日本時間1月7日よりスタートしたゲーム早解きイベント「AGDQ 2020」にて、1997年に発売された『Fallout』シリーズ1作目から4作目と『Fallout: New Vegas』の全5作を一気に駆け抜ける「Fallout Anthology」Any%スピードランが披露された。
なおAny%とは、ゲームの達成度に関係なくクリアを目指すという意味。走者はふたりしか登録されていないこのジャンルで、現在世界1位の記録を持つTOMATOANUS氏は、23年におよぶシリーズを最速攻略するためのさまざまなテクニックを披露した。
最初に走るのは、シリーズ1作目である『Fallout』で、Any%ではわずか5分足らずでクリアすることができる。もっとも活躍するグリッチは「コンバットグリッチ」と呼ばれる。すべての行動ポイントを消費するか手動で戦闘を終了させる際、Aキーを連打することで敵が反応する前に行動できるというものだ。
敵にダメージを与えなければ連続して活用できるので、敵を避けて通ることができる。ランダムエンカウントに対応するための、シンプルだが重要なトリックとなる。
ほかにもキャラクタービルドは男性より足の速い女性を選び、さらに「Speedclick」と呼ばれるアニメーションキャンセルトリックを使って通常より早く移動する。TOMATOANUS氏はイベント中の挑戦ながら初代『Fallout』をわずか6分ほどでクリアした。
『Fallout 2』ではSpeedclickは利用できるが、コンバットグリッチは使えなくなっている。敵が回避できない場合はロードした方が早く終わることもあるようだ。
『Fallout 2』でもっとも重要なのは、バイオレンスの表現オプションをオフに設定することだという。通常のバイオレンスであればホリガンは死ぬ前に苦しみ続けるが、これをオフにするとすぐに死亡するため大幅なタイム短縮になる。
開発元が変わり、多くの人にはおなじみの3D一人称視点ゲームとなった『Fallout 3』以降、スピードランはさらに狂気度を増す。
『Fallout 3』では、メインストーリーが始まる直前にバースデーパーティが開かれる。「スピードランナーは、こういった社会との関わりは避ける」と語りながら、TOMATOANUS氏はクイックセーブとロードを繰り返して本来通れないドアをくぐり抜けた。
その後もマウスを振ってジャンプする、高速移動や壁抜けなど、3Dゲームならではのグリッチを利用しながら突き進んでいくことになる。
続く『Fallout: New Vegas』のハイライトは、リロードアニメーションのグリッチを利用した「リロードダッシュ」だ。
リロードとPip Boyメニューを組み合わせるとキャラクターが高速で移動する。TOMATOANUS氏はそれにクイックセーブとロードを組み合わせ、まさに空を飛ぶ勢いの高速移動を披露した。
ラストとなる『Fallout 4』はゲームエンジンが違うため、『Fallout 3』や『Fallout: New Vegas』とはグリッチの類も異なるようだ。持ち運び可能なアイテムと物理エンジンを利用した壁抜けは『Fallout 4』スピードランの大きな特徴で、アイテムを使って壁を登り、マップの外側へ脱出するグリッチは何度も登場する。
特に興味深いのは、実際にカップやモールで部屋とキャラクターを使い、とあるグリッチを説明する部分だ。エレベーターを一瞬でワープするためのグリッチの仕組みを説明したあと、実際に実演してみせる。小道具を使った約4分間の説明のあと、「これを使うことで40秒短縮できる!」と語って会場を沸かせた。
TOMATOANUS氏のランはスピードクリアよりオーディエンスを楽しませ、未プレイの人でも『Fallout』シリーズのスピードランを楽しむための解説に重きが置かれていた。素晴らしいプレイが拝めるのもイベントの醍醐味だが、氏のように魅せるプレイを楽しめるのもまたイベントの楽しみだといえるだろう。
5本のゲームをわずか2時間16分で駆け抜けた『Fallout』シリーズスピードラン「Fallout Anthology」は、間違いなくAGDQ 2020のハイライトランのひとつだった。
ライター/古嶋誉幸