いま読まれている記事

『鬼武者2』は“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作だ!思った以上に自由、バリバリ斬り伏せるアクションが超気持ちいい。自称”最高の剣士”の強敵・ゴーガンダンテスなど独自の旨味が詰まってる

article-thumbnail-250423g

もしも、『鬼武者』にホラーゲーム(怖いゲーム)との先入観があるなら『鬼武者2』から遊ぶべし。

そして、この作品を足掛かりに実は爽快な剣戟アクションゲームでもある『鬼武者』シリーズにデビューしよう!

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_001

……こんなことを言えば、カプコンの流儀にならって「異義あり!」とツッコまれてしまうのだろうか。もしくは「黙りなァ!」だろうか。(手)刀でバッサリされるだけに。

異論は認める。

『鬼武者2』は名の通り続編、2作目だ。続編ゆえ、ストーリーの一部は前作から繋がっている。フィールドマップにも前作で舞台になった場所がある。そして、基本システムと操作周りも前作をなぞっている。

ゆえに前作の経験があるかないかで差が生まれる部分もある。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_002

だからこそ、デビューするならすべての始まりたる前作『鬼武者』から、というのがセオリーだろう。しかし、筆者はそれでも『鬼武者2』を勧めたい。

前作『鬼武者』は、ホラーゲームの味が強く、雰囲気も重め、かつシリアスなものになっている。

『鬼武者2』も主人公「柳生十兵衛(やぎゅう じゅうべえ)」(以下、十兵衛)の故郷が滅びる様が本編開始まもなく克明に描かれるなど、残酷かつ悲劇的なシーンはある。そもそも、全体的なストーリーのテイストは、前作とさして変わらずシリアスだ。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_003
主人公の十兵衛。モデルは『太陽にほえろ!』『探偵物語』などで知られた俳優の故・松田優作さん。

しかし、青空と美しい自然が広がるロケーションがあったり、個性豊かな4人の仲間たちとの共闘や掛け合いといった、明るくてドラマティックな場面がある。くわえて、まるで特撮番組に出てきそうな怪人っぽい強敵と戦う展開もあったりする。

さながら「特撮ファンタジー時代劇」と言わんばかりの独特なテイストと、キャッチーな親しみやすさがあるのだ。これが、まさに『鬼武者2』を勧めたい理由である。

今回、5月23日に発売されるHDリマスター版『鬼武者2』の先行プレイの機会を得た……のだが。あえてその見所およびレポートは後に回し、『鬼武者2』の特撮ファンタジー時代劇たるゆえんと、前作も含めた『鬼武者』という剣戟アクションゲームの魅力を掘り下げたい。

※本記事で用いているスクリーンショットはPlayStation 4版のものになります。また、一部操作の説明もDUAL SHOCKコントローラを前提としたものとなっています。

文・取材/シェループ
編集/anymo

 

始まりこそ残酷ながら、まるで特撮番組のような展開を見せていく

前述したように、『鬼武者2』の始まりは残酷かつ悲劇的だ。十兵衛の故郷「柳生の庄」が異形の存在と化した「織田信長」(以下、信長)とその軍勢によって滅ぼされてしまう。女子供も含んだ村人たちごと、文字通り根こそぎ……である。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_004

ゲーム本編の始まりも、村人たちの死体が野ざらしにされた死屍累々な廃墟で、前作『鬼武者』にも登場した「幻魔(げんま)」と呼ばれる異形の怪物たちと戦っていくものになっている。なかなかに悲壮的でダークな始まりだ。

そこで十兵衛は、自らを導く謎の女性「高女(たかじょ)」から、故郷を滅ぼした張本人が信長であること、自らに幻魔たちに滅ぼされた「鬼の一族」の血が流れていることを知る。そして「冥府魔道から人々を救う5つの玉を揃えれば、信長を倒せるであろう」と高女から「仁の玉」と共に伝えられた十兵衛は、信長の打倒に必要な残る四玉を集めるため、旅へと出る。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_005

以上がオープニングのあらましとなるのだが、「5つの玉を集める」との下りには、冒険絵巻の始まりを感じさせられる。同時に特定の世代なら「どこかで聞いたような……?」となるかもしれない。

その後、十兵衛は金の鉱脈の発見で沸き立つ「今庄」を始めとする各地を訪れることになる。詳しい経緯は省くが、そこで十兵衛は4人の心強い仲間たちとの出会いを果たしたり、強敵の「高等幻魔」と戦ったりしながら、信長へと迫っていくのだ。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_006
こちらは仲間のひとりである「風魔 小太郎(ふうま こたろう)」

並行してストーリーもほんの少し、明るさが混ざったものに変化していく。特に4人の仲間たちとその掛け合いは象徴で、ともすれば暗く、重苦しいものになってしまう十兵衛の旅に華を添えてくれる。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_007
若干、残念なイケメンっぽさも漂う幻魔界最高の剣士「ゴーガンダンテス」

旅先で対峙する強敵「高等幻魔」もどこか愉快な一面を持っていて、ただ怖い存在として描かれていない。むしろ、まるで特撮番組に出てきそうな怪人みたいなキャラクター付けがされているのだ。

中でも最大の強敵として立ちはだかる「ゴーガンダンテス」はその筆頭。自らを「幻魔界最高の剣士」と自称し、初登場時には大袈裟なポーズを決めて名乗り口上をするという、初っ端から強烈な印象を植え付けるキャラクターになっている。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_008
しかも、ちゃんと「幻魔界最高の剣士」の名に恥じない強さを誇る。

これ以外にも、オープニングのムードをひっくり返すような展開が用意されている。それこそ『鬼武者』に対してホラーゲームとの先入観を持っていた人ほど、「こんなゲームだったの!?」と戸惑ってしまうほどに、である。

前作はその先入観に合致するテイストのものになっているが、『鬼武者2』はその作風を結構変えた格好だ。

そこそこ残酷さがある点には留意いただきたいが、一連の冒険絵巻や特撮番組を思わせるノリには、つい先の展開が気になって進めていきたくなってしまうだろう。前作のストーリーも冒頭で簡単に解説されるほか、一部、繋がっている箇所はあれど、本作単体では独立しているので問題なく楽しめる。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_009

そんな訳で、もしもホラーゲームの先入観があって抵抗を感じているなら『鬼武者2』から始めるのがオススメなのだ。ホラーゲームのテイストの強い前作の心の準備にもなるので、もし「一旦、ワンクッション置きたい」との思いがあるならこちらからがいい。

ちなみに本作の脚本も前作に引き続き、数多くの特撮番組の脚本を執筆し、同じカプコンの『バイオハザード』シリーズにも脚本として参加した経歴のある故・杉村升(すぎむら のぼる)氏が手がけている

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_010
前作のとある出来事を経て、幻魔たちを束ねる「幻魔王」となった信長。

今回の『鬼武者2』のストーリーは、そんな杉村氏の作風と特撮番組の脚本を多数執筆された実績が色濃く表れており、それが4人の仲間たちと高等幻魔のキャラクター性などに現れている。

そうしたところもあって、特撮番組好きにもこの『鬼武者2』は注目の一作である(しかも、幻魔たちのデザインを手がけているのも「メタルヒーロー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズなどで知られる雨宮慶太氏だ)。

そもそも「5つの玉を集める」時点で察せるはず。ゆえに特撮ファンタジー時代劇と言えるのだ。

「戦国バイオ」とも称される『鬼武者』は難しいゲーム?否!敵をズバズババッサリする爽快感が異彩を放つ、遊びやすいアクションゲームだ!

『バイオハザード』の名が出たが、『鬼武者』はそんな『バイオハザード』のゲームシステムを下地に設計されたゲーム。それもあって公式ジャンル名も「戦国サバイバルアクション」と称されている。「戦国バイオ」、「和風バイオ」との俗称もある。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_011

ただ、こうしたイメージから「難しいゲーム」との先入観があるかもしれない。厳密には「サバイバル」という単語に由来する「難しいゲーム」だ。『バイオハザード』みたいに限りある弾薬、アイテムをやりくりしながら進めていく戦略性の高いものを『鬼武者』にも連想してしまわないだろうか。

たしかに『鬼武者』は『バイオハザード』と作りが似通っている。特定ポイントに移動すると別のアングルに切り替わる固定(定点)カメラ、方向キーの上下で前進と交代を行い、左右で方向を調整する「ラジコン操作」がそれだ。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_012

しかし、戦闘はまったくの別物。制限なく使えてリーチも長いカタナで、ズバズババッサリ敵を斬り倒しながら進んでいくのだ。弾薬の残りとかは全然考えなくていい。

回復にしても「薬草」を始めとする消費型アイテムも存在するが、敵を倒した時にも同じカプコンの『ロックマン』シリーズよろしく、体力を回復する魂(※後述)が時折出てくるようになっている。

実際に触れてみれば、特に縛りもなく、思うがままに動けて攻撃できる作りにいい意味で戸惑うはずだ。単に斬るだけでなく防御もできるし、「鬼力(きりょく)」なるゲージを消費して繰り出す強力な必殺技もあったりと、アクションの種類も多い。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_013
「一閃」が発動!一撃必殺!

その中には、敵の攻撃が命中する瞬間、攻撃を決めることで相手を一撃で絶命させる「一閃(いっせん)」なる技も。いわゆる「パリィ」だ。

ただし、タイミングは一切示されず、プレイヤーがしっかり敵の動きを見切らなければ繰り出せないことから、使いこなすには失敗も含めた経験が必要。

その分、硬い敵すら一撃で葬ってしまうのもあって決められるようになると大変爽快で気持ちいい。(通常攻撃時もだが)時代劇らしい「ズバシュッ!」という痛快な効果音が鳴り響くのも、爽快感を大きく引き立ててくれる。

こういった特徴もあって、ジャンル名以上に『鬼武者』はバリバリのアクションゲームであり、チャンバラの気持ちよさを突き詰めている。これは『鬼武者2』に限らず、前作『鬼武者』もだが、できることに制限のある難しいゲームとの先入観があるなら、一度でもいいので遊んでみていただきたい。

思った以上に動けて、バリバリ斬り伏せていくアクションの虜になってしまうかもしれない。

新たなアクションと分岐要素によるボリュームの拡張で、さらに遊び応えと爽快感が増した『鬼武者2』の見所

話は『鬼武者2』のことになるが、基本の作りは前作と同じだ。定点カメラで表示されるフィールドマップを動きながら敵との戦闘、探索を繰り広げていく。前述した「一閃」のシステム、「鬼力」なるゲージを消費しての必殺技も健在。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_014

また、前作同様に敵を倒すと「魂」が出現し、これを「吸収」するアクションを行うことで、色に応じた効果が得られる。「青」なら鬼力ゲージの回復、「黄」なら体力ゲージの回復といった感じだ。そして、最も頻繁に出現する「赤」の魂は経験値で、武器や防具のレベルを上げるに当たって使う形となる。『鬼武者2』では、新たに「紫」の魂が追加。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_015

これを5つ集めると十兵衛が「鬼武者」へと変身し、一定時間、その強力な力をふるうことができるようになった。

攻撃周りでは武器も増加。「槍」、「大槌」といった新種が追加され、それぞれ特徴の異なる技を扱えるようになった。さらに構えの姿勢を取り続け、武器が光を放った瞬間に繰り出すことによる「溜め技」も登場。

「一閃」にもそれを踏まえた「溜め一閃」、敵を連続して斬り倒す「連鎖一閃」なる新種が追加され、より爽快なアクションが楽しめるようになっている。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_016

例によって、「一閃」のタイミングは一切示されない。敵の動きをよく見切り、ここぞというタイミングを狙って決める必要がある。相応に決められた時の快感はひとしお。加えて今回は決めた直後、タイミングよくボタンを押せばターゲット以外の敵にも一閃を決める「連鎖一閃」が発動するため、さらに極め甲斐が増している。

これは前作もそうだが、別に「一閃」は習得せずともゲーム本編は進めていける。だが、使いこなせるようになれば、より戦闘が面白くなる。その面白さが底上げされている点は、特に前作で「一閃」の楽しさに心酔したプレイヤーほどたまらないだろう。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_017
左は「安国寺 恵瓊(あんこくじ えけい)」、右が「雑賀孫市(さいか まごいち)」

そして、前述した4人の仲間。特定のイベントで共闘してくれたり、時には直接操作して戦うことができる。仲間には好感度の概念も存在。敵が出現しない街中で当人に「品物」を渡すことで値が変動し、その高さに応じてイベントなどで加勢してくる仲間やストーリー展開そのものまで変わる分岐要素が盛り込まれているのだ。

これもあってゲーム本編全体のボリュームも増えたほか、分岐の存在もあって極め甲斐のある内容に進歩している。全部の分岐を確かめたいとなれば、最低でも4周は遊べてしまうだろう。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_018
仲間のひとり「小谷のお邑(ゆう)」

ザックリとした紹介ではあるが、全体的に前作の良いところはそのままに、魅力を底上げする作り込みが図られた仕上がり。堅実な進化を図った正統進化系の続編になっている。

特に「一閃」のバリエーション増強は最たる進化で、前作以上の爽快感と、極める嬉しさと(いい意味での)もどかしさを味わえる。前作のキャッチコピー「空前絶後のバッサリ感」さらに極まれり、と言わんばかりだ。

リマスター版はオリジナル版で不便だった部分を徹底的にアレンジ!事実上の決定版とも言える出来に

ようやく新たに発売されるHDリマスター版の先行プレイに関する話題になるが、基本は前作『鬼武者』のHDリマスター版と同じである。グラフィック全般の高画質・高解像度化、ワイド(16:9)表示への対応を軸に、さまざまなアレンジを加えた仕上がりになっている。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_019

前作『鬼武者』のリマスター版の中で、特に大きなもののひとつだったコントロールスティックによる操作は今回も健在。スティックを倒した方向にキャラクターが移動する、直感的かつ自然なスタイルで探索や戦闘をこなせる。もちろん、オリジナルのラジコン操作にも健在で、コントロールスティック操作との併用が可能となっている。

メニュー画面をいちいち表示して操作する必要もなく、特定の組み合わせでボタンを押せば武器を即時に持ち替える簡易切り替え機能も継承。カタナで戦いながら槍に持ち替えて連続攻撃を叩き込んだり、それぞれの武器に設定された必殺技(「鬼戦術」)を持ち替えと並行して連発するといった豪快な戦い方ができるようになっている。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_020
紫の魂が満タンになっても「鬼武者化」が強制的に発動しなくなった。

そして、これはオリジナル版『鬼武者2』の経験者には嬉しいと思われる変更点だが、「鬼武者化」が任意発動形式になった。オリジナル版は紫の魂が5つ集まると強制的に「鬼武者化」が発動する仕様で、任意で発動することができなかった。これが大きく改められ、L2+R2ボタンの同時押しで発動する仕組みに改められたのだ。

この変更と前述の簡易切り替え機能もあって、リマスター版ではより自由で直感的な立ち回りを楽しめるようになっている。

システム面でも前作も含め、『鬼武者』のセーブシステムは特定ポイントで途中経過の保存を行う『バイオハザード』と同じものを採用しているが、今回はそれとは別にオートセーブが追加。また、ムービーのスキップ機能もデフォルトで実装され、ボス戦に再チャレンジする時のストレスも大幅に軽減されている。

難易度も最初からすべての難易度が解禁されており、「一閃」を決めなければ敵を絶対に倒せない高難易度「一閃」、最も簡単な「易しい」も最初から遊べるようになっている。くわえて本作初登場の「修羅」も追加。敵の攻撃を1発でも受ければ即絶命となる凶悪な難易度だ。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_021

今回の先行プレイでも怖いもの見たさで挑んでみたが、オープニングの「柳生の庄」を乗り越えるのに1時間ほど要した。完全クリアにどれほどの時間を要するのか、考えるだけでも恐ろしい。ただし、セーブも不可能という訳ではないので、やろうと思えばできる……かもしれない。とりあえず、鬼の精神を持った兵(つわもの)なら挑んでみてはいかがだろうか。

他にも100枚の特別画集が追加されたギャラリー、クリア後要素であるミニゲームの初期解禁サウンドトラックの収録もリマスター版の大きなトピックになっている。

ちなみに前作のリマスター版は、キャラクターを演じる声優陣が主人公「明智左馬介」役の金城武さんを除いて一新&新録という形になっていたが、今回はオリジナル版のものがそのまま使われている

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_022
オリジナル版と同じく、永井一郎さんのナレーションで語られる。

そのため、永井一郎さん(ナレーション)、田中敦子さん(高女)といった鬼籍に入られた方々の声もそのまま。

主人公の十兵衛を演じる大森達也(ハードボイルド工藤)さんもまた然り。十兵衛のモデルである故・松田優作さんの渋い雰囲気と、熱さが込められた演技は素晴らしいものがあるので、改めてそれを堪能してみるのも一興だ。

『鬼武者』ゲームとしての神髄は「一閃」に向き合うことにあり。自らのモノとし、幻魔を狩る武者となろう

HDリマスター版はオリジナル版で不便だった部分を正し、より遊びやすく、そしてプレイヤーの思うがままに遊べる快適性をパワーアップさせた仕上がりになっている。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_023

ただし、「一閃」のタイミングを教えてくれるようなサポート機能はない。リマスター版においても、しっかりと敵の動きを見切って、適切なタイミングで攻撃ボタンを押す技術が試される。

「せっかく色々アレンジされているのだから、タイミングサポートも欲しい」と思うところもあるが、これはこれで正しい判断だったと思う。そのようなことをすれば、ゲーム側の指示に沿うのが正義と言わんばかりに戦闘が窮屈かつ退屈になってしまうし、「一閃」を自分のモノにできた感動と技自体の特別感も薄れてしまう。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_024

同様の措置は前作のリマスター版でもされていたが、これについては「よくぞ、そのままにしてくれた」と言いたい。「一閃」はゲームから教えてもらうものではなく、自分で学び、会得するかも選べることが魅力のアクションでもあるからだ。別に使えなくてもクリアするのに問題はないが、使えればより戦闘に奥行きが増す。

それこそが『鬼武者』というアクションゲームが持つ魅力であり、根強い支持を得ている背景のひとつなのではないかと思う。

『鬼武者』は今後、完全新作『鬼武者 Way of the Sword』の発売も予定されている。願わくば、そちらでも「一閃」のコンセプトと醍醐味はそのままであってほしいと思うところである。(低難易度専用のサポートはあってもいいかも、と思いもするが)

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_025
この特典メニュー内から難易度選択を行う。(「最初から」を選ぶとゲーム本編が始まってしまう)

ただ、一点。難易度選択がタイトルメニューの「特典」の項目からでないと行えない仕組みは今後、プレイするに当たって注意である。「最初から」を選んでしまうとそのままゲーム本編が始まってしまうのだ(デフォルト設定だと「普通」で開始となる)。もし、ほかの難易度にして始めたい時は必ず「特典」を開き、該当項目を設定の上で始めることを推奨する。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_026

とにもかくにも、リマスター版としては前作から約7年ぶりになる本作の登場により、『鬼武者』シリーズへの門戸はさらに広がる。冒頭に書いたように、もし『鬼武者』にホラーゲームとの先入観があるなら、特撮番組風の親しみやすいテイストも含んだ『鬼武者2』から始めるのがオススメだ。それから前作にさかのぼるのもいいし、やっぱり過去の出来事は知っておきたいと思うなら、勇気をもって前作から始めるのもいい。

『鬼武者2』リマスターレビュー・評価・感想:“特撮ファンタジー時代劇”な作風が異彩を放つ、剣戟アクションゲームの傑作_027
前作『鬼武者』のHDリマスター版より。続編よりもアクションは少なめながら、それゆえのシンプルな遊びやすさと独特のホラーテイストが異彩を放つ傑作に仕上がっている。

前作『鬼武者』がセットになったバンドルパッケージも、『鬼武者2』のリマスター版とPlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、PCの全プラットフォームで同時に展開される。これを機に「空前絶後のバッサリ感」のコピーで名高く、長年にわたって新作が切望され続けてきた伝説の爽快剣戟アクションゲームの軌跡をたどってみよう。

ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ