『たまごっち』シリーズの最新作『Tamagotchi Paradise』(たまごっち パラダイス)がとんでもない規模になっていることをご存知でしょうか? 公開されている情報をざっくりまとめると、下記です。
・5万種以上の姿に成長する
・「宇宙」から「細胞」まで観察することができる
・忙しいときはシッターにお世話をお願いできる
・うんちを集めてバイオ燃料に変えると宇宙旅行に行ける
・「ツーしん」機能でたまごっち同士を対面 → 相性がいいと子どもが誕生、相性が悪いと喧嘩 or その場で食べられる可能性も
いろいろと “気になるところ” はありますが、まずやっぱり耳を疑ったのは5万種という数。筆者が遊んでいた初代『たまごっち』は10種くらいだったので、規模の違いに驚きを隠せません。また、「宇宙から細胞まで観察できる」というのも壮大で興味深いです。
なにより、“食べられる” ってどういうこと?
これはさすがに遊んでみたい。そこで販売元のバンダイさんにダメ元でお願いをしてみたところ、なんと『Tamagotchi Paradise』2体を特別にお借りすることができました。ありがたやありがたや。
ということで本稿では、初代『たまごっち』を小学生のときリアルタイムで遊んでいた筆者が、約30年ぶりにたまごっちのお世話をしてみた30日間の記録をお届けします。せっかくなので、初代『たまごっち』(私物)+『Tamagotchi Paradise』2体の合計3体を同時に始めてみました。

本体、デカくない???
文/柳本マリエ
1日目:あまりにも赤ちゃん
さっそく始めてみると、生まれた瞬間から泣いている。あまりにも、あまりにも “赤ちゃん” だ。
急いでごはんやおやつを与え、「おなか」と「ごきげん」のステータスを満たす。このあたりは初代と変わらない。しかし安心するのもつかの間、すぐに体調を崩してしまった。
あまりにも “赤ちゃん” すぎる。
初代『たまごっち』+『Tamagotchi Paradise』2体の合計3体を同時に始めてしまったこともあり、最初の30分くらいは呼び出し【※】が多く、休んでいる暇がない。ちなみに呼び出し回数が多かったのは圧倒的に初代だった。かわいいやつめ。
※呼び出し
たまごっちは空腹や病気など、なにか問題が発生したときはだいたい呼び出し音で教えてくれる
筆者はこの時点で初代を遊んでいた11歳のときとは明らかに違う感情が芽生えた。それは、庇護欲(ひごよく)だ。「この小さな命を守りたい」という完全なる “親目線” でたまごっちを見ている。
当時もそういった感情がなかったわけではないが、わりとドライに接していた。しかしあれから約30年の時を経て40歳にもなると、目の前に小さな生きものがいるだけでその尊さから胸がギュッと締めつけられてしまう。
おなかいっぱいごはんを食べて、清潔な環境で健やかに、不自由なく長生きしてほしい。いつか訪れるであろうたまごっちの「死」を受け入れられるのか、1日目からけっこう本気で不安になった。
2日目:さっそく愛情が傾く
『たまごっち』シリーズのおもしろいところは、どんなに真面目にお世話をしても希望のたまごっちに進化するとは限らないところだろう。
たまごっちは環境によって姿かたちが変わっていくため、「常にステータスを満たしておけばOK」というわけではない。極端な話、心を鬼にして劣悪な環境で育てたほうが希望の進化を遂げる場合もある。
『Tamagotchi Paradise』では下記の順番で進化していくようだ。
たまご期
↓
ベビー期
↓
キッズ期
↓
ヤング期
↓
アダルト期
ベビー期からキッズ期までは数時間ほどで、1日目の時点で下記の姿まで進化していた。

ベビー期に引き続き、キッズ期も愛おしい。このような屈託のない笑顔を向けられたら、なんでもしてあげたくなってしまうだろう。とくに紫のデバイスのほうは見た目や色味がかなり好みだったため、さっそく愛情が傾き始めていた。
しかし、想像していたより遥かに早くつぎの進化が訪れる。たまごっちも、友だちの子どもと同じくらい成長が早い。開始から24時間ほどだったと思う。

ピンクのデバイスのほうは1頭身から2頭身になり、順当な進化を遂げていた。見た目の印象もキッズ期とそこまで変わらない。この姿ならここから先の進化もあらゆる方向性が考えられるため、想像が膨らむ。
ヒント(?)としては、がおがおヤングという名前。“がおがお” という響きから熊や狼など肉食の哺乳類を連想させる。
一方、紫のデバイスのほうは「石」だった。

……なんで???
まさかあのビジュアルから石になるとは、だれが想像できただろうか。キッズ期の面影がまるでない。なんというかもう、“肉質” が変わりすぎている。

岩のような無機質なものがモチーフになっているたまごっちもいるとは。この時点で「石」ということは、おそらくここから先の進化も「石」だろう。自分のなかに “石のバリエーション” が乏しく、この先の姿をまったく想像できない。
救いは、2体とも強くなりそうな発展性を感じられること。丈夫で長生きしてくれるかもしれない。
3日目:原石、ここに現る
信じられないことが起きた。3日目にして早くもアダルト期に進化。しかし驚いたのは早さではなく、その姿。

石はどこ行った???
2体ともかわいすぎる。まず、じぇむっちについては、直前まで石だったとは思えない。石の発展形として思いつくのはせいぜい「岩」くらいで、このような進化を遂げるとはまったく想像がつかなかった。そうか、あの姿は “原石” だったのか。
「かちかちヤング」(左)は「じぇむっち」(右)に進化(画像はたまごっち図鑑 | Tamagotchi Paradise(たまごっちパラダイス) | たまごっち公式サイトより)
そして、みゃおっちも猫好きにはたまらない。公式サイトにもたくさん載っている子だったため、そう簡単には進化しないと思っていた。
「がおがおヤング」(左)は「みゃおっち」(右)に進化(画像はたまごっち図鑑 | Tamagotchi Paradise(たまごっちパラダイス) | たまごっち公式サイトより)
たった3日でこんなにも進化するなんて。「この子たち、いちばんかわいいのでは?」と、すでに親バカフィルターが発動している。 もう本当に願いはひとつ。病気とかせず元気に長生きしてほしい。ただそれだけ。
ちなみに初代のほうはまだ「くちたまっち」(こどもっち期)だ。
4日目:幻聴が聞こえる
キッチンで片づけをしていると自室からたまごっちの呼び出し音が聞こえたため、手を止めて急いで自室に戻る。しかし、どのたまごっちからも呼び出しの形跡はない。……幻聴だ。
たまごっちをお世話していると、この幻聴はわりとある。初代を遊んでいた11歳のときもそうだった。ここからは少し当時の話をさせてほしい。
初代『たまごっち』は、社会現象を巻き起こしていた。どこに行っても売り切れており、運よく在庫と出会ってもカラーなど選べる余地はない。まさに争奪戦となっていた。
私は偶然にも発売前からおもちゃ屋のチラシで存在を知っていたため発売日に購入。全色たっぷり在庫があるなかからオレンジを選んだ。この実績によって同級生たちから「『たまごっち』を発売日に買った見る目のあるやつ」として扱われる。
その後だんだんと供給が行き届き所持率が上がると、小学校へ持ち込んでお世話をする人が爆増。ある日、大規模な『たまごっち』の “取り締まり” が行われ、クラスでは10個くらいの『たまごっち』が没収されてしまった。じゃらじゃらと没収されていく『たまごっち』の姿をいまでも鮮明に覚えている。
しかしこの日、私は着ている服にポケットがついていなかったため泣く泣く『たまごっち』を家に置いてきていた。おかげで没収されず、取り締まりを回避することに成功。いま思うと、別にポケットがなくてもランドセルに入れて行けばいいと思うものの、当時はなぜか持って行くことを諦めてしまっていた。
私は『たまごっち』を発売日に購入しただけでなく、取り締まりからも逃れた「『たまごっち』運がやたら強いやつ」として同級生たちから再び評価されることになる。私の回避運(?)はこのとき使い果たしてしまったのかもしれない。
5日目:「宇宙」から「細胞」まで
『Tamagotchi Paradise』にはズームダイヤルがついている。このダイヤルを回すと倍率が4段階で変わり、さまざまな視点からたまごっちを観察できるという仕組みだ。
いちばん遠い視点だと「宇宙(たまうちゅー)」から、いちばん近い視点では「細胞(たまさいぼー)」まで見ることができる。たとえば、たまごっちが病気になってしまったときは細胞までズームして菌を撃退すればOK!
細胞の構成はたまごっちごとに異なるらしく、じぇむっちはおにぎりや太陽がたくさん出ていた。
初代は5日目にして「くちぱっち」に進化。
6日目:シッターの存在
今日は現実世界で「とあるゲーム機が発売する」という大きなイベントがあり、朝から取材のために外出していた。取材先でお世話をすることはできないため3体とも自宅に置いて出てきている。取材が長引けば、最悪の事態(死)も覚悟する必要があった。
幸いなことに取材は順調に進み、昼過ぎには帰宅。急いで様子を確認すると、みんなうんちをしているくらいでちゃんと生きていた。本当によかった。
取材から帰ってきて気がついたことがひとつある。『Tamagotchi Paradise』にはシッターの機能があった。次回から外出するときはこの機能を使おう。
この機能が初代にも搭載されていたら、小学校でのあの取り締まりは起こらなかったのかもしれない。と思いつつも、取り締まりがあったからこそ当時の思い出を強烈に覚えている節もある。
7日目:くちぱっちが急に死ぬ
くちぱっちとのお別れがこんなに早いと思わなかった。前日にあまりお世話ができなかったことが影響したのだろうか。それとも初代の寿命がこれくらいだったろうか。いずれにせよくちぱっちが死んでしまった。

初代たまごっちたちとの「死」は過去に何度も経験していることもあり、悲しさよりも驚きが勝った。じぇむっちとみゃおっちの死期も近いのだろうか。
8日目:「エッグハント」に気がつく
じぇむっちとみゃおっちにごはん(いつでもあげられるペレットフード)をあげても、不満そうな顔をすることが増えた。そんなとき「エッグハント」の存在に気がつく。
なんと、1日1回「ポコポコかざん」か「ポコポコいずみ」に食べものを探しに行くことができるようだ。説明書をちゃんと読んでおけばもっと早く気がつけたはず。こんな母でごめん。
実際にエッグハントに行ってみると、肉・さくらんぼ・ハチミツなどさまざまな食材を集めることができた。は~ん、これらが成長に影響するってわけか。お世話の頻度などにくわえて「なにを食べさせるか」も進化において重要そうだ。
9日目:“食べられる” ってどういうこと?
そろそろ、じぇむっちとみゃおっちを対面させてみようと思う。
公式サイトの情報によると「ツーしん」機能で対面させたとき、相性がよければ家族となり子どもが生まれ、相性が悪いと喧嘩、あるいは最悪 “食べられる” こともあるとのこと。
極端すぎる。だってそんな2択、聞いたことがない。これが、『デジタルモンスター』みたいに、もともとバトルをさせる前提で育成していたらまだわかる。しかしそうではなく「仲良くしてくれるかな? 子ども生まれるかな?」と期待を込めて対面させるわけで。
手塩にかけて育てた自分のたまごっちが目の前で食べられてしまった日には、どのように心の整理をつけたらいいのだろうか。
緊張感が走るなか対面させてみると、すぐに仲良くなり早くも子どもが生まれた。
じぇむっちのほうのたまごからはみゃおっち「目」と「色」を持った子どもが生まれ、みゃおっちのほうのたまごからはじぇむっちの「目」と「色」を持った子どもが生まれた。これが “遺伝” か。
これからは、生まれた子たちのお世話をしていくことになる。その親であるじぇむっちとみゃおっちもこのまま同じ星で生活できるようで、お別れをする必要はなかった。ひと安心。
10日目:フィールドを変える
『Tamagotchi Paradise』には「そら」「りく」「みず」と3種類のフィールドがある。キッズ期をどこで過ごすかによって姿が変わるようで、たとえば「みず」で育った子は翼を持つたまごっちには成長しない。そのため、たとえば鳥のような見た目に成長させたい場合は「そら」で育てる必要がある。
そこで、「そら」で育ったじぇむっちの子どもは引き続き「そら」、「りく」で育ったみゃおっちの子どもは「みず」で育ててみることにした。すると、下記に進化を遂げた。

(画像はたまごっち図鑑 | Tamagotchi Paradise(たまごっちパラダイス) | たまごっち公式サイトより)
公式画像と目や色が異なるのは遺伝によるもの。なるほど、この遺伝によって5万種以上の姿に成長するというわけか。
イモムシのような見た目のぶんぶんヤングとクラゲのような見た目のふよふよヤングであれば、前回(石)と違ってこのあとの姿を明確に想像できる。実際、想像していたとおりの進化となった。

11日目~25日目:5世代まで繁栄
ひと通りのサイクルを理解した。おそらく下記の要因が進化に影響を及ぼしているため、より多くのたまごっちと出会うためにはこれらを “かぶらないように” していく必要があるだろう。
・お世話の頻度
・与える食べもの
・育てるフィールド
そこで、育てるフィールドについて紫のデバイスのほうはずっと「そら」、ピンクのデバイスのほうは「りく」と「みず」を混ぜながら育てる方針に決めた。
ここからは育成と繁殖を繰り返すターンに入ったため、まとめて紹介していく。それぞれ5世代まで繁栄した。
<紫のデバイス>
じぇむっち(そら)
↓
ぱぴよっち(そら)
↓
もんがっち(そら)
↓
ばたっち(そら)
↓
はっちっち(そら)<ピンクのデバイス>
みゃおっち(りく)
↓
くららっち(みず)
↓
たちゅっち(みず)
↓
みゃおっち(りく)
↓
ぐそくっち(みず)
第1世代のじぇむっちとみやおっちの「目」の遺伝が興味深い。第4世代のキッズ期に体の色を変えるおやつを与えたため、「色」については途中から遺伝とは異なるかたちで出ているようだ。
また、5世代すべて「そら」で育てた紫のバイスのほうは全員同じフィールドにいるためかなりにぎやかな状態になっている。
もしかしてこうやって繁殖を続けていけば、だれも死なないのか?