8月24日、『Farming Simulator 19』が種目となるeスポーツ大会「FSL League at gamescom 2019」が開催され、プロのデジタル農家たちによる農業eスポーツが繰り広げられた。
2019年から2020年に実施される「FSL League」の第1シーズンは、オフラインも含めて全14回の大会で構成されている。2020年夏のイベント「Farmcon」にて優秀な成績を収めたチームが一堂に会し、賞金10万ユーロと「Farming Simulator Champion」の名誉を賭けた最後の戦いを行う。今回の大会は、欧州のゲームイベント「gamescom 2019」で実施された第3回目の大会で、規模は過去最大級のものとなった。
※「FSL League at gamescom 2019」の大会映像。
『Farming Simulator』シリーズは、本来は農業をテーマにしたどちらかといえば地味なシミュレーターゲームだが、ゲームを開発したGiants Softwareは2017年から『Farming Simulator 19』をeスポーツ向けの作品として展開してきた。2019年にはそれまで藁を押し固めたベールを積み上げる早さを競うアナログな対戦方式を脱却。3対3の本格的なマルチプレイを導入する「プロリーグモード」DLCを無料でリリースしている。
『Farming Simulator 19』のプロリーグモードは、MOBAのようなピックアップアンドバンを取り入れた本格的なマルチプレイゲームモードだ。両チームが分かれて小麦を収穫・出荷し、より多くのベールを倉庫に集めてポイントを稼いだ方が勝利となる。
『Farming Simulator 19』を知っていても、対戦のために設定されたルールは少々複雑であり、試合を楽しく見るために知っておいた方がいいルールを解説したい。
※リーグ形式のゲームモードの公式解説映像。
ゲームにはスピードや馬力の違う複数のトラクターが用意されており、準備フェーズで両チームのキャプテンが2台ずつゲームから除外するトラクターを選択する。その後、残ったトラクターからチームメイトが1台ずつ使用するものを選ぶ。
さらに準備フェーズではパワーアップアイテムも同じく選択する。パワープレイと呼ばれるこのアイテムは、トラクターのスピードを上昇させたり、ベールの圧縮速度を向上させることができる。
準備が整えばいよいよ試合開始だ。フィールドの特定の位置からスポーンして、15分間の試合が始まる。両チームのプレイヤーは、スタートと同時に農機のあるポッドエリアにトラクターを走らせる。
ポッドエリアには、収穫や伐採を行うハーベスターとベールを固めるベーラーが4台ずつランダムに設置されている。片方のチームが取得した農機は相手のチームは使えない。同じ場所にある農機を取ろうとしていた場合、先にタッチしたチームのみそれを使える。ミニマップで両チームの動きは見えるので、スピードで勝てないような場合はほかの農機に向かうといった柔軟さも必要だ。
実はこのとき、すでに勝敗が決定する仕組みが用意されている。一方のチームがハーベスターあるいはベーラーをすべて取得した場合、そのチームの勝利となる。そもそも相手に農業をさせない、いわゆる「ラッシュ」と呼ばれる戦術だ。
上記のTwitchの動画の1時間25分頃から始まる「JOHN DEERE」対「AMAZONE」の試合など、「gamescom 2019」の大会でもわずか30秒ほどで決着がつくシーンが何度か見られる。
無事に農業がスタートしたら、小麦畑で収穫だ。すでに小麦は実っているため、耕したり種まきをする必要はない。小麦を刈り取り収穫し、藁をベーラーで押し固めることだけに集中する。
試合中では、ベールを倉庫に投入したときに得られるポイントがスコアとなる。倉庫には2種類の投入口があり、地上の入り口からベールを入れると10ポイント、コンベアを通じて投入する上部の入り口から入れると、チームに設定された倍率に10を掛けたポイントがスコアに入る。それとは別に、最初にベールを搬入したチームには2倍の得点が入る。
倉庫のあるエリアは跳ね橋を通って侵入しなければならない。跳ね橋を通ると両チームの対応した跳ね橋が上がり、一定時間のあいだ通行止めとなる。うまく使えば相手の通過を阻止することもできる。
チームの倍率は小麦の出荷量で1.0倍から3.0倍まで上下する。はじめは両チームとも2倍でスタートするが、農村エリアでどれだけ小麦を出荷したかで倍率が0.1ポイントずつ上下していく。一方のチームが0.1ポイント倍率が上昇すれば、もう一方のチームは0.1ポイント減少する。
小麦の出荷量で負けているチームは徐々に不利になっていくが、倍率優勢のチームは倉庫のコンベアのスピードが遅くなり、劣勢のチームは速くなる。ただし、倍率が上限に達したときに劣勢のチームのコンベアはオーバーヒートして停止する。ポイント獲得を重視するあまり小麦の出荷を疎かにすると、ポイントの大きなロスとなる。そのため、ベールの搬入と小麦の出荷を戦略的に行うことが勝利するための重要なポイントだ。
ここまでのルールを把握できれば、「FSL League」をさらに楽しく見られるはずだ。特に面白い見所は、スタート直後のポッドエリアでの駆け引き、そしてベールの倉庫搬入のテクニックとなる。
コンベアにはベールを複数積み上げて乗せられるため、搬入担当は農機を手足のように動かしてベールを積み上げてコンベアに乗せていく。ベーラーはできるだけ積み上げやすいようにベールをうまく並べる。戦いがヒートアップすれば、焦りのために農機が転倒するハプニングも起きる。
農業でeスポーツというと冗談のような響きだが、ルールを把握してから試合を見てみると、高い戦略性を持つ本格的な対戦タイトルであることがわかる。もしゲームを持っているなら、農業eスポーツに飛び込んでみてはいかがだろうか。
ライター/古嶋誉幸