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『マリオカート ワールド』をプレイしたら、シリーズ史上最大の進化がもたらした「コースから抜け出す」という感動に心が震えた。『マリカー』プレイヤーが3時間遊び倒して感じた変更点やあらたな魅力をレポート

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いよいよ6月5日に発売を迎えるNintendo Switch 2 。任天堂としては8年ぶりとなるこの新世代機は、同社の人気タイトル『マリオカート』と共にスタートラインを切ることとなる。

『マリオカート』シリーズ最新作『マリオカート ワールド』は、Wii Uでリリースされた『マリオカート8』から数えればおよそ11年ぶりとなる完全新作である。

ちなみに、Nintendo Switchでリリースされた『マリオカート8 デラックス』は2025年3月時点で6820万本超という規格外の販売本数を記録しており、シリーズ最新作となる本作は新しいハードのローンチタイトルに相応しいキラーソフトと言えよう。

今回、そんな『マリオカート ワールド』を発売に先駆けて遊ばせていただく機会を得た私は、3時間超にわたって本作をプレイし、本作がこれまでのシリーズからどのように強化され、そしてどのようなブレイクスルーを果たしているのかを全身で体感してきた。この記事では、その魅力をお伝えしたい。

ちなみに、基本的なシステムの詳細についてはすでにNintendo Directや公式サイトなどでご存じの方も多いと思われるので、この記事では筆者が実際に遊んで感動した部分などをメインに紹介していくことにする。網羅的な解説というよりは所感の集まりであるので、その点に注意して読んでいただきたい。

また、弊誌では体験会でのプレイの様子を編集した先行プレイ動画も複数公開しているので、興味のある方はこちらもチェックしてほしい。

文・取材/植田亮平
編集/うきゅう


シリーズ史上最大の進化がもたらしたのは、「コースから抜け出す」という感動

『マリオカート ワールド』は、全てのコースが一続きの世界を構成する箱庭となった。

『マリオカート ワールド』プレイレポート:シリーズ史上最大の進化がもたらした「コースから抜け出す」という感動_001

フリーランでは一部落下によるコースアウトこそあるものの、基本的にはコースを順序よく走ろうが、不意に道を外れようが、ひとつの世界のなかを自由に移動することができる。

そんな本作をプレイしていて、私はふと1996年に発売された『マリオカート64』に存在した、「カラカラさばく」というコースを思い出した。

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(画像は『VC マリオカート64』のページより)

カラカラさばくは建物一つない無人の荒野に鉄道が周回しているというシンプルな仕掛けのコースであり、鉄道の通るトンネルや踏切などを除けば、これといって目立つギミックも無い初心者向けコースである。

しかし、当時まだ言葉もろくに話せぬ幼少の私は、何を思ったのか、そのコースでは道から逸れて逆走を繰り返したり、過ぎ去った列車を線路伝いに追いかけるなど、およそレースとは無関係な行動ばかり繰り返していた。『64』で遊んだ記憶はほとんど無くなってしまったが、そのことだけはなぜか今でも鮮明に覚えている。

なぜ、私はあのときそのような奇行に走っていたのだろう? 今なら何となく、その理由が分かる気がする。

そのコースには、道を規定するような”柵”が無かったからである。だだっ広い砂漠の背景にそびえる岩壁の向こうに「まだ見ぬ世界」があり、そこに行けるかもしれないという夢想……、まだレースゲームの道理もしらない幼心が夢見た冒険に、私は出ようとしていたのだ……。

そしてそれから約20数年後、最新作である『マリオカート ワールド』で、ついに私はその冒険に旅立つこととなった。

本作の最も象徴的な進化は「ドライブが出来る」という点である。これまで2人乗りやバイク、飛行、反重力など、新作が出るにつれて多くの新システムを導入してきたマリオカートシリーズだが、今回はより抜本的な進化の方向に舵を切ったと言えるだろう。各コースは一つのエリアという扱いになり、巨大な箱庭・オープンワールドの中に取り込まれている。

これにより、本作は『Forza Horizon』『The Crew』のような「ドライブゲー」としての側面も確立することとなった。「フリーラン」という専用モードが用意されていることからも分かるように、ただコースを3周走るだけではない、「世界を探索する」という遊び方が新たに生まれたのである。

これまでコースの脇に設置され、コース世界における”壁”としての役割を果たしていたガードレールもなんのその、カートで突進すれば破壊可能になっている。この「柵を破壊する」という行為自体は特段目立つ要素ではないものの、これまでのシリーズファンなら誰しもが感動するに違いない。

それでいて、各コースはこれまでのシリーズと同様に、個性的かつエッジの効いたロケーションを有している。コース単体で見ても素晴らしい出来だが、それが所狭しと並んでいるので、ただ道を流しているだけでもコロコロと風景が変わっていく。

また、コースとコースを結ぶセクション地帯も、砂漠や雪山、火山やジャングルなど各地方の特色にあったものとなっており、コース間の移動に「ぶつ切り」感が出ないようにも調整されている。さらには、天候や日没などの環境変化も存在するのである。

これはもはや「『マリオカート』のテーマパーク」と言っても差し支えないだろう。マップ全体も「大きすぎず小さすぎず」というちょうどよいものに留められており、単調な道はほとんど無い。

マップ各所には後述する新アクションを活用するための「遊び場」や、収集要素となるご当地フードとコスチューム、Pスイッチを押すことでスタートする小さなミッションなども存在しており、とにかくプレイヤーを飽きさせない能動的な探索を促すデザインになっている。

特にPスイッチのミッションは初心者にとってドライビングテクニック上達のためのチュートリアル的な側面も兼ねており、楽しく探索しながらシステムにも習熟できるという優れたゲームデザインだ。

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チャージジャンプやレールスライドが切り拓く『マリオカート』の“トリック”的おもしろさ

今回新たに追加された数多くのアクションも、上記の箱庭・オープンワールドと非常に相性がいい。というより、いくつかのアクションは本作のシステムを前提に作られていると私は考えている。

特に「チャージジャンプ」だ。マリオカート ワールド Directの視聴時、私は「なぜこんな難しそうなテクニックを追加したのだろう」という疑問を抱いたが、今回の試遊を経てその理由が何となく分かった。これはスケボーやエクストリームスポーツにおける「トリック」なのだ。

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本作は全体がシームレスに繋がるマップという構造上、ワールド全体が高低差や起伏に富んだアスレチックになっている。そのため、ただ普通にアクセルを踏むだけではこうした上下への移動をカバーできない。

チャージジャンプがそのような事情から生まれたシステムなのか私の知るところではないが、いずれにせよ、「チャージジャンプ」「レールスライド」「ウォールラン」「リワインド」など、本作で追加された一連のアクションは、こうしたアスレチック的地形のなかで遊ぶためのツールとして、まるでスケボーゲームのような役割を果たしている。

地面から壁へチャージジャンプで飛び移り、そこから次はレールの上へと着地する。そしてレールスライドで滑って、最後には大ジャンプでフィニッシュ。ミスしてもリワインドでやり直し……と、こんなふうにスタイリッシュな遊び方が可能となる。

もちろんレースがメインのゲームなのでトリックを決めたからといってポイントなどはつかないものの、先ほど述べたドライブ要素と合わせて、本作を象徴する新しい遊びのひとつだろう。

『マリオカート ワールド』において、コースを取り囲む「柵」は物理的なレベルでも、そして象徴的なレベルにおいても、もはや完全に無くなった。ドライブやトリックなど色んな遊び方をここまで紹介したが、まずは単純に、「コースから抜け出す」感動を味わってみて欲しい。「新しいマリオカート」を確かに感じられるはずだ。

史上最大の規模で、レースはよりカオスに!

ここまで書いておいてなんだが、マリオカートはあくまでもレースゲームである。当然ながら、その面白さが最も詰まっているのはやはりレース、最大24人で繰り広げられる白熱した競走だ。

「大陸横断レース」を謳っている通り、本作は広大なマップを用いた大掛かりなレースが特徴となっており、「特定のコースを3周してゴール」という意識は、前作に比べて大幅に薄まっている(もちろんこれまでのような3周コースも存在する)。

ここからは若干詳しい説明も加えつつ、本作のレースがどのような進化を遂げているのかをお話ししよう。

本作に用意されているレース用モードは「グランプリ」、「サバイバル」、「VSレース」の3つ。コース間の区切りが無くなったことによって、これらのコースは大きく差別化されている。と、言われてもピンと来ない人もいるであろうから、各モードについて少し解説しよう。

まず「グランプリ」だが、これは従来のマリオカートシリーズと形式的には同じである。それぞれのカップには4つのコースが用意されており、各コースを走り終わるとリザルト→暗転→次のコースへという流れになっている。

面白いのは、各コースにはそれぞれ「コースに入るまでの道中」も含まれているということである。例えば一レース目を終えれば、次のコースは1レース目の終点から2レース目のコースのゴールまでを含んだ一連の道全部となる。

これはコースというよりも、セクションとして考えた方が分かりやすいかもしれない。つまり、グランプリ全体がA地点→B地点までを結ぶ一つのレースという構造となっているのである。それが4つのセクション(コース)に分割されているのがグランプリ。これで分かりやすくなっただろうか。

これに対し、A地点→B地点をセクションで区切ることなく、最初から最後まで暗転抜きのノンストップですべて走りきるのが「サバイバル」である。こちらはよりロードレース的な色が強く、各チェックポイントごとに上位到達者以外の脱落(特定順位以下の「足切り」)がおこなわれるという過酷なルールが課せられている。

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しかし今回の仕様で最も変わったのは、おそらく「VSレース」モードだろう。コースという概念が区間に置き換わったことによって、VSレースモードは「自由に組めるグランプリ」といった位置付けのモードに昇華した。複数ある選択肢のなかから、自分でコースルートを選ぶことができる……これまでで最もワクワクするモードのひとつだ。

これら3つが大きく差別化されている最大の理由は、やはり「同じコースでも、それぞれのモードで走る場所が違う」というところだろう。

街一つとっても、東から入るのと西から入るのでは進行方向は逆になる。山の場合は上りが下りになるわけだ。どのレースに参加するかによってそれぞれの道は大きく姿を変える。これらの組み合わせを考えると、本作の実質的なコース数は100近くに上ると言えるだろう。

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このようなシステムは実は『マリオカート8DX』の中に含まれるいくつかのDLC追加コースでも見られたものだが、本作ではほぼ全てのコースが、多かれ少なかれそのような特徴を持っている。

あくまで想像だが、前作のDLCはユーザーに更なる楽しみを与えるサプライズであったと同時に、きっちりと次回作の伏線にもなっていたかのように、私には感じられた。

競技シーンの視点からも感じる、本作の高いポテンシャル

私が個人的に注目したいのは、やはりサバイバルのモード。今回からレース人数が24人と一気に倍になったので、それを活かしたチーム戦などは特に白熱しそうだ。ゲーム内の設定では6人1組の4チームまで組むことができるし、ユーザー側で3人1組のルールを設けた場合には、8チームも組めることになる。大混戦まちがいなし。

また、新アクションによって、レースにおけるプレイヤーの技術介入度が大幅に上がったのも大きく、過去作と比べてもさらに競技性の高いゲームプレイを楽しめるかもしれない。特に「チャージジャンプ」や「レールスライド」は「狙ってやろうとすると意外と難しい」テクニックになっており、これができる、できないで試合展開は大きく変わってきそうだ。

また、本作はおそらく初めて水上が走れるマリオカートでもある。これまで水といえば「水中」がメインとなっていたが、今作からは晴れて水上に、ジェット式水上バイクのような挙動でスイスイと進んでいく。

水上ではプレイヤーのアクションによって波も上がり、ボムへいが爆発すればそこで発生した大きな波をジャンプ台代わりにできるなど、美しくダイナミックな水の描写とそれを利用したアクションにも注目だ。この表現が出来るのもNintendo Switch 2ならではだろう。

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総じて、今回のレースはいわゆる「ガチ勢」でもかなりのめり込んで遊べるようなものに仕上がっているのではないかと思う。

24人で長い長い道を走るということで、トップと最下位の差が開きすぎないかとも思ったが、試遊の時点ではそれほど気にならず、しっかりとした調整を感じた(サバイバルに関してはそもそも遅れたプレイヤーが脱落していく)。

新システム、新アクション、新アイテムなど、何もかもが新しくなったレースでどのようなデッドヒートが繰り広げられるのか、これから楽しみだ。

ほかにも、ゲームプレイとともに解放されていくバリエーション豊かすぎるキャラクターたち、カートやコスチューム、そしてそれらをデコレートするステッカーなど、まだまだ話したいことはいっぱいあるのだが、そういった「やりこみ」要素はプレイヤーご自身の目で確かめていただくとして、最後に『マリオカート ワールド』の音楽について紹介しよう。

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本作のBGMは、ほとんど「マリオシリーズコンピレーション」と言ってもいいほどに、マリオカートにとどまらないこれまでのマリオシリーズの楽曲を踏襲している。ただ道路を走っているだけで、「このメロディー、知ってる!」ということが頻繁に起きる。

『スーパーマリオUSA』から『スーパーマリオカート』、そして『スーパーマリオ オデッセイ』まで……。マリオファンには垂涎ものの曲たちが、エリアの切り替えと共にスムーズに切り替わっていく。(しかも、きちんと対応した小節ごとに繋がっている!)

試遊の際、ちょっと泣きそうになったのはヒミツである。


以上、先行プレイで私が感じた、『マリオカート ワールド』の魅力を書かせていただいた。

3時間という長時間プレイを通じて、新しく生まれ変わったマリオカートの広大な世界を探索したり、新アクションを交えたテクニックを練習してみたり、そして刷新されたレースモードをマルチプレイで遊んでみたりと、非常に濃密な体験ができた。

Nintendo Switch 2 で実装されたカメラ機能に関しても、今までは「ゲーム画面から目を離さなければ相手の顔が見えなかった」ものを、カメラ機能によって「ゲーム画面を見るだけで相手の顔が見える」ようにしたという。ゲームを通じたユーザー同士の交流を重視する、任天堂らしい視点がうかがえるものとなっていた。

さらに、先行プレイでは新モードとなる「サバイバル」も体験。24台中の1位をかけて、ロードレースさながらの熱いレースが繰り広げられた。(ちなみに、勝利を手にしたのは弊誌、電ファミニコゲーマーである)

プレイ中はとても和気藹々とした、驚き混じりの歓声が上がっており、誰もが『マリオカート ワールド』のすごさ、新しさを純粋に喜んでいたように感じた。それだけのパワーをもった作品だと、自信をもって言える。

いよいよ6月5日、マリオカートの最新作が登場する。実を言うと、今回『マリオカート』がこの路線の進化になるであろうことが、私には何となく分かっていた(だから何という訳ではないが)。そんな私の感想として、本作は「期待通り」を超えた、「理想通り」である。

「王道かつ意欲作」というと形容矛盾のように聞こえるが、本当にそうなのだから仕方ない。古くからのファンにとっても、新しいユーザーにとっても、パワーアップの仕方、進化の仕方としてはこれ以上ないほど完璧なものだと思う。

発売された暁には、一刻も早く本作をプレイし、体験会では味わえなかったすべての要素を味わい尽くしたいものだ。(そのためにはもちろん、まずNintendo Switch 2 を入手しなくてはならない。頑張れ、私)

© Nintendo

ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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