インディーゲームは、小規模なチームやひとりの製作者によって制作されるからこそ、「好き」が色濃く反映されるものだ。
それにしたって、本作『ももっとクラッシュ』は、良い意味でやりすぎだと思う。
そもそも、タイトルロゴに脚が生えている。ホラーでなく「萌え」の文脈で、脚が生えていることがあるのだろうか。いや、ある。
本作は“ふとももで魂を挟んで癒すリズムゲーム”である。画面右から流れてくる魂を、ひたすらふとももで挟む。
タイトル画面、判定バー、リザルト画面にまで太ももが配されているうえ、キャラクターの太ももの肉感の表現には職人的なこだわりを感じる。とにかく「ふともも」愛にあふれすぎている音ゲーだ。
プレイ中は時折「猫ちゃん」も登場し、試遊モニターの周りには「太もも生産者表示」が掲示されるなど作品の内外にユーモアがある。そしてリザルト画面やキャラクターの表情など、太もも以外にもグラフィカルな魅力があり、フェチとポップの独特のバランスが新鮮に感じられる。
このたび、東京ゲームショウにて本作を一足先にプレイしてきたので、その様子を追加された新要素と共にお届けする。
文・取材/anymo
編集/りつこ
たった3キャラクターとは思えない「萌え」のカバー範囲に若干ビビる。全キャラかわいいぞ!
本作では、最初にキャラクターを選択する。
いわゆる“地雷系ファッション”がキュートな乃愛(ダイア)。「自信満々で強気ムテキ」とのことで、プレイ中は「ザーコ」「て〜んさい」「余裕、余裕♪」などのボイスを浴びせてくれる。かわいい。
今回の試遊では、元気っ子系なムード漂う光琉(ひかる)をチョイス。金髪のショートカット、頭にのせたゴーグル。そんなキャラデザにも関わらず、意外にも猫っぽいお口が特徴的だ。かわいい。
これまでの試遊では乃愛(ダイア)のみを使用できたため、新たに追加されたプレイアブルキャラクターとなっている。
今回の試遊では実装されていなかったものの、シスターの聖歌(せいか)も気になるところ。さらに彼女には「ケモ要素」も追加される予定があるとかないとか。シスターらしからぬガーターベルトを身に纏っているのも気になる。かわいい。
みんな、かわいい。
現時点では、それぞれにスキルなどがあるわけではないので、完全に好みだけでキャラを選択してOK。後述するが、プレイ中は彼女たちの太ももだけではなく「顔」もめちゃくちゃ大きく画面に表示されるので、魂の声に耳を傾けてキャラ選択することを強くおすすめする。
背景のお顔がコロコロ変わるのが超かわいい。ゲームのシンプルな楽しさを頭からっぽで享受しよう
今回プレイした楽曲は「ウィリアムテル序曲」。画面左に配された太ももとクラシック音楽の組み合わせはあまりに斬新だったが、アッパーなアレンジが施されていることで意外とマッチしている。さらに、ゲームプレイ部分にはいい意味でアクがなく、(構成する要素はともかく)シンプルな画面の配置で非常にプレイしやすい印象だ。
本作のもっとも大きな魅力が、太ももなのは言うまでもないだろう。
通常ならば判定バーの位置に鎮座する太もも。本作のフェティッシュさを象徴するシステムのひとつだ。しかし、プレイしてみると太ももよりも大きく画面に配された「キャラクターの顔」もより強い印象として残った。
この顔、単にプレイ中にかわいい顔を表示してくれているのみではない。ひとつひとつのノーツの評価によって異なる表情を見せてくれるのだ。
さらに今回の試遊からは、新要素として判定にあわせたボイスも再生される。
“ボタンを押すと反応が返ってくる”というのは、音ゲーのみならずさまざまなゲームの楽しさの根幹の部分だろう。その楽しさが、とてもキャッチ―にプレイヤーへ示されていると感じた。
左ではバチンバチンとノーツを挟み続ける太もも。中央(というか全体)にはボタンを押すたび表情を変える顔。二次元の女の子に熱中できるタイプの人間であれば一種のトランス状態にさえ陥りそうな画面構成となっている。
しかしプレイして思い出したのは、コンボを繋げることや、PERFECTを目指すこととはまた違った素朴な楽しさだ。
単に「触る」だけで楽しい。そんなプレイ感が改めて新鮮に映った。
「フェティッシュ」全振りじゃない、ポップなデザイン
ガーターやニーハイソックスの食い込みにもこだわっている姿勢からも「ああ、太ももがマジで好きなんだろうな」と思わせてくれる本作。しかし、セクシャルな域にまでは決して踏み込まないバランス感覚も特筆すべきものだろう。
コミックを思わせるポップなデザインは、フェチズムをデフォルメすることにばっちり成功している。わざわざ色もフォントも異なる判定ごとの文字や、「太もも」にフォーカスしているにも関わらずスタイリッシュさすら感じさせるリザルトの背景など、太もも以外の部分にもきめ細やかなこだわりが詰まっている。
一部のプレイヤーがドン引きしてしまうようなフェチ全開の作品も、それはそれでもちろん美しい。いっぽうで、ポップさとフェチズムのバランスをとりつつ自分の「好き」を確かに貫き通す本作の姿も、インディーズゲームの在り方として美しいものだろう。
試遊時点ではプレイできるキャラや楽曲は決して多くないものの、手触りのよさやポップなデザインによりゲームプレイとしての魅力も存分に感じることができた。「ふともも」好きはもちろんだが、カジュアルに、愉快にプレイできる音ゲーを探している方にもピッタリな作品となっている。
『ももっとクラッシュ』の発売時期は未定。Steamストアページでウィッシュリストに登録のうえ、続報を待とう。