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初動でつまづいたインディーゲームを“賛否両論”から“非常に好評”まで立て直した開発者に「ぶっちゃけなにがあったのか?」を聞いたら、生々しい話があふれ出た。「安さで選んだ翻訳が炎上し、再翻訳に160万円かかった」

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発売後の今、振り返って考える反省点、課題。次回作に向けて、どのように改善していくのか

——ここまで、メタスラ結成に至る流れから『シーファンタジー』の開発、発売、アップデートと一連の流れを振り返っていただきましたが、「こうしておけばよかったな」という今にして思う改善点があればお聞かせください。

中島氏:
一番大きな「こうしておけばよかったな」は、Nextフェスへの向き合い方ですね。

Steamでは年に3回ほど、未発売ゲームの体験版をお披露目するNextフェスというイベントがあるのですが、このイベントは1タイトルにつき、一度しか参加することができません。私たちはそれを知らなかったため、開発初期の段階で参加してしまったんです。

その結果、体験版を締め切りまでに間に合わせること自体でも大変苦労しましたし、やっとの思いで出した体験版も内容の薄いものになってしまいました。

『シーファンタジー』開発者インタビュー。Steamの評価を賛否両論から非常に好評まで立てなおしたインディーゲームの開発秘話_011
▲Steam上で定期的に実施され、体験版や開発者の配信などが一斉に公開されるイベント(画像はSteam Nextフェス:2026年2月エディション開催のお知らせより)

中島氏:
なにより、Nextフェスはウィッシュリストの多いゲームほど露出が増える傾向にあるんです。当時の『シーファンタジー』はウィッシュリスト登録数が8000件ほどで、イベント期間中に1万に到達しました。

開発初期に参加して25%ものウィッシュリスト増加があったわけですから、開発後半、より多くのウィッシュリストが溜まっている状態で参加できれば、さらに効果的だったのではないかと考えています。

飯島氏:
また、スマートフォンアプリとSteamゲームの売り方の違いにも悩まされました。スマホでは、ユーザーが興味を持っているキーワードを使用することで、検索などを経由してある程度ユーザーにゲームの情報を届けることができます。

しかし、Steamでは自分たちで露出を増やしていく必要があると感じました。ただストアページを開いていてもゲームがそこにあると気付いてもらえないので、イベントへの参加やゲームメディアへのプレスリリースの送付などを通じて「ここにこんなゲームがあります」とユーザーに売り込んでいかなければならない。

ここが、スマホとSteamの大きな違いだと思います。

中島氏:
私たちはふたりともプログラマーということもあり、どうしても「作る」ことに意識が向いてしまいます。

ですが、私たちの作ったゲームを「届ける」ことも非常に重要だと実感しました。次回作では、プロモーションに関しても事前に計画を立て、「どのタイミングでどんな情報を出していくのか」を意識して動いていきたいですね。

あと、翻訳ですね。『シーファンタジー』では調査不足で大変な手間とコストがかかってしまったので、ここもしっかりと調べて、次回作では失敗しないようにしたいです。

——ゲーム開発者として「セルフパブリッシング」は今後も続けていくおつもりでしょうか?

中島氏:
本音を言えば「ゲーム作っているだけ」でいたいですね。プロモーション作業はかなりしんどいです。

それでも、ニュースリリースを作成して国内のメディアのみなさんにお送りしている分には、わりと取り上げていただけることもあり、ユーザーからの反応ももらえたりして達成感があるんですが、海外になにかを送っても「本当に掲載されているのか?」が非常にわかりにくいですし、効果もなかなか見えてきません。

海外向けに画像やテキストを翻訳して調整している時に「本当にこれやる意味あるのかな…」と思ってしまったこともあります。

次回作はサバイバルクラフトをテーマにしたゲームを計画中

——次回作のお話がありましたが、メタスラさんはこれからもSteamや家庭用ゲーム機へ向けたゲーム開発をおこなっていくのでしょうか。それともスマートフォン向けアプリの新規開発も継続するのでしょうか?

中島氏:
現状、スマホアプリは作っていません。もともと、私はPCや家庭用ゲーム機向けにRPGを作りたいと思っていました。

スマホアプリの開発を通じて資金も溜まり、飯島が戻ってきてくれて、古澤も加わってくれて、いよいよ念願のRPGが作れるようになって挑んだのが『シーファンタジー』です。

『シーファンタジー』が大ゴケしていたら、それこそ飯島がまたいなくなって(笑)、会社を畳んでひとりでスマホアプリの開発に戻っていたかもしれませんが、なんとか継続できる程度の売り上げにはなっているので、次もSteamや家庭用ゲーム機向けのゲームを作るつもりです。

飯島氏:
ただ、これはスマホアプリから完全に撤退するということではないです。これまでに中島の手かけた作品、『剣と勇者とレベル上げ』や『ローグダンジョンウォーカーズ』などのメンテナンスやアップデートは現在もメタスラとして継続しています。

中島氏:
そうですね。これらの過去作品がなければ、1年半にわたって『シーファンタジー』を開発し続けることはできなかったと思います。ユーザーの皆さんにはとても感謝しています。

飯島氏:
また、スマーフォンに関しては、『シーファンタジー』のスマートフォン版も発売する予定があります。

——これまでの作品は維持しつつ、新しい客層も狙って展開していくということですね。次回作がどういった内容になる予定か、お聞きしてもよいでしょうか。

中島氏:
次回作はサバイバルクラフトをテーマにしたゲームを作ろうと考えています。

皮算用としては、「『シーファンタジー』がバカ売れしたら『2』を作ろう」みたいな話をしていたんですが、残念ながらそれほどの成果は残せなかったので、「私たちのゲームを気に入ってくれた人たちに楽しんでもらえるようなゲーム」でありつつも、新規ユーザーにも興味を持ってもらえる内容を目指して企画を練っているところです。

まだまだ情報をお出しできる段階ではありませんが、メタスラの次回作にどうかご期待いただければ幸いです。(了)


いかがだっただろうか。なかなか具体的な数字の出てこないゲーム業界において、比較的情報を語りやすいインディーゲーム開発者とは言え、ここまで生々しい数字や実感のこもった内容が飛び出し続けるインタビューというのは、極めて珍しいのではないだろうか。

記事冒頭でも述べたように、ここで語られたのは華々しい成功譚ではない。

一方で、目も当てられぬほどの失敗譚でもない。その間にたゆたう、「そこそこ」の体験談だ。

『シーファンタジー』の記事執筆時点でのレビュー総数は533件。リリースから1年でこれほどのレビュー数を獲得し、しかも好評率が80%以上となっているタイトルはおそらく1割もないだろうことを思えば、「そこそこ」な『シーファンタジー』すらも、Steamで日夜リリースされ続けるゲームとしては“上澄み”と言える。

『シーファンタジー』開発者インタビュー。Steamの評価を賛否両論から非常に好評まで立てなおしたインディーゲームの開発秘話_012
(画像は『シーファンタジー』Steamストアページより)

だからこそ、本稿には非常に大きな意味がある。「そこそこ」の成功、“上澄み”にたどり着いたゲーム開発者たちがこれまでなにをしてきて、どこで失敗し、どのような改善策を考えているのか?

すなわち、次になにをするのか?

これは、まさに成功を目指すストーリーの中腹なのだ。今回の成功と失敗を踏まえ、彼らはどこへ踏み出すのか。その歩みは更なる高みに届くのか、それとも底知れぬ深みにはまるのか。

読者諸賢には、ぜひ筆者とともに、この物語の続きを見つめてほしい。

そんな株式会社メタスラの“現在地”を体感できるオープンワールド釣りRPG『シーファンタジー』はNintendo Switch、PS5、Xbox Series X|S、PC(Steam)向けに販売中。新たに、スマートフォン版の販売も予告されている。

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編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest
編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ライター/編集をしています。
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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