先日、ゲーム配信プラットフォームSteamにて正式発表され、ゲームが売れた本数と同じ杯数の水を開発者が飲むという設定が話題になった『Each Sale I Drink a Glass of Water』。5月に発売される予定だった同作だが、Valveより「ゲームとは言えない」という判定を受け、Steamから消去されてしまった。
しかしゲームを開発するアレイン・ラガセ氏は、作品が消された当初こそ落胆していたが諦めなかった。作品とはまったく関係のない『Jetpackin’ Heat』というミニゲームをつけ、作品を『Each Sale I Drink a Glass of Water : The Game』としてSteamに復活させた。まるで食玩のような理論でValveのチェックをクリアしようとしている。
『Each Sale I Drink a Glass of Water : The Game』は、開発中のゲームを販売する早期アクセスの作品としてリリースされる。期間は1年間。最初に3本の水を飲む動画が収録されてリリースされており、毎週1度のアップデートで水を飲む動画が追加されるので、約50回のアップデートを予定している計算となる。
最初に作品が発表された当初、「これがゲームなのか」、「ゲームじゃない作品を作る開発者をSteamからBANしろ」といった声がSteamフォーラムでは挙がり、結果として一部ユーザーの声が通り作品は削除された。
一方で今回発表されたタイトルには、タイトル名に「The Game」が加えられ、アーケードスタイルのシューティングゲーム『Jetpackin’ Heat』が付属している。「ゲームではない」と言われたからゲームを取ってつけて作品をゲーム化させたという、落語めいたトンチでラガセ氏は乗り切ろうとしているわけだ。
一方で本作では、健康面の問題もクローズアップされている。水は短い時間で大量に飲むと、最悪の場合死に至る「水中毒」と呼ばれる症状を起こす可能性がある。Steamから削除された『Each Sale I Drink a Glass of Water』の掲示板はまだ閲覧することができるが、健康被害を心配するスレッドが立っている。ラガセ氏はこのスレッドで「この実験は安全に行われる」と強調している。
実際にラガセ氏は安全対策として、1週間に飲む水の量に上限を決めていると伝えている。1週間の販売数が安全な量を上回れば、その分は次週以降に持ち越しとなる。また、ビデオには水を飲む姿と一緒にその週の販売数や水を飲んだ回数を書いたボードを設置。視聴者はゲームが何本売れ、氏が何杯水を飲んだかを確認できる。
Steamの掲示板を見ると、『Each Sale I Drink a Glass of Water : The Game』は低品質なゲームを揶揄するときに使われる「ショベルウェア」だと言われることもあるようだ。しかし、本作はゲームの売上で開発を続ける、「Steam早期アクセスゲーム」というシステムを使ったもっとも単純な表現とも言えるかもしれない。計画通りに進まずに更新が遅れたとしても、それすら表現だと言い張ることもできるだろう。
ライター/古嶋誉幸