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メタ演出満載の新作ADV『Alice’s World』の主人公・アリス(CV:青山吉能)が儚いカワイイ。「自分はなぜか死なない」ことに気づき、無茶をする→お願いだからもっと自分を大切にして……(懇願)

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フィクションだと分かっているのに、思わずゲームのキャラクターに感情移入してしまう……。人間の心の機微がもたらす作用か、それとも作品のもつ力が成せる技か。

いずれにせよ、そのおかげで我々は日々創作物から心の栄養を得ているわけですが、筆者は今回紹介する『Alice’s World』をプレイして思いがけず、とあるキャラクターに心を奪われてしまいました。

本作は、11月25日に発売されたばかりの謎解きアドベンチャー。不思議な世界に迷い込んでしまった女の子・アリスが、家に帰るまでの物語を描きます。

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本作は、いわゆる「メタ演出」が頻繁に登場するのが特徴。ゲームの中のキャラクターがプレイヤー自身の存在を認識し語りかけてくるなど、「こういうのが好きなんだよ!」という方にはぜひオススメしたいゲームとなっています。

プレイの最中筆者が感じていたのは、「アリス……守りたいッ!」ということ。ゲーム中、プレイヤーは操作キャラとしてアリスを動かすのと同時に、自分自身としても会話を通じて彼女を導いていくことになります。

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アリス自身の性格は「儚さ8割、危うさ2割」といった感じで、可愛らしくも見ていて非常に危なっかしいし、目が離せません。

プレイヤーとゲームの垣根を乗り越える、メタ要素の濃いシステムも相まって、どんどんアリスに愛着が湧いていくようになるんですよね。

そのおかげか、全体のボリュームとしては比較的コンパクトながら、クリアした際には一緒に過ごした時間以上に感情移入してしまっている自分がいました。

というわけで今回は『Alice’s World』での筆者とアリスの旅路の様子をお送りしたいと思います。序盤を中心にストーリーや謎解きの一部を紹介しますので、完全初見で臨みたい方はご注意ください。

旅の道中、なにやら不思議な能力があると判明したアリス。「ここでは私、死なないと思うから……。」

なにをするんだアリス、危ないことはやめなさい!

文/なからい
編集/実存

※この記事は『Alice’s World』の魅力をもっと知ってもらいたいNarrator Storia Gamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


開幕0秒からメタ要素全開の『Alice’s World』。病弱な少女が夢の世界に迷い込む

冒頭で説明した通り、『Alice’s World』はひとことで言うと「メタ要素全開の世界で、儚げな女の子と旅をする」といった作品。まずは、とにかくゲームを始めてみましょう。

ゲームを開始すると、さっそくプレイヤー名の入力を求められます。言われた通りに進めて行くと……。

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「……本当にあなたの名前ですか?」

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なんかこっち見てるんだけど……ッ!

という感じで、本作『Alice’s World』では、“開幕0秒”と言って差し支えない猛烈なスピード感で、ゲーム内のキャラクターが画面越しのプレイヤーへ語りかけてきます。

「こういうメタ要素って、『最後のとっておき』みたいに出すものじゃないの……?」と思いましたが、ところがどっこい。本作では最初から「メタ要素がありますよ!」ということが高らかに宣言され、物語が始まるわけです。

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あまりにいきなりだったので面くらいましたが、それがかえって「これってどうなっているんだ……?」という推進力のような作用をし、先が気になってどんどんプレイを進めていくことができました。

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▲よくわからないけど、めちゃめちゃ意味深な事を言われる。定番だけど、こういうの良いですよね

さて、ゲーム本編が始まると写し出されるのは、主人公「アリス」の家の中。アリスはお兄さんと二人暮らしです。

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彼女は病弱なようで入退院を繰り返しており、今でも眠る前の薬は欠かせません。お兄さんもアリスの治療代を稼ぐため、頑張って働いているもよう。

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▲仕事で忙しいお兄さんに、アリスは不満ぎみ。かわいいですね

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「お兄さんにコーヒーを淹れてあげる」「お兄さんからもらった花を花瓶に活ける」といった、チュートリアルを兼ねた日課を済ませ、「今日はもう寝ようか……」ということで就寝。すると……。

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……

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気づけばアリスは、荒れ果てた荒野に投げ出されているのでした。

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途方に暮れていたアリスでしたが、仕方がないので周囲の探索を開始。なにがなにやら、という感じではありますが、謎の怪物が跋扈している危険な世界のようです。危ない……!

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異形に追いかけられ逃げ惑うアリス。その時どこからともなく声がします。

「早く隠れて!」

これが、筆者が作中で最初に発したセリフでした。

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このように本作では折に触れて、プレイヤーがアリスに話しかけることができます。ストーリー的にも、選んだ選択肢はそのまま自身の声として、アリスに届いているというわけです。

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突然聞こえてきた声に助けられ、どうにか難を逃れたアリス。ここから彼女は、プレイヤーである筆者と共に、この不思議な世界を旅することになります。

二人三脚で歩む、夢の世界での旅。アリスがとにかくカワイイし、放っておけない

謎の世界で出会った筆者とアリス。二人で協力し、彼女が元の世界に帰る手がかりを探していくというのが本作の主な流れになるのですが……。それにしてもこのアリスというキャラクター、なんとも儚げで可愛らしく、思わず「俺が守ってやらねば」という義務感すら覚えます。

まず心惹かれるのは、彼女のたたずまいです。本作のキービジュアルをご覧になった時、「なんだかカワイイ女の子が出てくる、雰囲気が良い感じのゲームだな?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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同様に、作中の彼女もたいへん愛らしく、さまざまな表情を見せてくれます。「あなたが住んでいるのはどんなところ?」と興味津々なさまなどからは、おとぎ話を聞いているかのような、年相応のあどけなさもうかがえます。

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「プレイヤーと話している」という状況ゆえか、まっすぐこちらを向いているアングルが多いのも印象的。

実際、物語の建てつけとしても、筆者はこの子と会話を交わしているわけで……。「ゲームのシステム」という垣根をちょっぴり超えた感情移入ができる作品になっていると感じました。

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▲ちょっと上を向いている感じが良いですよね

ゲームの進行としては、アリスを操作しつつ時々会話を交わし、アイテムの探索や収集、それを使った謎解きをして先に進んでいくことになります。必然的にあちこちを調べまわることになるのですが、その際のリアクションもさまざま。

たとえ謎解きに直接関係ない、“空振り”の箇所を調べたとしても、アリスがさまざまな反応を示してくれるため、あちこち調べてみたくなります。

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▲SDキャラのアリスも、コロコロ表情が変わって愛らしい

細かい話ですが本作には、「長い時間ダッシュをし続けるとアリスが転ぶ」という仕様も存在。文字通りアリスが転んでただのタイムロスになる仕組みなのですが、実際子どもって、走ると転ぶものですよね。

ゲーム的に大きな意味はないのですが、彼女の「放っておけなさ」を演出するためにわざわざこのシステムを入れたのだとしたら、「開発陣、わかってるね……!」という感じです。

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▲転ぶとかわいそうなので、ダッシュはほどほどに

また、本作は海外産のインディーアドベンチャーゲームとしては比較的珍しく、日本語のフルボイスに対応。探索文章のひとつひとつにも、音声がついています。

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アリスの声優を担当するのは、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公・後藤ひとりを演じた青山吉能さん

ゲームを通して筆者が感じたアリスの印象は「年端も行かない病弱な少女。どこか影があるけど、好奇心旺盛で芯がある」という感じ。なんとも繊細なキャラだと思うのですが、雰囲気たっぷりの演技でたいへん没入感がありました。

儚げな少女・アリスが持つもう一つの「放っておけなさ」。唐突に起こす行動からは文字通り目が離せない

そんなこんなで、時には怪物から隠れてみたり、時には派手に転んでみたり。そのたびにアリスと会話を交わしながら探索を進めてきたのですが……。そんななか見えてきたのは、アリスの持つもう一つの側面。

ひとことで言うと、なんだか不穏なんです。

場面は先ほどから続き、廃病院のような建物に着いたところ。ホワイトボードには謎の疫病の存在と、それを解明するため、さまざまな実験が行われた記録が。実験体の手足を切除し、ついには頭部を切り離しても、その原因はわからなかったそう。こわい……。

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そして部屋の隅には、なにやら意味深なぬいぐるみが。同じことをしろっていうのか……?実験記録どおり、ぬいぐるみを胴体だけにしても、なにも起きません。

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するとアリスが突然ハサミを手に……!

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……あまりに唐突だったので、画面からちょっとのけぞってしまいました。手足をもいだのは筆者だけど、やるなら先に言ってよ!子どもは時として、その無邪気さから残酷な行いをするものですが、それにしても驚いた。

このように、このアリスという女の子、時折普段の健気な姿からは想像できない、おかしな行動を取ります。驚きの感情もそうですが、率直に「大丈夫か!?」という心配が勝ります。

「キャラクターとしての魅力」というとちょっと違うかもしれませんが、気持ちとしてはとにかく「この子をここで見放すわけにはいかない」という心境です。謎だらけな世界の様子も相まって、心配半分、興味半分といった感じでしょうか。

そしてこのあたりから、物語は徐々に不穏さを増していきます。

「この世界では、私は死なないみたい」異常な“現実”を前にしたアリスの選択とは

探索を続けるうちに、もうひとつわかったことがあります。それはどうやら「アリスはこの世界では死なないらしい」ということ。

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実は病院に来る前、不意をつかれて怪物にアリスが襲われてしまったことがあったんです。絶体絶命かと思ったのですが……。視界が乱れ、次の瞬間、そこには無事なアリスが。

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彼女によれば「すごく苦しかったし、痛かったし、死んだと思った」とのこと。それでもなぜかアリスは生きています。今思えばこの時、彼女の中には「この世界では、私は死なないのかもしれない」という確信めいた実感が湧いてしまったのでしょう。

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そして今、病院を出た我々の目の前には、橋を落とされた断崖があります。はるか崖下に降りれば先に進めそうですが、あいにくロープのような道具は手元にありません。

そこでアリスが選んだ選択は……。

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「私……飛び降りれるかも。」

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▲やめようよ……。

もちろんこの時も、会話によって彼女を引き留めることができます。死ななかったとしても、すごく苦しくて痛いんでしょ……!?

筆者は6回引き留めました。引き留めたのですが……。

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この後どうなったかは、あえて語らないことにしましょう。

アリスが意を決した後、筆者の視界は暗転。彼女の安否が気になって仕方がないのですが、なぜか目の前には現実の学校のような風景が広がっています。

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systemちゃん……誰!?

アリスと筆者の旅は、まだまだ続きそうです。


いかがだったでしょうか。ここまで紹介したとおり、主人公のアリスは、ひとりで異世界に迷い込んだ儚げな少女である一方、彼女からは今にも壊れてしまいそうな危うさが感じ取れます。

「キャラクターとプレイヤーが会話する」というシステムも相まって、どうしても放っておけない。そんな存在として、アリスは描かれているように感じます。

彼女自身についてはせいぜい、「病弱で、お兄さんと暮らしている」くらいの情報しか開示されていません。それでもなお、時折挿入されるメタ要素や、この世界自体の謎にも後押しされ、「アリスの行く先を見届けたい」という気持ちでプレイしていました。

今回は序盤の紹介に留めましたが、ぜひご自身でアリスとの旅を歩み、結末を見届けていただければと思います。

『Alice’s World』は、PC(Steam)にて発売中。リリース記念となる10%オフセールが、12月10日まで開催されています。

ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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