ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、初代PlayStationが発売されてからちょうど30周年目にあたる12月3日に、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで毎年恒例となっている「PlayStation Partner Awards 2024 Japan Asia」の表彰式を開催した。
今回の授賞式では、過去の作品を含めてこれまでPlayStationが歩んで来た歴史が濃縮されたようなイベントとなっていたが、そちらに先駆けて行われたのが「GRAND AWARD」受賞2タイトルのメディア向けインタビューである。
授賞式並びにもうひとつのタイトルについては別記事でご紹介する予定だが、こちらでは『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』で「GRAND AWARD」を受賞したフロム・ソフトウェアの代表取締役社長で本作のディレクターを務めた宮崎英高氏のインタビューをお届けする。
DLCは『ELDEN RING』の冒険感を出すために大きなボリュームになってしまった
宮崎英高氏(以下、宮崎氏):
このたびは「GRAND AWARD」賞および「PLAYSTATION GENERATIONS AWARDS」をいただき誠にありがとうございます。「PLAYSTATION GENERATIONS AWARDS」については、我々がいただいてしまっていいのかなという思いが強いですが、ありがとうございます。
──『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』は、DLCという枠を超えるほどのボリュームと密度で、ユーザーの遊び方もとても多彩でした。発売後の遊ばれ方などで、宮崎さんが印象に残ったものはございますか?
宮崎氏:
本編を含めて、いろいろと印象に残る遊び方はたくさんあり、すごく嬉しかったです。一例でいうと、いわゆるノーダメ攻略みたいなものを結構楽しく見ています。DLCでいうと、「」を使ったノーダメ攻略というのが、すごいなと思いながら見ていました。
──圧倒的な完成度とボリュームを誇る『ELDEN RING』の追加でDLCを用意するという試みにおいて、苦労したポイントがあればお聞かせください。
宮崎氏:
苦労したポイント自体は結構ありますが、一番苦労したのは『ELDEN RING』のコンセプトでもあった冒険感を、DLCの中でどのように再現するのかというところです。結局のところ、DLCとしてはかなり大きなボリュームになってしまったのですが、その判断もひとえに冒険感のためにということになります。
──本DLCは、1本のボリュームに相当するといっても過言ではありません。単独のゲームとして販売するというお考えもございましたか?
宮崎氏:
そういうことを考えたことはないです(笑)。
元々DLCとして計画されたもので、先ほどお話ししたように『ELDEN RING』らしい冒険感を出すにはこれぐらい必要だろうという判断がありました。
──本編の評価が高かったということもあり、DLCに対するユーザーの期待値も高かったように思います。しかし、その期待を超えることで多くの冒険が楽しめました。期待以上の満足度を提供できた秘訣はございますか?
宮崎氏:
その点に関しては、一番は先ほども触れたボリュームの部分ですね。冒険感のために必要なボリューム。あとは、探索する部分をしっかりと用意するということが大きかったなと思います。本編もそうでしたが、DLCについても反省すべき部分が多くあります。真摯にそれを受け止めて、次に活かしていこうと思っています。
──DLCをリリースしたことで、ひとつの区切りを迎えました。『ELDEN RING』の今後の展開はどのように考えられているのでしょうか? 『ELDEN RING』のシリーズ化は考えているのか、それともまた新しいIPを考えているのでしょうか?
宮崎氏:
現時点では『ELDEN RING 2』のような展開は考えていません。
ただ、これは何度か話していることですが、『ELDEN RING』というIPの、今後の新たな展開を否定することではないということだけは、お伝えしておこうかなと思っています。だったら何をするのか。
発表されていないものを、この場でお話しできることはほとんどありませんが、弊社フロム・ソフトウェアとしては、通常通り複数のプロジェクトを走らせています。その中には、いろいろなバリエーションがありますので、ぜひご期待いただければと思います。
みんなゲーマーという同じ人種なんだというところに安心感を覚える
──『デモンズソウル』から『ELDEN RING』のDLCまで、フロム・ソフトウェアが世界のゲームに与えた影響は計り知れません。今後のゲームに対する期待に答えるためにプレッシャーも多いと思うのですが、宮崎さんにとってのリラックスする方法はございますか?
宮崎氏:
そうですね、人並みにあります。家族と過ごしたりアナログゲームを遊んだり、美味しいものを食べたりといったようなことです。元々、そんなにプレッシャーを感じる方ではないので、あまりリフレッシュしなきゃという強い思いにとらわれることはほぼないです。
ユーザーの皆さんにご期待頂いている状況はプレッシャーなんじゃないかというご意見を頂くこともありますが、そうした状況はそもそもかなり貴重でありがたいものだと思っています。プレッシャーよりも、まずはとてもありがたいなという思いのほうが強いですね。
──DLCはマップの大きさや新武器など、ボリュームの大きさが話題になりました。これは開発がスタートした時点で想定されていたものなのでしょうか?
宮崎氏:
はい、開発がスタートした時点で『ELDEN RING』らしい冒険感のためにこれぐらい必要だろうということで、期間やコストなどもそれ前提で最初から計画されていたものです。でなければ、こんなに遅くなってかなり怒られてしまうと思いますので。
──本編とDLC共に、海外での人気がとても高いことが印象的です。本作の影響に関して、海外ファンならではの味方や捉え方で面白かったものがあれば教えてください。
宮崎氏:
ユーザーの反応を考えるときに、国内だとか海外だとか、あるいはアメリカなのかアジアなのかヨーロッパなのかということを、気にすることはほとんどありません。
むしろ『ELDEN RING』もそうですし、それ以前のゲームから感じているのは、どの国の方であれゲームを楽しむという点においてはみんな変わらないな、みんな同じなんだなと感じることが多いです。
そのことがとても嬉しいですし、勇気づけられることが多いです。大げさな言い方をすると、僕もそうですし、みんなゲーマーという人種なんだなというところに安心感を覚えます(笑)。
──本編のマスターアップから、DLCのリリースに至るまで、開発メンバーのモチベーションの源になっていたものなどがあれば教えてください。
宮崎氏:
開発メンバー個々にモチベーションがあるか聞いて回っているわけではないので、あくまでも推測になりますが、DLCについては本編を遊んで楽しんでくださったユーザーをベースに、そこに感謝する気持ちで作るというのが一番大きいと思います。
──次回作はどういった作品になるか考えていらっしゃいますか? ファンタジーやSFなどのジャンルだけでも教えていただけますか?
宮崎氏:
えっと……答えられないですという感じです(笑)。
先ほども言ったとおり、複数のプロジェクトが走っていてジャンルも多彩です。その中には私がディレクションするタイトルもあれば、私以外のディレクターが担当するタイトルもあります。そういった点でも、いろいろな形で新しいソフトを出していけると思います。
──最後に、今回のアワードを通じてユーザーにメッセージをお願いします。
宮崎氏:
3年目だと思いますが、受賞させていただくということもあり、本当に遊んでくださって支持してくださっていることに本当に感謝しています。それが力にもなりますし、あるいは我々自身の反省点も含めて、もっと素晴らしい形で皆さんに還元するためにいいゲームを一生懸命作っていきますので、ぜひご期待いただければと思っています。これが偽りのない本当の気持ちなので、何度も何度もお伝えさせていただきます。本当にありがとうございました。