『Minecraft』(マインクラフト)のタイムアタック競争では、バグの使用を認めない「グリッチレス」という名のルールが主流となっており、さらに「シード値固定」と「ランダムシード」のふたつのカテゴリが用意されている。シード値とは『Minecraft』のマップの自動生成を制御する値であり、シード値が同じであれば誰もが同じマップをプレイできる。
2月13日、このふたつのカテゴリのワールドレコードを同時に更新したプレイヤーが現れた。ランダム要素の非常に多い『Minecraft』で最初期からスピードランに挑戦しているプレイヤーのひとりIllumina氏だ。「シード値固定」では4分56秒70、「ランダムシード」では23分53秒の記録となっている。
Bescape氏による解説動画によれば、同時に記録を更新するのは史上ふたり目の快挙となるという。
『Minecraft』のスピードランでは、おもにバージョン1.7から1.8が使用されており、ゲーム内の仕様が大きく変更した1.9以降は別のカテゴリに分けられている。Illumina氏が公開した初心者向けランダムシードのグリッチレススピードラン指南動画によれば、サバンナバイオームの存在や1.9で大きく変わった戦闘システムなどから、1.7や1.8がもっともスピードランに適しているのだという。
とはいえ、ランダムに指定されるシードには「2^64-1通り」の値が存在するという。つまり、『Minecraft』のマップのバリエーションは「1844京6744兆0737億0955万1615種類」。シード固定スピードランでは「4929216164286115443」が使用されている。
ランダムシードスピードランでは知識やプレイする能力だけでなく、いかにいいマップを引き当てる強靱な運も求められることがわかるだろう。Illumina氏は記録を更新したランダムシードのAny%グリッチレススピードランで、神に愛されたようなマップを引き当てた際に「God Run」と思わず発言している。
『Minecraft』のスピードランで使われているテクニックの中でも派手なのが、ベッド爆弾によるボスの討伐だ。これはネザーとジ・エンドではベッドで寝ようとするとベッドが爆発する仕様を利用している。そのため、エンダードラゴンと戦う前にベッドを4つ製作しておくのがスピードランの定石だった。
しかし、Illumina氏は異なる手段を取った。利用するのはジ・エンドに設置されたエンドクリスタル。このクリスタルは攻撃すると爆発するので、攻撃手段にも使える。
これまではエンドクリスタルの出現場所や個数はシード値が固定であってもランダムでだったので、安定してゲームをクリアするためにベッドを使っていた。
氏は今回、ベッドを作る時間を切り捨てる新しいルートを選ぶことで、シード固定のAny%グリッチレスルールで初めてゲーム内時間5分を切るクリアタイムをたたき出した。
ランダムシードのAny%グリッチレスルールでも新たなテクニックが編み出された。木のハーフブロックと樹木の葉を使った3×3の基地と、128ブロックのタワーの上に設置したベッドを使った「タワー」と呼ばれるエンダーパールファーミングだ。基地の中には溶岩とチェストを設置する。
『Minecraft』のシステムには、プレイヤーが128ブロック以内に存在しない場合、モンスターが自然消滅するというものがある。基地は隙間が空いておりエンダーマンを安全に倒すことができ、エンダーマンがいなくなったらアイテムをチェストにしまって溶岩に入り、タワー上のベッドへデスワープする。
モンスターは自然消滅するので、再度地上に降りて敵をスポーンさせ、エンダーマンを狩る。この繰り返しでワープに必要なエンダーパールを集めることになる。
新たなテクニックと素晴らしい運で、Illumina氏はダブルタイトルホルダーとなった。ランダム要素の強い『Minecraft』であってもスピードランナーは研鑽を続けている。今後はさらなるタイム短縮が行われることは間違いない。
ライター/古嶋誉幸