アクションゲームでは、強力な敵を実力で退ける達成感はもちろん、ギャリギャリと敵をぶち殴る“キモチ良さ”も味わいたい。
できれば、どっちもしっかり味わいたい……。
新作のオンラインRPG『Project Overkill』(における、特にボス戦)は、まさに上記のようなワガママに答えてくれる作品かもしれない。
『Project Overkill』は、2005年にサービスを開始したオンラインRPG『アラド戦記』の世界観をベースにした新作ゲームだ。
このたび、韓国最大級のゲームイベント「G-STAR 2024」にて僅かな時間ながら試遊をする機会をいただいた。本記事では現地の様子と共にプレイした感想をお届けする。
※映像は2021年に公開されたトレーラー
筆者はボス戦を中心とした試遊をプレイしたが、実にアラド戦記らしい「スキルのコンボ」が用意されており、これによる爽快感がかなり印象的だった。
そのいっぽう、戦闘では的確な防御行動を行う必要があり、ただ攻撃を連打してたらうっかり敗北してしまう。
とくにボス戦においては、シビアな判断、そして的確な防御行動が求められ、十分に歯ごたえのある仕様になっていた。
といった具合に、ぱっと見相容れない「ド派手な連撃コンボの快楽」と「強敵を自らの技術で上手いこと倒す達成感」というアクションゲームの美味しいところを共存させ、見事に「良いとこどり」できていると感じた。
何より操作性は非常に『アラド戦記』っぽい。
つまるところ『アラド戦記』をプレイしたベテランも『アラド戦記』を未プレイのプレイヤーも楽しめるアクションRPGとして期待できるだろう。
このたびの取材では試遊にくわえて、本作を手がけるNEOPLE CEOのユン・ミョンジン氏、ディレクターのパク・ジョンワン氏に合同インタビューをする機会をいただいた。こちらもあわせて楽しんでいただければ幸いだ。
ちなみに、筆者は韓国語に長けている訳ではないので、見逃してしまっている情報や仕様がある可能性が高い。大変恐縮ながら、ご容赦願いたい。
『アラド戦記』をモダンなグラフィック/バトルで正統進化
まず、本作の概要を紹介しておこう。
先述のとおり本作は『アラド戦記』の世界観をベースにしたスピンオフタイトル。公式が謳うジャンルは「3D横スクロール型RPG」とされており、いわゆるクォータービューや俯瞰視点に近いカメラを採用したアクションゲームとなっている。
ゲームエンジンはUnreal Engine 4を採用しており、トゥーンシェーダーを駆使したアニメ調のグラフィックで原作の世界が表現される。
まず紹介したいのは、記事冒頭でふれたとおり、かなり操作性が『アラド戦記』に近いという点だ。
本作ではキーボードの矢印キーで移動を行い、キーボードの左型のテンキーに配置された基本攻撃、複数のスキルを駆使して戦う形式となっている。
そのため『アラド戦記』をプレイしたユーザーにとっては、お馴染みの操作性でゲームを楽しめる。
いっぽう、本作ではスペースキーでジャンプが行えるほか、キャラクターは4方向ではなく360度の向きに移動と攻撃が可能だ。
『アラド戦記』に操作性が近いという情報などから、昨今のアクションゲームに慣れ親しんだユーザーは「オールドスクールな作品なのか?」と身構えてしまうかもしれない。
しかし、実際にプレイしてみるとジャンプや8方向の移動、今風のアニメ調3DCGなどから「古くささ」を少なくとも筆者は感じなかった。
また、『アラド戦記』らしくスキルで派手なコンボ攻撃を行うことができる点も見どころのひとつ。
グラフィックが進化したことで煌びやかなのは勿論のこと、とにかく「今、敵をメタメタにブン殴っている」という殴りごたえがしっかりと演出されている。
これにより「スキルのコンボ」の爽快感をバッチリと味わうことができたし、とりあえず触っているだけで楽しい。
クールタイムを管理しつつ多数の敵、あるいは一体の手強い強敵にスキルのコンボで畳み掛ける快楽は、間違いなく本作の大きな魅力であると言えるだろう。
※G-STAR2024にあわせて公開された「ネンマスター」を使用したゲームプレイ映像
とはいえ、無心に殴ってたら敗北します。爽快感と同居する緊張感
「爽快感」が魅力であると述べたが、強力なボスとの戦闘では「無心で同じボタンを入力してれば勝てる」ということは無かった。
回復アイテムにもそこそこクールタイムが設けられているし、強敵に打ち勝つには的確な攻撃や回避の判断が必要になると思う。
たとえば筆者が試遊で戦ったボスキャラクターは、多くの攻撃モーション中にはスーパーアーマーが付与される。
なので、ただ殴り続けていれば当然反撃をくらってしまうし、これによって「うっかり敗北」するケースもある。
これに際して、筆者が試遊した「ネンマスター」においては「ダミー」のような自分の分身を召喚するスキルを有していたほか、特殊技として「緊急回避」のように高速で移動できるスキル、自身の身を守る空間を設置するスキルが用意されていた。
上述した防御用の能力を活用することで、アーマーを伴う敵の攻撃を巧みに退けつつ、攻撃のチャンスを窺うことが可能なのだ。
公式からYouTube上に公開されている試遊映像では、筆者が使用しなかったウェポンマスターがガードを行っている場面もあり、ネンマスターの防御スキルと同じキーで使用可能となっている。
そのため、いずれのキャラクターにも防御行動が用意されている可能性が高い。
さらに、戦闘中にボスは「ダウン状態」になることがあり、その際に敵の近くにいれば大ダメージを与える特殊な攻撃を仕掛けることができる。
これらの仕様により、本作の戦闘では「責めるべきタイミング」「回避すべきタイミングと手段」が明確にプレイヤーへ提示される。そのため、初見であっても緩急のある攻防をしっかり楽しめた。
このように、戦闘において「爽快感」と「適度な歯応え」が共存していることで『アラド戦記』をプレイしていない方、世代がことなる方でも充分に本作の魅力を堪能しやすいだろう。
なお、試遊した際に筆者はボス戦において、両手で足りないほど敵に打ち倒された。
敗北は、初見プレイであるがゆえに、回復アイテムの使い忘れや、操作ミスが多かったことにも起因していると思う。
ボスに倒されたあとはなんらかのコストを支払うことで復活できるのだが、あまりの回数コストを支払い、その情けなさから早めの帰国を検討した。筆者の残念な腕前を差し引いても、とくにボス戦などのコンテンツは充分な歯ごたえを有していると思う。
※公式に公開されたボス戦のゲームプレイ映像
公式のゲームプレイ映像では当然ながら一度も敗北している場面はなく、戦闘している画面は自分が見た映像よりもスタイリッシュな美しさを有している。
つまりは巧みにキャラクターを使いこなし、敵の攻撃を見切ることでお洒落に敵を討つこともできる。技のモーションやグラフィックの品質の高さから、美を追求すべく武を極めるのも一興だ。
ちなみに『Project Overkill』のプレイ会場ではズラ―っと多数のPCが配置されており、ネクソンの力の入れようが窺えた(そもそも、ネクソンのブースがマジでデカかった!)。
開場後にはブースに遊園地の人気アトラクションばりの待機列ができており、現地のファンからの期待も凄まじいようだ。
『アラド戦記』の魅力をより多くの方に伝えるために。NEOPLE CEOのユン・ミョンジン氏、ディレクターのパク・ジョンワン氏インタビュー
──本作を実際にプレイして、はっきりと『アラド戦記』に近い操作性であると感じました。本作におけるコンセプトを教えていただきたいです。
ユン・ミョンジン氏:この『Project Overkill』という作品は、まさに『アラド戦記』の基本的なゲーム性を継承した作品です。
アートワークは3DCGを駆使したものになっていますが、横スクロール形式をそのまま採用しています。この要素は、すでに公開されているトレーラー映像などからも感じていただけると思います。
いっぽう、最近になってこのゲームの方向性を大きく変更することを決めました。この決定を経て3DCGの特徴を活かし、かつてのような4方向ではなく全方位に移動や攻撃ができる形式などを導入しています。
──なるほど
ユン・ミョンジン氏:ただし『アラド戦記』ならではの楽しさは引き続き重視しているんです。
ですので「強力なモンスターと対峙して、派手なスキルで倒す」というアラド戦記ならではの楽しさは『Project Overkill』でも楽しんでいただけると思います。
──同じく『アラド戦記』のスピンオフ作品である『The First Berserker: Khazan』は『アラド戦記』を3Dのパッケージゲームとして作ったらどうなるのか、というコンセプトがあったと思います。
これを踏まえて『Project Overkill』はどういった狙いのもとに誕生したのでしょうか。
ユン・ミョンジン氏:原作の『アラド戦記』は来年には韓国でのリリースから20周年を迎える、すごく愛された作品になります。
ですが、このゲームはドットベースの2Dグラフィクスを採用した横スクロールの作品です。昨今ではそのような作品は少なく、流行する3Dで派手なグラフィックを採用したゲームが好きな方からは敬遠されてしまう。
なので『アラド戦記』が素敵な作品だと感じているからこそ、このゲームの魅力的なストーリーや戦闘の楽しさ、世界観をもっと多くの方に届けたいと考えました。
こういった理由から『Project Overkill』は原作の魅力を尊重しつつ3DCGのアートワークを導入し、未だ『アラド戦記』の世界観を知らないユーザーでも楽しめる作品を目指しました。
──本作は『アラド戦記』ならではの要素を引き継いでいるとのことですが、今作のマルチプレイはどのような仕様になっているのでしょうか。
パク・ジョンワン氏:マルチプレイ自体は原作の『アラド戦記』と近しい仕様になっていて、パーティーを組んでインスタンスのダンジョンに入る形式です。
いっぽうで、アクションを重視した作品の形式上、あまり多くの人数が参加することが好ましくないんです。
なので、ひとつのパーティーは3から4人で構成されるかたちになります。
──クラスや育成システムに関しては、いかがでしょうか。
パク・ジョンワン氏:『アラド戦記』では基本職でゲームを開始した後、転職をして新たに強力な職業を獲得していく形式ですよね。
いっぽう、今作では最初からウェポンマスターやバーサーカーといった強力な職業ではじまります。
というのも、今作ではキャラクターが予め獲得しているスキルによって「キャラクター性」を表現したかったんです。
なので、今作では最初からキャラクターごとの職業が設定されています。最初に感じていただいたキャラクター性をもとに、新たなスキルの獲得などで成長を感じていただければと思います。
──ありがとうございます。最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願い致します。
ユン・ミョンジン氏:まず『アラド戦記』のシリーズ作品に多くの関心をいただき有難うございます。
『アラド戦記』は日本でも長年サービスをしていて、多くの方に愛されている作品です。そして『The First Berserker: Khazan』『Project Overkill』といった新たなプロジェクトにもご期待をいただいていることにも感謝を申し上げます。
私たちとしても、期待して頂いている方にもっと良い作品を届け、より多くの方に我々の作品を遊んでいただけるように取り組んでいきたいと思います。
パク・ジョンワン氏:『アラド戦記』では、韓国のプレイヤーと日本のプレイヤーが参加する「日韓決闘大会」というイベントが開催されていて。自分もそのイベントが日本で実施された際に参加したんです。
その時に、ゲームは国という垣根を無くし、本当に多くの人が純粋に楽しめるものなんだと感じました。
人生で一本のゲームを選んでくださいと言われたら私は『アラド戦記』を選びますが、たとえば5本のゲームを選んでくださいと問われれば間違いなく日本のゲームが入ります。
私は韓国人ですが、日本のゲームが好きです。そして、日本の国籍を持っている方でも、韓国のゲームを楽しんでくださる方がたくさんいらっしゃいます。
『Project Overkill』はモバイルとPCのクロスプラットフォームで展開されますので、ぜひ日本の皆さんにも楽しんでいただけると、開発者として嬉しく思います。
この度の取材を通じて、『Project Overkill』は『アラド戦記』をより現代風に拡張した作品であること、それは原作の魅力をより多くの人に届けたいという想いに裏打ちされていることが窺えた。
筆者がプレイしたのはあくまでも本作の一端であり、今後公開される情報では更なるキャラクターや『アラド戦記』らしい魅力的なストーリーに関する情報なども解禁されていくのだろう。
興味がある読者は公開された新映像などをチェックしつつ、『Project Overkill』の公式サイトなどで今後公開される続報を待とう。