いま読まれている記事

『ヘブバン』を、正直舐めていたかもしれない。今の『ヘブンバーンズレッド』のストーリーがすさまじいので、みんな一刻もはやく追いついてほしい

article-thumbnail-250220h

1

2

3

あの夏は彼方に

すいません、ここから私の個人的な話をします。
これまでも個人的な話でしたが、より個人的な話になります。

少し前、ちょっと不眠症になりました。
鬱とかではなく、単純に眠ろうとすると無限に考えが浮かんできて、眠れなくなることが多かったです。いまは多少治りました。ただ、その頃、あまりにも寝付けなくて夜の街を延々とウロウロしていました。

その時、よく『ヘブバン』の曲を聴きながら歩いていました。
たしか夏でした。蒸し暑い夏の夜、「眠れなくて深夜にヘブバンの曲を聴きながら川沿いを徘徊する」という怪人が生まれていました。その時よく聞いていたのが、「夏気球」でした。

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_022

あの時、そもそもゲームの進行度的に断章Ⅰにすら到達していないから、「夏気球」という曲が一体どこでどんな使われ方をしているのかもよくわかっていませんでした。でも、眠れない夏の夜に聴くには、ちょうどよかった。

夜、夜、夜。眠れないから終わらない夜。その割に必ず太陽は登ってきてうざったい。はやく夏なんて終わってほしい。もう冷たくしてほしい。そう思っていたから、「夏の終わり」を強烈に感じさせる「夏気球」が好きだった。これを聴いていると、夏が終わりそうで。

音楽は、私の日常にとってかなり大切なものです。
ある日突然世界から音楽が消えたら、発狂するかもしれません。

「音楽とか生活に要らなくない?」派の人に出会うと、わかりあえないと思います。そのくらい、音楽は生活必需品です。音楽がなければ死んでしまう。眠れない夜も、薬代わりに『ヘブバン』の曲を聴いていました。

「ヘブバンという作品に出会えてよかったこと」をひとつ挙げるなら、それは間違いなく、「この曲たちに出会えたこと」です。

だから、『ヘブバン』の音楽は私にとっての救世主です。
ありがとうございました。

ねえすごい遠くまでやってきたんだよ 自慢をさせてよ

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_023

去年の10月くらいに、池袋でやってた「ヘブンバーンズレッド展」に行ってきました。別に招待とかもらってたわけでもなく純粋な「義」だけで行きました。

『ヘブバン』を全く知らない友人を誘って展示に行きました。

私は「そうそう、この蒼井ってヤツが死ぬんだよね」という信じられないネタバレ会話をぶちかましていたのですが、展示エリアを進んでいくと、第五章前編のコーナーが出てきた。で、あの時の自分はまだ第三章までしかプレイしてなかったんです。

「ジスロマックさんこれなんすか?」
「え、月歌のお母さん出るの?なにそれ知らん……怖……」

……という信じられないネタバレを展示で喰らい、第五章前編を遊ぶ前から「月歌の親が出てくるらしい」ということだけ知っていました。蒼井の祟りか?

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_024

ただ、私は正直燃え尽きていました。

これも「あるある」というか……私は、一度「到達点」を味わってしまうと、「もうこれ以上要らなくない?」と思ってしまうんです。どのゲームもそう。「あ、多分これ以上のものは生まれないくらいの最高傑作が出てしまった」と感じた途端、なんか急激に冷えていく。

『ヘブバン』もその状態でした。
あまりにも第四章後編の満足度が高すぎて、私自身がこれ以上を望めなくなった。これは運営型の弱点だと思う。終わりは設定されているかもしれないけど、一度「到達点」を提供したあとも、続けなければならない。「せっかくよかったのに最後でミソがついた」とか一番やめてほしい。

だからどうか、美しいまま死んでほしい。
私の中で、最も強かった全盛期のまま、記憶に残り続けてほしい。もう無理に存続する必要なんてない。「あぁ、これ以上は生まれないんだな……」という寂しさをずっと抱えさせてほしい。なんか、消費者って傲慢ですねー!

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_025

……と思ってたけど、第五章前編も全然勢いが落ちていなかった。

むしろ第四章後編の勢いを保ったまま、加速している。
精神世界で明かされる月歌の過去。馴染み深い主人公なようで、実は最も謎に包まれていた茅森月歌。「もしかしてヘブバンってそろそろ終わるんですか?」みたいな勢いで、どんどん核心に迫る設定が明かされていく。舐めの破壊ポイント③。

ヒト・ナービィである「現在の茅森月歌」はどう生まれたのか?
逆にコピー元となった「茅森月歌」はどこへ行ったのか?
そもそも、「ナービィ」とはどこからやってきたのか?

そういう、「ここを明かしたら一番おいしいコア設定」をバンバン開示していく。え、マジであと2~3年くらいで畳むんですか? そういうスピード感では? 言うてこれ第五章「前編」なんですよね? 五章「後編」じゃないんですよね?

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_026

「茅森月歌」ってこのゲームの主人公だから、もちろんあらゆる要素のカギを握っているわけです。その「最もコアな人物の過去」がボロボロ出てくる。だから、初期から配置されていた要素に、遡って「え、そういう意味だったの……」と驚かされる。

たとえば、「She is Legend」のこと。
なぜ「She is Legend」として活動を始めたのか。
なぜ「She is Legend」というバンド名なのか。
なぜ「She is Legend」は人気絶頂で解散したのか。

これが、全部明かされる。初期オブ初期から配置されていた要素に、ちゃんと意味とバックボーンがあったことがわかってくる。『ヘブバン』ってここ上手いですよね。「サイキッカー」とかバカかよと思うのに、意外と真面目なバックボーンが出てくる。

積み上げてきた燃料を一気に燃やしてる最中なのが伝わってくる。頑張って並べたドミノを、いま倒し始めてる。運営型タイトルでこの爆破スイッチを押せる瞬間って本当に限られているのに……あの第四章後編の直後に押してくるのかと!!

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_027
何気に「月歌のヘアピン」の出どころが明かされるのもすごいと思います。

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_028

個人的に、「タイムリープ系ミステリー」的な趣があるのが好きでした。
なんか、「茅森月歌失踪事件」みたいな……。

『ヘブバン』の「日常生活は必ず一定のフォーマットを繰り返していく」というベースの部分って、だーまえ兄さんが得意とされているであろう「日常を積み重ねていき、最後に感動してもらう」という流派に合わせたものだと思うのですが……第五章前編はあの「テンプレ」がちょっと別方向に作用してると思います。

つまり、あのフォーマットに「毎日少しずつ捜査を進めて、段々と真相に近づいていく」というミステリーADVみたいな面白さが生まれている。しかも並行して、「母との思い出」も描いていく。『ヘブバン』、どうした? このゲーム覚醒してないか?

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_029
何気に、第四章後編以降のめぐみがサラッとしたセリフで泣かせてくるのもズルい。31Aで最も人間的な成長を遂げたキャラだと思います。なんかコイツだけゲームクリア後みたいな顔してね?そこも含めて好き。

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_030

私、第五章前編でものすごく気に入っているところがあって……精神世界にダイブして、過去に戻って、こうして最愛の母親に会えてやることが、「歌を捧げる」ことなんですよね。

過去を改変するでもない。
ここに留まるでもない。
抱きついて泣きつくでもない。

ただ、母に伝えたかった想いを歌に乗せて伝える。
なんてアーティスティックなゲームなんだろう。

もはや言葉にするのも無粋かもしれませんが、ここが「オシャレだな」と思いました。そして茅森月歌らしい。なにより、『ヘブバン』らしい。「タイムリープ」というシチュエーションに対して、すごい強度の解答を出してきたなと思っています。

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_031

個人的に、「この戦いが始まった理由」が明かされたのも驚きました。
しかも、その理由がすごい。

キャンサーに追い詰められ、ナービィは故郷の星を捨てなければいけなくなった。だから、宇宙を旅して代わりの「幸せに暮らせる星」を探すことにした。とあるナービィが地球にやってきた。そのナービィは、たまたま「茅森月歌」に出会った。「ぽむぽむ」と呼ばれ、茅森家で暮らすことになった。

そしてナービィは、「これは幸せに暮らせる星だ」と判断した。たぶん。そして仲間を呼ぶ信号を送った。これが、すべての始まりだった。すべての元凶だった。

なぜナービィは、地球を「幸せに暮らせる星」だと判断したのか?
その理由は、「素敵な家族に囲まれて幸せだったから」

せ、切ねぇ~~~~~!!!!!!

なんて切ないゲームなんだ!
おいこれ完全に「最上の切なさ」来てるだろ。
「最上の、切なさを。」時代始まったわ。

【ヘブバン】『ヘブンバーンズレッド』第四章から第五章前編までの初見感想━正直『ヘブバン』を舐めていたかもしれない_032

水難事故で亡くなった茅森月歌。
「ぽむぽむ」は、その代わりに「茅森月歌」になった。
それが、現在の茅森月歌。

なぜ、ナービィは「茅森月歌」になったのか?
それは、大切な娘を失い、泣き叫ぶ母の姿を見続けていたから。
そんな母のためを思って、娘の代わりになることを決めたから。

せ、切ねぇ~~~~~!!!!!!

なんて切ないゲームなんだ!
完全に「最上の切なさ」来てるってこれ!!
いや、でも割とマジに『ヘブバン』で一番「切なさ」を感じました。

1

2

3

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ

インタビュー

インタビューの記事一覧