『ゼルダの伝説』という名前のゲームなのに、実はゼルダじゃなくてリンクが主人公なことに気づいた時……人はちょっと大人になっている気がする。
あれはいつ頃だろうか。中学生くらいだっただろうか。『スマブラ』を遊んでいたら、突然友人が「『ゼルダの伝説』ってリンクが主人公なのに『ゼルダの伝説』ってタイトルだよね」と言った時だっただろうか。私も「たしかに!」と思った。そんな記憶がある。
だけど、今回ばっかりはゼルダ姫が主人公です。
なんと、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』を発売日より少し先に遊ぶことができました。そう、今年のNintendo Directにて「ゼルダ姫が主人公の『ゼルダの伝説』」として発表され、大きな話題を呼んでいた今作をちょっと早く遊ばせていただきました。やったー!
すごく率直ではあるのですが、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』がどんなゲームなのかをお届けしていこうと思います。「カリモノ」や「シンク」といった新要素から、そもそもどんな形で進んでいくゲームなのかも含めて、いろいろ書きました。
思った以上に、「新しい2Dゼルダ」として仕上がっています。
さらに、個人的には想像以上に歯ごたえのあるゲームでした。
で、「新しい2Dゼルダ」とは? どういう「歯ごたえ」なのか?
うーん、そうですね。プレイする前に、ちょっと情報を「カリモノ」するような気持ちで読んでいただけると、いろいろとわかるんじゃないかと思います。
姫が自力で帰ってきた。
ゲームをスタートすると、「リンク」を操作する形で物語が始まります。
やっぱりゼルダ姫ではなく、リンクが主人公のゲームだったのでしょうか。
いえ、これはいわゆる「チュートリアル」です。
『ゼルダの伝説』をプレイしたことがある人にはお馴染みの操作感で、ゼルダ姫を救いに行きましょう……と思っていたら、すぐにゼルダ姫を救出することに成功します。もしかしたら、歴代最速のゼルダ姫救出だったかもしれません。
そう思ったのもつかの間、我らがリンクは謎の裂け目に落ちてしまいます。
一方、結晶のようなものに閉じ込められていたゼルダ姫は、無事脱出。操作がゼルダ姫に切り替わり、自分の足でハイラル王国へと戻っていきます。ここまでが『知恵のかりもの』の冒頭です。
なんというか、いきなり「クリアしたあとのお話」みたいなものが始まります。
とりあえず、王さまにこの事態を報告しましょう。
ところが、ハイラル王と側近のふたりも、いきなり謎の裂け目に落っこちてしまいます。そして、ちょっと悪そうなオーラをまとって帰ってきました。すると、いきなりゼルダ姫を牢屋に入れるよう、兵士に命令をくだします。ゼルダ姫は、お城の牢屋に閉じ込められてしまいました。
驚くことに、ゲームを遊び始めてから15分くらいで二度も閉じ込められています。
これはさすがに「踏んだり蹴ったり」と言ってもいいのではないでしょうか。
いきなり大ピンチが二度も訪れています。もう閉所はこりごり。
困り果てたゼルダ姫の元に、「トリィ」という不思議な存在がやってきました。
黄色くて丸く、いきなり話しかけてきます。
「トリィロッド」なるアイテムを渡してくれたので、どうやらこれは困り果てたゼルダが生み出した幻覚などではないようです。そして、この「トリィロッド」が今作のキーアイテムです。この不思議な杖を使い、「カリモノ」を使うことができるようになります。
家具も、魔物も、「カリモノ」できます。
「カリモノ」は、その名の通り、フィールドに置かれているなにかを「お借り」することができます。
たとえば、ゼルダ姫が閉じ込められているこの牢屋。
自分ひとりの力では、とても抜け出せません。
こんな時こそ、「カリモノ」の出番です。「光っているもの」にZRボタンを押すことで、お借りしたいものを覚えることができます。たまたま牢屋の中に置かれていた「テーブル」を覚えました。
このテーブルをふたつ重ねることによって、足場を作ります。
そして牢屋の横にあった抜け穴に辿り着き、無事に脱出できました。
テーブルさん、ありがとう。
これが、「カリモノ」です。『ゼルダの伝説』といえば、やっぱり謎や仕掛けを解き明かすこと。そんな『ゼルダの伝説』の遊びが、今回は「フィールドに置かれている何か」をお借りすることで解いていくようになっているのです。
もちろん、「カリモノ」は、組み合わせの自由度も高めです。カリモノで出した家具やオブジェクトを組み合わせて、いろいろと問題を解決していきましょう。
たとえば、上のシーン。
もうそろそろでお城を脱出できそう……なのに、わずかに届かない。こういうところに「渡れる何か」があればいいのにと思った時、カリモノの「組み合わせ」を試してみましょう。
私は、最終的に「観葉植物」+「ベッド」+「木箱」を組み合わせて、長めの足場を作り出して渡ることができました。まず観葉植物で高さをカバーする。そしてベッドで足場の距離を伸ばす。最後に木箱で高さをカバーして、向こうにジャンプ。
他にも、橋が壊れて渡れない場所に、ベッドをふたつ繋げて「橋の代わり」にすることもできます。ベッドを橋にして渡る体験は、『知恵のかりもの』でしかできないかも。
この「どうにか突破できないか試行錯誤をしている時間」、まさに『ゼルダの伝説』の醍醐味です。しかも、攻略法はこれ以外にもあるはず。カリモノの組み合わせは無数にあるし、もしかしたらもっとスマートにあちら側に渡ることもできるのかもしれません。
なんだか、そういう「解き方が無数に用意されていそうな感じ」に、『ブレス オブ ザ ワイルド』の面白さが活かされているような気がします。……気がします。
「カリモノ」、まだまだこんなものではありません。
そう、「なにかをお借りすることができる力」なので、「物体や家具しかカリモノできない」とは一言も言っていないのです。なんと、敵として登場する「魔物」も、一度倒すとカリモノにできるようになります。
最初に出会う魔物は、「ゾル」。
最近は「チュチュ」になりがちですが、今回はちゃんと「ゾル」です。
カリモノで出した岩をゾルにぶつけて、撃破。すると、倒したゾルをカリモノにできるようになりました。お借りしたゾルは、もちろん相手の魔物に向かっていきます。
ゆけっ! ゾル!
気分は「魔物トレーナー」といったところでしょうか。
もう、ゼルダ姫が戦う必要もありません!
今作は、この「ゼルダ姫自身は戦わない」戦い方が重要になっています。
「えっ、本当に倒した魔物はみんなカリモノにできるの?」と疑問に思っている方、よくわかります。こういうのは、大体「大人の事情」で一部の魔物はカリモノにできなかったりしますよね。
ですが、今作は大ボスを除き「敵として登場してきた魔物」はみんなカリモノ対象です。キースも、リザルフォスも、一度倒してしまえばカリモノにできるのです。そしてカリモノが増えてくると、もうやれることの範囲は無限大。とにかく自由にお借りできます。
「ゼルダ姫だからそんなことはできない!」とか、ほぼありません。
町にやってきました。民家の中にツボがありました。
これ……家の中で割ってもいいのでしょうか?
ゼルダ姫だから、そんなことはできないのでしょうか?
割れました。
姫、大きく振りかぶって民家の壁でツボを木っ端みじんです。
住民のおばあちゃん、姫の狼藉に驚いています。
もう、なんでもできるのではないでしょうか。
そう思い、おばあちゃんの部屋の中に魔物を放ってみました。普通に出てきました。室内を飛び回るキース、我が物顔でリビングに居座るウニ。おばあちゃん、完全に怯えています。
こんな風に、カリモノはとにかく自由度の高いシステムです。
こんなエピソードで紹介してどうするのでしょう。
もう少し、真面目に魔物の使い方の話をします。
魔物を率いて戦え、姫!
個人的に、「魔物の相性関係」が面白いと思っています。
たとえば、さきほどチラッと紹介した「キース」。
もうシリーズではお馴染みの魔物ですが、みなさんのイメージ通り、カリモノとしてお借りしても十分に強いです。パタパタ飛び回り、相手に突っ込んでいきます。とにかく動きが機敏で、若干のんびりしているゾルなんかには滅法強いです。
しかも、「1匹だけ」という制限もありません。
キースを3匹出せば、もう怖いものなし。四方を囲まれても、3匹のキースがあっちこっちに飛んでいき、どんどん倒してくれます。気分はヴァンパイアクイーン。もうどっちが敵なんでしょう。ゼルダ姫、本当にそれでいいのでしょうか。
ですが、キースの強さにも陰りが見えてきます。
洞窟にて、「火」をまとったゾルが出てきました。
その名も「キャンゾル」。
見た目通り、タッチしようとすると火に触れてしまいます。
キャンゾルに突っ込んでいったキース、悲しいことにそのまま燃えてしまいます。触れると引火する相手に突撃すると、こんなことになってしまうのです。キースではキャンゾルに勝てません。なんだか本当に「タイプ相性」みたいですね。
そこで、さきほどの「ウニ」をお借りしてみましょう。
ウニはその場から動くことはできませんが、見た目通り「触れてきた相手をチクっと」します。無敵じゃないけど、とにかく強固なトゲがある。キャンゾルにぶつけることで、引火しつつもダメージを与えられます。無事倒し、キャンゾルゲットだぜ!
みんなも、カリモンゲットじゃぞ……ではありません。
とにかく、こういう「魔物の相性」があります。
なんにでも滅法強い魔物がいるわけではなく、「ここではキース」「この相手にはウニ」といった使い分けを考える必要があるのが、中々に楽しいです。あまり『ゼルダの伝説』で感じたことのないタイプの面白さです。
平原を進んでいると、草むらだらけのエリアにやってきました。
このエリアは、草むらの中に隠れている魔物が奇襲を仕掛けてくるから、ちょっと大変です。そこで、さっき手に入れたばかりの「キャンゾル」を出してみましょう。
キャンゾルを放ってみると、どうでしょう。
キャンゾルの火が次々と草むらに引火していき、あたりの草むらはほとんど燃え尽きてしまいました。どんどん火が燃え広がり、草むらに隠れていた魔物も、同時に倒すことができました。ここ一帯、ほぼ焼き尽くしてしまいました。
これは、ちょっと中々に地獄絵図ですね。
全く意図していないのに、まるでゼルダ姫が平原を焼き払ったかのような絵面になっています。さっきから行動が全然お姫様らしくありませんね。私が姫ロールプレイに向いていないのでしょうか。別に火遊びをしたかったわけではないのですが。