6月5日、任天堂より発売された新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」。
Nintendo Switchの後継として約8年ぶりに発売された新世代機では、データの保存や読み込みをおこなうmicroSDカードの規格として「microSD Express」のみ対応と発表され、ショップでは売り切れが続出するなど、大きな話題を呼びました。
microSDカードでありながら、SATA SSDよりもはやい転送速度を誇るという新規格の実力はいかほどか? その実態を確かめるべく、電ファミ編集部ではmicro SD Expressカードを複数種にわたって調達し、本体とのデータ移動やゲームの起動時間などを用いて、それぞれの性能比較をおこなってみました。
今回、性能比較をするのは、
レキサーの「PLAY PRO microSDXC Express Card 256GB」
サンディスクの「SanDisk microSD Expressカード 128GB」
サムスンの「Samsung microSD Express Card 256GB for Nintendo Switch 2」(任天堂ライセンス商品)
の3種類。くわえて、Nintendo Switch 2 本体へ保存した場合の数値も記録してみました。ぜひ最後までご覧ください。
文/うきゅう
※いずれもストップウォッチを片手に手動で計測しているため、参考値レベルの検証であることはご了承ください。
いきなり結果発表! 検証方法もあわせてご紹介
ということで、いきなりですが今回の性能比較結果を一覧で掲載しておきます。
検証①本体からmicroSD Expressへのデータ移動にかかった時間

今回の検証における最速microSD Expressはサンディスクの「SanDisk microSD Expressカード 128GB」となりました。なお、サンディスクのライセンス商品版は売り切れてしまっていて購入できなかったため、今回の検証ではサンディスクのオンラインストアから購入したものを使用しました。
つづいて、ゲームの起動から読み込み終了までの時間を計測した結果がこちらです。
検証②ゲームの起動開始から暗転が開けるまでの時間
こちらも、最速のmicroSD Expressはサンディスクの「SanDisk microSD Express」でしたが、その差はわずか0.3秒程度。まさに誤差レベルの結果です。今回の検証に用いたmicroSD Expressなら、どれを使ってもほとんど差は感じないことでしょう。
それぞれの検証方法もご紹介します。まず、今回のテストではソフトとして『マリオカート ワールド』(データ容量:21.9GB)を利用し、本体は常に携帯モードで動作させました。
検証①では、本体からmicroSD Expressへゲームデータを移動する時間をそれぞれ3回ずつ計測。各回の時間と平均値を算出しました。表では関数の都合上カンマ以下の秒数を切り捨てで表記しています。
検証②では、ホーム画面からゲームを選択し、ユーザー選択を終えてアイコンが拡大表示された瞬間に計測スタート、暗転が終わってゲーム画面が映ったら計測終了として、ゲームの起動に掛かった時間を計っています。

いずれのデータも、計測にあたってはスマートフォンのストップウォッチ機能を使用しました。なるべくタイミングをあわせて計測をおこなったつもりですが、しょせん人力であり誤差が紛れ込む余地はあります。
また、連続で計測をおこなった区間もあり、熱による性能の変化なども存在するかもしれません。参考値ということで、重ねてご了承いただければと思います。
レキサー「PLAY PRO microSDXC Express Card 256GB」
公称スペック:読み出し速度 最大900MB/s、書き込み速度 最大600MB/s
購入時の価格:1万4800円(税込)
トップバッターは、中国のLongsys社がアメリカを中心に展開するメモリーカードブランド・レキサーです。公称スペックは読み出し速度が最大900MB/s、書き込み速度が最大600MB/sとなっています。microSDカードとしては異様としか言いようのないハイスペック。「Express(急行)」の名を冠するだけはあります。
さて、実測ではどのような結果が出てくるでしょうか。本体からmicroSD Expressへデータを移動してみました。
1回目 5分01秒24
2回目 5分33秒41
3回目 5分28秒12
平均値はおよそ5分20秒92でした。1回目と2回目以降でかなりおおきな変化が生まれており、このあたりは連続使用による影響もあるかもしれません。
冒頭の一覧から見ると最遅ですが、20GB超のデータを5分で動かせるというのはSDカードとしては破格のスピードです。レキサー製がおそいというより、ほかのものがそれにも増してはやかったと考えた方がいい気もします。
つづいて、『マリオカート ワールド』の起動までの時間を計測したものがこちら。
1回目 7秒85
2回目 7秒76
3回目 7秒73
平均値はおよそ7秒78でした。かなり余裕をもって10秒を切っており、これだけスムーズに起動すれば、遊んでいてもストレスはほとんどなさそうです。
サンディスク「SanDisk microSD Expressカード 128GB」
公称スペック:読み出し速度 最大880MB/s、書き込み速度 最大480MB/s
購入時の価格:1万5180円(税込)
続いては、アメリカのフラッシュメモリー製造企業・サンディスクが発売しているもので、公称スペックは読み出し速度が最大880MB/s、書き込み速度は最大480MB/s。読み出し速度は先のレキサーのものとほぼ同じですが、書き込み速度は25%と大きく異なっています。
果たして、その差は実測でどうなっているのでしょうか。測定結果がこちらです。
1回目 4分30秒33
2回目 4分32秒83
3回目 4分34秒47
平均値はおよそ4分32秒54でした。は、はやい……! レキサーも決して遅くはないのですが、サンディスクの数値は平均で50秒ちかく短く、なかなかに壮観です。ちがいとして大きそうなのは、「100MB/sの最低持続書き込み速度」という部分でしょうか。あくまでも社内テストに基づいた表記とのことですが、こういった記載があると安心感にもつながりますよね。
任天堂のライセンス商品版との比較もぜひともしてみたかったのですが、残念ながら僕は購入することができなかったので、今回はできませんでした。お持ちの方は試してみてもいいかもしれません。
『マリオカート ワールド』の起動までの時間を計測したものはこちらです。
1回目 7秒68
2回目 7秒50
3回目 7秒48
平均値はおよそ7秒53でした。いちおう今回比較したmicroSD Expressのなかでは最速ですがレキサー、サムスンとの差は誤差レベルです。ゲーム起動の部分では、ほとんど差がないと言えるでしょう。もっと起動に時間のかかるソフトで検証すれば変わるかも?
サムスン「Samsung microSD Express Card 256GB for Nintendo Switch 2」(任天堂ライセンス商品)
公称スペック:読み出し速度 最大???MB/s、書き込み速度 最大???MB/s
購入時の価格:6980円(税込)
僕がNintendo Switch 2 本体とともに購入したサムスン製の任天堂ライセンス商品です。パッケージなどに詳細な性能表記はありませんでした。
いちおうサムスンが2024年の2月に公開した公式ニュースでは、業界初のExpress microSDカードサンプルとしてシーケンシャルの読み出し速度が最大800MB/sと表記されているものの、ライセンス商品のスペックがこの記事に掲載されたものと同じかどうかは公表されていないようでした。
はたして、Nintendo Switch 2 向けに最適化などはおこなわれているのでしょうか? 実測値がこちらです。
1回目 5分00秒70
2回目 5分09秒29
3回目 5分02秒42
平均値はおよそ5分04秒14でした。レキサーとサンディスクのあいだ、今回の性能比較では第2位の結果です。
つづいて、『マリオカート ワールド』の起動までの時間を計測したものがこちら。
1回目 7秒83
2回目 7秒95
3回目 7秒86
平均値はおよそ7秒88でした。数字だけで比べれば最遅ですが、やはり誤差レベルですね。今回比較した3種であればどれを買っても問題なさそうです。
おまけ:Nintendo Switch 2 本体で検証
公称スペック:読み出し速度 最大???MB/s、書き込み速度 最大???MB/s
購入時の価格:6万9980円(税込)
最後に、Nintendo Switch 2 本体の性能も見ておきましょう。任天堂公式サイトの記載によれば、Nintendo Switch 2 は本体保存メモリーが256GBのUFSとなっています。

日経クロステックが2024年6月に公開した記事によると、このUFSという規格は転送速度が最大4600MB/s(UFS4.0の場合)と、「SSDに迫る高速さ」が売りになっているとのことで、こちらの計測結果も期待が持てそうです。
本体ではこれまでと逆に、micro SD Expressから本体への書き込み速度を計測しました。あくまでも参考程度ではありますが、データとして置いておきます。
早速ですが、実測値はこちら。
レキサー→本体
1回目 3分20秒27
2回目 3分19秒75
3回目 3分19秒49
平均値はおよそ3分19秒84でした。
サンディスク→本体
1回目 3分15秒65
2回目 3分15秒73
3回目 3分15秒45
平均値はおよそ3分15秒61でした。
サムスン→本体
1回目 3分20秒85
2回目 3分15秒67
3回目 3分15秒31
平均値はおよそ3分17秒28でした。
今回の検証で用いたどのmicroSD Expressよりもはやいですし、安定感もあります。ちがいを見つけようとするなら3回目が最もはやいという傾向も言おうと思えば言えますが、流石に検出方法に起因した揺らぎの範疇で収まりそうな、誤差レベルのちがいですね。
最後に、本体保存時のゲーム起動確認までの時間です。
1回目 6秒63
2回目 6秒87
3回目 6秒80
平均値はおよそ6秒77でした。いやー、こちらもはやい。microSD Expressとくらべると、平均で1秒程度の差がついています。わずか数秒のなかでの1秒は割合として決して小さくはありませんから、「何度も起動しそうなゲームは本体に入れておく」というのも有効な選択肢かもしれません。
以上、6月5日に発売されたNintendo Switch 2 および、SDカードの新規格「microSD Express」を用いた性能比較をおこなってみました。
感想としては、「全部はやい」これに尽きますね。多少の数値差はありますが、そもそも規格自体が高速すぎて、実用としてはまったく困らなさそうです。
みもふたもない話をすると、「購入に迷ったらライセンス商品を選ぶ」というのが安心なんじゃないかなと思います。現在は需要の高騰や関税などの影響もあってかライセンス商品とそれ以外の価格差が大きいので、そういう意味でもライセンス商品が抜きんでている様に感じました。
弊誌では、ほかにもNintendo Switch 2 に関するさまざまな記事を公開していますので、ぜひこちらもあわせてチェックしてみてください。