エレクトロニック・アーツ(以下、EA)の上層部が、アクションRPG『Anthem』の開発を継続するか中断するかを今週決定するかもしれない。海外メディアBloombergにて、業界と深い親交を持つジャーナリストのジェイソン・シュライアー氏が、匿名の人物より得た情報として報じた。
氏が匿名の情報筋から手に入れた情報によると、現在「Anthem Next」とも銘打たれて立て直しが続くゲームの内容を上層部がレビューし、その結果を見て進退を決するという。現在プロジェクトには30人ほどが関わっているが、結果次第でチームを拡大するか、プロジェクトが“墜落”するかが決まるという。
今のところは公式の情報は一切ないが、ニュースの真偽は今週から来週にかけて分かるだろう。EAの広報担当者は噂や憶測についてコメントしないとしている。
『Anthem』は2019年に発売されたオンラインマルチプレイ型のアクションRPGだ。飛行機能を持つ「ジャベリン」と呼ばれるアーマーを着込み、ほかのプレイヤーと協力してモンスターと戦う。大空を飛ぶ要素だけでなく、アイテム収集やレベルアップといったRPGの要素も含んだハクスラゲームとしての側面も持つ。
リリース後の評価は芳しくなく、バグや内容の薄さに、高い評価を得た『ドラゴンエイジ』や『マスエフェクト』シリーズのBiowareとは思えない出来だと酷評されることもあった。
2020年には「Anthem Next」と銘打ってゲーム内容の立て直しが発表された。戦利品のドロップ機会を増やしたり、レアドロップが期待できるレアモンスターを登場させるなど、ゲームプレイのコアのひとつである「戦利品集め」にメスを入れる。
そんな発表のあと、2020年12月に本作のエグゼクティブプロデューサーのクリスティン・デイリー氏が新作『ドラゴンエイジ』チームへの移動を報告。「『Anthem』プロトタイプチームは継続しますのでご安心ください」とツイートしたものの、本作の発展が危ぶまれる一因となった。
本作はゲームの内容だけでなく、開発環境の問題も報告されていた。今回の記事と同じジェイソン・シュライアー氏が『Anthem』リリースまでの不健全な開発状況を告発(参考リンク:Kotaku)。劣悪な開発環境からうつ病などメンタルの問題を抱えて「メンタル休暇」を取ったり、そのまま同社を去る選択をしたりするスタッフが続出していたという。
開発環境の問題は『Anthem』開発以前からすでに常態化していたが、本作まではなんとか高い評価の作品を世に出し、内部ではどんなに問題を抱えても最後には上手くいく「バイオウェア・マジック」という言葉が生まれていたほどだという。「『ドラゴンエイジ:インクイジション』の時点で失敗しておくべきでした」と、シュライアー氏のインタビューを受けた元BioWareスタッフは語っている。
あくまで噂とはいえ、BioWareスタッフとも付き合いの長いジェイソン・シュライアー氏の報告は真実味があることは確か。果たして、今週中にゲームの進退が決まるのか、EAの動向に注目したい。
ライター/古嶋誉幸