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「ゲーミング椎茸」販売中。有名プロゲーマーたちが食するなど一部で話題を集める謎のキノコの正体について、格ゲー好き農家の生産者に話を聞いてみた

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 格闘ゲームの大会イベントを機に生まれた「ゲーミング椎茸」なる商品が、プロゲーマーの間で話題を集め、インターネットを中心に全国へと知名度を広げつつあるようだ。

 2021年の冬には芸能界でのキャリアに加え、ゲーム実況からeスポーツチームのプロデュースまで多岐におよぶ活動で知られる倉持由香氏とプロ格闘ゲーマーのふ〜ど氏夫妻が同名のシイタケを味わう写真をツイート。さらには日本初の女性プロゲーマーとしてメディア出演も豊富なチョコブランカ氏といった名だたる面々が食事風景をアップするなど、SNS上で複数の投稿が確認されている

 「ゲーミング」の名を頭に冠する商品は数多く見受けられるが、そのなかでもとりわけ異質な存在感を放つ「ゲーミング椎茸」とは一体どのようなものなのか。生産と販売を手がけるゲーマーにして農家のNAO氏に話をうかがった。

「ゲーミング椎茸」とは何か。生産者のNAO氏に話を聞いた_001
NAO氏(以下、特に記載がない限り画像は同氏の提供によるもの)

 静岡県御前崎市に生まれ育ち、家業のシイタケ農家を受け継いだNAO氏は、日々の仕事と平行して『ストリートファイターV』(以下、ストV)の大会イベント「椎茸杯」を2018年よりYouTube上で主催している。同氏によれば、自身も「コアな『ストV』プレイヤーのひとり」とのこと。

 こうした個人規模で開催される大会ではAmazonなどの通販サイトのギフト券を賞品とするのが一般的なようだが、「何かユニークなものを代わりにできないか」と考えた同氏は実家のシイタケを試験的に配布。すると珍しさや見た目の美しさ、豊かな味わいなどが好評を呼び、イベント関係者らがSNSを通じて情報を拡散していった。

 当初は「肉厚椎茸」という名前で提供していたが、周囲から「ゲーミング椎茸」と呼ばれるようになり、しだいにネーミングが定着した。この名称がきっかけとなり、噂を聞きつけ購入を希望する声がたびたび届き始めたという。

 ※「ゲーミング椎茸」としてブランド化する以前はこのような形で提供されていた

 それまでブランド化しての販売は行っていなかったものの、ニーズへ応える形でNAO氏は2020年に「ゲーミング椎茸」の商品展開を決意。『ストV』仲間でもあるプロマンガ家の友人2名にそれぞれロゴとイラストの制作を依頼し、顔となるステッカーが完成した。個性的な名前と目を惹くパッケージの効果も相まって、実際の売れ行きも大きく伸びたと同氏は話す。

 シイタケ自体は祖父母の代から研究を重ねてきたとあって、品質もお墨付きだ。最近では国外から輸入した菌床を日本で育て“国産シイタケ”と称して販売するケースも増えているそうだが、ステッカーの右上に記されたどんぐりマークは、業界大手のキノコメーカー・北研が認定する「純国産」の証でもある。このマークは菌床の原料からシイタケの生産に至るまで、全てが国内で行われたものでなければ表記が許されていない。

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「ゲーミング椎茸」350g入りの画像。なお栽培時にはこのような光を当てている訳ではない
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選ばれしシイタケのみが冠することを許される北研のどんぐりマーク(画像は北研公式サイトより)

 またNAO氏は、「ゲーミング椎茸」にまつわる印象深いエピソードを披露してくれた。2021年の秋には、例年を超える気温の上昇が原因で予想を超える大量のシイタケが発生する事態が起きた。これをそのまま市場に出した場合、通常の半額以下にまで値崩れしてしまう恐れがある。そこで同氏は、Twitter経由で窮状を伝え割引価格での購入希望者を募った

 この策は見事に功を奏し、用意していた50パックは想定以上の注文を受け無事完売。また本ツイートが発端となり、九州のローカル誌にも取材記事が掲載された。それを読んだ農業支援サービスを展開する企業「YACYBER」(ヤサイバー)からオファーが舞い込み、同社の東京・大手町にある直売所を筆頭に、今後は関東や関西圏でも「ゲーミング椎茸」の取り扱いが始まる予定だという。

 さらに格闘ゲーム界隈には食品関係の仕事に就いている者も多く、そうした分野とのコラボレーションも今後積極的に行っていくつもりだとNAO氏は明かした。仲間意識が支えるコミュニティの親身な応援や好評を呼んだフォトコンテスト企画の反響なども加わり、全国単位で知名度が広がりつつあるのを感じていると同氏は語る。

 また、最近では趣味を通じてマンガ家の押切蓮介氏との親交も持つようになり、実況役として主催する大会のゲストに迎えているほか、優勝者には名前と大会で使用したキャラクターの描かれた同氏による直筆イラストが賞品として贈られるなど、ゲーム方面での活動にも新たな流れが生まれているそうだ。

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押切氏によるセルフイラスト

 加えて最近では、押切氏以外に独自の賞品を大会に提供したい」と関わりを持つ者が増えており、配信を通じて宣伝を行うことで周囲に感謝の意を伝えていきたいとも同氏は話す。

 「ゲーミング椎茸」については、実家で働く年配の従業員たちも「まさかこんなに売れるなんて」と前向きな反応をみせているとのこと。NAO氏は「亡くなった祖父の作ったシイタケが多くの人の元に届くよう、ゲームに親しみの薄い層へも輪を広げていきたい」との想いを込め、同商品の売上は主催する大会イベントにも還元していくつもりだと抱負を述べた。

 「ゲーミング椎茸」は、NAO氏の運営するオンラインストアを通じて日本全国より購入が可能。価格は650円から(税込・送料別)で、2022年初頭は4月ごろまでの販売となっている。なお同氏はYouTubeを通じて同商品や「椎茸杯」にまつわる情報、ゲーム配信などの多彩なコンテンツを日々発信しているので、興味を持たれた方はあわせてご覧いただきたい。

※今回のニュース記事執筆にあたり、NAO氏にご協力をいただき電話でのインタビュー取材を行いました。

ライター
フリーランスの翻訳者を経て、2021年より編集アシスタントとして加入。京都の町屋で猫と暮らす。
Twitter:@dashimaruJP

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