ドワンゴは、6月8日(土)早朝から「ニコニコ」で発生していたサービス障害について、発生原因がランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃であったと発表した。サービス復旧までには1ヶ月以上かかる見込みとしている。
本障害に関して、「ニコニコ動画」のシステムや動画データ、映像配信システムはパブリッククラウド上で運用されていたため被害は受けていないとのこと。また、サービス停止中の対応策として、ドワンゴの開発チームが自発的に3日で開発した動画コミュニティサイト「ニコニコ動画(Re:仮)」のサービスを14日15時からリリースすることも伝えられている。
発表によると、本障害の現象は8日(土)午前3時30分ごろにはじめて確認され、同日午前8時にランサムウェアを含む第三者のサイバー攻撃によるものと判明していたという。ドワンゴでは同日中に対策本部を立ち上げ、グループ企業が提供するデータセンター内サーバー間における通信の切断とサーバーのシャットダウンを実施。すべてのウェブサービスの提供を一時停止した。
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また、第三者の攻撃は社内ネットワークにも及んでいたため、対策本部は社内業務システムの一部を利用停止し、社内ネットワークへのアクセスを禁止した。対処にあたっては、サーバーのシャットダウン後も遠隔でサーバーを起動させて感染を広げようとする第三者の動きが観測されたため、サーバーの電源ケーブルや通信ケーブルを物理的に抜線し、社員の歌舞伎座オフィスへの出社も原則禁止とする徹底的な措置を図ったという。
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撮影:Tak1701d パブリック・ドメインによる
なお、ニコニコ動画のシステムや投稿された動画データ、映像配信システムは別途パブリッククラウド上で運用されていたため被害を免れている。あわせて、ニコニコ生放送についても被害を受けていないものの、映像配信を司るシステムがグループ企業のプライベートクラウド上で運用されていた関係から、過去のタイムシフト映像などを使用できない可能性も含まれるようだ。
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今回のサービス障害にあたって、停止中のサービスは下記のとおりとなっている。
・ニコニコ動画、ニコニコ生放送、ニコニコチャンネル等のニコニコファミリーサービス
・外部サービスでのニコニコアカウントログイン
・楽曲収益化サービス
・ドワンゴチケット
・ドワンゴジェイピーストアの一部機能
・N予備校 ※N高等学校・S高等学校の生徒向けには復旧済
・各種企画におけるプレゼント発送
復旧に際しては、封鎖したサーバーの中身をひとつずつ確認して無事なデータを救出し、安全な環境下で救出したデータをもとにシステムを再構築していく作業を要するため、現時点で1ヶ月以上かかる見込みだ。ドワンゴは「再開できるサービスから順次再開していく予定」としている。
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今回のサービス障害にあたって、ドワンゴはプレミアム会員・ニコニコチャンネル有料会員や「N予備校」の会員料を2ヶ月分補償するほか、ニコニコチャンネル・ニコニコチャンネルプラス運営者への収益分配とクリエイター奨励金の分配についても補償を実施する予定だ。
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上記のほか、ニコニコ生放送・ニコニコチャンネルを利用した公式番組、およびチャンネル生放送は7月末まで中止。「ニコニコ漫画」については影響を受けなかったシステムが多いことを確認できているため、機能を縮小しつつ6月中の復旧を目指しているという。
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加えて、ニコニコのサービス停止中における施策の第一弾として、ドワンゴの開発チームが自発的に“3日で作った”という新バージョン「ニコニコ動画(Re:仮)」のサービスが本発表にあわせて開始された。
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「ニコニコ動画(Re:仮)」は2006年のサービス最初期と同様に、動画視聴やコメントなどの基本的な機能のみを備えたサービスとなっている。
サービスの負荷を考慮して視聴できる動画は2007年の人気動画を中心として一部に限定されているが、“ニコニコ最古の動画”として知られる対戦格闘ゲーム『新・豪血寺一族 -煩悩解放-』収録曲「レッツゴー!陰陽師」のプロモーション映像には、すでにたくさんの“弾幕”コメントが投稿されているようだ。
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ドワンゴから発表されているサービス障害の経緯報告と今後の対応に関する告知は以上だが、親会社のKADOKAWAからも出版やマーチャンダイジング、経理等の業務に関する被害状況の報告、およびKADOKAWA取締役兼・代表執⾏役社⻑CEOの夏野剛氏によるお詫びの動画も公開されている。