『8番出口』
2023年11月にSteamで配信を開始した同作は、発売されるやいなや、圧倒的な注目を集めました。
シンプルなルールと、リアルに表現された地下通路の風景、そしてプレイヤーを驚かしてくれる「異変」の数々。ゲーム実況などでも多くの有名配信者にプレイされ、いまとなっては知らない人の方が少ないほどの大人気作に成長。続編『8番のりば』のほか、さまざまな「8番ライク」作品がいくつも生まれるほどの人気ジャンルになっています。
一方、本作をプレイしてこう思ったユーザーもいるのではないでしょうか。
「こんなにリアルならもっと作品に没入したい。なんなら世界に入り込みたい」
そんな皆さんに朗報、「VR版」が7月12日(金)にリリースされます。
その名はなんと『8番出口VR』! ……ド直球のタイトルですね。
実際にプレイしてみると、基本システムはそのままに没入感あふれる「異変探し」を楽しめる作品となっており、原作を完全クリアした筆者でさえ「怖えぇ…」と思わせる魅力がたっぷり詰まっていました。
本稿では、オリジナル版『8番出口』とはひと味異なる、本作ならではの新たなホラー体験をご紹介していきたいと思います。
文/cookieP
※本文中に一部、作中に登場する「異変」に関するネタバレが含まれます。
VRの“圧倒的没入感”で「本物の駅」にいるような錯覚を覚える
さて、あらためてですが『8番出口』はいわゆる「異変」を探すホラーゲームです。ゲームの舞台となる地下通路には一定間隔でさまざまなオブジェクトが配置されています。そして、その中にはまれに通常と少し異なるオブジェクト……いわゆる「異変」があり、それを見つけた場合は来た道を引き返さなければならないのです。
もし、異変があったのに見落としてそのまま進んでしまうと進捗度はすべてリセット。これらの工程を繰り返し、連続して正解の道を8回通ることができれば、無限に続く地下通路から脱出することができます。
この基礎ルール部分は『8番出口VR』でもまったく同じです。大きく変わったところでいえば、グラフィックがVR用に最適化されており、どこかマットな雰囲気に。また、PCを経由しなくても「Meta Quest」単体で動くよう調整されています。
また、本作にはVRならではの要素として「手」も追加されていますが、こちらの要素については後ほど詳しく掘り下げていきたいと思います。
……というわけで、ひと通りの概要をつかめたところでさっそくゲームを起動してみましょう。
ゲームを起動すると本家と同様にメニュー画面はなく、お馴染みの地下通路のど真ん中からスタート。少し移動をしてみると、視点はVR酔い対策として一定角度ごとに視点が変化していくスナップターンが採用されていました。なお、オプションメニューを開くことで視点をスムーズに回転するスムーズターンにも変更可能です。
そして、周りを見渡して感じたことが……。
──これ、本物の駅だ。
「コツン…コツン…」と鳴り響く歩行音、絶妙に汚れた壁のテクスチャ、辺りをほのかに照らすライティング。駅を構成するひとつひとつの要素が折り重なり、本当の駅に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥ります。
実際、リアルでも深夜の駅の地下通路って結構怖いですよね。不思議と体がゾワゾワとしてくる「リミナルスペース」的な恐怖感を感じられます。このようにVRになったことで、『8番出口』オリジナル以上の「臨場感」がプラスされ、実体験に近い形でプレイヤーの精神にグサグサと恐怖を突き刺してきます。
迫力マシマシで怖さ8倍。あげよ悲鳴。探せよ異変
さて、メイン要素の「異変探し」ですが、これがそもそもVRとの相性が抜群……!
VRでは見たい方向を感覚的に見れるので、異変の取りこぼしも少なく、アハ体験のような楽しさがあります。その一方、アクティブな異変はかなり怖さが増しています。
さっそくですが、この画像をご覧ください。
静止画なので多少和らぐかもしれませんが、ガチで怖くないですか……?
見ていただいたのはオリジナルの『8番出口』でもおなじみ、プレイヤーを見つけると追いかけてくるタイルの人です。画像からでもハラハラ感が伝わるかと思いますが、これを実際のプレイの中で体験すると、本当に人に追いかけられているような感覚に陥ります。
しかし、ここで思い出してほしいのは、本作はあくまで“雰囲気”で楽しむホラーゲーム。決してゴリゴリなホラーゲームってわけではないのです。そのため、実は本作では本家『8番出口』であった、捕まると効果音とともに画面全体がジャックされてしまうシーンがカットされています。さすがにあのシーンをVRで見たら、心臓飛び出ちゃいますからね……。
このように、極度に怖い部分は少し軽減しつつ、雰囲気づくりの素晴らしさで一部のホラー演出はオリジナル版以上に楽しめるようになっていました。
原作にはない「手」の概念。これ…なにに使うの?
さて、冒頭でも触れた通り、本作にはオリジナル版『8番出口』にはないVRならではの要素として「手」の概念があります。しかし、原作をプレイした方ならご存じの通り、本作には使用できるアイテムや持てるアイテムは特にありません。では、一体何に使うのか……?
正解はコレです。
……
おじさんをひっぱたけます!
マジでこれに限ります。
とはいえ、このおじさんも『8番出口』を代表する要素のひとつ。そのおじさんと触れ合うことができるようになったというのは、おじさん愛好家の皆さんにとってはこれ以上なく嬉しい新要素となるでしょう。おじさんのスマホの画面がバキバキにならないことを祈るばかりです。
また、手を使うことでいろいろとプレイヤーの感情を表すこともできるので、配信との相性はかなり良さそうです。
今回の『8番出口VR』をプレイする前に、筆者は原作『8番出口』の異変はすべて見つけ、完全クリアをした状態で「VR版」へ挑みました。しかし、それでもVR版には新鮮味があり、ゲーム中の仕掛けや異変を知っていても「怖い」と思えます。それだけVRの臨場感はすさまじく、同時に本作との相性の良さも感じさせられる体験でした。
また、プレイする際の注意点として……座って本作を遊ぶと「おじさんがかなり大きく見えてしまう」ので、これを「異変」と見間違えないように注意しましょう。筆者は何回か騙されました。
『8番出口VR』はMeta Storeにて、Meta Quest 3、Meta Quest Pro、Meta Quest 2向けに7月12日(金)発売、価格は税込690円です。大人気作『8番出口』がどんな進化を遂げたのか、気になる方はぜひ本作に触れてみてください。