盗んだ自動車で銀行を荒らし回ったり、地獄のゲートからなだれ込むアレな軍勢をボコしたり、銃弾飛び交うビーチでガーランド片手にブイブイ言わせたり、まるで「暴力・イン・暴力」のボディーソープで返り血を洗い流すような、狂乱の日々──。
いや、ゲームの話ですよ。
そんな筆者の心を、クリーミーラテのように甘くまろやかに包み込んでくれる、チルでアウトな──「拠り所」はないでしょうか。
早速ですが、あるらしいです。
リスに「なる」ゲームが。
押し寄せる現実への焦燥感を血生臭いタイトルで上塗りしていくのもいいですが、こういったチルなタイトルでゆったりするのも、よいのかも。今回は、リスライフを満喫するゲーム『Squirreled Away』で、心の底から現実逃避していこうと思います。
※この記事は『Squirreled Away』の魅力をもっと知ってもらいたいFor Seasさん・Amplifier Studiosさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
瞑想、クラフト、ハングライダーで空を滑空──。「リス関係ないじゃん!」と総ツッコミが入りそうな遊び心
『スクワールド・アウェイ』は、三人称視点のクラフト・アドベンチャー。プレイヤーはリスを操作して、ゆったりとした時間を過ごします。生き残る必要のない、ゆるい雰囲気が好印象。
冒頭、抜けるような青空から突然、リスが降ってきてゲーム開始。説明は一切ありません。細かいことを気にしないのがリスっぽいのです。ちょこまかと素早く動き回り、壁を伝って自在に移動できる。いいよ、リスっぽくてすごくいい!
トゥーン調で描かれた美しいグラフィックも、プレイをはじめてすぐに飛び込んでくる魅力。風に草木が揺らめいていて心が洗われます。あー、もうすでに癒されてきたかも。
ほどなくして、リス仲間のマヤに遭遇。いわく「ここはリスの聖域。瞑想して自然と一体になれば、未知のアイテムを鑑定して、新しいクラフトや建設をアンロックできる」とのこと。
なるほど、瞑想してクラフトをアンロックできるなんて、リスっぽい(?)じゃん。
プレイを進めていくと、今度は別の仲間サムがお困りの様子。「鳥に家を壊されたからオノをクラフトして、棒を5本集めて持ってこい」とおっしゃる。
ふむふむ、リスだからね、オノをクラフトするのは、ぽいよね。じゃあ、早速、石と枝を集めてオノをクラフトして、それを背中に装備してっと……。
いやいや。
いやいやいや。
「アンロック」ってあんまりにもメタすぎません?
いや、そんなことよりリスが「オノをクラフトして」って、しれっとした顔で普通に言ってますけど、リスにオノをクラフトして背中に装備する習性ってあったっけ?
これ、開始10分の話ですからね。ゲームが進行すると徐々にリスっぽさが失われるとかならまだわかるんですよ。本作は、最初からアクセル全開でリスっぽさを放棄しにくる。
これ絶対、いい意味での確信犯でしょう。
だって後半には「ハングライダー」や「バネの靴」なんかも出てきて、リスが大空を飛び回っちゃう始末。なんだか、謎を解くと耳障りのいい音楽が聴こえてきそう。
まるで冗談みたいな、遊び心にあふれまくってる本作。ところがプレイするうちに、ある重要なことに気付いちゃったんですよね。
リスってかなり面白い。枝から枝を飛び回る軽快なアクションの触り心地がバッチリ
操作していてめちゃくちゃ面白いんです、このゲーム。
ほとんどの場所によじ登れるストレスフリーな移動。ちょこまかとした小気味よい動き。高所から落下するときの、まるでジェットコースターの下りみたいなフワっとした浮遊感。人間には入れない、小さな隙間に入り込むワクワク感。
どこを切り取っても、リスの軽快なアクションに裏打ちされた面白さに溢れる金太郎アメ状態。
そして本作最大の魅力は、枝から枝を伝って森を縦横無尽に駆け回る、立体的な「リスムーブ」に尽きるでしょう。
ルートファインディングもさることながら、ジャンプ角の調整や着地までの飛距離を瞬時に判断して空中に飛び出す、スリリングな移動メソッドがやみつきになります。地面に触れることなく目的地へたどり着いたときの達成感たるや、「もうなんなのサイコー!」ってなっちゃう。
こうした移動の楽しさをシステム面で後押しするのが「リスの視覚」なる探索モード。
これはいつでも使用できるアクティブスキルで、発動すると、視覚的に邪魔な生い茂る葉っぱなどを綺麗さっぱり消し去って、枝だけが見えるようになります。
こうすることで、それまでバラバラの存在だった枝々が、一筋のハイウェイのように見えるという仕掛け。これを頼りにプレイヤーは、目的地までのルートを目視で選別して移動するわけです。
めちゃくちゃ考えられてるでしょ?ネタ的なゲームかと思いきや、良質なアクション。キャラクターを操作する気持ちよさが、ぎっちりと詰まっています。さらに、筆者の目の前には丁寧に作られたオープンワールドがある。
「もっとこの世界に浸っていたい」。沸々と湧く感情が全然押さえられません。
コジーな癒し世界で子どもに戻って、そうさ今こそアドベンチャー
舞台は都会の公園。自然豊かな森の中に、レストランや売店などの人の営みを感じさせる施設が同居する場所。ただふらっと散策するだけでも心地よい世界です。リスムーブの楽しさとも相まって、プレイヤーは不思議と子どもみたいに駆け出したい気持ちでいっぱいになります。
良い意味で序盤からリスを放棄してくれたおかげで、この世界には変なしがらみがまったくありません。「リスらしさ」なんて固定観念はどこ吹く風。
世界中の子どもが垂涎のツリーハウスを作れるのも本作ならでは。
リスなら木のうろにドングリを貯め込んで住みそうだけど、そこは有無を言わせずツリーハウス一択です。おしゃれなログハウス風や素敵なコテージ風のツリーハウスが、サクっとお手軽に建設できます。
もうひとつ、本作の隠れた主役を紹介するのを忘れるところでした。
そうです、「ドングリ」です。
ドングリが大好きなのは子どもも同じ。子どもと公園に遊びに行くと「あ、ドングリ!」と駆け出して、ほんの数分でちょっと困るくらいの量のドングリを集めてきます。
あれだけ必死になって集めて、絶対に家に持って帰ると断固主張したドングリも、夕食前には忘れ去られてその辺に打ち捨てられています。そんなところもリスと似ています。
本作、「黄金のドングリ」探しも熱いんです。もちろん、黄金のドングリがなんなのかは、これっぽっちも説明されませんよ。そんなことはどうだっていいのです。
これが『マリオ64』のスター探しみたいな謎解きになっていて、世代のハートをズキュンと狙い撃ちするエモさ炸裂。子どもの頃に戻った気分で、黄金のドングリ探しに熱中しちゃいます。
ツリーハウスに住んでベッドで寝起きして、オノやピッケルをクラフトして、ハングライダーで飛び回るリス・・・。ちょっと変だけど、最高に癒される世界。
「ジワるな〜」と、のんきにお茶をすすっていたのですが、ここで大変な思い違いをしていたことを発見します。
本作のストアページを何気なく見ていると。紹介文の最初の一文が「リスになりきろう」だってことに、いまさらながら気がつくのです。
このゲーム、単に「リスになる」ゲームじゃなくて、リスを「演じる」ゲームなのかもしれません。
リスじゃないのにリスっぽく振舞う!?驚愕の逆説に超盛り上がる
しかし、冷静に考えると合点がいきます。だって本作、あまりにも堂々と「リス」というものを無視しています。よく考えなくたって、「リスがバネの靴を履いて、ビヨ〜ンといつもより高くジャンプしない」なんてことくらい、大人ならわかります。
折り重なる枝々を走り回る小気味よい動き、ドングリをカジカジ食べるかわいい仕草…。ひょっとするとこれらは、リスになるためのものじゃなくて、リスになりきるために用意されたものなのかもしれません。
だとすると、いかにリスっぽい動きができるかを自分なりに追求して、昔遊んだ公園を童心に返って自由気ままに冒険する。これが本作の正しいコンセプトなのかもしれません。
リスじゃないと理解したうえで、リスになりきる驚愕の逆説プレイを展開し始めると、本作の印象は一変します。それまでちぐはぐに思えた「小気味よいリスムーブ」と「子どもの頃に戻れる世界」が、リスの視覚で見る枝々のハイウェイのように、一本に繋がって見え始めたのです。
自分の中のイメージを総動員した、さまざまなリスっぽい動きを織り交ぜたプレイが俄然、面白くなります。例えば…
「ここで一回ドングリのモグモグを挟んで、周囲をリスの視点でキョロキョロ見回して、目標を定めたら、唐突に駆けだして木をよじ登る」とか。
「ひたすらドングリを集めて貯蔵庫にビシバシ入れまくった挙句、貯蔵庫の場所を忘れる」とか。
超リスっぽいでしょ!?あれ、さっきまで「全然リスじゃないじゃん!」って言ってたのに、おかしいな。
本作はリスではなく、リスになりたい「人間」が主役のゲームだと感じました。プレイヤーは開発者から押し付けられたリスになるのではなく、自分がイメージするリスに近づこうと試行錯誤します。
普段の生活で「リスになろう」と主体的に思うことなんて、まずあり得ないので、いままで知らなかった気づきが満載なんです。
本作の舞台は、お馴染みのどこにでもあるような公園。人間が気にも留めない場所に広がるディズニー的な架空の動物世界です。プレイヤーはそこで、たくさんの動物たちと出会い、小さな発見をし、謎の数々に触れながら冒険することになります。
リスの視点で見る世界は、小さな気づきに溢れている
リスになりきって改めて本作のマップを見渡してみると、まるで砂場にばらまいたビー玉みたいに、キラキラとした輝きに満ち溢れていると気づかされます。
リスの目線で見る公園は本当に新鮮です。あらゆる設備が巨大でとんでもなく大仰。都会の公園のはずなのに、なんだか広大な舞台を相手にちょこまか走り回っている錯覚に陥ります。
ベンチやゴミ箱、ポスト、朽ちた切り株など、人間にはありふれた物でも、リスにとってはもってこいのストラクチャーに早変わり。やれることや行ける場所が少しずつ増える。そんなワクワク感がたまらないんです。
現実のリスがなぜベンチにちょこんと乗っているのか、本作をプレイするとその理由がよーくわかります。
丁度いいんですよ。ちょこんとするのに。
リスにとって公園は巨大な世界ですが、実は人間も同じなんです。子どもの頃に遊んだ公園や学校のグラウンドは、いまよりもずっと大きく広く感じていませんでしたか?当時は実際に広かったんです。だって、自分が小さな子どもだったから。
あの頃だけ見えた世界や、感じた気持ち。夕飯のカレーの匂い。小さかったからこそ気がつけた世界が絶対にあったハズなんです。大人になると忘れちゃいますけど。
本作は、そんな忘れてしまった小さな視点を思い出させてくれる、思い出の場所みたいなゲームなのかもしれません。
そうだよね、大人は子どもになることはできない。でも、子どもになりきって遊ぶことならできる。どうして本作がリスになるのではなくて「なりきる」ゲームなのか、ようやくわかった気がします。
また、本作は子どもと一緒にプレイするのにぴったりなタイトルです。現在、絶賛子ども中のプレイヤーなら、大人よりも完璧なリスになれるかもしれません。
クラフト系の基本要素に加え、ステータス管理などの一部サバイバル要素もあるから、他の同系ゲームの入門としても最適。ミュータントが支配する世界が舞台じゃない安心感は絶大です。しかも、オンライン環境があれば、3人までのマルチプレイも可能。
ナッツでも食べながら、子どもがプレイする隣で、自分の子ども時代の経験談に花を咲かせつつ、自由に生きることの大切さをさり気なく教えるのも、きっと悪くないです。
人生に必要なのはドングリだけ
本作をプレイするならば、ぜひリス気分でプレイしてみてください。……いや、なんでもありのゲームだから、そもそもリスになる必要すらないのかもしれません。ただ純粋に「あなた」っぽくプレイすれば、オールOKです。
『スクワールド・アウェイ』は、心が辛くなったときにドングリを探しに逃げ込む、隠れ家的な癒しの場所なんです。
だってタイトルにあるでしょ。
『Squirreled(リスになって) Away(逃げ出そう)』って。