いや~、心安らぐなあ、『どうぶつの森』シリーズは。
激しいバトルが繰り広げられるとか、息つく暇もなくシューティングを続けるとか、そういう忙しい時間がまったくない。崖から落ちて死んだ~! という局面もない。
穏やかな時間が流れるなか、優しい動物たちに出会い、森や海で捕まえたものを請われるままにあげて、お礼にもらったもので家具などを作り、少しずつ生活を豊かにしていく。まさに人類が目指すべき理想郷ではないですか。
そう喜びながら、最新作の『どうぶつの森 ポケットキャンプ』をやっていたら、驚くべき現象が頻発することに気がついた。
木を揺らすと果物が落ちてくるのだが、1個でも拾うと、木の上に「2時間59分」という表示が現れる。これがゼロになったとき、すなわち3時間後には、次の果物がなるのである。あまりに早くないか!?
そして、浜辺で魚影を見つけて針を投げ、表示に応えてタップすると、魚が釣れる。筆者はまだフグまでしか釣れていないが、噂に聞けば、チョウチンアンコウが釣れるという。この深海の王者を、浜辺で投げ釣り!?
さらにプレイヤーたちは、取れたものを、さも当然のごとく、ポケットに入れる。結構大きなものも、濡れたものも、壊れやすいものも。そんなことをして、大丈夫なの!?
平和な世界といいつつ、奇怪な現象が次々に起こっている『どうぶつの森 ポケットキャンプ』(以下、『ポケ森』)。これら気になる謎に迫ってみよう。
果物はどんなスピードで実る?
まずは、果物の異常生育である。実るまで3時間とは、あまりに早すぎると思う。
リンゴに注目しよう。
現実世界のリンゴは、次のようにして実を結ぶ。
5~7月、成長の止まった枝の先端に、花芽(かが、はなめ)ができる。
翌年の5月に花が咲き、受粉して、花弁が落ちて、萼(がく)が閉じ、6月上旬に緑色の小さな実ができる。
実は大きくなりつつ色づいて、9~11月に収穫される。
つまり、リンゴの花芽が実になるには、最短でも1年2カ月(前年の7月から当年の9月)を要するのだ。これに対して、『ポケ森』のリンゴは、たったの3時間。これが花芽からの時間だとすると、3400倍の急成長だ。
なぜ、こんなことが可能なのか。その秘密を探るために、ワサワサの森でリンゴを収穫し、次にリンゴがなる3時間後まで、何が起きるのかを観察した。現実の3400倍の成長速度なら、残り50分あたりで花が咲き始めるはずだが……。
残り2時間、何も起こらない。
残り1時間、何も起こらない。
残り30分、何も起こらない。
残り10分、何も起こらない。
残り5分、何も起こらない。
残り3分、何も起こらない。
残り1分、何も起こらない。
残り30秒、何も起こらない。
残り20秒、何も起こらない。
残り10秒、何も起こらない。
5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、え~っ、まだ変化しないの!?
0秒、いきなりリンゴが出現!
うわ~っ、これはいったい、何が起こったのか。
現実のリンゴの花芽も、よほど目を凝らさねば見えないから、『ポケ森』のリンゴは、収穫後2時間59分59秒までは花芽だということだろう。
そこから、残り1秒で花が咲き、受粉して実となり、大きくなりつつ色づくのだとしたら、その成長速度は現実のリンゴの1040万倍である。
もっと喜んでいただきたい!
続いては、投げ釣りでチョウチンアンコウが釣れる不思議。
チョウチンアンコウは水深200~800m、一説には300~2000mに生息する深海魚だ。これが浜辺で釣れるとは、驚きである。
それ以前に、生きたチョウチンアンコウと遭遇できた奇跡に、もっと驚いていただきたい。それはきわめて稀有なことなのだ。
冬の風物詩として愛されるアンコウ鍋。
素材となるのは、アンコウ目アンコウ科のキアンコウやクツアンコウだ。アンコウ目チョウチンアンコウ科のチョウチンアンコウとは別の魚で、チョウチンアンコウは食べられない。
チョウチンアンコウが人間の目に触れるのは、波に打ち上げられたり、網にかかったりしたときがほとんど。生きたまま捕獲されることは滅多にない。
海洋開発研究機構のHP内にある『さかなクンの深海ギョギョ!』によれば、2005年、さかなクンの友人の網に生きたチョウチンアンコウがかかった。連絡を受けてすぐに駆けつけ、生きたチョウチンアンコウを観察できた喜びを「さかなクンも、『一生に一度は会いたい』と長年願い続けていました。そして、その願いが叶いました!」と興奮して伝えている。
『ポケ森』でも、チョウチンアンコウが釣れたら、仲良くなったどうぶつたちをみんな集めてパーティを開くぐらいの歓喜に酔っていただきたい。
なんでもポケットに入れると、どうなる?
筆者が最も問題視したいのは、取ったものが何であれ、何のためらいもなく無造作にポケットにしまうこと。
果物も、魚も、昆虫も、カイゾーさんに作ってもらった家具の入った箱も!
そして驚くべきことに、投網で魚を獲ったら、投網ごとポケットへ!
そんなことをしたら、リンゴやナシはまだしも、軟らかいモモやサクランボは潰れ、昆虫の翅や肢はモゲ、イカは墨を吐き、ポケットは魚臭くなり……ひ~っ、目も当てられない惨状!
……ということになるはずである、普通だったら。
現実世界では、そうなるのを防ぐために、貨幣というものが発明され、市が立って、作物や獲物は、速やかに貨幣と交換されてきたのである。
『ポケ森』の世界にも「ベル」という貨幣があり、アジは10ベル、タイは100ベルといった価格で、いつでも売ることができる。だがそうすると、どうぶつたちに出会ったときに、彼らが欲しがるものを持っていない……という無念な状況に陥る。
これを回避するためだろうか、初めは100個まで(ステージが進むと増える)、ポケットに取ったものを入れておけるようになっている。
しかし、100個とは、多くないか。
参考までに、現在、筆者のプレイヤーのポケットに入っている素材は、次のとおり。
果物 リンゴ5、オレンジ4、モモ2、ナシ5、サクランボ3、ヤシのみ7
昆虫 カブトムシ5、コガネムシ5、オオカバマダラ5、アゲハチョウ3
海水魚 フグ1、タイ2、イカ6、アジ7、ヒラメ7
貝殻など ホタテガイ7、ホラガイ7、サンゴ5
淡水魚 ブラックバス4、オイカワ5、フナ5、イエローパーチ5
総数105個、推定合計重量43.8kg! ポケットの内部がどうなっているかは不明だが、これだけの重量が入っているのは間違いない。
しかも、プレイヤーが獲物を入れるのは、右のポケットだけ。こんなに重いものを片方のポケットだけに入れていたら、ズボンがずり下がったり、ポケットが破れたり、バランスを崩して転んだり、大変なことにならないか!?
だが、その点は心配無用かも知れない。『ポケ森』のプレイヤーたちは、きわめて怪力なのだ。ゴロゴロ鉱山で、ハニワくんの鉱石掘りの手伝いをするとき、かなり大きな岩をシャベルの一撃で木っ端微塵にする!
砕く岩は、縦長のプリンのような形。プレイヤーの身長を150cmと仮定して、ゲームの画面で目測すると、上面の直径は60cm、下面の直径は1m、高さは1mほど。標準的な岩石の密度から計算すると、重量は1.4tになる。これを一撃で砕くとは、どんなスーパープレーなのか。
シャベルの重さを2kgと仮定すると、スピードは時速1300km、マッハ1.1。ピストルの弾丸ぐらいだ!
シャベルを1m動かすあいだに、その速度に到達させているとすると、腕力は14t。アフリカゾウ2頭を片手で持ち上げられる!
なるほど、これだけの筋力があれば、ポケットのなかの43.8kgなど、何でもないだろう。こんなヒトタチが、にこやかに虫取りや魚釣りに打ち興じている『ポケ森』世界。
この平和をかき乱そうとする者には、恐ろしい運命が待っているだろう。
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