年5月に開催された「State of Play」にて、はじめてゲームプレイ映像が公開された新作タイトル『CONCORD』(以下、コンコード)をプレイしてきたのですが……、すごかった。
まず何より、本作は「ロールの概念を超えたプレイ」が楽しめるんです。これ以外にも特徴的な点をいくつも持つ、ヒーローシューター界において「異質」とも言える、だけどどこか馴染み深いというなんとも不思議かつ魅力的な作品でした。
本来交わることのなかったシューター系のサブジャンルたちが全力で殴りかかってくるような、“マジで”FPS好きなら誰もが楽しめる面白さが隠れていたんです。
本記事ではそんな新作FPS『コンコード』の魅力を、ゲームプレイ時の感想と交えて具体的にお伝えできればと思います。記事後半では、本作のIPディレクターを務めるキム・クライネス氏とリードゲームプレイデザイナーのクロード・ジェローム氏へのインタビューも掲載していますので、あわせてご覧ください。
取材・文/Squ
「FPSやってるフレンド」を誘えば一緒にやってくれそうな、6つのルールを搭載。てんこ盛り感が楽しい
『CONCORD』は5対5で戦う一人称視点のヒーローシューターです。色鮮やかなサイエンス・フィクションの世界を舞台に、はみだしモノや無法者、冒険者が傭兵として活躍するノーススターの一員としてバトルに挑みます。
ヒーローシューターと一口にいっても、バトルロイヤルからタクティカルシューターまで様々です。ただ多くのゲームで共通しているのは、「ロールや武器を踏まえてチームで協力して、勝利を目指す」という部分です。
プレイヤー同士が協力しあうということに主眼を置くことで競技性を高めているわけですが、これにはボイスチャットでの連携や、仲間内でパーティを組んで戦うことが必要になってきます。
ゲームプレイ自体に「チームでの勝利」という明確な面白さがある反面、与えられたロールをまっとうできなかったり、連携しなければならない場面でミスしたり……といった失敗もあります。もちろん、それらの失敗を糧により高みを目指すのもゲームの醍醐味ですが、ヒーローシューターから離れてしまう要因のひとつという側面も持っています。
この『コンコード』というゲームでは、クラシックなFPSを思わせるDNAをも取り込むことでひとりでもみんなでも楽しい、ヒーローシューターへの苦手意識があっても楽しめるタイトルに仕上がっているのです。
そう思わせてくれる要素を、より具体的に見ていきましょう。まず、本作のマップにはセーフゾーンが存在していません。引き際こそありますが、明確なチームアップのタイミングがなくなることで、より一般的なFPSタイトルに近いプレイフィールを得られるようになっているようです。
このFPSタイトルに近いプレイフィールというのは、間口を狭くしているという意味ではありません。むしろ逆で、「FPS」というジャンルに触れたことのある人ならば馴染み深く楽しめるような仕組みになっています。これは本作のゲームモードがある種のヒントになっているようで……、ヒーローシューターじゃあまり見ないようなモードもあるんです。
発売時点で実装される6つのモードと、それぞれのルールは以下の通り。
トロフィーハント
リスポーン型のモードで、敵チームのメンバーを倒しながら落としたバウンティカードを拾い、自チームのポイントを稼ぐ。時間切れになる前に、先に目標点数を達成したチームが勝利。カーゴ・ラン
非リスポーン型のモードで、両チームが「ブルーバディ」と呼ばれるロボット型の貨物輸送システムを回収することを目指す。ブルーバディを指定されたゾーン内に設置して、敵チームから守り切ることができれば勝利。クラッシュ・ポイント
ラウンド形式を採用した非リスポーン型のモードで、両チームがマップの中心にある占領ゾーン制圧をかけて競い合う。エリア・コントロール
リスポーン型のモードで、両チームがマップを駆け巡りながら、複数の占領ゾーンを確保するために競い合います。2つ以上のゾーンを占領することでチームのスコアが上がり、先に必要ポイントを獲得したチームが勝ちとなる。シグナル・チェイス
リスポーン型のモードで、マッチ内で転々と移動する1つのゾーンを両チームが占領しようと競い合う。制限時間以内にターゲットスコアを先に到達したチームが勝ちとなる。テイクダウン
リスポーン型のモードで、両チームが敵クルーの殲滅を目指す。1キル成功すると、チームに1ポイント与えられる。制限時間以内にターゲットスコアを先に到達したチームが勝ちとなる。
欲張りセットすぎる!
間口が広すぎるにもほどがある!FPSやってるやつ誘えばいっしょにやってくれそうなてんこ盛り感、最高だと思います。
ハイブリッドなキャラクターで「ロール」の概念を超えた立ち回りができる。さらに多少の単独行動もできちゃうし、設置物はラウンドを超えて残る、超ユニークな仕様
すでに『コンコード』の間口の広さは伝わったかと思いますが、もっともっと広いんです。冒頭でも述べたとおり、このゲームでは一般的なロール【※】の概念が存在していません。厳密には、キャラクターたちが持つ個性とハイブリッドさが既存のロールの枠を飛び越えているのです。
※ゲーム中における役割のこと。協力を前提としたゲームの場合、何かしら苦手なことが存在していることが多い。一般的に防衛に主軸をおいた「タンク」、ダメージ稼ぎを優先する「DPS」、回復に特化した「ヒーラー」などがいる。
たとえば、ヒーローシュータープレイヤーの間でも話題になった「レノックス」。彼はヘビーハンドガンとリボルバーを使い分けて戦うキャラクターで、一見DPSキャラクターのように見えますが自己回復能力を持っています。
「ドウ」は、ドーム型のバリアを展開する「セーフティ・ドーム」を使用できる、一見するとタンク風のキャラクターです。なのですが、他プレイヤーを継続的に回復できる設置型アイテムを持っているうえ、回避時に自己回復できるという大盤振る舞い。さらに3点バーストライフルも所持といろいろとスゴい。
ヒーローシューターってこんなに回復させてくれるっけ……?
……と、多少の単独行動も可能な仕様となっているのです。実際今回の体験会でも、遊撃を目的としてマップ中を移動するプレイヤーも多かった印象です。
もっとも、すべてのキャラクターでこの立ち回りが可能ということはありません。たとえば「1-OFF(ワンオフ)」はヘイト管理が得意なキャラクターと一緒に行動することもできますし、選択肢の多いゲームデザインになっているようです。
ちなみに、先ほどご紹介した設置アイテムにも特徴があります。通常この手の設置型アイテムはラウンド終了時やキャラ変更時に消滅してしまうのですが、本作ではなんと「残ります」。一見単純な変更にも思えますが、ラウンドを追うごとにマップに非対称性が増していくというユニークな仕様です。撃ち合いだけでは終わらない、新しい視点の戦略性が楽しめそうです。
「シューターゲームが大好き」な開発スタジオだからこその間口の広さ。キャラクターには「多少の尖りを許容し、個性を優先した調整」を施す。【IPディレクター・リードゲームデザイナーインタビュー】
──シューター系ゲームは基本プレイ無料でリリースされることの多い印象を受けます。本作を一般的なゲームと同じように、値段を設定して発売することとなった経緯を教えてください。
キム・クライネス氏(以下、キム氏):
ゲームリリース時から完全な体験を提供することで、本作を遊ぶユーザーさんに楽しんでほしいと思っています。
本作では発売時点で16人のキャラクター、12種類のマップ、6つのゲームモードを楽しむことが可能となっていますが、これを実現するためには従来の手法でリリースすることが最適と考えました。
また、本作ではシーズン形式を採用しており、ゲームの発売以降もキャラクターやマップ、新たな物語が一種の完全な体験として無料で提供されることも大きな理由のひとつとなっています。
クロード・ジェローム氏(以下、クロード氏):
くわえて、本作が通常のシューターゲームではなく、キャラクターベースのゲームであることも理由のひとつです。好きなキャラクターを縛りなく使用できるので、よりキャラクターに愛着を持ってもらえると考えています。
──本作ならではの魅力や、突出した特徴があれば教えてください。
クロード氏:
このゲームの面白さは多層的に重なり合っている部分があるので、まずはそこをご説明しましょう。
基礎の部分はなんといっても戦闘で、銃を使ったプレイングやキャラコントロールといった側面で満足感を得られるようなプレイ感を目指しています。
次の層では、非対称的なキャラクター同士のやり取りを通じて、格闘ゲームのような面白さをヒーローシューターというジャンルに取り込むことに挑戦しました。そこにさらに戦略性が絡んできます。どのキャラをいつ使うのかといった読み合いのような要素が重なるわけですね。
──撃ち合いだけで完結する単純なゲームではないわけですね。
クロード氏:
そうなんです。状況に応じた判断能力や戦略性といった部分が求められるので、ときには頭脳がゲームスキルに勝るときもあるでしょう、こういった2つの要素が絶妙なバランスで絡み合うことがこのゲームにおいて重要な部分となっているのです。
さらにこのゲームでは、世界観に没頭できるような新たな物語性を追求していて、キャラクター自身の身近さや、キャラクター同士の人間関係といった部分でプレイヤーが共感を得られるような作品にしたいと考えています。
──近年、シューターゲームだけを取ってみても、タクティカルシューターやバトルロイヤルを始めとした様々なジャンルが存在しています。その中で「ヒーローシューター」というジャンルをチョイスした理由をおしえてください。
クロード氏:
大きな理由としてあげられるのは、「開発スタジオ内でマルチプレイヤーゲームが好きな人間が多い」ということ、くわえて「開発経験豊富なスタッフたちの長所を活かすことを最大限考えた」のふたつです。
我々自身もシューターゲームが大好きなので、様々なゲームの良い部分を抽出し、伝統的な部分も受け継いだような作品にしたいと考えています。一方でキャラクターを重視したひとつのチームや家族のような存在として扱っていることも理由のひとつとしてあげられると思います。
キム氏:
ただ、シューターというジャンルの関係上、マルチプレイヤーが主軸と思われがちであることも事実です。ストーリーやキャラクター性という部分に対してもっと注目してもらえるように作品として成長していきたいと考えています。
──初めて本作の詳細が発表された際のPSBlogには「私たちは、お気に入りのアートやアニメ、映画、シリーズ作品にインスパイアされ、理想的なSFアドベンチャーに捧げるラブレターとして『CONCORD』を制作しました。」と記載があります。お二人の中で影響を受けている作品や作風があれば教えてください。
キム氏:
まさしく本作はサイエンス・フィクションというジャンルに対するラブレター的な作品です。これはただ単にラブレターというわけではなく、より高きものを目指すという意味も含まれています。『コンコード』は我々にとって馴染みのある部分も多分に含まれている一方で、プレイヤーをアッと驚かせたい。そんな気持ちが込められた作品です。
私は、キャラクターを通してそのキャラクター自身のことを知れるような作品が大好きです。本作にも様々なバックグラウンドを持ったキャラクターがたくさんいるのですが、そのキャラクターの見た目やプレイスタイルといった部分を通じて、みなさんが共感できる部分を探していただけると嬉しいです。
ジャンル的な部分で行くと、フィクション・ノンフィクションを問わずSFやファンタジーの作品が大好きなので、そういった部分は取り込んでいきたいなと考えています。
クロード氏:
私もキャラクターと絆を感じたり共感できるような作品が大好きで、インスピレーションを受けています。プレイスタイルやゲームスタイルという点で補足をすると、我々が目指しているのはキャラクターの扱いが上達していくにつれて、キャラクターと一体になるような体験です。
本作には掃除機やゴミの塊を戦闘の主軸として立ち回る1-OFF(ワンオフ)というお掃除ロボが登場します。たとえば、彼を使用していくうちに「掃除をしようかな」という気持ちが芽生えてくる、そんな作品を目指しているんです。
ゴミを拾うことで発射できる高火力な「ゴミ爆弾」も用意しているので、その共感は無駄にならないとお約束しますよ。
──それぞれのキャラクターたちのスキルの個性を強く感じられる作品でした。PvPのマルチプレイヤーゲームであることを想定すると調整の難しさが存在するように思うのですが、苦労した点などあれば教えてください。
クロード氏:
バランス調整はパワーバランスが均等になることを目的として実施されるものが大半だと思いますが、本作では各キャラクターに大きな違いがあるという部分を非常に重要な要素としています。
そのため、多少の尖りを許容し個性を優先した調整が施されているとお考えください。
──現段階で、本作をeスポーツをはじめとした競技シーン向けの構想などがありましたら教えてください。
キム氏:
リリース時点で特に大きな構想はありませんが、シーズン制でコンテンツが展開されていくゲームとなるので、プレイヤーの反応には注力していきたいと考えています。
──ゲーム内イベントやコラボスキンのような構想はありますか?
クロード氏:
現時点ではゲームの基盤部分の構築に力を入れている段階です。ただ今後どんどん進化していくゲームなので、コミュニティとともにどのような成長をしていけるのか楽しみにしています。
キム氏:
私としては、本作に搭載されているコーディネート機能を活用して、プレイヤーたちがどのようなファッションを見せてくれるのか非常に楽しみです。
──今回本作を遊んでみて、明確なチームアップを必要としない気軽なゲーム性が非常に印象的でした。同時に、そういった部分が各々のキャラクターの個性を生かしたバランス調整やゲーム性に繋がっているようにも感じたのですが、どのようにして今までのヒーローシューターとは違ったコンセプトの作品に至ったのでしょうか。
クロード氏:
この質問を待っていました!
本作における他のヒーローシューターとの明確な違いは設置アイテムです。本作ではどのキャラクターもなにかしら設置系のアイテムを所持しているのですが、これらは一度設置してしまえば壊されない限りラウンド終了後もその場に残り続けます。
例えば、味方とは離れてステルスをしながらマップ中に敵の位置を知らせるカメラを設置してまわるようなプレイングも可能となるわけです。
ずっとチームで連携をし続けるというのは、時にストレスになったり疲れてしまうかもしれません。そういった時にステルスで立ち回ったり、遊撃をしてみたりといったプレイングをご提案できればと思っています。
これはどのキャラクターにも共通していることですが、異なったプレイスタイルを好むユーザー同士でも楽しめるという部分を目指しています。
キム氏:
ゴミや弾丸を拾って攻撃するような、奇抜なキャラクターがいるのもそういった思いの現れなんです。
一同:
(笑)。
クロード氏:
今回開催されたメディア向け先行プレイでは10キャラクターのみ使用可能となっていましたが、今後開催される予定のベータテストでは16人全員遊べる状態でご提供する予定です。ぜひお気に入りのキャラクターを探していただければと思います。(了)
様々なゲームの良い部分を抽出し、伝統的な部分も受け継いだような作品にしたい。一見大きなこの理想は、様々なマルチプレイヤータイトルで開発経験のあるスタッフたちが所属するFirewalk Studiosだからこそ実現できることなのかもしれません。
今回ご紹介した『コンコード』は、2024年8月24日の発売が予定されていますが、その前にいち早く試したい!という方も多いはず。そんなプレイヤーたちに向けて、ベータテストが開催されます。PS5/PCともに日程は以下の通り。
ベータ(アーリーアクセス):
2024年7月13日(土)から7月15日(月・祝)
オープンベータ:
2024年7月19日(金)から7月22日(月)
なお、1回目の日程に関してはゲーム本体を予約したユーザー向けの先行アクセス、2回目の日程はすべてのユーザーを対象としています。のですが……、なんと予約者にはアーリーアクセス権のコード4人分が付属しています。4人も沼に落とせるってコト!?
また、今回の記事ではあまり触れることが出来ませんでしたが、本作ではマルチプレイヤーと並行してストーリー部分も非常に力を入れているとのこと。リリース後もハイペースでストーリーが更新されていくようなのでこちらにも注目しつつ、まずはベータテストまでを指折り数えて心待ちにしましょう。