バックアタックやリンクステップ等、多彩な戦術を繰り出す
本作のバトルを盛り上げる要素は、他にもまだまだある。
敵との遭遇はシンボルエンカウントで行われるのだが、このときにバックアタックを仕掛けられると先制かつ全体攻撃が行える。レベル差次第ではあるものの、一撃必殺になり得るムーヴが可能だ。
さらに本作では、ステージ内に仕掛けられたギミックをこなすことで、このバックアタックを必然的に起こせる。
フィールド上における敵の向きは変わらない。フィールドに設置された各種スイッチやアクションを使って、足場となるパネルの出現位置を調整することで、敵の背後を取れるルートを作れるのだ。こういったフィールド上のパズルをこなしながら、まるで“一筆書き”のように最適なルートを考えるのが楽しい。
そのほかにも、仲間同士が連携して追加ダメージを与える「リンクステップ」などの戦略性の高いシステムがてんこ盛りだ。開発陣の本作の戦闘にかける本気っぷりがスゴく、いい意味で変態的なこだわりが感じられる。
これぞ青春。仲間との絆が主人公を強くする
これだけ戦闘が楽しいゲームなのに、本作は学園パートにこそ、その面白さの源泉がある。そう言い切ってしまいたいくらい、本作の学園パートで描かれる“青春”は魅力的で、筆者の語彙力の無さをあられもなくさらけ出すほど、最高に素晴らしい。
主人公は無口で聞き上手、しかもイケメン。
そしてSSSで活動するメンバーからは、スマホを通じて、次から次へとメッセージが送られてくる。「いろいろ話がしたいから一緒に帰れない?」とか、「ひまだから遊びにいこうぜ」とか、引く手あまただ。いやぁ、オレって人気者だな~。
そうしてSSSとしての活動を終えた主人公は、メンバーのなかから1人を選んで、一緒に下校できる。最寄り駅に着くまでの間の車内で、他愛も無いおしゃべりをしたり、その気になればカラオケやゲームセンターなどへ寄り道もできたりするのだ。
さらに、主人公と親密になったメンバーは個別のストーリーやイベントが展開されるほか、場合によってはデートもできる。そして、パートナーにも……!
同じクラブ活動を行う異性と一緒に下校デートをするだなんて、これ以上の青春は地球上に存在するのだろうか? 少なくとも筆者の乏しい頭脳では想像できない。
また、こうして仲間と過ごす学園生活があるからこそ、戦闘での連携プレイにも力が入るってものだ。

キャラごとの会話パターンは相当数が用意されているようで、今回の1週間程度のプレイでは1度も被ることがなかった。恋愛シミュレーションゲームとしても本作は十分に楽しめそうだ。
逆に筆者は、複数の異性と親密になりすぎたことで修羅場に発展することもあったので、立ち回りにはくれぐれも気をつけよう。



女子と恋人気分を味わうこともできるし、気心が知れた男子とつるんで──
「お前、アイツのこと絶対好きだろ?」
「ちげーよ、全然好きじゃねーから!」
「いやもう顔でバレてるって」
「マジやめろよゴルァ!」
みたいな展開も可能という自由度の高さ。
やばい、もう書いてるだけで、それとは真逆だった筆者の実体験が脳内でフラッシュバックしてくる。
『ヴァレット』は青春そのもの。恥ずかしげもなく、そう言い切ろう
もうひとつ本作が特筆すべきなのは、“ロールプレイ”に重きを置いている点だ。
開発陣が思い描く学園物語をプレイヤーに押し付けるのではなく、プレイヤーが介入する余白をきちんと残してくれているところが嬉しい。
というのも、本作ではゲーム内で性格診断をたびたび行い、その結果が主人公の性格に反映され、会話の選択肢やバトルスタイルに影響する。
今回の筆者のプレイでは、ゲームスタート時は「マキャベリズム」という、目的のためには手段を選ばないサイコパス寄りの判定だった。一方、チャプター2の診断では「シンパシー」という、他者に共感する性格に変化していたのだ。

主人公の性格は恒久的なものではなく、学園生活で取ったさまざまな行動や選択肢によって、常に流動的に変化している。
つまり、プレイヤーがゲーム内でどのような役割を果たしたか(=ロールプレイを行うか)で、主人公の立ち位置が変化していくのである。そして、その主人公の姿を見ることで、プレイヤー自身が「あぁ、オレってこういう人間だったんだ」と確認できるのだ。
開発陣が本作のコンセプトについて、「少年少女たちとの出会いを通じてアナタの知らない自分自身を探す」と謳っているが、確かにその通りだと思えた。本作は自己診断ゲームとしての側面もありそうだ。

現実世界の青春は、まさに「モーメンタリータイム」(Momentary Time:一瞬の時、の意味)で過ぎ去ってしまう。だが、青春を過ぎたあとも自分自身は存在し、一瞬一瞬の人生を生き抜くのだ。
そういう意味では、生きている間すべてが「モーメンタリータイム」みたいなものだと言えなくはないだろうか。
だからこそ、この短い一瞬に、食べて、笑って、遊んで、泣いて、怒って、もがいて……。あらゆる感情を、目の前にある何かに、せいぜいぶち込んでやろうと筆者は思う。
無様で滑稽でも、知ったことか。
いい年をした筆者は、恥ずかしげもなく宣言する。
「『ヴァレット』=青春」であると。
