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貴君、『風燕伝:Where Winds Meet』のむせ返るほどの東洋的《浪漫》を味わいたまえ。『三国志演義』『水滸伝』に『項羽と劉邦』。『彩雲国物語』でも『魔道祖師』でもいい。この《浪漫》が分かるなら——このゲームを遊び給え

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貴君は、《浪漫》を感じるゲームに出会っているか?
ロマンではない。個人の内面が生み出す美意識だとか、繊細な感性的芸術がどうとか、そんな話はヨーロッパ人にまかせておけ。大事なのは《浪漫》だ。

何に《浪漫》を感じるかはひとそれぞれ? もちろんそうだろう。浪漫に貴賤などない。七つの海を股にかける大冒険に浪漫を感じる者がいれば、雨上がりのアスファルトに佇む水たまりに浪漫を感じる者もいる。

だが今日するのはそんなつまらん話ではない。これから話すのは東洋的《浪漫》についてである。つまりそれが『風燕伝:Where Winds Meet』というゲームなのだ。

『風燕伝:Where Winds Meet』評価・感想・レビュー|むせ返るほどの東洋的《浪漫》_001

中華世界は《浪漫》だ。ロマンではない、《浪漫》である。

この《浪漫》を善しとするかどうかに、貴君が男であるとか女であるとかは関係がない。『三国志演義』とか『水滸伝』とか、そういうものが好きかどうかということだ。司馬遼太郎の『項羽と劉邦』みたいな小説でもいいし、なんなら『彩雲国物語』とか『魔道祖師』でもいい。

そうしたものには、中華的《浪漫》のエッセンスが詰まっている。

これから紹介する『風燕伝』はそうした中華世界に対するキラキラした憧憬やら興奮やら、そういうものをたっぷり味あわせてくれるゲームだ。

華やかなりし中原の大都市や、水墨画のように太く濃い稜線に縁どられた大地、義に生き侠に死す英傑たち、武の極みを目指して果てしなくつづく鍛錬、そこはかとなく漂う耽美な空気──つまりこれが《浪漫》である。

本作は10世紀の中国を舞台に、時に実際の歴史と交錯しながら武の道を究めんとする主人公の物語を紡いでゆく武侠・オープンワールド・アクションRPGだ。

ブッキョーってなんだ。貴君はそう思っているかもしれない。でもそんなことはどうだっていいのだ。上にあげたような作品をひとつでも通ったことがあるなら、貴君にもすでに本作を味わう準備はできている。

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『風燕伝』は2025年中に日本リリースを予定しているタイトルで、つまりまだリリースされていない。しかしその時さえ迎えてしまえば、本作に触れるのはかんたんである。というのも本作、ビジュアルも演出も(たぶん予算のかけ方も)かなりAAA級に近い作品だと感じられるレベルの出来ばえなのだが、どういうわけか基本プレイ無料である。

よくあるゲームの強化要素(キャラとか武器とか)は課金要素で~というのでもなく、ゲームのコア要素は課金なしで全部遊べてしまう。課金要素はキャラクターの強さに関わらない衣装系のアイテムのみ。スマートフォン向けではなく、MMOでもなく、公称ではソロプレイでも150時間は遊べると豪語する本格オープンワールドだ。

本当に150時間も遊べるのか? それは分からない。なぜなら150時間も遊んでいないからだ。筆者は分からないことはちゃんと分からないと言う。でも、こういうゲームを作ったやつらが遊べるというなら、まあ信じられると思える。

つまりこいつは、そういうゲームなのである。

取材・執筆/恵那

街は続くよどこまでも。オープンワールドで再現された巨大都市「開封」が凄まじすぎる

本作『風燕伝』の舞台となるのは10世紀頃の中国、世界史的には「五代十国時代」と呼ばれている。シルクロードの西端を覆うように成長・繁栄した唐王朝が滅んだあとに、無数の小国が乱立した戦乱の時代だ。だが、このゲームを遊ぶのにそんな知識は別に要らない。

それよりも大事なのは、このゲームのスケールである。本作にはこの時期に成立した宋(北宋)王朝の首都である「開封」の街が登場する。この開封が、デカい。たまらんレベルにデカい。

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慎ましさや奥ゆかしさと言ったジャパン的ワビサビは微塵も感じられない。ヘクタールがどうとか、東京ドーム何個ぶんであるとか、そのような数理的事情についてはよくわからん。

よくわからんが、街の中にファストトラベルのポイントが15個もある。筆者は10より大きな数は苦手なので少し間違ってるかもしれない。だがこいつは、そういう規模の都市なのだ。

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市でにぎわう華やかな大通りから、貴人の住まうであろう豪奢な邸宅、あばら家の立ち並ぶ地区まで、この開封の街はとにかく広い。広いので普通に道に迷う。でもその迷子になる感覚が楽しい。どの通りを曲がっても未知との出会いが待っている。

ゲーム内では時間経過による昼夜の概念もあり、同じ場所でも昼と夜でまた違った顔を見せてくれるのもたまらんポイント。ゲーム中のサブクエでは、夜に屋敷に忍び込んで情報を仕入れる(盗み聞きする)といったものもあった。

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むろん、驚愕すべきは巨大な建造物だけではない。名前も知らない川に掛けられた小さな橋から、道端で無造作に売られている野菜、至るところに存在する横浜中華街みたいな門、すべてが泥臭く無造作に置かれているのだ。

手垢と靴の泥にまみれたような生活感。貴君が海外旅行で地元のスーパーを覗くのが好きなタイプなら、延々と道に迷いながら楽しめるだろう。

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本作はネットイース傘下のEverstone Studioが開発を進める新作オープンワールド(中国では先行してリリース済み)で、アクション演出や物語などにもオリエンタルな風味があふれているのだが、筆者が真っ先に見て欲しいと思ったのがこの巨大都市・開封だ。

歴史上の実際の開封は、当時すでに約100万もの人が暮らしていたという巨大都市。言わずもがな同時代では世界最大規模の都市だ。日本ではあまりなじみのない地名だろうが、『水滸伝』を読んだことがあれば、たびたびこの都市が登場するのでご存知の方もいるだろう。

一言にまとめると「とにかくアホみたいに広い街」である。もちろんオープンワールドにおけるマップは広い=良いこととは限らない。だが本作では辻ごとに風景が全く違うし、ビジュアル的なリッチさも相まって、あちこち練り歩くだけでも時間を忘れて遊べてしまう。

実は今回の事前プレイに合わせて、筆者は開発陣へのインタビューも行っている。その中で語られた話によれば、こうした街並みや建築物の再現には200TBを超える写真資料の活用や博物館などでの調査を実施しているほか、建物によってはその構造を詳しく知るために、実際に小型の木製モデルまで制作しているという。

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▲「樊楼」の制作にあたって、事前に作成したというこの建築の一部
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▲ゲーム内に存在する巨大建造物「樊楼」。とにかくデカい

これは当時の開封市にあったとされる高級遊興施設「樊楼」をモデルにしたという建物で、ゲーム中の他の建物と比べてもとびぬけてデカい。遠景でみるとまるで城である。というかこれ城じゃないのか??

残念ながら、当時あった実際の「樊楼」は現存していない。開封という都市は巨大で偉大な都市だったが、そうした偉大さは常に歴史の奔流から挑戦を受けるのである。バグダッドの知恵の館が高原の馬乗りたちに焼かれて灰になったように、この都市も歴史の洗礼によって多くが失われてしまった。

だが、だからこそゲームの中でこの建物が再建されているのは大きな浪漫である。インタビューでは、この「樊楼」の制作にあたっては、伝えられる当時の建物の美しさや機能性を維持しつつも、建造物としての不自然さを感じさせないよう緻密な計算によってつくられた、と語られていた。

筆者はこの話を聞いたときにちょっと感動してしまった。浪漫とは時に執拗さを要求する。妄執的な情熱が、結実してカタチになるとき、すばらしい浪漫を生むのである。

建物のある所に人あり、人の集まるところにトラブルもあり

大きな箱には大きなプレゼントが、大きな都市にはたくさんの人間がつきものだ。デカいブツにはデカいものが、もしくはたくさんのものが収まっているべき。自明の理である。やたら上げ底のきつい弁当や、バカでかい箱にちんまり収まっているボドゲのコンポーネントを許してはならない。

もちろん『風燕伝』はそんなことはしていない。デカい都市である開封にはそれに見合うだけのNPCが詰まっている。その数はなんと1万以上。ゲーム全体ではなく、開封市中で生活しているNPCだけの数だ。

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「いい加減なことを言うな! お前はちゃんと数えてから言っているのか!?」
賢明な貴君はそう思ったかもしれない。筆者は正直に答えよう。もちろん数えたわけではない。無理である。筆者は10より大きな数をみるとじんましんが出てくる。1万人というのは、あくまで公式の発表や、開発者へのインタビューで出てきた数字だ。

ただこのゲームをプレイして半時間ほど広大な都市の中をさまよっていると、その数を疑おうという気は起きなくなる。理由は単純である。この街はどこへ行っても人がたくさんいるからだ。街の巨大さに見合うだけの大量のNPCが存在しているのだ。

もちろん全員が全員ネームドというわけではないが、適当なNPCがその辺を適当に通行しているだけというのではなく、キャラごとになにがしかの目的をもって生活している様子が見えるのだ。

みるからに役人っぽい人から高貴な貴婦人らしきお嬢さんまで、人の種類もさまざまだ。人の多い場所だと、辻に立って大道芸や相撲のような見世物で人を集めている場所まである。そういう場所では、人々のざわめきが実際に音声としても入ってくる。

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こうした人が集まる場所で大切なもの。それは礼節である。頭は低く目は高く、口慎んで心広く、孝を原点とし他を益する。

いかに人間のように見えようと、本作の舞台は今を遡ること1000年前。本邦ならば腰に長ドスをぶら下げた野蛮人たちが「貴様うちの馬を盗んだな!」とかなんとか言いながら気に入らん奴の首をキャッチボールしていた時代だ。開封の地においても他人の倫理観など信用すべきではなく、トラブルを避けたければ礼節が大切だ。

本作ではプレイヤー自身の行動によっても街の人との関係が変化する。ネームドのNPCには友好度が設定されているほか、そのほかのキャラクターにも警戒度のようなものが設定されており、たとえばぶつかっただけでも「おいコラ気をつけろ!」と怒られる。

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多少ならば問題ないが、調子に乗って無礼な行動を続けていると、相手がブチ切れて刃傷沙汰に及んでくることすらある。むろんぶつかったりした自分が悪い。国士無双を自認する漢民族の戦略家ならば平身低頭して相手の股でもなんでもくぐるべきであるが、残念ながら筆者は長ドスを振り回していた民族の子孫。「舐められたら負け」がDNAに染み付いている。

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売られた喧嘩に対する当然の権利として相手を誅してみたところ、画面上部に突如として「目撃済み」の表示が現れた。「阻止しなければ指名手配される恐れがある」とのこと。残念ながらこの世界にはまだ「正当防衛」の概念はなかった模様だ。過剰防衛? それはそう。

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▲というか逆に目撃者さえ消せればOK……ってコト!?

ちなみにゲームではこのほかにも詐欺や馬泥棒といった悪事を働くことも可能らしく、プレイヤー次第で追い剥ぎプレイなんかも楽しめそうだ。

ちなみにその後、何食わぬ顔でその場を去ると、しばらくして懸賞金をかけられたらしく、追っ手からの追跡を受けることになっていた。返り討ちにするともちろん罪も重くなる。

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ゲーム内では役人との会話によって牢に入って罪を償うような展開になったり、さらにそこから脱獄して自由を得るような行動もとれる。どのような道を選ぶかは、プレイヤー次第なのだ。

武術の達人=ニンジャみたいなもん。リアル云々じゃねえ、そこに浪漫があるかどうかだ

再現された歴史的な都市をイマーシブに楽しめる。そういうポイントから、「なるほどね、『アサシンクリード』みたいなゲームなのか」と、貴君はそう思ったかもしれない。それは少し正しいが、少し間違ってもいる。

『風燕伝』のプレイ感は確かに『アサクリ』にも近いところはあるが、本作は必ずしも歴史に対して忠実に作られているわけではない。これはポリティカルなアンチ・コレクトネスだとか、文化に対する誠実さがどうとか、そういうこむずかしい話ではない。

リアルなところを半分、浪漫なところを半分。味の違う2種類の生地を景気よく混ぜ合わせてマーブルパウンドケーキを作るようなものだ。つまりどういうことか? それはマーブルパウンドケーキはウマいということだ。嘘だと思うなら今すぐ洋菓子店に行って探してみるといい。もしくはヤマザキパンか。

筆者は最初にこのゲームについて何と書いたか。コイツは歴史オープンワールドではなく、《武侠》オープンワールドなのだ。

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▲つい街の様子ばかり紹介してしまったが、もちろん緑豊かな山野もある

といっても、由緒正しき秋津洲の民である貴君は「武侠ってなんだよ」と思っているかもしれない。それはそれで致し方ない。だが浪漫を愛する心があるならば、多少知っておいて損はない。

「武侠」というのは中国で人気の創作ジャンルで、簡単に言えばとんでもなく強い男や女がとんでもない大活躍をして、大義や愛やその他もろもろの人間的大事なモノのために戦うという物語。要するに、中華的浪漫の話だ。

そして武侠世界における武術の達人というのは、現実世界における「チョット鍛えてるやつ」くらいのところとは大きく一線を画す意味を持つ。要するにとんでもなく強いのである。その強さは人間離れしていて、たとえば本作の主人公は武術の達人なので空を飛べる。

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▲舞空術……ほど自由に飛べるわけではないが、大空高くにジャンプして、地上までふんわり降りてくることができる。

なぜ飛べるのか、達人だからである。それ以上の理由はない。作中世界の原理的にはあるのかもしれないが、少なくとも筆者には理解不能である。だからこれは本邦におけるニンジャみたいなものだと割り切ったほうが良かろうと思う。忍者ではなく「ニンジャ」である。オリエンタルなスーパーマンの一種だ。

一方で歴史を深く見つめ、その再現をリアリスティックに試みつつ、一方では武の極致を目指してどこまでも人間離れして強くなってゆける面白さを描く。『風燕伝』が目指しているのはそういう世界観であり、プレイヤー自身を──つまりは貴君自身を、その世界の豪傑のひとりとして投げ込もうとすることなのだ。

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▲主人公キャラクターの作成画面。AIによってボイスや画像から生成するという機能もある

本作は魔法や妖怪のようなファンタジックな要素は登場しない。舞台となっているのも実際の歴史のいち時代であり、物語も史実に合わせた展開に進んでいくという。リアルである。

一方で、おのれの力のみを頼りに苦難の時代を乗り切ろうとする豪傑たちを描く、浪漫にあふれたゲームでもある。豪傑たちがあまりに強いので、貴君はこれはリアルじゃないというかもしれない。でもいいのである。なぜなら、こっちの方が絶対に浪漫があるからだ。

浪漫的アクションをリアルな技術によってゲーム内に実現

本作はそういうゲームなので、もちろん戦闘も本気で「武侠」的な浪漫へ振り切ったアクションを目指している。といっても、それすなわち本作のアクションがリアルでないということにはらない。

前述した通り、本作にはいわゆる「モンスター」のような敵と戦うことはない。敵も主人公も(多分に人間離れしているとはいえ)人間であり、そのためプレイヤー側のアクションも派手ながら現実的な武術らしい動きが多く、アクション映画のワンシーンを見ているようなのだ。

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▲相手の攻撃を「受け流し」(パリィ)した瞬間に、剣戟同士がぶつかったようなエフェクトと共に小気味よい音が鳴る

それもそのはずで、本作では武術の達人の軽やかな動きを追求すべく、アクションはモーションキャプチャ―技術を用い、実際に武侠映画の武術指導者である董瑋(トン・ワイ)氏を招いて再現しているのだという。

使用できる武器も「武侠」流の味付けだ。剣や槍、それから斬馬刀あたりはまあ分かる。だが「扇」や「傘」などを武器として使えるというのは、本格的なアクションゲームはなかなか珍しいのではないだろうか。

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どこぞの『無双』ゲームじゃあるまいし、そんなリアルさの欠片もない戦いがあるか、と貴君は思っているだろう。だがこれでいいのだ。なぜなら武術の達人がそんな武器で戦うのは、めちゃくちゃカッコいいからである。

だからって本物の達人がどうやって扇子での戦い方を指導しているのかは筆者にもよくわからない。わからないが、これを作っているやつらのこだわりは本物なのだ。おそらく本気で、扇子一本で無頼漢をブチのめす武術家はカッコいいと思っている。

個人的にそういう開発者の「癖」を強く感じたのが、武器の抜刀・納刀モーションが攻撃アクションとは別に用意されていて、しかもやたらカッコいいことだ。ゲームによってはそもそも用意されていなかったりするモーションだが、それだけにここがキマっているアクションゲームは信頼がおける。

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▲かなり一瞬の出来事なのだが、空中でくるりと剣の持ち手を入れ替えるという納刀モーション。イケてるぜ

アクションゲームとしてのシステムについても少し解説すると、本作における戦闘は、回避やパリィなどで敵の攻撃を凌ぎつつ攻撃の隙を伺っていくというスタイルのもの。武器による通常攻撃とは別に、武術や奇術といった技を組み合わせて使用することもできる。

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▲敵を遠方へ投げ飛ばす奇術「太極拳」。周囲に風を起こして落ち葉や魚を巻き上げたりと探索にも使える。

画面を見ていると、いわゆるソウルライクのようになんだか難しそうに見えるかもしれないが、実際にはアクション下手な人間でもかなりプレイしやすい。その点は『エルデンリング』を2時間で投げ出した筆者が保証する。

理由のひとつが難易度を細かく調整できることで、たとえば本作ではパリィにあたる「受け流し」に補助機能が付けられる。これを設定しておくと敵の攻撃を受ける際に時間の流れが少し遅くなり、QTEのように制限時間内にボタンを入力することでダメージを回避できるのだ。

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▲受け流し補助はかなり便利。ボス戦のみ、ザコ戦のみ、ボスの強力な攻撃のみ、など細かく発動する条件を設定して、自身でアクションの難易度を調整できる

もちろんこの補助にも制限があってすべての攻撃に対応できるものではないのだが、それでも非常に便利なシステムだ。もちろんオフにすれば難易度を上げることもできるので、サポートを入れるかどうかはプレイヤー次第。アクション初心者であっても、手厚くサポートを受けられるようになっている。


中華世界とは《浪漫》である。もちろん、すべての人にとってそうだとは限らない。

風の吹き抜ける竹林の庵や、小高い丘の上に鐘だけが遺された古い寺院の廃墟。楼閣に落ちる夕陽の明かりであり、剣と剣がぶつかり合う鋼の冷たい音──これが浪漫だ。

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本作の世界は、過ぎ去った時代を現代に再現する歴史に対するあこがれであり、人間離れした英雄豪傑の強さへのあこがれである。事実の上に一本線を引いて、「こうだったらもっと面白いのでは?」という、虚実を織り交ぜて作られた幻だ。

ドラマチックな歴史に憧れ、荒唐無稽な武術に心を躍らせる。歴史の波間に沈んだ都市を夢見る人にとっては、浪漫あふれる世界だと言えるだろう。

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ここまで本作の浪漫について筆者の思うところを語ってきたが、筆者が遊んだ事前プレイ時点でも全体としての完成度はかなり高かった。『風燕伝』は現在リリースに向けた最終的な調整として、ファイナルβテストを開催している。正式リリースの開始日はまだ公表されていないが、それも遠いことではないだろう。改めて、本作の登場を楽しみに待ちたい。

ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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