往年の名作タクティカルPRGを現代に蘇らせた『ファイナルファンタジータクティクス – イヴァリース クロニクルズ』(以下、『FFTイヴァリース クロニクルズ』)が、スクウェア・エニックスより9月30日(Steam版は10月1日)に発売される。
本作のオリジナル版は、『ファイナルファンタジー』シリーズ初のシミュレーションタイトルとして、1997年にPlayStation向けにリリースされた『ファイナルファンタジータクティクス』(以下、『FFT』)だ。
その後、PSP向けの『ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争』やスマートフォン版などもリリースされ、PlayStation 3の「ゲームアーカイブス」でも配信されている。
そして今回、『FFT』の決定版として、オリジナルを忠実に再現した「クラシック」と、現代風のアレンジが加えられた「エンハンスド」の2つの体験が同時収録されたのが本作だ。対応しているプラットフォームも幅広く、パッケージ版はNintendo Switch 2とNintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4で発売。ダウンロード版はそれに加えて、Xbox Series X|SとPC(Steam)でも発売される。
本作の開発にあたっては、オリジナル版の開発メンバーでもある前廣和豊氏(ディレクター)や皆川裕史氏(アートディレクター)、オリジナル版のディレクションと脚本を担当した松野泰己氏など、主要メンバーが再集結。
現代らしい快適なゲームスタイルで楽しむのはもちろん、オリジナルに近いゲームスタイルで当時の思い出を振り返りながらプレイすることもできる。
今回は、リリースに先駆けて、本作を3時間ほどプレイすることができたためその模様をレポートする。
また、別記事で本作の開発陣へのインタビューも実施。「なるべく手を加えずに出したかった」というこだわりを語っていただいたほか、エンハンスドでは「源氏装備を盗める」ことも明かされるなど盛りだくさんの内容となっているため、こちらも合わせてご覧頂けると幸いだ。

※ゲーム画面はすべて開発中のものです。内容・仕様は予告なく変更する場合があります。
© SQUARE ENIX
解像度の向上やオートセーブにも対応。オリジナル版を再現した「クラシック」
オリジナルを再現した「クラシック」をベースに、簡単にゲームの概要をご紹介しておこう。

本作で採用されているタクティカルRPGというジャンルは、位置取りと先読みが勝敗に影響するという、緊張感溢れる戦闘システムになっている。高低差など地形を利用した有利不利や、チャージタイムを含めた先読みで行動を取るなど、頭脳的なプレイが楽しめる。
また、ジョブとアビリティを自由に組み合わせて戦術的な編成ができるようになっているところもポイントだ。本作では黒魔道士で白魔法を使えるようにしたり、あるいは弓使いに戦技を持たせて相手の武器を遠くから破壊したりするなど、プレイヤーの発想力に合わせた組み合わせを実現できる。

PlayStationで発売されたオリジナル版は240ピクセルという、今の感覚でいうとかなり小さなサイズ。当時のテレビにあわせたこの解像度のまま現代のテレビやディスプレイで表示すると、不鮮明な画面になってしまうだろう。
そこで、本作の「クラシック」では、Nintendo Switchなら720ピクセル、それ以外の機種はフルHDの1080ピクセルで映像が表示される。とはいえ、若干ジャギー感が残るなど、当時の雰囲気はそのまま再現されていることには変わりはない。
また、オートセーブにも対応しているため、ゲームとして当時よりも遊びやすくなっている。

今回は「エンハンスド」を遊び始める前に、比較対象として「クラシック」からプレイしたが、まさに当時のゲームの雰囲気がそっくりそのまま蘇ってくるようであった。
ボイスと表情の追加でキャラクターの表現力も大幅にアップ
オリジナル版の良さはそのまま継承しつつ、現代風にアレンジが加えられたのが「エンハンスド」だ。見た目やUIも最新のゲームらしく作り直されているのだが、最も大きな違いはキャラクターのセリフがフルボイス化されたところだろう。
このキャラクターのセリフも、元の読み言葉を喋り言葉にすることで少し印象が異なってしまう……といったことを防ぐため、当時の脚本を担当した松野泰己氏がフルボイスに合わせた形でセリフを書き直している。実際にキャラクターたちが会話をする場面をプレイしてみると、思っていた以上に違和感がないどころか、臨場感が増したように感じられた。
また、この「エンハンスド」では出撃時にバトル会話もいくつか追加。オートで再生することができるほか、一時停止や早送りもできる。

キャラクターの会話シーンでは、セリフに合わせて目パチ、口パクといったフェイスアニメーションも追加されている。イラスト自体はオリジナルそのままなのだが、違和感なくキャラクターは話しているような動きになっているところが面白い。

「エンハンスド」ではこのほかにも変更点が多数見受けられた。オリジナル版ではラムザの名前を変更できるようになっていたが、いきなり誕生日だけを入力して進められるようになっている。また、ショップの試着室がなくなった代わりに、「最強」というコマンドで最強装備を購入することも可能だ。
戦闘中の画面では、新たに「タクティカルビュー」が追加されている。この戦闘画面は斜め上から見下ろしたクォータービューが基本となっているが、地形の関係などで視認性が良くない場合も稀にある。そうしたときに、真上から見下ろしたような「タクティカルビュー」に切り替えることで状況が把握しやすくなっているのだ。


何よりも嬉しいのは、この戦闘中の情報量がとにかく豊富なところである。次にどのユニットが行動するのか確認したいときは、画面の左端に表示されているリストを見れば一目瞭然だ。また、それぞれのユニットがいる高さの違いも、画面右上に大きく表示されている。また、敵に攻撃を加えるときに、そのまま倒しきることができる場合は「Finished!」と表示され、こちらもわかりやすくなっている印象だ。
また、ワールドマップの視認性もよく、さらにファンタジックな世界観が広がっているような見た目になっているところもワクワクさせられる部分である。



さらに、パッと見でもわかるように、グラフィックが全面的に刷新されている。それにくわえて、うっすら被写界深度も入れられているなど、凝った表現が採用されており、没入感を高めてくれる。なお、設定で戦闘では適用しないなど効果を切ることもできる。

3種類の難易度とバランス調整でさらに遊びやすく
「エンハンスド」で用意されている難易度は3種類。デフォルトの「スタンダード」は、適度な緊張感で楽しむことができ、シミュレーション系のゲームが苦手だけどストーリーは楽しみたいという人は、「カジュアル」がオススメだ。その逆に、歯ごたえのあるバトルが好みという人は「タクティカル」に挑戦するのもアリだろう。難易度は後からも変更することができるので、自分の実力に合わせて切り替えていくのもオススメだ。
難易度とは別に、ゲームバランス自体の調整も行われている。本作では中間拠点が設けられていることで、セーブや編成ができるようになった。
また、召喚士や弓使いなどチャージタイムの長さから活躍できる場面が限られていたユニットも、アビリティなどを見直して扱いやすくなるよう調整が行われている。

さらに、大元のSE音源はすでに失われており、残っていたのはPlayStationで再生するためのデータのみだったことから、今作では、サウンドチームが総力を上げてオリジナルのSEを耳コピしている。

遊びやすさの向上という点で、もうひとつ外せないのが「ブレイブストーリー」が強化されたところだ。
特に本作の場合、その時々でキャラクターたちの情勢も大きく変わっていく。ドラマチックな物語を描いているが、状況の整理は少し難しい点もあった。だが、「エンハンスド」の「ブレイブストーリー」では、その時点でのキャラクターたちの状況がわかりやすく見られることにくわえて、時間を遡ってこれまでの流れもチェックできるようになっているのである。




プラットフォームを問わずどの機種でも快適にゲームがプレイ出来る
最後に触れておきたいのが、今回リリースされるどの機種でも本作を快適にプレイすることができるということだ。今回は主にPCでゲームプレイしていたのだが、それとは別にNintendo Switchの携帯モードでも実機で遊ぶことができた。こちらでもパフォーマンスが極端に落ちるといった場面はなく、まったく問題なく遊ぶことができた。
なんといっても、どこでも好きな場所で『FFT』を遊べるというのがなにより嬉しい。

『FFT』をこれまで遊んだことがないという人でも、最新のゲームとなんら遜色なく遊ぶことができる作りだ。
オリジナル版を遊んだプレイヤーならば、当時を再現した「クラシック」にくわえて、大きなアレンジが施された「エンハンスド」も用意されており、それぞれの違いも含めてゲームを堪能することができるだろう。
本作の発売は9月30日、Steam版は10月1日となっている。