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2021年におけるUnity製ゲームの数は前年比で“ほぼ2倍”に増加。ゲーム業界の全体像を把握できる「Unity ゲーミングレポート 2022」が公開

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 Unity Technologiesは、同社のゲーム制作プラットフォーム「Unity」を利用したゲームの数が“過去1年間でほぼ2倍に増えた”とする動向など、ゲーム業界の全体像を把握できるレポート「Unity ゲーミングレポート 2022」を3月16日(水)夜に公開した。本レポートは日本時間3月22日(火)にアメリカ・サンフランシスコで開幕する業界イベント「Game Developers Conference(ゲーム開発者会議、GDC)」でのセッションへ先駆けて公開されたものだ。

 本レポートでは個人・団体のデベロッパー(開発元)やパブリッシャー(販売元)における意思決定の材料として、75万にのぼるアプリを制作・運用する23万のデベロッパーからの集計や外部によるレポート、クリエイターからの気づきや考察を取り入れた最新データが提供されている。なお、執筆時点でダウンロードできるレポート全文は英語版のみで、日本語版は後日に配信される。

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© 2022 Unity Technologies

 レポートの情報によると、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック初期で発生した制作数の落ち込みはすでに解消されており、2021年にUnityで制作されたゲームの数は2020年と比較して93%増加していた。Unityを利用してゲームを制作するクリエイターの数も2020年比で31%増加したほか、全デベロッパーに対したゲームのリリース数も「6タイトル以上増加した」とするデベロッパーが10%を超えるなど、増加の一途をたどっているという。世界の市場に精通した調査会社のMordor Intelligenceは「2027年までにゲーム(業界の市場価値)は3000億ドル以上に達する」との予想を発表しているが、予想に比例した結果となっているようだ。

 対象ユーザーのジャンル別における推移では、ひとつのゲームを繰り返しプレイする方式と広告収入による集客・収益化を兼ねた「ハイパーカジュアル」の作品数が2019年1月と比較して137%と最も増加。そのほかアドベンチャーやアーケードなどのカジュアルゲームは53%増、カードやRPGなどの「ミッドコア」ゲームが54%増、アクションやシミュレーションにあたるハードコアゲームも55%と全ジャンルでUnity製タイトルが増加している。

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 続いて2020年と2021年を比較したゲームジャンル別での推移では、カジノやスポーツのカテゴリで減少したもののアドベンチャー、カジュアル、パズル、シミュレーションの計4ジャンルでUnity制タイトルの作品数が10%以上の伸びを見せた。また、パンデミックの収束で減少するとの懸念もあったゲームの収益については、収益や1日ごとのアクティブユーザー数(DAU)ともにパンデミック以前より増加した状態を継続しているという。

 一方、パンデミックの影響に関しては2019年1月から2022年までの期間で、平日と週末にゲームを遊ぶプレイヤーの割合もグラフ化されている。多くの場合で平日よりも週末にユーザー数は増加しているが、2020年の初夏で一時的に割合が逆転した形跡を確認できる。全体を通して観た場合、パンデミック前と比較して平日に遊ぶユーザーの割合は増えたものの、習慣自体はパンデミック以前とほぼ同じ状況に戻ったようだ。

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 興味深いデータのひとつとして、アプリのゲーム内広告を視聴するプレイヤー数の増加も報告されている。1日あたりにひとつ以上の広告を視聴するユーザーの割合は、2020年時点で21.6%だったものが2021年で25.9%に増加。「広告がゲームからプレイヤーを追い出してしまう」との懸念を持つデベロッパーもいるようだが、魅力的なゲーム内報酬を与える広告は実際にプレイヤーの定着を高める効果につながるとのデータもあわせて示されていた。

 ハイパーカジュアルやアーケードゲーム、言語ゲームなどの気軽に楽しめるジャンルは広告収入へ大きく依存。反対にRPGやアドベンチャーゲームなど、じっくりと楽しむジャンルははアプリ内課金を主体に収益を生み出している。アプリ内課金と広告収入の割合を示す地域別データによると、韓国や北米・南米などの地域では収益の半分以上をアプリ内課金へ依存している一方、中国と日本は50%を超える広告収益に支えられているという。

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 地域別のデータでは、コンテンツが継続的に更新される「ライブゲーム(運営型ゲーム)」へ地域ごとの嗜好があるとのデータも示されている。2021年における日本のライブゲームはシミュレーションジャンルの作品が19.3%で最も多い割合を占めている一方、EMEA地域(ヨーロッパ、中東、アフリカ)ではハイパーカジュアルが17.5%で最多。日中韓の3国と比べて、アメリカとEMEA地域では倍以上におよぶハイパーカジュアル作品をリリースしているようだ。

 そして、ハイパーカジュアル作品の比較対象に含まれた中国では、2021年秋に国内のビデオゲーム規制を強化。実際に18歳未満の子どもは金曜日を除く平日のプレイを禁止されたほか、週末のプレイ時間も最大3時間に制限されており、本規制の影響で中国のプレイ継続率はパンデミックの影響で減少する中国以外の国と比べても極端に少ない結果となっている。

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 本レポートでは上記のほか、複数種の端末に対応するクロスプラットフォーム作品の増加やAR(拡張現実)とVR(仮想現実)およびメタバースへの予測、「中小規模の開発者によるイノベーションを締め出すようなものではない」とする大手スタジオの状況、ゲームジャンルごとにほぼすべてのジャンルで20%の落ち込みが見られるプレイ継続率の変化、クロスプラットフォーム対応の「マルチプレイヤーゲームがより一般的になる」などの2022年以降における業界トレンドの予想も掲載されている。

 本稿で紹介できなかった部分にも興味深い情報は数多く含まれている。ゲーム業界に関心のある学生や一般のゲームファンであれば読み物としても楽しめるので、興味があればチェックしておくとよいだろう。

© 2022 Unity Technologies

ライター
2019年11月に電ファミへ加入。小学生の時に『ラグナロクオンライン』に出会ったことがきっかけでオンラインゲームにのめり込む。コミュニケーション手段としてのゲームを追い続けている。好きなゲームは『アクトレイザー』『モンスターファームアドバンス2』『新・世界樹の迷宮2』など。
Twitter:@fuyunoyozakura

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