香川県が4月1日に施行した「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(以下、ゲーム規制条例)に対し、香川県内の全ての弁護士が登録する香川県弁護士会が会長声明として、本条例に対する見解を示した。
声明の趣旨は“「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の廃止、特に本条例18条2項については即時削除を求める”とされている。18条2項は、保護者に対して児童がゲームを遊ぶ時間を1時間内にとどめる努力義務を定めたものだ。
声明では「本条例の立法事実の欠如」、「インターネット及びコンピュータゲームの有用性」、「本条例が憲法13条の定める自己決定権を侵害するおそれがあること」、「本条例が子どもの権利条約31条及び12条の趣旨に違背すること」の4つの観点からゲーム規制条例の問題点を挙げられている。
特に、本条例18条2項は、憲法13条が定める子ども及びその保護者の自己決定権を侵害するおそれがあり、教育の内容及び方法に対する公権力の介入は抑制的であるべきという憲法上の要請に違反し、さらに児童の権利に関する条約(以下「子どもの権利条約」という)に基づき、我が国においても最大限尊重されるべき「児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利」及び「子どもが意見を聴取される権利」を損なうものとして、到底、看過できない。
上記の通り、18条2項についてはかなり強い口調で即時削除を要求。子どもを守る条例が、憲法で定められた子どもの権利条約に反していることを指摘している。
声明では条例の立法事実の欠如や憲法への違反など、これまでにさまざまな形で指摘されてきたゲーム規制条例の問題点が、根拠を挙げて改めて指摘されている。また、インターネット及びコンピュータゲームの有用性を認める形で条例に反対している点で、この声明は画期的だといえるだろう。
インターネット及びコンピュータゲームは子どもたちの知的好奇心や創造性をはぐくむとともに、今後の生活に必須となる情報通信技術に興味関心を持たせる契機としての正の側面も有するものであり、本条例においてこれらの有用性が十分に考慮されているとはいえない。
先日、香川県に住む高校生が中心となってゲーム規制条例を違憲として提訴が予定されていることが報じられた。香川県弁護士会としても、本条例が廃止されるべきであることが示されたことになる。
ライター/古嶋誉幸