ドワンゴは5月26日(金)、同社が保有する「コメント表示機能に関する特許権」の侵害でFC2, INC.および株式会社ホームページシステムを相手取った訴訟の控訴審において、知的財産高等裁判所(以下、知財高裁)が大合議のうえ、FC2の特許権侵害を認めたとの判決結果を伝えた。
なお、知財高裁は2022年7月にもFC2の特許権侵害を認める判決を下しているが、今回の判決は5人の裁判官による「大合議」で新たに別の特許権の侵害を認めたものである。
FC2等に対する特許権侵害訴訟の控訴審において、知的財産高等裁判所がFC2による特許権侵害を認める判決を下しました
— くりたしげたか(帰ってきた)🌰ニコニコ代表の人 (@sigekun) May 26, 2023
サーバを国外に置くことにより容易に特許権を潜脱することを認めず、我が国の特許権を適切に保護すべき旨を示したもので画期的な判決であると考えておりますhttps://t.co/HJHGwU7BtB
今回の判決は「視聴者のコメントを水平方向へ移動させながら重ならないよう動画の画面上に表示する」ドワンゴの特許を「FC2 動画」などFC2傘下の動画配信サービスが侵害していた件について、東京地裁が「特許権の効力は特許権を取得した国の領域内に限られる」とする“属地主義”の原則に従って特許侵害を認めなかった第1審での判決を覆すものである。ドワンゴ側は該当の判決を不服として、知財高裁に控訴を申し立てていた。
判決で知財高裁は「国外サーバーからのファイルの送信と国内のユーザー端末による受信は一体」のものであり、ファイル送受信の行為が「国内で行われたもの」と評価。国内のユーザー端末によるデータの受信が「発明の主要な機能を果たし、発明の効果が国内で発現し、国内におけるシステムの利用がドワンゴの経済的利益に影響を及ぼしうるもの」であると認定した。
判決を受けて、ドワンゴはプレスリリースのなかで「知的財産高等裁判所が、大合議で、サーバを国外に置くことにより容易に特許権を潜脱することを認めず、我が国の特許権を適切に保護すべき旨を示したものであり、画期的な判決である」とコメントした。
また、ドワンゴは本件が日本における「第三者意見募集制度」の創設後に初めて利用された案件であった点にも触れ、広く集められた第三者の意見を踏まえて今回の判断がなされた点についても「画期的なもの」であるとの見解を示している。
プレスリリースの全文は以下のとおり。
FC2 等に対する
特許権侵害訴訟の控訴審大合議判決に関するお知らせ
株式会社ドワンゴ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:夏野剛)は、当社の保有するコメント配信システムに関する特許権に基づいて、FC2, INC.(以下「FC2」といいます)及び株式会社ホームページシステムを共同被告として提起した特許権侵害訴訟の控訴審において、2023 年 5 月 26 日、知的財産高等裁判所が、大合議で、当社の主張のとおり、FC2 による特許権侵害を認める判決を下したことをお知らせいたします。
なお、知的財産高等裁判所は、別件において、FC2 等による当社のコメント表示機能に関する特許権の侵害を認める判決を下しておりますが、本判決は、知的財産高等裁判所が、新たに、大合議で、当社の別の特許権の侵害を認めたものです。
本判決の概要
■判決のあった裁判所および年月日
【裁判所】知的財産高等裁判所特別部
【判決日】2023 年 5 月 26 日
【事件名】令和 4 年(ネ)第 10046 号 特許権侵害差止等請求控訴事件
本判決は、FC2 動画等のサービスに関して、特許権侵害を否定した第一審判決を覆し、国外サーバから日本国内のユーザ端末にファイルを配信する行為について、当社のコメント配信システムに係る特許権に基づく差止及び損害賠償請求を認めたものです。これは、知的財産高等裁判所が、大合議で、サーバを国外に置くことにより容易に特許権を潜脱することを認めず、我が国の特許権を適切に保護すべき旨を示したものであり、画期的な判決であると考えております。
特に、本判決は、ネットワーク型システムの要素の一部であるサーバが国外に存在する場合であっても、①行為の具体的態様、②国内に存在する要素が発明において果たす機能・役割、③システムの利用により発明の効果が得られる場所、④システムの利用が特許権者の経済的利益に与える影響等を総合考慮して、我が国の特許法上の「生産」に該当するかどうかを判断すべき旨を判示しました。
そのうえで、①本件において国外サーバからのファイルの送信と国内のユーザ端末による受信は一体であるから、ファイル送受信行為が国内で行われたものと評価でき、②国内のユーザ端末が発明の主要な機能を果たしており、③発明の効果が国内で発現しており、④国内におけるシステムの利用が当社の経済的利益に影響を及ぼしうるものだと認定し、FC2 による特許権侵害を肯定しました。
さらに、本件は、重要な事項を判示した大合議判決であるだけでなく、日本における第三者意見募集制度の創設後、初めてこれが利用された案件であり、第三者の意見が広く集められ、これらを踏まえて、上記のような判断がなされた点も、画期的なものと考えております。
当社は、当社の知的財産権を当社の重要な資産であると捉えており、今後も、知的財産権の侵害行為に対しては毅然とした対応を行っていく所存です。