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セガゲームス「ゲーム機市場に再参入の予定はなし」と公式回答。メガドライブ復刻版、過去IPの国内販売の可能性は?

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 4月8日、産経ニュースにて「セガ、ゲーム機市場に再参入 メガドライブ販売を検討」とのニュースが報じられた。

●産経ニュース | セガ、ゲーム機市場に再参入 メガドライブ販売を検討

 

「セガゲームスが家庭用ゲーム機市場への再参入を検討していることが7日、分かった。松原健二社長が産経新聞の取材に対し、約30年前に任天堂の家庭用ゲーム機と顧客争奪戦を繰り広げた「メガドライブ」の復刻版の販売を考えていると明らかにした。」

 記事の内容は、セガゲームス松原健二代表取締役社長COOが、産経新聞の取材に対して「メガドライブ」の復刻版の販売を考えていると明らかにしたものだ。

セガゲームス「ゲーム機市場に再参入の予定はなし」と公式回答。メガドライブ復刻版、過去IPの国内販売の可能性は?_001
メガドライブ
Image by Muband. Licensed under the terms of cc-by-sa-3.0.)

 メガドライブは、セガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)から1988年に発売された16ビット家庭用ゲーム機。1989年、北米にてジェネシス(GENESIS)という名称で発売され、2000万台以上を販売。
 また、翌1990年には欧州、南米地域で発売となっている。

 このニュースはSNSを中心に大きな注目を集め、ゲーマーのあいだでは「あのメガドライブが復刻する」、「セガがふたたびゲーム機を売り出す」などと話題になった。

 ただし、記事内にも記されている復刻版とは、台湾で各国向けに委託生産されているAtGamesの「Sega Genesis Flashback」(以下、「SGフラッシュバック」)を指していると思われる。

 つまり、セガゲームスが新たにメガドライブ復刻版を開発・生産するとも取れる記事の見出しではあるが、内容は「SGフラッシュバック」を国内にて販売することを検討しているというものだ。

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SEGA Genesis Flashback
(画像はAt Games | SEGA Genesis Flashback<
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 このニュースを受けて、複数のメディアがセガゲームス広報からの回答を掲載した記事を公開している。

 現時点での明確な情報を得るため、電ファミニコゲーマー編集部でも改めてセガゲームスの広報担当者に質問を送ってみたところ、以下のような回答を得られた。

電ファミニコゲーマー編集部
「セガゲームスが家庭用ゲーム機市場へ再参入」との報道があったが、実際に再参入は検討しているのか?

 

セガゲームス広報
 再参入の予定はございません。一方で弊社の持つハード、ソフトに関連する旧来IPの活用についてはお客さまからのお声や市場の状況、採算性等に鑑みながら継続的に様々な可能性を検討しております。

 

電ファミニコゲーマー編集部
「メガドライブの復刻版の発売」とは、AtGamesの「SGフラッシュバック」の輸入販売を指しているのか? それとも自社でのメガドライブ復刻版の開発、生産が検討段階であるという意味か?

 

セガゲームス広報
 現在のところ決定した事実はございません。

 

電ファミニコゲーマー編集部
既存IPの活用法を検討しているとのことだが、たとえば「SGフラッシュバック」、「SEGA Forever」【※】といった海外での動きを国内にて展開、または強化されていくということか?

 

セガゲームス広報
 過去のIPの活用という観点においてはご指摘の通り、ソフト・ハード、また国内外かかわらず以前より取り組んでおり、お客さまからのお声や市場の状況、採算性等に鑑みながら継続的に様々な可能性を検討しております。

 

※SEGA Forever:セガが過去に発売していた家庭用ゲーム機タイトル(自社ハードのセガタイトル)のほぼすべてをiOS/Android向けに無料配信するプロジェクト。北米など、各地域で2017年よりスタートしているが、日本は対象外となっている。

 つまり、セガゲームスがゲーム機市場へ再参入するという話ではなく、さらには「SGフラッシュバック」の国内販売や自社によるメガドライブ復刻が決定したわけではないということだ。

メガドライブ、30年が過ぎても海外では互換機が“公認発売中”

 さて、話題となったメガドライブについてだが、実は発売から30年が経ったにも関わらず、いまだに互換機が世界中で“公認”販売されているという事実がある。

 一般的に互換機と言うと、ライセンスを受けていない品を想像する方が多いかもしれない。たとえば任天堂のファミリーコンピュータを例に見ると、特許の有効期間が20年間とされているなかで、1983年に発売された同ゲーム機は2003年に権利が消失している。
 以降、この特許消失を背景に、多数のサードパーティーが任天堂を通さずにファミリーコンピュータの互換機を発売している【※】

※著作権切れのゲーム機の互換機が法的に問題がないかについては長きにわたって議論がある。現時点で日本国内では司法が判断した例はない。「20年の特許有効期間が過ぎ、50年の特許有効期間があるソフトウェア(BIOS)を搭載していないゲーム機かどうか」がひとつのラインともされる。

 「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」のような公式による復刻はファンにとってはうれしい限りだが、ハードを取り扱うには生産ラインの確保はもちろん、保守部門も必要となる。
 それらの点も含め、かつてゲーム機を販売していた企業が今になって生産を再開するのは、ハードウェア分野に着手している会社でなければ難しい。

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「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」。任天堂による公式復刻版ではあるが、カセットを刺すタイプのものではなく、厳密には「SGフラッシュバック」のような互換機とは異なる。
(画像は任天堂 | ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータから)

 一方で、セガゲームスは今日に至るまで、多くの企業にメガドライブの互換機を作ることを認めており、公認の互換機をリリースしている。
 今回その存在が取り沙汰された「SGフラッシュバック」もそのひとつだ。

 「SGフラッシュバック」はHDMI出力に対応しているほか、ゲームの進行を少しだけ巻き戻すことができる「Rewind」機能も搭載。また、カセットでのプレイに対応するとともに、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』や『バーチャファイター2』といった85本のゲームが最初から収録されている。これは認可を受けていない互換機にはできない芸当だ。

 同社はセガのほか、Atariの過去のゲーム機の互換機開発にも積極的であり、「Atari Flashback 8」の製造・販売も手掛けている。こちらもAtariのライセンスを受けての公認互換機となっている。

 ほかにもセガのゲーム機が根強い人気を持つブラジルでは、メガドライブは現役のゲーム機と言えるほど根強い人気がある。とはいえ、生産が終わったゲーム機が市場で安定流通しているわけではなく、そこは互換機の出番となる。

 メガドライブの発売当時から代理店となっているブラジルのゲーム企業Tectoyは、現在も「Tectoy Mega Drive」の名で公認のメガドライブ互換機の開発を続けており、2016年には22本のゲームを収録した最新機を販売した。

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AtGamesではこのほかにも、「SEGA Genesis Ultimate Portable Game Player」という公認互換機があり、その名のとおりメガドライブのゲームが携帯機で遊べてしまう。
(画像はAtGames | SEGA Genesis Ultimate Portable Game Playerから)

 余談だが、北米版Sega Genesis(メガドライブ)のタイトルが遊べるゲーム機がセガトイズから販売されていたこともある。2004年に発売された「メガドライブ プレイTV」がそれだ。
 AVケーブルをテレビにつなげるだけでゲームが遊べるというもので、『SONIC THE HEDGEHG(ソニック・ザ・ヘッジホッグ)』『GOLDEN AXE(ゴールデンアックス)』『ALTERED BEAST(獣王記)』『FLICKY(フリッキー)』『DR.ROBOTNIK`S MEAN BEAN MACHINE(ぷよぷよ)』『KID CHAMELEON(カメレオンキッド)』の6タイトルを収録。北米版がそのまま収録されている形で、日本語ローカライズはされていない。ちなみに、2005年には「メガドライブ プレイTV2」と「メガドライブ プレイTV3」が発売された。
 こちらはカセットを差し込んでプレイすることはできないタイプで、セガ(厳密にはセガサミーグループの子会社のセガトイズ)から販売されているという点も含めると、「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」に近いのかもしれない。

 技術の進歩や流行の移り変わりにより、ゲーム機はいつか生産中止を迎える。ときには、ビジネス的な理由により、メーカーがハードウェア事業から手を引くこともある。

 ゲーム機が手に入らないという理由で、“いま”のゲーマーが“昔”のゲームを遊べないという環境は、ゲーム業界にとって決していい状況とは言えない。公認という形を取ることにより、手軽に昔のゲームが遊べる手段が増えるのであれば、ゲーマーにとってこれほどうれしいことはないだろう。

文/ishigenn

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著者
セガゲームス「ゲーム機市場に再参入の予定はなし」と公式回答。メガドライブ復刻版、過去IPの国内販売の可能性は?_005
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn

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