有限会社マーズの代表取締役で『リンダキューブ』のゲームデザインなどを手がけたゲームデザイナーの桝田省治氏が『高機動幻想ガンパレード・マーチ』(以下、ガンパレ)の再始動に熱いラブコールを送っている。
ゲームを開発したアルファ・システムに、『ガンパレ』バグチェックを終えた登場人物全員を操作可能なバージョンがあり、なおかつ大手出版社で『ガンパレ』好きのプロデューサーがゲームだけでなくアニメや小説もまとめて引き受ければビジネスとして十分通用すると氏は試算している。
「僕が積極的に進めるのも筋が違う気がする。ただのガンパレファンの立場だしなあwww」としているが、「新規コンテンツよりずっとリスクも低い。やればいいのに!」とツイートしている。
「ガンパレ」は、アルファにバグチェックを終えた登場人物全員を操作可能なバージョンが残っていて、かつKADOKAWAあたりのガンパレ好きのPが、小説とアニメとゲームをまとめて引き受ければ、ビジネスとして十分に成立すると僕は思うよ。新規コンテンツよりずっとリスクも低い。やればいいのに!
— 桝田省治 まとめサイト無断転載お断り (@ShojiMasuda) April 21, 2021
ことの発端は、3月に報じられたPlayStation 3、PlayStation Portable、PlayStation VitaのPS Store閉鎖だ。これによってゲームアーカイブスで配信されていたタイトルも消えることになるはずだった。
桝田氏はそれを知り、アルファ・システムが開発したPlayStation向けの作品から、『リンダキューブ アゲイン』、『俺の屍を越えてゆけ』、『ガンパレ』のうち、PCやスマートフォンにベタ移植してほしいタイトルをファンにアンケートをとった。アンケートは1万7000票以上集まり、約40%の票を集めて『ガンパレ』が1位になった。
先日の発表の通り、ソニーはPS3とPSVitaのPS Store閉鎖を撤回。ゲームアーカイブスも残ると思われる。それを受け、前述の通り氏は最終的に現在の状況で『ガンパレ』ならいくつかの前提条件をクリアすればビジネスになるとしている。
PS 3/PSP/PS Vita向けストアが今夏終了なのか・・・てことはリンダや俺屍やガンパレを気軽にDLできなくなるってことだよね。このへんのタイトルしか共通の話題がない知人が10人以上いるからちょっと困るぞ。PCやスマホへのベタ移植で1タイトル1000円。リンダ、俺屍、ガンパレの中で欲しいのある?
— 桝田省治 まとめサイト無断転載お断り (@ShojiMasuda) March 27, 2021
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』は、2000年に発売されたシミュレーションゲーム。正体不明の怪物が襲い来るようになった世界で、生き残った人類を守るため動員された学徒兵として学生と兵士としての生活を送る。舞台となるのは日本の熊本だ。
最大の特徴はAIによって制御されたNPCたちの織りなす千変万化な人間模様だ。それぞれのキャラクターは複数のパラメーターに基づき独自の思考を持ったように行動し、プレイヤーだけでなくNPC同士の関係も変化していく。
プレイヤーの目標も、「規定の日数を生き延びる」という大目標を目指すこと以外は何をするのも自由。誰と仲良くなってもいいし、戦場でどんな行動をとる兵士になるかも自由だ。ほかにないゲームプレイの評判は口コミで広まり、多くのプレイヤーを熱中させた。
続編だけでなく、アニメや小説化もされた。特に小説は本編の内容を終えた後にその先をも描き続け、約15年で全45巻がリリースされる大長編となった。長らくプレミア付きのソフトとしても知られていたが、ゲームアーカイブスとして配信され、気軽に手に入るようになった。
ゲームをクリアすると、主人公以外の4人のキャラクターが操作可能となる2週目がアンロックされる。桝田氏のいう「バグチェックを終えた登場人物全員を操作可能なバージョン」というのは、製品版ではコマンドを使った裏技でしか遊べない、登場キャラクター全員をプレイヤーキャラとして遊べる機能のことを指していると思われる。
『ガンパレ』の権利は、現在ソニー・インタラクティブエンタテインメントが所有していると思われる。そのため、再始動にはソニーの許可が必須だろう。
ゲームの公式サイトには完全版やPlayStation 2への移植を嘆願する署名について、当時ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンからの回答が掲載されている。「作らない」と明言されているわけではないが、当時の次回作である『絢爛舞踏祭』に期待してほしいとしている。少なくともこの記事が掲載された時点では、完全版制作などの意思はソニーにはないように見える。
移植や完全版開発が動いているわけではないが、多くの人が情熱を持って『ガンパレ』を見つめていることは間違いない。桝田氏もあくまでファンの立場としてだが、ゲームの再起動を熱く望んでいる。すでに発売から21年がたとうとしているが、今もゲームを望む声が聞こえる、多くのファンを抱えたゲームだ。
ライター/古嶋誉幸