Bigben Interactiveは、Black ShamrockとCyanide Studioが共同で開発するRPG『Paranoia: Happiness is Mandatory』を発表した。1984年にグレッグ・コスティキャン氏、ダン・ゲルバー氏、エリック・ゴールドバーグ氏の3名が制作、執筆したTRPG「パラノイア」を元にしたコンピュータRPGだ。対応プラットフォームはPC(Steam)とコンソール。価格は未定、発売時期は2019年となっている。
「パラノイア」は発売から35年が経とうとしているが、ルール改訂版がリリースされ続けている、今なお人気の高いTRPGである。コンピュータが支配する理想都市「アルファコンプレックス」を舞台に、プレイヤーたちは「トラブルシューター」となって、市民の幸福を脅かしコンピュータの支配を転覆しようとする反逆者を見つけ出し処分するよう命じられる。
“偉大なコンピューター”が言うには、この理想都市には「共産主義者」、「放射能汚染で突然変異したミュータント」、「スパイの秘密結社」が市民の中に紛れ込んでいるそうで、反逆者とはこういった勢力に所属する人間のことを指す。一方で、ゲームに参加するプレイヤーも実は全て秘密結社の構成員であり、突然変異のミュータントだ。つまり、プレイヤーはまさにコンピュータが指定する反逆者そのものと言える。
ゲーム内ではコンピュータに課せられた任務を攻略していくことになるが、一方で反逆者であると認定されてしまえば抹殺されることになる。そのためプレイヤーたちは表立っては協力しながら、いかに相手の罪を証明、あるいはでっち上げ、自分の善良さをコンピュータに示すかに奔走することになる。
任務に失敗すると、最悪の場合コンピュータに全員が反逆者として処分される可能性もあるため、おいそれとほかのプレイヤーを裏切るわけにもいかない。また秘密結社からも命令が下されるが、コンピュータと組織の命令は矛盾することがままあり、コンピュータの指示に従ってばかりもいられない。「パラノイア」はそういった板挟みの中で疑心暗鬼になるプレイヤー同士の掛け合いが魅力のTRPGとなっている。
さらに本作には重要な要素として、地位を示す階級でありランクによってアクセスできる情報が大きく変わる「セキュリティクリアランス」がある。コンピュータの命令通りに任務をこなせば、最低ランクのセキュリティクリアランス赤から高ランクへと昇格していくが、逆に任務に失敗すれば降格されていくことになる。
最低ランクのセキュリティクリアランスでは、そもそものゲームのルールにも断片的にしか接することが出来ない。セキュリティクリアランスを無視して情報を得ようとすれば、それは反逆罪となる。そしてこの要素は、どうやら『Paranoia: Happiness is Mandatory』でも徹底されているようだ。
『Paranoia: Happiness is Mandatory』のSteamストアページの説明では、プレイヤーが反逆者であることは一切記されていない。このページだけ見れば、コンピューターに支配された都市で体制側の人間として、さまざまな悪人と戦うゲームであるように見える。「パラノイア」の特徴的なクローニング技術による不死性や、『Baldur’s Gate』や『Dragon Age: Origins』に代表されるアクティブポーズ式RPG(一時停止が可能なリアルタイム戦闘)であるといった上辺の情報は得られても、ゲームの本質となるルールについての説明はまったくなされていない。
ディストピア社会に体制側で参加するというのも少し珍しい設定ではあるが、『Paranoia』をコンピュータRPGにするなら当然オリジナルの文脈に沿った要素が入ってくることは間違いない。お互いを陥れようとする複数人で遊ぶTRPG版をいかにひとり用のゲームへと落とし込むのか、続報を楽しみに待ちたい。
ライター/古嶋誉幸