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自由度高すぎMMORPG『逆水寒』で隠しクラス“物乞い”を目指してたら、オンラインゲームのぬくもりに触れた話。全体チャットで助けを呼んだらプレイヤーたちがめちゃくちゃ恵んでくれた

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私は、古代中国を舞台にした超大型MMORPG『逆水寒』のクローズドβテストに参加していた。

中国では既にリリースされている本作には、なんと1億通りの遊び方があるらしい。もはや多すぎて意味がわからない。

それこそプレイヤーには戦闘職以外にも農家、建築家、演奏家、釣り人など多様な選択肢が用意されており、中には「物乞い」という変わり種も存在している。

「物乞い」と聞いて、あまり良い印象を抱く方は少ないと思う。しかし、本作における物乞いは、ただくれくれ行為を繰り返す者たちではなかった。

彼らは「天と地が家であり、物乞いはみな家族」という信念を抱いており、貧しい身ながらも仲間は決して見捨てない。というかっこいい物乞いだったのだ。

さっそく私も本作で「物乞い」を目指してみたのだが……そこに到達するまでの道のりはめちゃくちゃ険しかった。詳細は、前回の記事にて知ることができるので、気になった方はぜひ読んでみて欲しい。

簡潔に言うと、物乞いになるためには『逆水寒』のありとあらゆるコンテンツを踏襲し、さらにはプレイヤーから実際にお金を恵んでもらわないとボロボロの服(コスチューム)すら着れないということが判明する。

自由度高すぎオープンワールドMMO『逆水寒』で隠しクラス“物乞い”を目指してたら、オンラインゲームのぬくもりに触れた話_001

しかも、筆者のキャラクターの装備はデフォルトなのでこんなにムキムキの状態。これでは「物乞いです」と言っても説得力は皆無。恵んでもらえるものも恵んでもらえない……

一刻も早く、ボロボロのビジュアルにならなければ。

ということで、本稿では前回に引き続き『逆水寒』で筆者が「真の物乞い」になるまでの道のりをみなさまにお届けしたいと思う。

取材・文/TsushimaHiro
編集/実存

※この記事は『逆水寒』の魅力をもっと知ってもらいたいNetEase Gamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

『逆水寒』は11月7日にPC(Steam、Windows)ならびにモバイル(Android、iOS)に向けて配信される予定だ。基本プレイは無料となっている。

「物乞いの王」に出会う

さて、調査を進めると物乞いのビジュアルになれるボロボロな衣装は、ガチの「物乞い」やりこみ勢にしか手に入らない隠しクラスであることがわかった。

具体的には、物乞いたちが互いに助け合う組織「丐幇(かいほう)に所属し、特定の条件を満たした状態ではじめて手に入るとのこと。

※丐幇(かいほう)
中国の“武俠”小説に登場する組織、“門派”のひとつ。
物乞いたちが寄り集まり、互いに助け合う。また、犬を退けるために見出したという独特な棒術が言い伝えられている。『逆水寒』においては、「天地が家、物乞いはみな家族」という理念のもと行動している。

「丐幇」に加入するためには、特定の場所でスキル「物乞い」を成功させ、ランダムに出現する「老人」に遭遇する必要があるようだ。ランダムって……隠し要素にもほどがある。

しかし、ほかに方法があるわけでもない。ひたすら物乞いだ。

朝も晩も、私は説得力のない強そうな恰好で「物乞い」を続ける。

気づけば私は、物乞いの組織に加入するために自ら努力していた。
たまにNPCがお金を恵んでいるような仕草を見せるが、今回の環境がCBTだからかそれはポーズだけで、実際に恵んでくれるわけではなかった。

つまり、プレイヤーに恵んでもらうことが必須となってしまう。

そこで、ワールドチャットに向けて「物乞いになるためにプレイヤーに恵んでもらわなければならないから助けて」と発信した。すると、哀れに思ったのか「物乞い目指してる人ですよね?」と、お金を投じてくれるプレイヤーが数人現れた。こんなにムキムキなのに恵んでくれるなんて、本当に感謝しかない。

もはや「物乞い」に対する恥じらいなども消滅したころ、ひとりの「老人」が現れる。
来た!

年老いた物乞いは「腹が減った、腹が減った」と呟きながら近づいてきて、「どうかこの老いぼれに銅銭を一枚くれまいか。粥を買いたいんだ」とお金をねだってくる。

主人公は呆れた様子で、「よく見て、私たちは同業者だよ」と返すが、老人は一切譲らず「くれぇ~」の一点張り。その日、プレイヤーに譲ってもらったお金を渡すことに。

すると老人は、突然顔をあげて「今の世において、侠客様のように親切な人は珍しい。これほど寛大な行いに、何のお礼もできんとは、恥ずかしい限りだ。どうぞ西南城壁の下の我が 家にお立ち寄りください」と申し出てくる。

呼ばれた場所へたどり着くが、そこに「家」と呼べるものはなく、ひっそりと焚き火が設置されているのみ。老人は「物乞いたるもの、天下が我が家だ。唯一の焼き鳥でもてなそう」と、「叫化鶏(きょうかどり)と呼ばれる料理を提供してくれる。

※叫化鶏(きょうかどり-ジアオホワジー)
物乞いが調理法を考案した料理とされており、泥や土で鶏を包み長時間かけて火を通す独特な調理法で作られる鶏肉料理。肉は柔らかく、濃厚なうまみが出ると言われている。

そして老人は自身を「荘九公」と名乗り、物心ついたころから丐幇に所属して今年で60年目になると語った。つまり、超絶ベテランの物乞いということだ。

「叫化鶏」が美味であったことから、主人公は作り方を教えてほしいと荘九公に教えを乞うも、「秘伝だから、知りたければ丐幇に入ればいい」と今度は勧誘してくる。

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主人公は「自由になりたくて物乞いになったのに、組織に入ってがんじがらめにされたくない」と言い返すが、荘九公は「丐幇」には定期的な授業や教条はなく、数千の弟子があたりに散らばり十年に一度、本部で集会を開くだけだと笑う。

「それだと入っても入らなくても変わらないのではないか」と、再度質問する主人公。個人的には、余計なこと言わないでさっさと入れてもらえばいいんだよ!とハラハラしてしまう。

荘九公は真剣な面持ちで、「物乞いの身で江湖にいては、軽視され侮辱されることもあるだろう。不正に遭遇したとき、天にも地にも頼れないとき、助けてくれる者はいるか?我々丐幫は、“弱きを助け、義理を重んじる”。もし、不当な扱いを受ければ、各地より兄弟が集まり、あなたの公正を取り返すために力を尽くすだろう」と、主人公に語りかける。

これだよ……これが求めていた“かっこいい物乞い”だ!
丐幇に加入する意志を荘九公に伝えると、「汚れる覚悟が必要」と言われる。
これは、汚れ仕事をしなくてはならないという比喩ではない。

文字通り、「物理的に泥まみれになって汚れてこい」という意味であった。
これはぼろ布を身に纏い、贅沢な暮らしを捨てて物乞いと同じ立場に立てるのか、という丐幇の採用試験のようなものだ。

文字通り泥だらけになると、先輩物乞いの魯八俳(ろはちはい)に荘九公は丐幇の掌門(一門派の最高責任者)であることを教えてもらう。あの老人こそが、物乞いの王だったのだ。

こうして、ようやく「丐幇」の一員となれたのである。
ここに加入すると、物乞いたちが犬を撃退する際に編み出したという棒術「天下犬無しを習得することができる。

それにしても……実際に物乞いの王に会ってみると、ボロは着てても幸せそうで、とても自由な人だった。あえて財産や家も持たず、ノマド的に中国を渡り歩き、決して仲間は見捨てない。まさに王。物乞いの王(King of Beggers)だ。

※犬叩き棒(打狗棒術)
物乞いたちが、自分たちの食う飯を狙う野犬を追い払うために編み出した固有の武術と言われている。『逆水寒』の作中でも、荘九公の飯を野犬が狙い襲撃してくるシーンがある。

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ちなみに、本作はイベントや特定のクエストをクリアするとイラストが表示されコメントを残すことができる旅の手帳的な機能が搭載されている。

筆者が丐幇に加入した時点でのコメントは、なんとゼロ。
この時点で、誰も好き好んで物乞いになろうというプレイヤーは存在しなかったようだ。孤独な物乞いのはじまりである。

「真の物乞い」になるための条件が、厳しい

さて、丐幇(かいほう)に加入したあとに待っていたのは、物乞いに課された試練だ。それをクリアすることで、物乞いの編み出した棒術「天下犬無し」を習得し、ボロ衣の衣装が手に入る。

しかし、その条件もまた、厳しいものであった。おもな内容は、以下の通り。

・丐幇(かいほう)に入門する(これまでの道のり)
・入門後に5回、物乞いに成功する
・物乞いで5000交子を入手する
・採集レベルを3にする
・採集レベルを7にする
・PvEコンテンツを大体クリアする
・戦闘力をほぼ限界まで上げる

いろいろと言いたいことはあるが、まずこの「5000交子」【※】を入手するというのがかなりキツイ。

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・交子 中国の北宋時代に発行された紙幣で、世界史上初の紙幣とされている。『逆水寒』においては、ゲーム内通貨として存在する。ゲーム内マーケットで装備、素材などを購入する際に使用するほか、装備の強化にも大量に消費する。基本的に個人使用のみで取引が不可能。

・銅銭 ゲーム内マーケットでプレイヤーとの取引に使用可能で、ゲーム内衣装やレアアイテムを購入できる課金通貨「紋玉」をゲーム内の委託販売(自動)で購入できる。また、逆に「紋玉」を委託販売して銅銭を大量に購入することもできる。交子と銅銭は相互交換ができず、交子が不足している場合は銅銭で補足できる。

・紋玉 いわゆる課金通貨。ギルドの設営や衣装、レアアイテムなどを購入する際に使用する。 ゲーム内でさまざまなコンテンツをやり込むことで、無料版「紋玉」を入手可能。無料版だと購入できるものに限りがある。

本作における、テキストチャットで質問できるQ&A機能搭載型のAIである暖ちゃんいわく、本作におけるゲーム内通貨は大まかにわけて3種類存在するという。
「交子」は、その中でも装備の強化や素材などを購入する際に使用する重要なもの。

それをプレイヤーに要求しなくてはならない。

果たして、プレイヤーは自身の強化を差し置いて「物乞い」にお金を明け渡すという行為を許してくれるのだろうか?

俺を「物乞い」にしてくれる者が現る

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ちなみに、筆者はようやく「丐幇」の一員になれたばかり。
主人公の風貌は、相変わらずムキムキマッチョの格闘家スタイルのままである。
眉目秀麗、容姿端麗なキャラクターは楽々と作れてしまう本作だが、ボロ布衣装は物乞いの専用衣装のみ。

とくに、衣装を入手するまではこのムキムキ状態でプレイヤーからお金を恵んでもらわなくてはならない。

以前、「物乞い」スキルで1交子ずつ恵まれていたことを思い出した筆者は、あれを5000回繰り返さなくてはならないのかと覚悟する。

そんなん、クローズドβテスト期間が終わってまうやろ!

たまらず、再びサーバー全体のプレイヤーにチャットを伝えるワールドチャットで「物乞いを極めるための必須条件なので協力してほしい」と声をかける。

すると、サーバー内でも物乞いプレイヤーとして認知されてきたのか、筆者のもとへ訪れてくれた方が現れた。

なんと、そのプレイヤーは必死に物乞いを続ける筆者に1000単位のゲーム内通貨を恵んでくれたのだ。これで目標の5000まで一気に近づいたことになる。
すぐにお礼を伝えると、このプレイヤーはその場に留まり「まだ足りないの?」と聞いてきた。

筆者は「目標金額は5000だからあと4000ほど必要」と正直に答えた。すると、恵んでくれたプレイヤーさんは「多いなw」と笑いながらも続けて4000のゲーム内通貨を投下してくれた。

いったいなぜ?……何かお返しできる方法はないのだろうか。と問うと、「どうせテスト版だし」と、サクッと恵んでくれるプレイヤーさん。

ありがとう、ありがとう。
あなたのおかげで、俺は本当の意味で「物乞い」になれたよ。

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このプレイヤーさんのおかげで筆者はようやく物乞いの棒術を習得し、ボロ布の衣装を入手できた。以降、筆者はこのプレイヤーとさまざまな冒険へと繰り出すことになるが、それはまた次の機会に紹介しよう。


こうして、筆者は丐幇の一員となり、晴れて本物の物乞いとして『逆水寒』の世界に君臨することができた。

ここで、ふと思い返す。
オンラインゲームで言う「物乞い」とは、無償でアイテムをねだるわがままなプレイヤーを指す言葉として使われていたように思える。

『逆水寒』においての「物乞い」は、それとは似て非なるものだ。
「物乞い」というステータスが明確に存在しており、その生きざまと物乞いなりの正義がしっかりと示されている。

そこにたどり着くまでは他人(プレイヤー)の協力が必須という。人のあたたかさと大切さを教えてくれるのが、『逆水寒』の物乞いだったのだ。

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……しかし、物乞いの旅は、ここでは終わらない。
物乞いの編み出した棒術「天下犬無し」を極めるためには、さらなる高みへと到達しなければならない。そのため、筆者は『逆水寒』の世界を大冒険することになる。

その話は、次回の連載でお伝えしたいと思う。

編集・ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ生粋のゲーマー。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。『Divinity: Original Sin 2』の有志翻訳に参加し、『バルダーズ・ゲート3』が日本語化される前にひとりで全文翻訳してクリアするほどRPGが好き。 『ゴースト・オブ・ツシマ』の舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23

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