数学者ジョン・コンウェイ氏が新型コロナウイルスの影響で死去。自動シミュレーションゲーム「ライフゲーム」の考案者

 数学者のジョン・コンウェイ氏が、新型コロナウイルス感染症が原因となり4月11日に死去していることが明らかとなった。コンウェイ氏が所属しているプリンストン大学が4月14日に発表した。82歳だった。コンウェイ氏は「ライフゲーム」の考案者として広く知られている。

(画像はプリンストン大学「John H. Conway, 1937–2020 | Math」より)

 ジョン・コンウェイ氏はイギリス生まれ。ケンブリッジ大学で数学を学んだあとに、博士号を取得。「コンウェイ群」、「超現実数」など数々の業績があり、特にもっとも有名なのが「ライフゲーム」を1970年に考案したことで知られている。この「ライフゲーム」はプレイヤーが操作するものではないので、厳密にはビデオゲームかどうかの定義はあやふやなのだが、ビデオゲームとして挙げられることもあり、いわゆる「ゼロプレイヤーゲーム」の代表的なゲームとされている。

 日本国内でライフゲームといえば、ニコニコ動画の『北海道に日本が制圧された』『某国に世界を征服された』を当時目にした読者も多いだろう。いわゆる「侵略シリーズ」とも呼ばれており、この動画に触発されて『日本No.1地方決定戦』『某国が東アジアを征服した』『世界大戦』などが登場した。

 ライフゲームの基本的な仕組みとは、マス目に色がついている「■」の状態を「生存している」状態、逆に色がない「□」の状態を「死んだ状態」とみなす。たとえば生きたマスは1ターンが経過すると、死んだ状態になってしまうルールを組み込んでみるとしよう。このままでは最初に色をつけたマス目をいくつ用意したとしても、1ターン経過すればすべてが死んでしまうだけだ。

 しかしここで、「2個、あるいは3個の生存しているマスが周囲にあると、1ターン経っても、生きたマス目は生存し続ける」、さらに「生きたマス目の周囲に3個生きたマス目があると、1ターン後に新しい生きたマス目が誕生する」という簡単なルールを追加するとする。

 ここから隣接した生きたマス目などを複数用意して、何ターンも時間を経過させてみる。するとマス目は増殖と死ぬこと、動的に変化を繰り返して、幾何学的な模様を描くことになる。こういったマス目の動的に変化を予想して設計したり、あるいは単に模様を眺めたり、マス目がどういった振る舞いをするのか眺めて楽しむのが、ライフゲームとなる。

 前提として、最初に設定したマス目だけでどのように動くかシミュレートするものであり、途中で無理やり生きたマス目を増やしたり、こちらからの介入をすることはない。これらのマス目の性質を変えたり、マス目そのものの種類を増やすことによって、より複雑なものをシミュレートすることができる。

 コンウェイ氏がこのライフゲームを考案したあと、数学者でパズル作家として有名なマーティン・ガードナー氏がこのゲームを紹介したことにより、大ブームとなった。以後、さまざまな数学者やエンジニアがどのようなパターンをあるのか研究し、さまざまな発見はLifeWikiにまとめられ、現代でも更新が続いている。また実際に自分で設計できるWebサイトもいくつかある。

 ニコニコ動画では「ライフゲームの世界」というシリーズがあり、このライフゲームを極めていくと、どれほど複雑で広大な模様を描くことができるのか、実践している。基本的なルールしかないのに、最初に設定するマス目によってここまで大きな振る舞いを見せるのは、圧巻だ。

 ライフゲームはその挙動から生命の本質に迫ったと見る向きすらあった。DNAは4つの塩基からなるライフゲームのようなシンプルな構造を持っているからだ。ライフゲームのように自己増殖と変化を続ける新型コロナウイルスによってコンウェイ氏は犠牲になってしまったのは、なんとも悲劇的な結末になったといえる。コンウェイ氏は亡くなってしまったが、彼が遺したライフゲームや数々の業績は、数学や科学などさまざまな知の分野でヒントを与え続けるだろう。この機会に深遠なるライフゲームの世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。

ライター/福山幸司

ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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