Juggernaut EntertainmentとUSC Gamesは5月11日、スペインの画家「フランシスコ・デ・ゴヤ」がモチーフのホラーアドベンチャーゲーム『Impasto』を開発途中のゲームをリリースする早期アクセス版として配信開始した。
配信されるプラットフォーム「itch.io」で、価格は無料。対応言語は英語のみとなる。
本作のSteam版を含むフルリリースは2022年6月下旬から7月上旬を目標としている。
『Impasto』は「フランシスコ・デ・ゴヤ」の孫「マリアーノ・ゴヤ」となり、祖父のおどろおどろしい絵画の世界を探索する作品だ。突如謎の遺産相続の手紙を手にしたマリアーノ・ゴヤは、秘密の遺産を追い求めて暗く歪んだ絵画の世界へ迷い込んでしまう。
本作は南カリフォルニア大学の学部生と、オーティス芸術大学、カリフォルニア州立大学フラトン校の学生、世界各国のボランティアが協力して制作した学生制作のプロジェクトとなっており、クレジットの一覧はゲーム内で確認できるという。
「フランシスコ・デ・ゴヤ」は18世紀から19世紀にかけて活動したスペインの画家であり、スペイン最大の画家と謳われる人物だ。
「フランシスコ・デ・ゴヤ」の生涯では宮廷画家としての活動に重きが置かれ、宮廷画家のほか戦争を風刺する版画の作品や油彩画の作品でも知られている。
戦争画としては、スペイン全土にわたる独立戦争の発端となったマドリード蜂起とその報復を描いた作品『マドリード、1808年5月2日』と『マドリード、1808年5月3日』は高校生向けの世界史の教科書等にも掲載されるケースが多いだろう。
いっぽうで、本作『Impasto』の主なモチーフとなる絵画は1820年から1823年にかけて「黒い絵」と呼ばれる黒をモチーフとした作品郡となっており、幻想的で残虐な作品や、ダークなシチュエーションが題材の作品、どことなく不気味な作品が含まれる。代表的な作品として『我が子を食らうサトゥルヌス』が挙げられるだろう。
「黒い絵」にはスペインにて1478年から1834年の間に民衆を残虐に抑圧した「異端審問」にまつわる作品があり、また「黒い絵」には含まれないが、「フランシスコ・デ・ゴヤ」が1812年から1819年に制作した絵画でも異端審問をモチーフとした作品が存在する。
このほかにもローマ・カソリックによる懺悔を強いる光景を痛々しく描いた『鞭打ち苦行者の行列』や『闘牛』など、当時のスペインの苛烈な風習を批判する作品が存在する。
「フランシスコ・デ・ゴヤ」をモチーフとする『Impasto』では、これらの作品群から表現される当時のスペインの陰鬱さ、幻想的で邪悪な世界観、苦悩が融合した世界が描かれるのだ。
ゲーム内に登場する絵具の世界では「黒い絵」の『食事をする二老人』が歪んだ価値観の人物として登場するなど、実際にコミュニケーションを行える。また、残忍な異端審問による抑圧も再現されているため、ステージを探索する際にはステルスが生存の鍵を握る。
また、ゲーム内にはプレイヤーの生命を脅かす敵NPCのほか、パズル要素も用意されているという。
グラフィックはある程度ポリゴン数が抑制されたモデルで描かれている印象だが、キャラクターの肌や背景など、油彩画のマチエールをイメージしてあしらわれたテクスチャ上の筆致感が魅力的だ。
絵画の世界の奥底では「フランシスコ・デ・ゴヤ」の正体不明の遺産か、あるいは悪夢のような世界を生み出した原因が待ち受けている。
興味がある読者は、itch.ioから本作をダウンロードして暗黒の絵画世界を冒険しよう。