彫刻家のサイモン・オルーク氏と彼のチームが、巨大な木材から精巧なドラゴンの彫刻を作り野外に展示した。オークドラゴン、あるいは「Y Ddraig Derw」と名付けられたそれは、またたく間に話題となりパブリックアートとして観光名所になっている。オルーク氏は公式サイトで「ベセスダ(Bethesda)のドラゴンを楽しんでくれてとても嬉しい」と伝えている。
「ベセスダ」と聞くと、ゲーマーなら思わず『スカイリム』を筆頭とした『The Elder Scrolls』シリーズを思い浮かべてしまうところだろう。しかしこれは世界一有名なオープンワールドRPGの会社の名ではなく、奇妙な偶然の一致か、欧州にある町の名前なのだ。
木彫りのドラゴンはイギリスのリバプールから西に約70キロ、ウェールズ北部に位置する人口5000人ほどの“ベセスダ”(Bethesda)と呼ばれる町に向かう途中に展示されている。私有地ではあるが、公共の道路からよく見える位置でもある。
ウェールズにはドラゴンの伝説がある。赤い竜(Y Ddraig Goch)はブリテン島の大地の守護者であり、ゲルマン民族の守護者である白い竜と戦ったと伝えられている。ドラゴンはウェールズの土地や民族の象徴であり、ウェールズの旗にもドラゴンが描かれている。
そんな由来もあってか製作されたこのドラゴンの彫刻だが、あまりに出来が良すぎたためか、ちょっとした問題も引き起こしている。このドラゴンを運転中にたまたま見た、あるいは見に来た人たちが道路脇に車を停めたり、減速することで大事故を起こす可能性が、地元警察より懸念されている。
実際に、すでに1件の事故、いくつかのニアミスが起きているという。警察は「ドライバーへ、ドラゴンを見るときは近くの駐車場に停止し、運転中はドラゴンに気を取られず集中して安全な運転を心がけてほしい」と呼びかけている。
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「Y Ddraig Derw」を制作したサイモン・オルーク氏は、もともとはイラストレーションで学位を取得。子供向けの絵本執筆に興味があったものの、イラストのキャリアを積みながら木の剪定やケアを行うアーボリストの仕事についた。そのときにチェーンソーによる彫刻の奥深さに魅了されたオルーク氏は、2005年に独立。現在はさまざまな彫刻や家具を制作する傍ら、イギリスだけでなく、アメリカ、カナダ、オランダ、ドイツ、デンマーク、そして日本でチェーンソーによる彫刻競技に参加している。
もし、“ベセスダ(町)のドラゴン”を見にウェールズに行く際は、車を減速したり路肩に停めたりしないように注意してほしい。せっかくの楽しい旅行が台無しになってしまうかもしれない。
ライター/古嶋誉幸