海外メディアのAdweekに掲載された、エレクトロニック・アーツ(以下、EA)幹部のElle McCarthy氏に対するインタビューでの「ある発言」が話題を集めている。氏は同記事内で、「“ゲーマー”は時代にそぐわない古びれた言葉である」という主旨を述べた。
McCarthy氏は2020年に入社後、EAのブランド部門の副代表を務め、40年にわたる歴史を持つ同社のブランディングの再編を担っている。今回のインタビューはEAに合流するまでの経緯や現在の取り組みを中心に、氏の人物像に迫る内容だ。
氏は、自身を“ゲーマー”と称するプレイヤーの割合が14%と極めて少なく、女性に限ればその値は6%にまで下がるという調査結果に言及し、「ゲーミングはメディアや業界だけのものでなく、双方向のやり取りが可能な事象となりました。今やプレイを通じてインテリアデザインや『ブラック・ライブズ・マター』などの社会運動、性自認の問題にもアクセスが可能です」と話す。
さらに、「“ゲーマー”という言葉はもはや存在せず、このことはマーケティングにおいて重要な視点です」と同氏は続け、「ニッチで多面的な姿を持つコミュニティにおいて、アプローチの法則はありません。“ゲーマー”をターゲットにするという試みは、“趣味は音楽”という方や“呼吸する人々”を対象にするのと同義なのです」と語った。
McCarthy氏は現在、社会に変化をもたらすEAの基本理念に立ち返り、技術の革新ともに成長を続けてきた同社の新たなブランド戦略に力を入れているという。
本インタビューはVGC、Gamespot、PlayStation Universeといった複数の海外メディアでも紹介され、英語圏のTwitterではさまざまな反応が見られた。先に挙げたVGCの編集者であるAndy Robinson氏は、「自社では“ゲーマー”という単語を使わないようにしている。(コミュニティを)縮小させる言葉だからだ」と発言。
Personally I’ve never been a fan of the term as I think it’s reductive and doesn’t help the medium. We don’t use it on VGC.
— Andy Robinson (@Andy_VGC) July 27, 2021
この投稿に対し、メディア関係者を中心に新たな議論が生まれている。中には「どうしても使わざるを得ない場合もある」という声や「“TVウォッチャー”のように不要なラベリングだ」という意見も。立場や経験によって捉え方は異なるだろうが、この度のMcCarthy氏の発言が身近な用語の意味をあらためて考える契機となったのは確かだ。
家庭で過ごす時間が増え、ゲーミングが一般に浸透しつつある昨今の社会。誰もが当たり前のようにゲームをプレイするようになり、弊誌の看板からも“ゲーマー”の名前が消える日が来るかもしれない。
ライター/dashimaru